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1巻
1-2
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この世界では、ゴブリンやオークは基本的に人種の一つとして考えられていた。といっても、奴隷人種とか、そんな認識である。
悪さをしなければ放っておかれるが、ときには奴隷狩りにあったりするのだ。
とはいえ、彼らは人間よりも力が強く、体も丈夫だ。ゴブリンにしてもオークにしても、その皮膚は新米の騎士であれば剣が通らないほど硬い。
そ
んな彼らをぼっこぼこに殴り倒した少女は、大方の予想どおり日本人であった。
「なんか日課のランニングしてたら、いつの間にか山にいたんすよ! それからこの村に降りて来て、おじちゃんとおばちゃんにごはん食べさせてもらってたら、突然この人達が襲って来たんす!」
ハンスの「『にほんじん』か」という問いに、少女は「そうっす!」と元気良く答える。当たって欲しくなかったハンスの予想は、見事に的中した。
街には、すでに二人の日本人が迷い込んでいる。
一人は魔獣使いのケンイチ。もう一人は、回復魔法を自在に使いこなすキョウジだ。
二人とも何ヵ月もこの世界で暮らしており、すでに生活の基盤を築き上げていた。
どちらも突然山の中から現れ、厄介事を解決したり巻き起こしたりしているところを、ハンスに発見されている。そんな経験から、ハンスの中では「山から出て来た変な奴=『にほんじん』」という方程式が完成していた。
とにかく日本人のことは日本人にということで、ハンスはケンイチが手懐けた魔鳥と呼ばれる鳥を使い、ケンイチとキョウジを呼び寄せた。
魔獣使いであるケンイチは、巨大な狼を馬代わりに使っているので移動速度が速い。こっちから行くよりも、呼んだ方が速かったりするのだ。
「おお? いまどき赤ジャージか? 気合入ってんな」
狼型魔獣の背から降りたケンイチは、少女の服装を見て驚いたように声を上げた。
「僕の学校のジャージは真っ青でしたよ」
「おおう。それはそれで気合満点だな」
「ああ! お二人は日本の方なんっすね!」
二人は少女に、とりあえずここが異世界であることを説明した。自分がぼこぼこにした相手を見ればわかるだろう、と。ちなみに、ゴブリンとオーク達は、縄で柱などに縛られていた。
「確かにあんなビジュアルの人達、オカルト特番でしか見たことないっす! 自分、一瞬アマゾンの謎の生物軍団に襲われたのかと思ったっす!」
「まあ。絶対にいないとも言い切れないかもしれないですけど……でも、なんにしても、こんなにわらわらはいないはずですよね?」
「そうっすよね! うちの裏山でも見たことないっす!」
ミナギシ・ミツバと名乗った少女は、激しく首を縦に振った。
どうやら、ここが自分の暮らしていた国ではないと理解してくれたらしい。ケンイチとキョウジが跨って来た三メートルを超える狼を見れば、納得もできるだろう。
「ミツバの出身ってどこなん?」
「島根っす! 日本一どこにあるかわからない県っす! でも鳥取には負けないっす!」
「おー。マジか。ガンバレな」
「うっすっ!」
「頑張るようなものなんですか?」
首を傾げるキョウジを、ケンイチとミツバはキッと睨みつける。
「キョウジ、おめぇー東京だからわっかんねぇーんだよ」
「地方自治体の戦いは苛烈っす!!」
「そ、そうなんだ……よくわかんないけど」
ハンスは、ひとまず日本出身組でしばらく話をさせることにした。
どことも知れない場所であろうとも、同郷の人間がいれば多少は安心するものだ。
それぞれの緊張が解けるまで、ハンスは彼らを放っておく。
「特産品もそんなにないし、目立つようなこともそんなにないっ! その上あんまり知名度もないっす! 島根の怒りは有頂天っすよ!」
「そうだそうだ! てめぇーら、もっと生なキャラメルかえっつの!!」
何を言っているのか良くわからなかったが、どうやらお国自慢になってきてるっぽかったので、ハンスはぼちぼち止めに入る。気絶していたゴブリンやオークが目を覚まし始めたからだ。
「それで、そろそろゴブリンとオークが攻めて来たときのことを聞きたいんだが」
「うっす! 自分、おじちゃんとおばちゃんに貰ったパンを食べてたんす! そしたらこの人達が、山から雄叫びを上げて駆け下りて来たんすよ! これはやばいなと思ったら、もう体が動いてたっす!」
「うん。女の子だからとか男だからとか抜きにして、今度から後先考えずに突っ込むのは止めようね、危ないから」
「うっす! 次からきちんと防具を着ていくっす!」
「ちがうっ! しかし、よくゴブリンとオークに襲われて無事だったな。彼らも武器を持ってただろうに」
「え? 持ってなかったっすよ?」
「んん?」
ゴブリンやオークは、武器を扱う器用さを持った種族だ。武器もなしに村を襲撃するとは考えにくい。村人にも事情を聞いてみたのだが、これも妙な内容であった。山から突然ゴブリンとオークが雄叫びを上げてやって来たのだが、次の瞬間にはミツバが殴り倒していたというのだ。
ハンスの頭を、嫌な予感がよぎる。
いくら彼らが集団とはいえ、武器も持たずにやって来ることは、まず有り得ない。どのぐらい有り得ないかと言えば、たった一人素手で銀行強盗をするぐらいのものだ。
ちなみに、この世界にも銀行はあったりする。もちろん、ハンスが守るこの辺境の街には銀行など支店すらないわけだが。
とりあえず、比較的意識がはっきりしていそうなゴブリンを選び、事情を聞き出す。朦朧とした様子でありながらも、そのゴブリンは何とか口を開いた。
その内容は、次のようなものである。
彼らは、「スカベンジャー」と呼ばれる者達であった。
狼などが倒した獲物の残りを失敬する、専門の群だ。
彼らがそういう生き方しかできないのは、皆怪我や病のせいで、元の群からはぐれた者達だからだ。健康な体ではないため、狩りを行えなかったのである。そのため仕方なく、食べ残った獲物を漁って生き残って来たという。
しかし、最近ではそれもできなくなってしまっていた。放置される獲物が減ってしまったのだ。理由はわからないが、有力な魔獣の群れが森からいなくなってしまったらしい。
