翼のない竜-土竜の話-

12時のトキノカネ

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26 商人という変態と出会う

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これはなんだ。
ダガーは目の前の光景は悪夢かと思う。しかし彼がいくら目を擦ろうが
現実逃避しようが目の前の光景は消えてはくれない。
悲しいかな現実である。

「だははっはははh…ニュニャンさんおもしれーなー」

「にゃははは、にいさんほどでもないさー」

「「あはははははは」」

どうしてこうなった。頭痛がするダガーだった。
酔っ払いは自分が酔っ払いである自覚がない。はた迷惑なそいつらは麦色のジュースを飲み交わし(ジュースと言い張っている)充血した目で何が楽しいのか笑っている。竜は酒を飲むのか?ああ、異国の八つの頭のあれは竜だったか、どうだった?蛇だったか。じゃ、違うか。うるさい酔っ払いども俺の崇高な思考を妨げるんじゃない。いつの間にか食堂は二人だけではなく冒険者の大酒の飲み達が飲み明かすうるさい酒場と化していた。がやがやとどこもかしこもうるさい。大声でないと傍のものにしか会話が届かない。

「なーなーなーこのニュニャンさん面白いなー、ダガー」

「楽しい酒は上手いですなー」

ニュニャンじゃない、最初の自己紹介の時はユナンと言っていただろう。舌が回らぬ酔っ払いが俺に話を振るなっ。

「酒もその辺にしておけ。テグリス」

ジョッキを取り上げようとするとすかさず避ける。
酔っていても自分よりすばやい動きのテグリスにダガーが内心歯軋りする。

「お酒飲んだっていいだろー。何で取り上げよーとするわけ?俺、未成年じゃないよー、前世の年齢足せばちゃんと成人してるんだから、だいじょーぶ。お酒の飲み方は知ってるよー。心配すんなー。それに俺は竜だからお酒なんぞで酔わないのだ。ニャハハハハ」

「なにむっつりしてるのこちらのにーさんは?むっつり?あは、むっつりなのにーさん。あははは」

「むっつりー。ダガー。」

「ちがうっ!!」

思わず酔っ払いに本気で怒ってしまう。二人がきょとりと面食らったように静かになる。

「え、ちがうの?…じゃ、ほんとにただのモテ男?ムカつくだけなんですけど。人生やり直したら?」

そういうユナンも整った顔をしている。

「その顔なんだから女にモテない難点の一つくらいマジで持っとけよ。ダガー。マジ殴るぞ」

怒ったダガーに引いたのではない。勝手な言い分で怒り出したのだ。始末に悪い。
笑い上戸からいっぺん、意味不な説教モード+やっかみモード。言ってることは道理に合わない酷さ。

ダガーも思わず自分の前に置かれた麦色のジュースが入ったジョッキをごくりと喉に流し込む。そうでもしなきゃやってられん。

「そう言えばテグちゃん、竜なの?」

急に声を潜めたユナンがテグリスの耳元で質問する。酔っ払いの話題がすぐにころりと変わることなど良くあることだ。
ダガーには飽きたらしい。

「んー、りゅうぅ?わかんないー」

「今さっき自分で言ったでしょ」

「忘れたー」

「いや言ったでしょ。今」

「なんだお。竜ならなんだってーのー?喧嘩上等、表でる?やる?」

「俺の商売の相手になってほしーの。どうよ」

「商売の相手?」

ぐびぐびビールを飲むテグリスに変わってダガーが口を挟む。随分と酔っ払っていたと思ったユナンは先ほどまでのへべれけ具合とは違ってさほど酔っていない顔をしている。酔っていたのはさては演技か。

「おまえ、実はザルだろ」

テグリスがユナンの両頬を掴んで唸った。
それをユナンがさりげなくはずして咳払いをする。


「おれ、こう見えて凄腕の商人なの。で、ものは相談なんだけど、テグリス君、君の糞がほしいの。売ってくれない?」

「「………」」

ユナンの言葉に聞いていた二人が固まる。

「変体?」
「変態だ。漢字が間違っている」

どやら随分と酔ってしまっていたようだ。くらくらする頭で理解する。
なんだか耳も悪くなって変な言葉も聴いてしまうくらい。

「ダガー俺もう寝るわ」

「そうだな」

席を立ち上がった二人は御代を置いて立ち上がる。

「あ、なに、部屋に戻るなら俺も一緒にいい?」

何か喚いている物体がいるが、そういえば他人だった。見えないものとして無視をしよう。

「無視するんだ。いいよ、勝手について言っちゃうんだから。おれねー、かぎあけとかそういうのも得意。部屋にもぐりこむから」

小声で何か言ってるけど、関わっちゃだめだ。

「ねみー」

いったん眠ると決めたら一挙に眠りたいという欲求が湧き出してきた。
襲い繰る眠気に、どうにかベッドまでたどり着き。

「「ぐー」」

数秒で眠りについた。




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