上 下
15 / 86

15

しおりを挟む
 ……まぶたの裏が明るい

 鳥のさえずりが聞こえる。

「ふぁー。朝か。」

 既に外は明るい。朝の6時くらいだろうか。

(そういえば、この世界の1日は何時間なんだろうか? 後でエミルさんに聞いてみるか! 体感的には地球とそう変わらないように感じるんだけど……。)

 夫妻がまだ寝ている可能性もあるため、そっと部屋を出る。
 キッチンのほうから包丁の音が聞こえる。マチルダさんが朝食の準備をしているのだろう。

「おはようございます、マチルダさん。」
「あら、ヨール君まだ寝ていてもよかったのよ? 昨日はお昼寝もしていたから、早起きしちゃったのかしら? うふふ。」
「自然と目が覚めてしまいました。柵作りに遅れなくて良かったです。何かお手伝いしましょうか?」
「大丈夫よ、外の井戸で顔を洗ってらっしゃい。着替えがあったほうがいいわね、息子のお古が着れるかしら? 桶に水を汲んでこれで体を拭くのよ。目が覚めるわよー。」

 桶とスポンジのような物を手渡される。よく見るとそのスポンジは何かの植物のようだった。

 そのスポンジは、サボンというトゲのある植物の表皮を剥いて、中身を乾かしたものらしい。乾いた土地に生える植物で、体内に水を溜め込むために、スポンジのような性質を持っているのだとか。おそらくサボテンのような見た目をしているのだろう。

 井戸で水を汲み、軽くしぼったサボンで簡単に体を拭く。井戸水は少し冷たく、一気に目が覚めた。春の穏やかな気候のような丁度いい気温で、昨日過ごした感じでは一日中温度は一定だったように感じた。

 家に戻ると、マチルダさんが着替えを用意してくれていた。ところどころ補修の後が見える同じような村人の服であった。

「あなたたちが仕事をしている間に洗濯しちゃうから、今着ているものは畳んで置いておいてね。」
「ありがとうございます!」

 着替えてみると、少し小さかったが問題なく着れた。

「おはよう、マチルダとヨール!」

 エミルさんも起きたみたいだ。桶とサボンを持って井戸のほうへ向かっていった。

 朝食は、ピーで作ったおかゆとメザシくらいの大きさの焼き魚だった。

「このピーっておかゆにしてもいい香りがして美味しいな、おかゆの中にある豆みたいな野菜は不思議な弾力でお肉みたいだ。うっすら塩味にハーブみたいな香りもついて、どんどん進んじゃうよ! このお魚も塩加減が優しくて美味しいなぁ。」

 夢中で食べていたせいか、無意識にぶつぶつと食レポまがいのことをしちゃってたようだ。

「うふふ、気に入ってくれてうれしいわ。」
「よくもまあ普通の飯に長いこと言葉をあてられるもんだ。」

 だってしょうがないじゃない、異世界メシ美味しいんだもの!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

セックスがしたくてしょうがない攻めVSそんな気分じゃない受け

BL / 完結 24h.ポイント:6,723pt お気に入り:16

伯爵令嬢は身代わりに婚約者を奪われた、はずでした

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:1,919

ぶち殺してやる!

現代文学 / 完結 24h.ポイント:1,938pt お気に入り:0

もう一度、あなたと

BL / 完結 24h.ポイント:979pt お気に入り:207

冒険者は覇王となりて

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:18

月が導く異世界道中

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:58,326pt お気に入り:53,913

私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:390pt お気に入り:1,782

処理中です...