それは、彼らの群にとって食べ物が手に入らなくなったに等しく、来る日も来る日も食べ物にありつけない日が続いた。
ほかの群を頼ったとしても、彼らは彼らで食うことに必死だ。よそに渡すほど食料などない。
今までは何とか木の実やキノコで食いつないで来たが、それも限界だった。そこで、人里に下り、食べ物を分けてもらえないか相談してみることにしたのである。
彼らゴブリンとオークは、人間に見つかれば奴隷にされてしまうかもしれない種族だ。襲うつもりになれば、食べ物の強奪も可能だろう。しかし、それは一時しのぎにすぎない。討伐隊でも組まれれば、あっという間に殺されてしまう。
もしかしたらそのまま捕まり、奴隷として売られてしまう危険もある。ゴブリンやオークとは、多くの人間にとってそういう対象なのだ。
そこで、全員で一斉に村に入ることにしたという。数さえ多ければ、どうにかなると考えたわけだ。ついでに、勢いをつけるための雄叫びも上げてみた。
「そしたら、いきなりそこの娘さんに殴りかかられたんです。俺達もすぐに、あ、これは襲撃とかに間違われたな、って思ったんですけど、すぐにわかってもらえると」
「そうそう。俺達、武器持ってないですし。丸腰ですし」
「でも、言い訳する隙もないぐらいの勢いで、その娘さんに俺達殴り倒されて……」
「一番体が大きいオークのゴナックさんがパンチ一発で宙を舞ったとき、ああ……、俺達殺されるんだ……と思いました」
むせび泣きながら、そう話すゴブリンとオーク達。
彼らの言葉を否定する要素は、ないと言っていいだろう。本人達の言葉どおり、彼らの体には古傷があったり、病気でやせ細っているように見える。ハンス自身、そういう者達が存在するのを知っていた。
むしろ被害者といった風情のゴブリンとオーク達を前に、街の衆とハンス、日本出身者達はなんとも言えない空気に包まれた。群のリーダーらしきゴブリンが、必死の表情で命乞いをする。
「奴隷にされても、売り飛ばされても何でも構いませんっ! ですが、命だけは! 命だけはどうかお許しをっ!」
頭を地面にこすり付けるようにしながら、半ば叫ぶように懇願するリーダーらしきゴブリン。そんな姿を見て、少女は硬い表情のままゆっくりと彼らの前に出た。そして――。
「す、すんませんしたーっ!!」
勢い良く地面に頭を叩き付けた。凄まじいまでに美しい、ジャンピング土下座であったという。
その後、ゴブリン達がおこぼれを失敬していたのは、何とケンイチが掌握した狼魔獣の群だと判明した。
ケンイチは群が狩った肉を放置しているのを目撃し、「残すのは良くない」と完食の指示をしていたのだという。そうすることにより、狩りに割く時間を短縮し、牧場の手伝いをもっとさせるという目的もあったのだとか。
ケンイチ自身、まさかこんな事態を招くとは思わなかったと、ゴブリン達に深く謝罪した。
そして、お詫びの印にと、彼らを農場で住み込みで雇うことにしたのだ。
ケンイチの農場では、魔獣の管理や移動を狼魔獣に任せていた。だが、狼魔獣達にはできないことも多い。ゴブリン達はそういった仕事――商品の出荷や配達、出産の手伝いや毛刈り、乳搾りなど――をすることになった。これにより、彼らは食い扶持と寝床、そして仕事を手に入れたのである。
ゴブリン達の体を蝕んでいた病や怪我も、すっかり癒されていた。キョウジの回復魔法は、古傷だろうが、こじらせた病だろうが関係なく一発で完治させてしまうのだ。
衣食住だけでなく、傷や病まで。ゴブリン達は、ケンイチとキョウジにとても感謝した。だが、二人にしてみれば、当たり前の行動だった。ケンイチにしてみれば借りを返しただけだし、キョウジにしてみれば役目を果たしたにすぎない。
彼らが仕事を手伝ってくれるようになり、牧場は今までよりもずっと大きくなっていた。
今までケンイチとキョウジだけだった働き手が、一気に増えたからだ。魔獣の数を増やし、供給量もグンと増えた。
それでも、肉や乳、卵は、まだまだ供給量不足だ。働き手が増えるのは、もろ手を上げて喜ぶべきことなのである。
喜ぶゴブリン達を眺めるケンイチとキョウジの頭の中には、共通する価値観があった。
困っている人を助けるのは当たり前。
この世界に来てすぐ、自分達が助けてもらったように、誰かが困っていたら手を差し伸べるのが当然だと思っているのだ。二人にしてみれば、当たり前のことをしただけなのである。
とはいえ、それが行われないのが、世の中だ。二人のこの感覚は、日本人特有のモノと言えるのかもしれない。
ゴブリン達は職場も寝床も見つけ、万々歳であったわけだが、問題はミツバである。
凄まじい腕力を発揮した、彼女のステータスには「超身体能力」とあったという。
コレのお蔭で、ミツバはゴブリン達を殴り倒せたのだそうだ。
ハンスは思わず「『にほんじん』というのは恐ろしい力を持った種族だ」と呟いた。それに対し、キョウジは半笑いを浮かべる。キョウジによると、彼らの能力は元々持ち合わせていたものではないらしい。おそらく、異世界に飛ばされたことと関係していると推測されるのだとか。
なんにしても、ミツバは本人の気性も相まって、いつ爆発するとも知れない爆弾娘と化している。
こんな少女をそこらへんの農村に預けていては、どんな惨事が起こるかわからない。
かといって、一応男所帯であるケンイチの牧場に住まわせるのもはばかられる。
結局、ミツバはハンスが預かることとなった。寝泊まりは、ハンスが使っているのと同じ宿屋だ。立場としては、ハンスの従者、という形に落ち着いた。
本来、ハンスのような騎士は、現地で誰かしら人を雇うことを推奨されている。今までそれをしなかったのは、ハンスがバリバリ仕事をこなしていたからだ。本来なら数人がかりで取りかかるはずの仕事を、ハンスはたった一人で片付けて来たのである。その仕事の中には、大工の手伝いや、側溝の掃除なども含まれていた。
とても騎士の仕事とは思えないが、地方騎士の公務員的な側面を考えれば仕方がないだろう。こんな田舎では、あまり地位に意味はないのだ。住人達の認識では、いざというとき頼りになる肉体労働担当、程度なのである。
とはいえ、ハンスにだって肉体労働以外の仕事がある。力仕事をミツバが代わりにやれば、その分ハンスはほかの仕事ができるのだ。ミツバは自分の力を活かせ、ハンスは書類仕事に集中できる。まさに、どちらも得をする関係と言えるだろう。
