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第9章
#2
しおりを挟む――ピンポンピンポンピンピンポポポンッ
「へ⁉︎」
いつの間にかソファで眠ていた俺は、自分の部屋のインターホンがものすごい勢いで連打されていることに気づき、飛び起きた。
(す、周藤……?)
いやアイツは合鍵を持っているし、赤ちゃんに何かあったなら電話くらいしてくるだろうな。
マスター?
でもマスターも、俺の携帯番号知ってるしな……。
カオリさん、も合鍵持ってるしな……。
(だ、誰……)
結局思い当たる人物がおらず、俺はゆっくり物音を立てずに未だインターホンをすごい勢いで連打されている玄関に近づいた。
――ピンポンピンポンピンピンポポポンッ
連打しすぎてちょっとリズム打っちゃってるんだが……。
緊迫感もあるがどこか腑抜けたインターホンに、俺は混乱が増しつつゆっくりドアスコープから外を覗く。
すると、そこには真っ黒一色で誰がいるのか見えなかった。
(いやちけェって)
誰だよまじで。
そう思いながら俺は意を決して声を張り上げることにした。
「あ、あの!ドアスコープから見えないんですけど、誰でしょうか!」
玄関で声を上げると、インターホンが鳴り止み少し沈黙が流れた。
もう一度ドアスコープからゆっくり覗くと黒いのが服だと分かったが顔までは見えない。
「あの、用がないなら鳴らさないでください。迷惑です」
(どなたが知りませんが)
そう伝えると、「い、いや!」と外から焦った声が聞こえた。
「はい?」
耳をドアに近づけると、外からゴソゴソ物音が聞こえた後、「あ、あの」と聞こえた。
「俺、文月です」
「へ⁉︎」
本日二度目の腑抜けた声を晒してしまい、俺は慌ててドアスコープを覗くと今度はちゃんと距離をとったのか文月さんの顔が見えた。
そっとドアチェーンを外して、開けてやればなんでか焦った様子の文月さんが汗ばんだ顔で俺を視界に入れた。
俺も彼を視界に入れる。
なんでか、胸の音がバクバク激しく鳴っていて落ち着かない。
俺はハッと思い出し、もう一度勢いよくドアを閉める。
「え、美澄さん⁉︎」
焦った彼の声に俺は「ちょっと待っててください‼︎」と叫んで、結城先生が処方してくれた頓服を飲む。
副作用のことなんて頭になかった。
(万が一、ヒートが来たらやばいから……)
水で飲み、ぷはっと落ち着いてからゆっくりと玄関を開けた。
文月さんは眉を顰め「だ、大丈夫ですか?」と控えめに聞いてきた。
「いや……あんな連打されたら怖いでしょう……」
俺は、胸の落ち着きを取り戻してそう返せば、文月さんは「すみません……」と珍しく申し訳なさそうな顔で謝罪をした。
「どうしたんですか急に」
玄関先でそう聞けば、文月さんは顔を上げる。
「ちょっと、話したいことがあって……」
(話したいこと?)
俺は首を傾げつつ文月さんを部屋に招き入れた。
「じゃあこの間のソファにでも座っててください。飲み物はアイスコーヒーで良いですか?」
そう話しかければ文月さんは、荷物を置いて康祐さんの前に立ちながら「お構いなく」とだけ呟いた。
「線香は焚いても構いませんか」
相変わらず、儀式になっているみたいにうちに来ると真っ先に手を合わせてくれる文月さん。
俺はその様子を微笑ましく見つめながら、二人分の飲み物を用意してソファへと向かった。
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