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「ヨール、無理なら無理と最初から言わないか! ミドルハウンドを倒したと聞いていたから、どの程度戦えるのか見ておく必要があると思ったのだが、まさかスライムと目の前で死闘を繰り広げられるとは思わなかったぞ!」

 怒気混じりにエミルさんに叱られてしまった。

 指示に従うよう言った自分の指示で、俺が怪我をしてしまう可能性があったのだから、ハラハラさせてしまったのだと思う。本気で心配してくれたからこそ、こうして怒ってくれたエミルさんには本当に申し訳なく感じた。

「実は、自分の力がまだ良く分かっていなくて、自分のスキルがもしかしたらモンスターに有効なのかと考えていたんです。心配かけてごめんなさい……。」

 まったくもうと言いながら、エミルさんはガシガシと俺の頭を乱暴になでた。

 聞くと、エミルさんのステータスはこの森を安全に一人で歩けるものだった。

 エミル
 レベル:22
 属性:なし
 HP:1220
 MP:600
 攻撃力:180
 防御力:130
 敏捷性:120
 魔力:60

 装備
 ・村人の服
 ・村人のズボン
 ・麻紐のベルト
 ・木こりの斧(攻撃力+30)
 ・ナタ(攻撃力+10)

 スキル
 ・なし

 この辺りに出現するモンスターで一番厄介なのは、オークという猪型の二足歩行の魔物で、棍棒や人間の落とした武器などを持っており、筋肉質で非常に力が強く、知能もそれなりにあり、コロニーを形成することもあるのだとか。

 オークが集落を作ってしまうと、ハイオークという上位種が生まれることがあり、そうなると騎士や腕に覚えのある冒険者などが討伐隊を組み、掃討する必要が出てくる。

 ラカンの森ではハイオークが確認されたことはなく、稀にオークが1体出現する程度ではあるが、もし2体現れたらエミルさんでも逃げるしかないらしい。滅多に出くわすことはなく、オークが2体以上発見された例は無いので、こうやって出かけられるのである。

「しかし、ヨールのスキルは初めて見たな。教えたくなければ別にいいんだが、何の属性なんだ?」

 火、水、風、雷の属性が一般的で、稀に土や無属性が発現する人もいるらしい。

 土属性は、砦作りや土木作業に有用な為、国から優遇されて結構いい給料を貰える職に就けるようだ。

 無属性は個人差があり、属性なしとほぼ変わらない場合もあれば、高い攻撃力のあるスキルを覚える人もいるみたいだ。

 ちなみにマチルダさんは火属性持ちで、村にいる属性持ちは助け合って火おこしや草刈りなどの役割を担うようだ。属性は遺伝するわけではなく、息子さんは風属性らしい。

「俺は闇属性なんです。スキルもまだ一つしかなくて、さっきの通りです。夜になるとステータスが上がるみたいで、昨日はミドルハウンドに出会ったのが夜だったこともあって、運良く倒せたんです。」

「闇属性か……。今まで聞いたことがないな。しかし、レベルが上がってもステータスが変わらないとは不便だな。モンスターとは俺が戦うから、ヨールは後ろに下がって周囲を警戒するように!」
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