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「ヨール、あなたまだまだね。全然ダメダメなのだわ。それじゃあ魔法を使いこなしているとは言えないじゃない。はぁ……先生が来たら師匠の私が教えてあげるから。」

 どうやら魔法を使う奥義のようなものがあるようだ。もしかすると、貴族に伝わる秘伝とかなのかもしれない。
 スキルに関しては何の知識も無いので、ガキとはいえ師匠を持ったのは幸運だったかもな。楽しみになってきたぞ。

「ミカエル師匠、イザベラ師匠、ご指導のほどよろしくお願いいたします。」

 子供相手にヘコヘコしていると、仲良く? なれたようだ。
 冒険者としての仕事や、俺の魔法の事など、その後も暫く他愛のない話をしていると、扉をノックする音が聞こえた。
 どうやら家庭教師の先生がやってきたらしい。

「ミカエル様、イザベラ様、ごきげんよう。ヨールさんだったかしら? 私は家庭教師のナナです。よろしくね。」

 とんがり帽子に黒いローブ、右手には長く歪な形の木製の杖。魔法使いのイメージそのままだ。杖の先端には小さな籠があり、その中に鈍く光る魔石が入っている。

(いや、そんなことより……)

 ナナ先生は胸が大きくて可愛らしい。そう、胸が大きくて可愛らしいのだ!

「ヨールです、よろしくお願いします!」
「「ナナ先生、よろしくお願いします!」」

 どうやら今日は、森でモンスター相手に実戦形式の訓練をするらしい。護衛に伯爵お抱えの騎士を2人連れ、馬車で向かう。なんて贅沢な授業だろう。

「おいヨール、お前弟子なんだからちゃんと俺達から見て学べよな。」

(おやおや、技術は盗めと。手厳しいこって。)

「はい、ミカエル様! 弟子として恥じぬよう学ばせて頂きます。イザベラ様の華麗な魔法も大変楽しみでございます!」
「期待しているのだわ、ヨール!」
「あら、ミカエル様もイザベラ様も弟子をお取りになったんですのね。ふふふ」

 なんだかんだで結構楽しみな俺がいる。この授業で俺も成長出来るかもしれないしな。

 1時間程経った頃、馬車が動きを止める。

「さて、授業を始めますよ。」

 馬車から降りると、広く開けた森の中にいた。騎士達は周囲を警戒するよう距離を取る。目の前には1匹のスライムがいた。

「ではミカエル様、落ち着いてモンスターの動きを見て、魔法を当ててみましょう。」
「うむ。」

 ミカエルはスライムに向かって右手を突きだす。

「炎の支配者たる我が命じる 全てを焼き尽くす赤き灼熱の力よこの手に宿れ! ファイヤーボール!!」

 ミカエルの手からバスケットボール大の炎の玉がスライムに向かい、一直線に飛んでいく。大リーガーのストレートより速い!

 着弾すると、小さな火柱とともにスライムを焼き尽くした。

「え、詠唱!?」

 チラリとナナ先生の方を見る。

「ふふ、別に必要ないんですけどね。カッコイイからみたいです。」

(ははーん、これはあれだ。急に包帯巻いたり左手が疼くやつだ。思春期に患うあの病だね。)
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