一ヵ月ほど経つと、ミツバは街の人間に信頼されるようになっていった。
生まれついての人懐こい性格もあってか、あっという間に街に馴染んだ。始めはハンスの従者としてだけ扱われていたのが、いつの間にか名指しで仕事を頼まれる機会も増えていた。
道を歩けば声をかけられたり、街中の人と挨拶を交わすようになっていたのだ。
子供達と遊んだり、八百屋のおばちゃんに果物を分けてもらったり、荷物を運んでいるじいちゃんを手伝ったり。まるでずっとこの街で暮らしていたかのように、街に溶け込んでいったのである。
しかしそんな穏やかな生活の中で、ミツバの中にある疑問が生まれていた。
それはいつまでたっても解消されず、日に日に大きくなっていく。ついにそれを抑えきれなくなったミツバは、ハンスに詰め寄った。
「ハンス団長! なんでうちの騎士団にはかっこいい名前がないんすかっ!!」
「あんまり大声出すな。あと俺は団長じゃないし、うちは騎士団でもない。ただの地方駐在所だ」
そう――。
ミツバの疑問とは、何故街の騎士団に名前がないのか、であった。
街や農村に暮らす人々は、みなハンスのことを「駐在さん」や「騎士さん」「ハンスさん」などと呼んでいる。ハンスは騎士であり、彼のもっとも重要な仕事は街や農村を守ることのはずだ。
ミツバの中では、騎士は騎士団に所属しているものという認識であった。ハンスも騎士なわけだから、騎士団に所属していないのはおかしい。にもかかわらず、騎士団そのものが存在していないとは。
ちなみに、騎士団の定義は国ごとに違い、他国には自警団というほどの練度しかない騎士団も存在する。だがハンスの住む国では、騎士とは魔法と剣を同時に使いこなすとか、剣一本でドラゴンを退治したとか、そういった単騎で高い戦闘能力を持つ人間に贈られる称号を表す。
そんな騎士達を集めた特殊部隊が、この国における騎士団なのである。ハンスはそのことを説明すればよかったのだが、残念ながら彼は自分の知る騎士団以外の騎士団を想像できなかった。
ハンスに言わせれば、「こんな貧相な騎士団があるか」といったところだろう。
だが、ミツバの感覚から言えば、騎士団というのは騎士がいて街やそこで暮らす人々を守っていれば、それだけで名乗れるものなのだ。
ミツバには何故ハンスが騎士団を名乗らないのか、どうしてもわからなかった。
何度もしつこく騎士団と名乗ろう、と提案するミツバだったが、ハンスは全く聞き入れてくれない。ハンスから見れば、ミツバは騎士団に憧れる子供のように映っていた。
あまりの相手にされないっぷりに頭に来たミツバは、悩んだ末、知り合い達に相談することにしした。
彼女がハンス以外で頼りにしているのは、同じ故郷のケンイチとキョウジの二人だ。
そんな訳で、「第一回日本出身者会議」が開かれることとなったのである。
会議が始まってすぐ、ミツバとこの国の騎士団観の違いを、キョウジが説明してくれた。
治療師として様々なところを回るうち、彼はこの国や世界の知識を蓄えていたのだ。
「まあ、そんな感じですから。ハンスさんの考える騎士団っていうのは、言ってみれば超人の集まった特殊部隊みたいなものなんだよ」
「確かにこの街にはにつかわしくないっす!」
キョウジの説明に、ミツバは納得したように頷く。
「それに、ハンスさんの場合、家の事情もあるしね」
「家の事情? ハンスさんって貧乏貴族とかじゃねぇーの?」
「それっぽいっす!」
「どういう認識なんですか二人して……」
苦笑しながら、キョウジはハンスの過去についての話を始めた。
ハンスの実家であるスエラー公爵家は、この国でもっとも有力な貴族だ。広大な領地を持ち、王城で働く文官も多く輩出している名門なのだという。王族に妃として嫁いだものもいて、その地位は磐石なものであるのだとか。
その大貴族の家に生まれたハンスは、当主の五男坊であった。従って、家を継ぐことがまずない立場だ。それ故、彼に求められたのは、武人として活躍し家名を上げることだった。
政治家としては大きな権力を誇っていたスエラー公爵家も、軍部への影響力は未だに低い。そこで、ハンスのような家督を継がない男子を送り込み、軍部への発言力を伸ばそうとしたのだ。
そのために幼い頃より剣術や武術を叩き込まれて来たハンスは、みるみるうちに戦果を重ね出世していった。やがて一騎当千の実力者を示す騎士の称号を得、ついにはそれらを束ねる騎士団の団長にまで上り詰めたのである。
その頃についた二つ名が、「魔術師殺し」というものだ。
何人もの魔術師を、たった一人で鎮圧して来た実績から付けられたその異名は、未だに国中の騎士の間では語り草になっている。
「ハンス団長、本当に騎士団の団長だったんすか! すごいっす! 魔術師殺しってカッコいいっす! 流石っす! メイン騎士きたっす! これでかつるっす!」
「勝てないよ……」
「しかし、なんでそんなすげぇ人がコンなド田舎にいんだ?」
妙な会話をしているキョウジとミツバをよそに、ケンイチは不思議そうに首を傾げる。キョウジは腕を組むと、言いづらそうに口を開いた。
「言ってしまえば、活躍しすぎたってことですかね」
「ああん?」
「どういうことっすか?」
不思議そうな顔をするケンイチとミツバに、キョウジは説明を続ける。
ハンスが騎士団長になってからしばらく経って、この国は隣国との戦争へ突入した。ハンスが率いる騎士団は、その最前線へ送り込まれた。戦果を上げさせようとしたハンスの実家が、そう仕向けたのだ。
当初、ハンスの率いる騎士団は、早々に壊滅すると思われていた。まるで使い潰そうとするかのように、激戦地ばかりへ送り込まれていたからだ。だが、その予想は大きく外れた。
転戦に次ぐ転戦にも拘らず、ハンスの率いる騎士団は生き残った。その上、戦局に影響を与える大きな戦果を挙げていったのだ。
この状況に対し危機感を抱いたのは、ハンスの実家であるスエラー公爵家だった。ハンスの名声が高まり、彼が家を乗っ取ろうとしているのではないかと疑い始めたのである。
当然、ハンスにはそんな考えは一切ない。だが、何事も疑ってかかるのが貴族という生き物だ。スエラー公爵家のハンスへの疑いは、彼の名声が大きくなるたびに強くなっていく。
