【完結】end roll.〜あなたの最期に、俺はいましたか〜

みやの

文字の大きさ
112 / 112
第10章

#10

しおりを挟む

 ――『要は変なところガサツだからなぁ』
 ――『康祐さんが細かいんだって!』

 
 ――『あ、その本まだ読んでいたのに』
 ――『康祐さん細いくせに本はいつも読みっぱなしなのなんでなの』

 
 ――『要、今度の土曜日この映画観に行かない?』
 ――『?何これ』
 ――『バース性のない世界の恋愛ドラマ』
 ――『えぇ?ファンタジー?』
 ――『……きっと、違うかも』
 ――『え?まあ、康祐さんが観たいならいいよ!』

 
 ――『ね、康祐さんさ。もしこの世にバース性がなくてさ、俺がオメガでもなくて普通の男で、康祐さんもアルファとかじゃなくて普通の男だったら、どうしてた?』
 ――『それでも、要と会いたいな』

 
 ――『康祐さん。康祐さんはちゃんと毎日……どこへ行っても帰ってきてくれるよね?』
 ――『急に泣いたかと思ったら。なんだ、そんなこと心配してたの?』


 ――『大丈夫、ちゃんと――……』


「……めさん、要さん」
「……は、」

 目を開ければ、心配そうに覗き込む文月さんの顔が目の前にあった。
 
 疲労感の抜けた彼の顔を見て、俺もきっと同じような顔をしているのだろうなと、消え去った頭痛に思いを馳せた。

「うなされていたので……」

 水飲みますか?と言う文月さんの背中を見つめる。

 ベッドサイドに座る彼は、ひとまずパンツとズボンを履くことにしたようで、「よいせ」だなんて呟いて服を着ている。

 その背中は俺より広くて、逞しい。

 俺のつけたらしき引っ掻き傷もあって、なんだか不思議な気分になる。

「要さん?」

 何も答えない俺を不思議に思った文月さんは「無理させちゃいましたか?」と心配げに眉を寄せて俺の頬を撫でる。

 俺は文月さんの頬に手を伸ばした。

 仏頂面のくせに頬も柔らかかった。

「……文月さん」

 少し掠れた声で名前を呼ぶ。
 文月さんは「はい」といつもの調子で返事をしてくれた。

 俺はその頬に手を添えた。



「文月さんは、……ちゃんと帰ってきてくれますか」



 どこにいても、何をしていても。



 頬を撫でる俺の手を上から包み込み、文月さんは微笑む。



「貴方が望むままに」

「……ふふ」



 その答えは文月さんらしくて、俺は笑ってしまった。


「泣いているから、何事かと思いました」


 安堵した声で言う文月さんに、俺はまた自分が泣いていたのだと知る。

 目尻を拭いながら言った。



「文月さんが帰ってくるなら、俺はもう泣いたりしませんよ」



 ちゃんと帰ってくれるなら。



「死ぬまでおかえりって、言わせてね」



 そうしたら、エンドロールでは何て流れるのだろう。


 妻……も違うし、恋人……?
 でももし、結婚したら……夫?
 番になったら、番と書かれてしまうのだろうか……。

 ……まさか、患者Aじゃあるまいし。



「じゃあ要さんは、俺のそばでずっと笑っていてくださいね」

 

 何もついていない左手の薬指に、そっとキスを落とされた。
 
 


 ――『……死ぬ時こそ、大好きな人たちの大好きな顔をみてから死にたいじゃないですか』



 かつての文月さんが目を伏せて語ったエンドロール。

 今の文月さんは、俺の目の前でとろけたような甘い顔をしながら俺を見つめている。

 
 彼のエンドロールにはきっと、俺のこの熱に浮かされた腑抜けた顔がたくさん映ってしまうのだろうな。
 

 それは少し気恥ずかしくて……ちょっぴり愛おしいかもしれないね。
 

 (だから、)
 
 
 この顔が、貴方にとって『大好きな顔』になりますように。

 

 彼のうなじに、そっとキスを落とした。


[end.]
 
しおりを挟む
感想 3

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(3件)

猫丸
2025.11.30 猫丸

完結おめでとうございます!
抗えない性差や本能、運命の荒波に揉まれながらも『自分』というものを見つける姿がとても素敵で『2度目の運命』という言葉にグッときました!
素敵な作品ありがとうございました!

2025.11.30 みやの

猫丸さんー!!
完結まで読んでくださってありがとうございました〜!!😭
オメガバースという言葉に誘われて蓋を開けてみたらオメガバでは無いのでは……?という詐欺のようなお話になってしまいましたが、全員の人生を描くことができたのでそれを見届けていただけてすごく感無量です。
こちらこそ、読んでくださりありがとうございました!!

解除
かのこ
2025.11.30 かのこ
ネタバレ含む
2025.11.30 みやの

かのこさん、初めまして!
最後まで読んでくださりありがとうございました〜!☺️
私も終わったなぁと思いながら、まさしくエンドロールをみている気分で書き終わりに浸っておりました笑
朔さん側のお話もスピンオフのような形で書いたり、文月と要のその後のお話を私も書きたいなぁと思っているので、その際はまた読んでやってくださったら嬉しいです〜!!
見守ってくださりありがとうございました!
またどこかで機会がありましたら、よろしくお願いします☺️💖

解除
猫丸
2025.11.26 猫丸
ネタバレ含む
2025.11.27 みやの

猫丸さんーーーーー!?
まさか読んでくださってありがとうございます😭😭😭
色々と苦難を乗り越えているありふれた一人の人生を描きたかったので、何かしらが心に触れてくださって嬉しいです!!😭
お忙しい中、本当にありがとうございます!!!!!

