翼のない竜-土竜の話-

12時のトキノカネ

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「はい、おまち。特大サラダ大盛りねっ」

どかどかっとテグリスとダガーの前に大きなサラダボールが一人5個づつ、計十個なれべられる。それにテグリスが「わー」と目を輝かせる一方、ダガーの目が死ぬ。
夕食に並べられた全てが野菜。全てが草一色。これでは普通の人間は不平を持つだろう。テグリスたちはテグリスが少しの仮眠を取った後、宿屋の一階にある食堂に来ていた。ここは泊り客のほかに一般の客も出入りして夜は酒も出してくれる食堂だった。

「いつもの新鮮野菜だよっ。追加でも受けれるように一杯仕入れといたからね、足りなかったら声かけてよっ!」

気前のよさそうなおばさんがテグリスに話しかける。テグリスも大きく頷いて答える。

「ありがとーおねえさんっ」

ちゃんと配膳してくれたおばさんの要望どおりのおねえさん呼びでお礼を言っている。お腹を空かしていたのだろう、すぐにも食べだしそうな勢いだ。
だが、ダガーのテンションはそれとは違い低い。

「おい、これはなんだ…」

「なにっていつものおまかせサラダだろ?坊やがいつも頼む?」

おばさんが首をかしげてダガーの呟きを拾うが、いつものおまかせサラダなどダガーは知らない。

「うまいぞ、市場の新鮮野菜だ」

「…(草食竜)」

ガッツリ食べ始めた竜にダガーの白い視線が向く。

「あー、これは俺が全部食べるよ。お前は普通の人間だったな。おねえさんわるいけど普通の人用の夕食の定食、俺の連れに出してやって。追加でお願い」

「それは構わないけど。こっちのお兄さんは宗教上サラダしか食べれないベジタリアン?とか言うのじゃないんだね?あんたの連れだから判断できなかったけど、普通の兄さんならすぐにうちの自慢料理持ってくるよっ」

疑うことをしないおばさんは気前のいい笑顔で要望に答えてくれる。
しかし、ダガーは顔に渋面を浮かべたままだ。
普通の人間ってあっさり言った。宗教上サラダしか食べない宗教って何だ?ベジタリアンとは何だ?
いくつかの単語に引っ掛かりを覚えて素直に礼がいえないでいる。
だがあえて突っ込まないでいるダガー。
こんな他にも客が大勢いる食堂で訪ねて良いか配慮しているのだ。

ついでに言うとサラダしか食べない宗教はすべて間抜けな竜のでっちあげで、この世界にも個人で野菜だけという人はいるだろうが一般的ではなく日本で使うベジタリアンという言葉は通じない。普通の人間は配膳してくれるおばさんはサラダしか食べない(偏食しまくりの変人)とは違うと受け取られている。あしからず。

ダガーの前にはすぐにおいしそうな魚料理とパンが並ぶ。
それにダガーはゆっくりと口をつけた。その間にテグリスが食べた空のサラダボールがいくつも並ぶ。

「んー野菜最高っ」

この分ではサラダ10皿では足りないだろう。なんとも食欲を誘わない大食いを見せられてダガーは一人黙々と普通の食事を取った。



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