翼のない竜-土竜の話-

12時のトキノカネ

文字の大きさ
24 / 36

23 □

しおりを挟む
.


眠ってしまった。
自分がいるのにあっさりと眠ってしまった土竜にダガーは内心無防備ではないのかと呆れる。竜とはこんなものなのか。
他の竜を知らないためダガーには答えようがないが、これでは簡単に罠や騙されるのではないかと他人事ながら老婆心が湧く。
この世界はそれほどやさしくはない。人間は騙しや策略で相手を用意に貶める。
ダガー自身、一般人より危険の多い場所に生きてきたため警戒する気持ちは人より多い。誰も信ずるなとは言わない。だが会ったばかりの日数もたたない人間をダガーは信用しない。例え相手が力の上では格下だろうが油断は時として大きな代償となる。それを知ってるダガーは人前で簡単に寝ない。

竜が本当に眠っているのか確認するため、二つあるベットの竜の眠るベットへと近づく。寝息が聞こえ、確かに眠っていることを確認する。心拍数も落ち着いている。

『本当に眠っている』

竜だからか。
絶対の力を有する竜だからの油断か。それとも疑うことをしない竜という神獣だからか。神獣なら人の心を読み、用意に相手の心根を読むのかもしれない。
だから無防備でいられるのか。そこまでは憶測でしかない。
なにせ竜は未知なる生き物。その頂点だ。他のモンスターと違い高度な知性。恐ろしいほどの魔力は神の使いとまで言われるほど莫大で、国一国でも押さえきれないほど彼らは単体で強い。普通の感覚があればまず襲うとは発想しないし、敵に回らない。しかし、そうは言っても竜の魅力はそれを勝るもので竜の体全部はどんな秘薬をも超える効用があるとされるつまり全身が伝説のエクサリーか武器素材のようなもの。少しでもそれを奪ってやろうと考えるものもいないでもなく。過去にはそれで竜との戦争もあったと記されている。

この普通に見える少年はその竜の、しかも見ることもその存在さえ提唱されてきただけのいるかも分からないとされた土竜なのだろう。
それにしては自分と同じくらいの年の普通の市民の青年にしか見えない。
体格も平凡、容姿も一般の枠を出ず、言葉遣いも軽い。
どこにも創造する中の竜らしさに当てはまらない。

「しかし、それでも俺には好都合だが…。」

ダガーは犯罪を犯したお尋ねものではないがそれ以上に身元が分かればヤバイ状況にいる人間だ。本人も自覚しているから顔を隠している。

そして確実におっては放たれている。並みの兵士や冒険者に遅れをとるようなこともない。国で数人というS級以上の冒険者とでも単独ならやりあえる自信がある。しかし、そこまでだ。世の中には上には上がいる。

人外の強さ、人を超えた存在。例えばその筆頭に上がるのはここの領主だ。
あれにダガーは立ち向かえる自信がない。
それをこの少年は純粋な竜から見れば足元にも及ばないと断言した。
しかし、それは早計にも思える。この少年は本当にこちらの人間社会を知らないのだろう。そしてその中にいる竜がどういうものか。
そうとしか思えない。血の薄まりで竜化できないとテグリスは予測をつけているようだが、彼の竜にそれは間違いだ。赤竜は竜化できる。それは間違いなくこの街に長く住んでいればその御姿と地上に落とす影を見ることができるだろう。

あれを敵に回して戦わねばならなくなったとしたら?

その時、ダガーの前でだらしのない顔で緩みきった寝顔で眠る竜の存在は何よりも心強いものに違いない。
最悪、殺されることも覚悟で古巣を抜け出したが何もダガーは無駄に自分の命を捨てたいわけではない。できるならば、生きたい。生きて自分の自由に生きてみたいのだ。

「貴方は神がくれた希望となりえるか…。」

未来は分からない。ダガーはしばらく竜だという少年を見下ろした後、宿の部屋の窓際へと居場所を移し街並みを見下ろしていた。

その目には一時も緩みはなく街行く人々を慎重に見分けていた。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄上等!私を愛さないあなたなんて要りません

音無砂月
ファンタジー
*幸せは婚約破棄の後にやってくるからタイトル変更 *ジャンルを変更しました。 公爵家長女エマ。15歳の時に母を亡くした。貴族は一年喪に服さないといけない。喪が明けた日、父が愛人と娘を連れてやって来た。新しい母親は平民。一緒に連れて来た子供は一歳違いの妹。名前はマリアナ。 マリアナは可愛く、素直でいい子。すぐに邸に溶け込み、誰もに愛されていた。エマの婚約者であるカールすらも。 誰からも愛され、素直ないい子であるマリアナがエマは気に入らなかった。 家族さえもマリアナを優先する。 マリアナの悪意のない言動がエマの心を深く抉る

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

巻き込まれ異世界召喚、なぜか俺だけ竜皇女の推しになった

ノラクラ
ファンタジー
俺、霧島悠斗は筋金入りの陰キャ高校生。 学校が終わったら即帰宅して、ゲームライフを満喫するのが至福の時間――のはずだった。 だがある日の帰り道、玄関前で学園トップスターたちの修羅場に遭遇してしまう。 暴君・赤城獅童、王子様系イケメン・天条院義孝、清楚系美少女・柊奏、その親友・羽里友莉。 よりによって学園の顔ぶれが勢ぞろいして大口論!? ……陰キャ代表の俺に混ざる理由なんて一ミリもない。見なかったことにしてゲームしに帰りたい! そう願った矢先――空気が変わり、街に巨大な魔法陣が出現。 赤城たちは光に呑まれ、異世界へと召喚されてしまった。 「お~、異世界召喚ね。ラノベあるあるだな」 そう、他人事のように見送った俺だったが……。 直後、俺の足元にも魔法陣が浮かび上がる。 「ちょ、待て待て待て! 俺は陰キャだぞ!? 勇者じゃないんだぞ!?」 ――かくして、ゲームライフを愛する陰キャ高校生の異世界行きが始まる。

召喚物語 - 召喚魔法を極めた村人の成り上がり -

花京院 光
ファンタジー
魔物討伐を生業とする冒険者に憧れる俺は、十五歳の誕生日を迎えた日、一流の冒険者になる事を決意して旅に出た。 旅の最中に「魔物を自在に召喚する力」に目覚めた主人公が、次々と強力な魔物を召喚し、騎士団を作りながら地域を守り続け、最高の冒険者を目指します。 主人公最強、村人の成り上がりファンタジー。 ※小説家になろうにて、990万PV達成しました。 ※以前アルファポリスで投稿していた作品を大幅に加筆修正したものです。

本当の外れスキルのスロー生活物語

転定妙用
ファンタジー
「箱庭環境操作」という外れスキルしかないエバンズ公爵家の長男オズワルドは、跡継ぎの座を追われて、辺境の小さな土地を与えられて・・・。しかし、そのスキルは実は・・・ということも、成り上がれるものでもなく・・・、スローライフすることしかできないものだった。これは、実は屑スキルが最強スキルというものではなく、成り上がるというものでもなく、まあ、一応追放?ということで辺境で、色々なことが降りかかりつつ、何とか本当にスローライフする物語です。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

処理中です...