そこでスエラー家は、ハンスを最後の戦場へ送り込む。軍部に、ハンスが率いる騎士団による、敵本隊への奇襲を提案したのだ。敵の規模を考えれば、作戦の成否に拘らず生還の可能性は極めて低い無謀な作戦である。
周囲が猛反対する中、ハンスはこの作戦を承諾した。ハンスは、自分が実家から厄介者扱いされていると知っていたのだろう。
自ら死地へ赴いたハンスだったが、しかし――。
彼はその戦場から、見事に生還を果たした。しかも、敵総大将の首を取るという大戦果を挙げて。
この一戦がきっかけとなり、戦争は終結に向かう。ハンスはその功績により、国王と謁見する機会を得た。戦争でもっとも大きな武勲を挙げた者は王から願いを聞かれ、それを叶えられるのが通例だった。
スエラー公爵家が戦々恐々とする中、ハンスが願ったこと。それは、地方騎士として、のどかな田舎の風景を除けば、これといって何の面白味もないこの辺境の街へ赴任することだったのである。
「ハンスさんは家督の乗っ取りとか政局とかに、全く興味がなかったんですよ。嫌気が差してたんでしょうね。それで、わざわざこのド辺境の街に来たんだそうです。だから、余計な波風を立てるようなことはしたくないと思いますよ」
キョウジの話を聞き終わったミツバは、あんぐりと口を開けたまま固まっていた。どうやら、相当な衝撃を受けたらしい。
「そ、そんな……ハンス団長にそんな過去があったんすか!」
「ただの気のいいおにーちゃんにしか見えねぇーのになぁ。見かけによらねーわぁ」
「まあ、当人が言わないってことは、あんまりこだわってないのかもしれないけどね」
しきりに感心するケンイチとミツバに、キョウジは苦笑を浮かべる。
「人に歴史ありってやつだぁーなぁー」
「でも、ハンス団長ならわかるっす! この間、護身術の稽古つけてもらったんすけど、自分全然敵わなかったっすもん!」
「ミツバちゃんが!? あんなすごい怪力なのに!?」
「全然手も足も出なかったっす!」
超身体能力を持つミツバが敵わないのは、ハンスがそれ以上に優れた身体能力を備えていたから、というわけではなかった。ひとえに、経験と技術の差だ。
ハンスの持つ技は、そのほとんどが相手の力を利用するものなのである。
柔術や甲冑術と呼ばれる技術がこの世界にも存在していて、ハンスはその使い手なのだ。
「マジか。ハンスさんマジパねぇーな!」
「ほんと、すごいですよね。それでいて、あの面倒見のよさですから。ハンスさんがいなかったら、僕、今頃、治療師なんてできてなかったですし。もともと、ただの学生ですから」
「俺もだなぁ。実家の酪農手伝ってただけだしよぉー。それが今じゃ、一国一城の主だもんなぁ」
キョウジに続いて、ケンイチもしみじみとした口調で言う。
「うっす! 自分も今みたいなことはできなかったっす! 自分、体使うしかできないっすから!」
「そういえばミツバちゃんって、陸上部なんだっけ?」
ミツバは元気良く頷くと、キョウジに向き直る。
「そうっす! 朝自主練で走ってたら、女の子が車道に飛び出して、車にひかれそうになってたんす! 自分は慌てて飛び出して、女の子を突き飛ばしたんすよ!」
「ええ!? 転生パターンなの!?」
「勢いよく突っ込んだせいで自分も道路の反対側に吹っ飛んだから、車にはひかれなかったんすけどね! 危ないところだったっす! それでほっとしてたら、いつの間にか山の中にいたんすよ!」
「紛らわしいっ!」
サブカルチャーに毒されているキョウジには、なかなか掟破りな展開だったらしい。
「まあ、ともかく。ハンスさんは目立つのは嫌がるんじゃないかな。事情が事情だけにね」
「じゃあ、騎士団はよくないっすかね?」
「だろうね。ハンスさんは、ご実家を刺激したくないだろうし。騎士団、なんて名乗ろうものなら、実力行使で家督を奪おうと考えてるんじゃないか、なんてことになりかねないからね」
難しい顔をするミツバに、キョウジは大きく頷いて答える。しばらく考えた後、「でも」と言葉を続けた。
「自警団ぐらいはあってもいいんじゃないかなぁ、とは思うけどね」
「じけーだん? んなもんなくても、ハンスさんがいるんだから、へーきなんじゃねぇーの?」
「それなんですよ。ハンスさん、この辺り一帯一人で警備してるんですよね。それがそもそもおかしいんですよ」
キョウジの言葉に、ケンイチは良くわからないといった様子で首をひねる。隣にいるミツバはなにやらわかったような様子で大きく頷くと、元気良く声を上げた。
「つまり、すごいってことっすね!!」
「いやいや。すごいとかじゃなくてね……。いくらこの辺が田舎街だからって、かなり広い範囲をハンスさん一人で見回りしているから、休む時間もないんですよ」
「んだべなぁ。言われてみりゃ、休んでるとこ見たことねぇぞ」
「うっす! 休みなんて実際ないっす! ここ数ヵ月一日も休まず働いてるっす!」
ケンイチはすでに何ヵ月もこの街に暮らしていて、ミツバは四六時中ハンスと一緒にいる。この二人が休んでいるところを見ていないというのだから、実際休んでいないのだろう。二人の答えを聞き、キョウジは深刻そうな顔を作る。
「僕達が来るずっと前から休んでないらしいんですよね。このままだと、ハンスさん、過労死するんじゃないですかね? いくらミツバちゃんが来て仕事減ったとはいえ」
ケンイチとミツバは、キョウジの言葉に表情を凍りつかせた。
はたして過労死というのは、大げさだろうか。人間は、自分の限界を超えて働き続けることのできる生物だ。そして、その疲労で死んでしまう生物でもある。二人の頭には、日本にいた頃に見た暗いニュースがぐるぐるとまわっていた。
過労の末死亡する従業員や社員。
はびこるブラック企業。
ほくそ笑む雇い側。
一般庶民を見下す官僚。
汚い金にまみれる政治家。
悪化していく地球環境。
後半は全く過労死と関係なかったのだが、二人は同時に同じ結論に達した。
「「た、大変だー!」」
「うをう!」
突然大声を上げたケンイチとミツバに、キョウジは大きくのけぞる。
「ハンスさんが! ハンスさんが死んじゃうっす!!!」
「おい、キョウジ! 過労死防ぐ方法考えろよ!」
「僕!? そんな無茶苦茶な」
「むちゃくちゃもぐちゃぐちゃもねぇー! ハンスさんが死んじまうんだぞ!?」
「そうっす! 考えるのはキョウジさんの仕事っす!」
「なんで!?」
恐ろしい押し付けに遭い、キョウジは眉間に皺を寄せた。