解除

あなたにおすすめの小説

たとえ運命じゃなくても、僕は

mimi
BL
「僕は自分の気持ちを信じたい。 たとえ運命から背を背けようとも」 音楽大学に通うΩの青年・相田ひなた。 努力家の先輩αと、 運命の番だと告げられた天才α。 運命か、愛情か―― 選ぶのは、僕自身だ。 ※直接的な描写はありません。

欠陥αは運命を追う

豆ちよこ
BL
「宗次さんから番の匂いがします」 従兄弟の番からそう言われたアルファの宝条宗次は、全く心当たりの無いその言葉に微かな期待を抱く。忘れ去られた記憶の中に、自分の求める運命の人がいるかもしれないーー。 けれどその匂いは日に日に薄れていく。早く探し出さないと二度と会えなくなってしまう。匂いが消える時…それは、番の命が尽きる時。 ※自己解釈・自己設定有り ※R指定はほぼ無し ※アルファ(攻め)視点

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

流れる星、どうかお願い

ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる) オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年 高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼 そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ ”要が幸せになりますように” オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ 王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに! 一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが お付き合いください!

六年目の恋、もう一度手をつなぐ

高穂もか
BL
幼なじみで恋人のつむぎと渉は互いにオメガ・アルファの親公認のカップルだ。 順調な交際も六年目――最近の渉はデートもしないし、手もつながなくなった。 「もう、おればっかりが好きなんやろか?」 馴ればっかりの関係に、寂しさを覚えるつむぎ。 そのうえ、渉は二人の通う高校にやってきた美貌の転校生・沙也にかまってばかりで。他のオメガには、優しく甘く接する恋人にもやもやしてしまう。 嫉妬をしても、「友達なんやから面倒なこというなって」と笑われ、遂にはお泊りまでしたと聞き…… 「そっちがその気なら、もういい!」 堪忍袋の緒が切れたつむぎは、別れを切り出す。すると、渉は意外な反応を……? 倦怠期を乗り越えて、もう一度恋をする。幼なじみオメガバースBLです♡

泡にはならない/泡にはさせない

BL
――やっと見つけた、オレの『運命』……のはずなのに秒でフラれました。――  明るくてお調子者、だけど憎めない。そんなアルファの大学生・加原 夏樹(かはらなつき)が、ふとした瞬間に嗅いだ香り。今までに経験したことのない、心の奥底をかき乱す“それ”に導かれるまま、出会ったのは——まるで人魚のようなスイマーだった。白磁の肌、滴る水、鋭く澄んだ瞳、そしてフェロモンが、理性を吹き飛ばす。出会った瞬間、確信した。 「『運命だ』!オレと『番』になってくれ!」  衝動のままに告げた愛の言葉。けれど……。 「運命論者は、間に合ってますんで。」  返ってきたのは、冷たい拒絶……。  これは、『運命』に憧れる一途なアルファと、『運命』なんて信じない冷静なオメガの、正反対なふたりが織りなす、もどかしくて、熱くて、ちょっと切ない恋のはじまり。  オメガバースという世界の中で、「個」として「愛」を選び取るための物語。  彼が彼を選ぶまで。彼が彼を認めるまで。 ——『運命』が、ただの言葉ではなくなるその日まで。

ノエルの結婚

仁茂田もに
BL
オメガのノエルは顔も知らないアルファと結婚することになった。 お相手のヴィンセントは旦那さまの部下で、階級は中尉。東方司令部に勤めているらしい。 生まれ育った帝都を離れ、ノエルはヴィンセントとふたり東部の街で新婚生活を送ることになる。 無表情だが穏やかで優しい帝国軍人(アルファ)×明るいがトラウマ持ちのオメガ 過去につらい経験をしたオメガのノエルが、ヴィンセントと結婚して幸せになる話です。 J.GARDEN58にて本編+書き下ろしで頒布する予定です。 詳しくは後日、活動報告またはXにてご告知します。

王太子殿下は命の恩人を離したくない

まんまる
BL
セネシス王国の第一王子レイヴィンは、10歳になった時、父王から側近候補のエース公爵家のオリバー、スペット侯爵家の コルトン、そしてガナー伯爵家のサランを紹介される。 4人は親睦を深める中、自分達だけで街に遊びに行く計画を立て、実行した。 楽しい一日を過ごすうち、四人はかけがけのない親友になる。 しかし、王城へ帰ろうかという時、レイヴィンを狙った暴漢に襲われてしまう。 その時、レイヴィンを庇って犠牲になったのは、かけがえのない親友だった。 成長したレイヴィンは、事件の前と変わらない態度で接してくれる友への切ない気持ちが、罪の意識からなのか恋なのか分からず戸惑う。 二人が自分の気持ちに気付いた時、一度分かたれた人生がもう一度交わる。 受けに負い目がある王太子レイヴィン(α)×傷を負った伯爵令息サラン(Ω) 短いお話の予定です オメガバースは話の流れで触れる程度です Rは15程度ですが※付けます ※画像は男の子メーカーpicrewさんよりお借りしました。 Xアカウント(@wawawa_o_o_)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。