何か言わないと、二人に殴られそうだ。高い身体能力を持つ二人に殴られたら、身体能力は一般人と大差のないキョウジなど指先一つでダウンだろう。
悪さをしなければ放っておかれるが、ときには奴隷狩りにあったりするのだ。
とはいえ、彼らは人間よりも力が強く、体も丈夫だ。ゴブリンにしてもオークにしても、その皮膚は新米の騎士であれば剣が通らないほど硬い。
そ
んな彼らをぼっこぼこに殴り倒した少女は、大方の予想どおり日本人であった。
「なんか日課のランニングしてたら、いつの間にか山にいたんすよ! それからこの村に降りて来て、おじちゃんとおばちゃんにごはん食べさせてもらってたら、突然この人達が襲って来たんす!」
ハンスの「『にほんじん』か」という問いに、少女は「そうっす!」と元気良く答える。当たって欲しくなかったハンスの予想は、見事に的中した。
街には、すでに二人の日本人が迷い込んでいる。
一人は魔獣使いのケンイチ。もう一人は、回復魔法を自在に使いこなすキョウジだ。
二人とも何ヵ月もこの世界で暮らしており、すでに生活の基盤を築き上げていた。
どちらも突然山の中から現れ、厄介事を解決したり巻き起こしたりしているところを、ハンスに発見されている。そんな経験から、ハンスの中では「山から出て来た変な奴=『にほんじん』」という方程式が完成していた。
とにかく日本人のことは日本人にということで、ハンスはケンイチが手懐けた魔鳥と呼ばれる鳥を使い、ケンイチとキョウジを呼び寄せた。
魔獣使いであるケンイチは、巨大な狼を馬代わりに使っているので移動速度が速い。こっちから行くよりも、呼んだ方が速かったりするのだ。
「おお? いまどき赤ジャージか? 気合入ってんな」
狼型魔獣の背から降りたケンイチは、少女の服装を見て驚いたように声を上げた。
「僕の学校のジャージは真っ青でしたよ」
「おおう。それはそれで気合満点だな」
「ああ! お二人は日本の方なんっすね!」
二人は少女に、とりあえずここが異世界であることを説明した。自分がぼこぼこにした相手を見ればわかるだろう、と。ちなみに、ゴブリンとオーク達は、縄で柱などに縛られていた。
「確かにあんなビジュアルの人達、オカルト特番でしか見たことないっす! 自分、一瞬アマゾンの謎の生物軍団に襲われたのかと思ったっす!」
「まあ。絶対にいないとも言い切れないかもしれないですけど……でも、なんにしても、こんなにわらわらはいないはずですよね?」
「そうっすよね! うちの裏山でも見たことないっす!」
ミナギシ・ミツバと名乗った少女は、激しく首を縦に振った。
どうやら、ここが自分の暮らしていた国ではないと理解してくれたらしい。ケンイチとキョウジが跨って来た三メートルを超える狼を見れば、納得もできるだろう。
「ミツバの出身ってどこなん?」
「島根っす! 日本一どこにあるかわからない県っす! でも鳥取には負けないっす!」
「おー。マジか。ガンバレな」
「うっすっ!」
「頑張るようなものなんですか?」
首を傾げるキョウジを、ケンイチとミツバはキッと睨みつける。
「キョウジ、おめぇー東京だからわっかんねぇーんだよ」
「地方自治体の戦いは苛烈っす!!」
「そ、そうなんだ……よくわかんないけど」
ハンスは、ひとまず日本出身組でしばらく話をさせることにした。
どことも知れない場所であろうとも、同郷の人間がいれば多少は安心するものだ。
それぞれの緊張が解けるまで、ハンスは彼らを放っておく。
「特産品もそんなにないし、目立つようなこともそんなにないっ! その上あんまり知名度もないっす! 島根の怒りは有頂天っすよ!」
「そうだそうだ! てめぇーら、もっと生なキャラメルかえっつの!!」
何を言っているのか良くわからなかったが、どうやらお国自慢になってきてるっぽかったので、ハンスはぼちぼち止めに入る。気絶していたゴブリンやオークが目を覚まし始めたからだ。
「それで、そろそろゴブリンとオークが攻めて来たときのことを聞きたいんだが」
「うっす! 自分、おじちゃんとおばちゃんに貰ったパンを食べてたんす! そしたらこの人達が、山から雄叫びを上げて駆け下りて来たんすよ! これはやばいなと思ったら、もう体が動いてたっす!」
「うん。女の子だからとか男だからとか抜きにして、今度から後先考えずに突っ込むのは止めようね、危ないから」
「うっす! 次からきちんと防具を着ていくっす!」
「ちがうっ! しかし、よくゴブリンとオークに襲われて無事だったな。彼らも武器を持ってただろうに」
「え? 持ってなかったっすよ?」
「んん?」
ゴブリンやオークは、武器を扱う器用さを持った種族だ。武器もなしに村を襲撃するとは考えにくい。村人にも事情を聞いてみたのだが、これも妙な内容であった。山から突然ゴブリンとオークが雄叫びを上げてやって来たのだが、次の瞬間にはミツバが殴り倒していたというのだ。
ハンスの頭を、嫌な予感がよぎる。
いくら彼らが集団とはいえ、武器も持たずにやって来ることは、まず有り得ない。どのぐらい有り得ないかと言えば、たった一人素手で銀行強盗をするぐらいのものだ。
ちなみに、この世界にも銀行はあったりする。もちろん、ハンスが守るこの辺境の街には銀行など支店すらないわけだが。
とりあえず、比較的意識がはっきりしていそうなゴブリンを選び、事情を聞き出す。朦朧とした様子でありながらも、そのゴブリンは何とか口を開いた。
その内容は、次のようなものである。
彼らは、「スカベンジャー」と呼ばれる者達であった。
狼などが倒した獲物の残りを失敬する、専門の群だ。
彼らがそういう生き方しかできないのは、皆怪我や病のせいで、元の群からはぐれた者達だからだ。健康な体ではないため、狩りを行えなかったのである。そのため仕方なく、食べ残った獲物を漁って生き残って来たという。
しかし、最近ではそれもできなくなってしまっていた。放置される獲物が減ってしまったのだ。理由はわからないが、有力な魔獣の群れが森からいなくなってしまったらしい。
それは、彼らの群にとって食べ物が手に入らなくなったに等しく、来る日も来る日も食べ物にありつけない日が続いた。
ほかの群を頼ったとしても、彼らは彼らで食うことに必死だ。よそに渡すほど食料などない。
今までは何とか木の実やキノコで食いつないで来たが、それも限界だった。そこで、人里に下り、食べ物を分けてもらえないか相談してみることにしたのである。
彼らゴブリンとオークは、人間に見つかれば奴隷にされてしまうかもしれない種族だ。襲うつもりになれば、食べ物の強奪も可能だろう。しかし、それは一時しのぎにすぎない。討伐隊でも組まれれば、あっという間に殺されてしまう。
もしかしたらそのまま捕まり、奴隷として売られてしまう危険もある。ゴブリンやオークとは、多くの人間にとってそういう対象なのだ。
そこで、全員で一斉に村に入ることにしたという。数さえ多ければ、どうにかなると考えたわけだ。ついでに、勢いをつけるための雄叫びも上げてみた。
「そしたら、いきなりそこの娘さんに殴りかかられたんです。俺達もすぐに、あ、これは襲撃とかに間違われたな、って思ったんですけど、すぐにわかってもらえると」
「そうそう。俺達、武器持ってないですし。丸腰ですし」
「でも、言い訳する隙もないぐらいの勢いで、その娘さんに俺達殴り倒されて……」
「一番体が大きいオークのゴナックさんがパンチ一発で宙を舞ったとき、ああ……、俺達殺されるんだ……と思いました」
むせび泣きながら、そう話すゴブリンとオーク達。
彼らの言葉を否定する要素は、ないと言っていいだろう。本人達の言葉どおり、彼らの体には古傷があったり、病気でやせ細っているように見える。ハンス自身、そういう者達が存在するのを知っていた。
むしろ被害者といった風情のゴブリンとオーク達を前に、街の衆とハンス、日本出身者達はなんとも言えない空気に包まれた。群のリーダーらしきゴブリンが、必死の表情で命乞いをする。
「奴隷にされても、売り飛ばされても何でも構いませんっ! ですが、命だけは! 命だけはどうかお許しをっ!」
頭を地面にこすり付けるようにしながら、半ば叫ぶように懇願するリーダーらしきゴブリン。そんな姿を見て、少女は硬い表情のままゆっくりと彼らの前に出た。そして――。
「す、すんませんしたーっ!!」
勢い良く地面に頭を叩き付けた。凄まじいまでに美しい、ジャンピング土下座であったという。
その後、ゴブリン達がおこぼれを失敬していたのは、何とケンイチが掌握した狼魔獣の群だと判明した。
ケンイチは群が狩った肉を放置しているのを目撃し、「残すのは良くない」と完食の指示をしていたのだという。そうすることにより、狩りに割く時間を短縮し、牧場の手伝いをもっとさせるという目的もあったのだとか。
ケンイチ自身、まさかこんな事態を招くとは思わなかったと、ゴブリン達に深く謝罪した。
そして、お詫びの印にと、彼らを農場で住み込みで雇うことにしたのだ。
ケンイチの農場では、魔獣の管理や移動を狼魔獣に任せていた。だが、狼魔獣達にはできないことも多い。ゴブリン達はそういった仕事――商品の出荷や配達、出産の手伝いや毛刈り、乳搾りなど――をすることになった。これにより、彼らは食い扶持と寝床、そして仕事を手に入れたのである。
ゴブリン達の体を蝕んでいた病や怪我も、すっかり癒されていた。キョウジの回復魔法は、古傷だろうが、こじらせた病だろうが関係なく一発で完治させてしまうのだ。
衣食住だけでなく、傷や病まで。ゴブリン達は、ケンイチとキョウジにとても感謝した。だが、二人にしてみれば、当たり前の行動だった。ケンイチにしてみれば借りを返しただけだし、キョウジにしてみれば役目を果たしたにすぎない。
彼らが仕事を手伝ってくれるようになり、牧場は今までよりもずっと大きくなっていた。
今までケンイチとキョウジだけだった働き手が、一気に増えたからだ。魔獣の数を増やし、供給量もグンと増えた。
それでも、肉や乳、卵は、まだまだ供給量不足だ。働き手が増えるのは、もろ手を上げて喜ぶべきことなのである。
喜ぶゴブリン達を眺めるケンイチとキョウジの頭の中には、共通する価値観があった。
困っている人を助けるのは当たり前。
この世界に来てすぐ、自分達が助けてもらったように、誰かが困っていたら手を差し伸べるのが当然だと思っているのだ。二人にしてみれば、当たり前のことをしただけなのである。
とはいえ、それが行われないのが、世の中だ。二人のこの感覚は、日本人特有のモノと言えるのかもしれない。
ゴブリン達は職場も寝床も見つけ、万々歳であったわけだが、問題はミツバである。
凄まじい腕力を発揮した、彼女のステータスには「超身体能力」とあったという。
コレのお蔭で、ミツバはゴブリン達を殴り倒せたのだそうだ。
ハンスは思わず「『にほんじん』というのは恐ろしい力を持った種族だ」と呟いた。それに対し、キョウジは半笑いを浮かべる。キョウジによると、彼らの能力は元々持ち合わせていたものではないらしい。おそらく、異世界に飛ばされたことと関係していると推測されるのだとか。
なんにしても、ミツバは本人の気性も相まって、いつ爆発するとも知れない爆弾娘と化している。
こんな少女をそこらへんの農村に預けていては、どんな惨事が起こるかわからない。
かといって、一応男所帯であるケンイチの牧場に住まわせるのもはばかられる。
結局、ミツバはハンスが預かることとなった。寝泊まりは、ハンスが使っているのと同じ宿屋だ。立場としては、ハンスの従者、という形に落ち着いた。
本来、ハンスのような騎士は、現地で誰かしら人を雇うことを推奨されている。今までそれをしなかったのは、ハンスがバリバリ仕事をこなしていたからだ。本来なら数人がかりで取りかかるはずの仕事を、ハンスはたった一人で片付けて来たのである。その仕事の中には、大工の手伝いや、側溝の掃除なども含まれていた。
とても騎士の仕事とは思えないが、地方騎士の公務員的な側面を考えれば仕方がないだろう。こんな田舎では、あまり地位に意味はないのだ。住人達の認識では、いざというとき頼りになる肉体労働担当、程度なのである。
とはいえ、ハンスにだって肉体労働以外の仕事がある。力仕事をミツバが代わりにやれば、その分ハンスはほかの仕事ができるのだ。ミツバは自分の力を活かせ、ハンスは書類仕事に集中できる。まさに、どちらも得をする関係と言えるだろう。
一ヵ月ほど経つと、ミツバは街の人間に信頼されるようになっていった。
生まれついての人懐こい性格もあってか、あっという間に街に馴染んだ。始めはハンスの従者としてだけ扱われていたのが、いつの間にか名指しで仕事を頼まれる機会も増えていた。
道を歩けば声をかけられたり、街中の人と挨拶を交わすようになっていたのだ。
子供達と遊んだり、八百屋のおばちゃんに果物を分けてもらったり、荷物を運んでいるじいちゃんを手伝ったり。まるでずっとこの街で暮らしていたかのように、街に溶け込んでいったのである。
しかしそんな穏やかな生活の中で、ミツバの中にある疑問が生まれていた。
それはいつまでたっても解消されず、日に日に大きくなっていく。ついにそれを抑えきれなくなったミツバは、ハンスに詰め寄った。
「ハンス団長! なんでうちの騎士団にはかっこいい名前がないんすかっ!!」
「あんまり大声出すな。あと俺は団長じゃないし、うちは騎士団でもない。ただの地方駐在所だ」
そう――。
ミツバの疑問とは、何故街の騎士団に名前がないのか、であった。
街や農村に暮らす人々は、みなハンスのことを「駐在さん」や「騎士さん」「ハンスさん」などと呼んでいる。ハンスは騎士であり、彼のもっとも重要な仕事は街や農村を守ることのはずだ。
ミツバの中では、騎士は騎士団に所属しているものという認識であった。ハンスも騎士なわけだから、騎士団に所属していないのはおかしい。にもかかわらず、騎士団そのものが存在していないとは。
ちなみに、騎士団の定義は国ごとに違い、他国には自警団というほどの練度しかない騎士団も存在する。だがハンスの住む国では、騎士とは魔法と剣を同時に使いこなすとか、剣一本でドラゴンを退治したとか、そういった単騎で高い戦闘能力を持つ人間に贈られる称号を表す。
そんな騎士達を集めた特殊部隊が、この国における騎士団なのである。ハンスはそのことを説明すればよかったのだが、残念ながら彼は自分の知る騎士団以外の騎士団を想像できなかった。
ハンスに言わせれば、「こんな貧相な騎士団があるか」といったところだろう。
だが、ミツバの感覚から言えば、騎士団というのは騎士がいて街やそこで暮らす人々を守っていれば、それだけで名乗れるものなのだ。
ミツバには何故ハンスが騎士団を名乗らないのか、どうしてもわからなかった。
何度もしつこく騎士団と名乗ろう、と提案するミツバだったが、ハンスは全く聞き入れてくれない。ハンスから見れば、ミツバは騎士団に憧れる子供のように映っていた。
あまりの相手にされないっぷりに頭に来たミツバは、悩んだ末、知り合い達に相談することにしした。
彼女がハンス以外で頼りにしているのは、同じ故郷のケンイチとキョウジの二人だ。
そんな訳で、「第一回日本出身者会議」が開かれることとなったのである。
会議が始まってすぐ、ミツバとこの国の騎士団観の違いを、キョウジが説明してくれた。
治療師として様々なところを回るうち、彼はこの国や世界の知識を蓄えていたのだ。
「まあ、そんな感じですから。ハンスさんの考える騎士団っていうのは、言ってみれば超人の集まった特殊部隊みたいなものなんだよ」
「確かにこの街にはにつかわしくないっす!」
キョウジの説明に、ミツバは納得したように頷く。
「それに、ハンスさんの場合、家の事情もあるしね」
「家の事情? ハンスさんって貧乏貴族とかじゃねぇーの?」
「それっぽいっす!」
「どういう認識なんですか二人して……」
苦笑しながら、キョウジはハンスの過去についての話を始めた。
ハンスの実家であるスエラー公爵家は、この国でもっとも有力な貴族だ。広大な領地を持ち、王城で働く文官も多く輩出している名門なのだという。王族に妃として嫁いだものもいて、その地位は磐石なものであるのだとか。
その大貴族の家に生まれたハンスは、当主の五男坊であった。従って、家を継ぐことがまずない立場だ。それ故、彼に求められたのは、武人として活躍し家名を上げることだった。
政治家としては大きな権力を誇っていたスエラー公爵家も、軍部への影響力は未だに低い。そこで、ハンスのような家督を継がない男子を送り込み、軍部への発言力を伸ばそうとしたのだ。
そのために幼い頃より剣術や武術を叩き込まれて来たハンスは、みるみるうちに戦果を重ね出世していった。やがて一騎当千の実力者を示す騎士の称号を得、ついにはそれらを束ねる騎士団の団長にまで上り詰めたのである。
その頃についた二つ名が、「魔術師殺し」というものだ。
何人もの魔術師を、たった一人で鎮圧して来た実績から付けられたその異名は、未だに国中の騎士の間では語り草になっている。
「ハンス団長、本当に騎士団の団長だったんすか! すごいっす! 魔術師殺しってカッコいいっす! 流石っす! メイン騎士きたっす! これでかつるっす!」
「勝てないよ……」
「しかし、なんでそんなすげぇ人がコンなド田舎にいんだ?」
妙な会話をしているキョウジとミツバをよそに、ケンイチは不思議そうに首を傾げる。キョウジは腕を組むと、言いづらそうに口を開いた。
「言ってしまえば、活躍しすぎたってことですかね」
「ああん?」
「どういうことっすか?」
不思議そうな顔をするケンイチとミツバに、キョウジは説明を続ける。
ハンスが騎士団長になってからしばらく経って、この国は隣国との戦争へ突入した。ハンスが率いる騎士団は、その最前線へ送り込まれた。戦果を上げさせようとしたハンスの実家が、そう仕向けたのだ。
当初、ハンスの率いる騎士団は、早々に壊滅すると思われていた。まるで使い潰そうとするかのように、激戦地ばかりへ送り込まれていたからだ。だが、その予想は大きく外れた。
転戦に次ぐ転戦にも拘らず、ハンスの率いる騎士団は生き残った。その上、戦局に影響を与える大きな戦果を挙げていったのだ。
この状況に対し危機感を抱いたのは、ハンスの実家であるスエラー公爵家だった。ハンスの名声が高まり、彼が家を乗っ取ろうとしているのではないかと疑い始めたのである。
当然、ハンスにはそんな考えは一切ない。だが、何事も疑ってかかるのが貴族という生き物だ。スエラー公爵家のハンスへの疑いは、彼の名声が大きくなるたびに強くなっていく。
そこでスエラー家は、ハンスを最後の戦場へ送り込む。軍部に、ハンスが率いる騎士団による、敵本隊への奇襲を提案したのだ。敵の規模を考えれば、作戦の成否に拘らず生還の可能性は極めて低い無謀な作戦である。
周囲が猛反対する中、ハンスはこの作戦を承諾した。ハンスは、自分が実家から厄介者扱いされていると知っていたのだろう。
自ら死地へ赴いたハンスだったが、しかし――。
彼はその戦場から、見事に生還を果たした。しかも、敵総大将の首を取るという大戦果を挙げて。
この一戦がきっかけとなり、戦争は終結に向かう。ハンスはその功績により、国王と謁見する機会を得た。戦争でもっとも大きな武勲を挙げた者は王から願いを聞かれ、それを叶えられるのが通例だった。
スエラー公爵家が戦々恐々とする中、ハンスが願ったこと。それは、地方騎士として、のどかな田舎の風景を除けば、これといって何の面白味もないこの辺境の街へ赴任することだったのである。
「ハンスさんは家督の乗っ取りとか政局とかに、全く興味がなかったんですよ。嫌気が差してたんでしょうね。それで、わざわざこのド辺境の街に来たんだそうです。だから、余計な波風を立てるようなことはしたくないと思いますよ」
キョウジの話を聞き終わったミツバは、あんぐりと口を開けたまま固まっていた。どうやら、相当な衝撃を受けたらしい。
「そ、そんな……ハンス団長にそんな過去があったんすか!」
「ただの気のいいおにーちゃんにしか見えねぇーのになぁ。見かけによらねーわぁ」
「まあ、当人が言わないってことは、あんまりこだわってないのかもしれないけどね」
しきりに感心するケンイチとミツバに、キョウジは苦笑を浮かべる。
「人に歴史ありってやつだぁーなぁー」
「でも、ハンス団長ならわかるっす! この間、護身術の稽古つけてもらったんすけど、自分全然敵わなかったっすもん!」
「ミツバちゃんが!? あんなすごい怪力なのに!?」
「全然手も足も出なかったっす!」
超身体能力を持つミツバが敵わないのは、ハンスがそれ以上に優れた身体能力を備えていたから、というわけではなかった。ひとえに、経験と技術の差だ。
ハンスの持つ技は、そのほとんどが相手の力を利用するものなのである。
柔術や甲冑術と呼ばれる技術がこの世界にも存在していて、ハンスはその使い手なのだ。
「マジか。ハンスさんマジパねぇーな!」
「ほんと、すごいですよね。それでいて、あの面倒見のよさですから。ハンスさんがいなかったら、僕、今頃、治療師なんてできてなかったですし。もともと、ただの学生ですから」
「俺もだなぁ。実家の酪農手伝ってただけだしよぉー。それが今じゃ、一国一城の主だもんなぁ」
キョウジに続いて、ケンイチもしみじみとした口調で言う。
「うっす! 自分も今みたいなことはできなかったっす! 自分、体使うしかできないっすから!」
「そういえばミツバちゃんって、陸上部なんだっけ?」
ミツバは元気良く頷くと、キョウジに向き直る。
「そうっす! 朝自主練で走ってたら、女の子が車道に飛び出して、車にひかれそうになってたんす! 自分は慌てて飛び出して、女の子を突き飛ばしたんすよ!」
「ええ!? 転生パターンなの!?」
「勢いよく突っ込んだせいで自分も道路の反対側に吹っ飛んだから、車にはひかれなかったんすけどね! 危ないところだったっす! それでほっとしてたら、いつの間にか山の中にいたんすよ!」
「紛らわしいっ!」
サブカルチャーに毒されているキョウジには、なかなか掟破りな展開だったらしい。
「まあ、ともかく。ハンスさんは目立つのは嫌がるんじゃないかな。事情が事情だけにね」
「じゃあ、騎士団はよくないっすかね?」
「だろうね。ハンスさんは、ご実家を刺激したくないだろうし。騎士団、なんて名乗ろうものなら、実力行使で家督を奪おうと考えてるんじゃないか、なんてことになりかねないからね」
難しい顔をするミツバに、キョウジは大きく頷いて答える。しばらく考えた後、「でも」と言葉を続けた。
「自警団ぐらいはあってもいいんじゃないかなぁ、とは思うけどね」
「じけーだん? んなもんなくても、ハンスさんがいるんだから、へーきなんじゃねぇーの?」
「それなんですよ。ハンスさん、この辺り一帯一人で警備してるんですよね。それがそもそもおかしいんですよ」
キョウジの言葉に、ケンイチは良くわからないといった様子で首をひねる。隣にいるミツバはなにやらわかったような様子で大きく頷くと、元気良く声を上げた。
「つまり、すごいってことっすね!!」
「いやいや。すごいとかじゃなくてね……。いくらこの辺が田舎街だからって、かなり広い範囲をハンスさん一人で見回りしているから、休む時間もないんですよ」
「んだべなぁ。言われてみりゃ、休んでるとこ見たことねぇぞ」
「うっす! 休みなんて実際ないっす! ここ数ヵ月一日も休まず働いてるっす!」
ケンイチはすでに何ヵ月もこの街に暮らしていて、ミツバは四六時中ハンスと一緒にいる。この二人が休んでいるところを見ていないというのだから、実際休んでいないのだろう。二人の答えを聞き、キョウジは深刻そうな顔を作る。
「僕達が来るずっと前から休んでないらしいんですよね。このままだと、ハンスさん、過労死するんじゃないですかね? いくらミツバちゃんが来て仕事減ったとはいえ」
ケンイチとミツバは、キョウジの言葉に表情を凍りつかせた。
はたして過労死というのは、大げさだろうか。人間は、自分の限界を超えて働き続けることのできる生物だ。そして、その疲労で死んでしまう生物でもある。二人の頭には、日本にいた頃に見た暗いニュースがぐるぐるとまわっていた。
過労の末死亡する従業員や社員。
はびこるブラック企業。
ほくそ笑む雇い側。
一般庶民を見下す官僚。
汚い金にまみれる政治家。
悪化していく地球環境。
後半は全く過労死と関係なかったのだが、二人は同時に同じ結論に達した。
「「た、大変だー!」」
「うをう!」
突然大声を上げたケンイチとミツバに、キョウジは大きくのけぞる。
「ハンスさんが! ハンスさんが死んじゃうっす!!!」
「おい、キョウジ! 過労死防ぐ方法考えろよ!」
「僕!? そんな無茶苦茶な」
「むちゃくちゃもぐちゃぐちゃもねぇー! ハンスさんが死んじまうんだぞ!?」
「そうっす! 考えるのはキョウジさんの仕事っす!」
「なんで!?」
恐ろしい押し付けに遭い、キョウジは眉間に皺を寄せた。
何か言わないと、二人に殴られそうだ。高い身体能力を持つ二人に殴られたら、身体能力は一般人と大差のないキョウジなど指先一つでダウンだろう。
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