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 最初にこちらを威圧するような態度だったので高圧的な嫌なやつかと思ったが、中々話のできる良い奴そうだ。

「俺も冒険者になりゃあ強くなれんのか?」

「ははは、試してみるといい。良いパーティーが見つかるといいな。」

「1人じゃ駄目なのか?」

「ふむ、パーティーを組めばより強いモンスターと戦える。ソロでダンジョンに挑む馬鹿はおらんしな。早く強くなりたいのであれば、仲間を探すべきであろうな。」

「そういうもんか、じゃあ俺も冒険者ってのになってみっかな! 強くなったら俺のパーティーにおっさんも誘ってやるよ!」

「それは熊ったなー。ぶぁーっはっはっはっは!」

「おいおっさん、つまんねえぞ!」

「ぶぁーーっはっはっはっは!」

 冒険者か、今は何より強くならなきゃいけねえしいいかもしれねえ。しかしパーティーか、よええのと組まねえように気をつけねえとな。街の中心に冒険者ギルドってのがあるらしいから、そこで登録すりゃあ誰でもすぐに冒険者になれるみてえだ。

 頭の中でおっさんの話をまとめていたら閂の外れる音の後にゆっくりと門が開いた。クリスと……なんだありゃ、首の長え奴がいやがる。キリンの獣人か、あんなのになってたら生活に不便すること間違いなしだったぜ。

「お待たせしましたー! 衛兵長のジラフォイですー!」

 声高すぎだろ、しかもジラフォイってなんだよ。こいつ笑わせにきてやがんな!

「あ、あぁ。こっちは待ってる間にそこのおっさんにいい話が聞けて良かったぜ。街には入れるのか?」

「まずはテストをするフォイ! 合格したら入れてやるフォイ!」

「ぶふぉ……くっ、くく……。そ、そうか。」

 このキリン野朗畳み掛けてきやがった。笑いを堪えてたとこにこの不意打ちは卑怯だろ。獣人てのはこんなのばっかりなのか?

「ジラフォイ隊長、いい加減笑う奴はいい奴っていうテストはやめた方がよいのではないか? 意味がない気がするのだが。」

「今日はもう遅い、この狼獣人の子供も早めに宿をとった方がいいだろう。さ、行きなさい。」

「しばらく世話になるぜ。冒険者になったらすぐに有名になっちまうだろうからよ、そしたらあんたら自慢していいからな!」

「悪さしたら牢屋行きだからねー!」

 異世界で初めて会った人間がまさかあんなに濃い奴らだとは思わなかったぜ。しかし宿をとろうにも場所が分からねえ。とりあえず冒険者ギルドに行ってみるか!

 街の中央へと向かうと、森の中まで漂ってきていた匂いの元を発見した。リヤカー屋台の横に大型の炭火台を設置し、大人の拳ほどもある大きめの肉が3個も串に刺さっている。甘辛いタレが絡み、滴り落ちる肉汁とタレが合わさって炭火に落ち、それが蒸発して更に肉に香ばしい香りをつけている。ヨダレが止まらねえ。

「おやじ、そいつを1つくれ。」

「あいよ、銀貨5枚だ。」

 大銀貨を1枚渡して釣りをもらい、肉串を手渡された。ずっしりと重く、これ1本でお腹いっぱいになりそうだ。早速ひと口齧ってみる。

「うめえ! こんな美味いもん初めて食ったぜ!」

 何の肉かは分からないが、豚肉に近い感じがする。とろけるような脂身と旨みの強い赤身にこの力強いタレが最高にマッチしてる、そんな感じだ。買って正解だったと思うぜまじで。

 腹ごしらえも完了して、肉の刺さっていた串で歯の隙間を掃除しながら上機嫌に歩いていると、広場の真ん中に聳え立つ3階建ての巨大な建物を発見した。おそらくこれが冒険者ギルドだろう。

 中に入ってみると、奥の方では屈強そうな様々な種類の獣人達が酒を片手に大騒ぎしていた。手前のカウンターには胸の大きなリスの獣人がニコニコと愛嬌を振りまいている。とりあえずこいつに話を聞いてみるか。

「よう、俺は冒険者になりてえんだが街に来るのも初めてで右も左も分からねえ。どうしたらいいんだ?」

「おっとぉ、田舎もんですね! 開拓の街ガンガスの冒険者ギルドへようこそ。2階に上がって右手のカウンターへ行きやがれです!」

「口の悪いチンチクリンだな。分かった、2階だな。」

「グッドラック!」

 親指を立ててウインクしてやがる、なんなんだあいつは。

 2階に上がると3つのカウンターがあった。確か右だったな。胸の大きなウサギの獣人が耳をピクピク動かしては忙しくキョロキョロと視線を動かしていた。採用条件に乳がでかい事って書いてあんのかもしれねえな。

「冒険者になりてえ。」

「はーい、じゃあこの用紙に必要事項を記入してねボクちゃん。」

 名前……名前か。レイジでいいだろう。属性は無と。これだけかよ。

「出来たぜ。」

「それじゃボクちゃん、このプレートと用紙に血を垂らしてね。お姉さんが手伝ってあげようかしら?」

 串を親指に刺して血を用紙とプレートに押し付けた。

「出来たぜ……なんだ!?」

 用紙が光を放ち消えると、銅色のプレートが青白く光り輝いた。

「ふふ、初々しいわね。これで登録が完了したわよ。依頼を受けるなら真ん中のカウンター、素材の買取は左のカウンターよ。プレートは無くしたら罰金だから気をつけてね。じゃ、またねボクちゃん。」

 銅のプレートを受け取り、腰の金が入った麻袋にしまった。門番のおっさんがプラチナランクって言ってたからこれがランクを示す物なんだろうな。

 素材の買取か、コボルトの死体も買ってくれんのか?あの牛の女に聞いてみるか。

「なあ、コボルトも買ってくれんのかい?」

「コボルトは毛皮と魔石かもー。」

「バラして持ってこないといけねえのか?」

「死体そのままだと解体手数料が発生するから、1体あたり銀貨2枚になるかもー。運搬にリヤカーをレンタルするなら1日銀貨5枚かかるかもー。」

 15体で大銀貨2枚ちょいか、何もないよりゃマシか。

「ここに持ってくりゃあいいのか?」

「予約札を発行するから、それを持って建物の裏の解体場に持って行けばいいかもー。」

「じゃあリヤカーと予約札を頼む。」

「討伐報酬がプラスされるから依頼を受けてからの方がいいかもー。」

「なるほどな。ありがとよ!」

 そうか、コボルト討伐の依頼を受ければ達成報酬と素材買取で金が入るってことか。真ん中は、あの巨乳の鹿獣人か。

「コボルト討伐の依頼を受けたい。」

「1体につき銀貨5枚、討伐証明は鼻を持ってくること。いい?」

「死体丸ごと持ってくれば素材買取と討伐証明と両方出来るか?」

「解体手数料を気にしなければそれでもいい。」

「解体に必要な道具はどこで買えるんだ? それと今日の宿を探してんだけどよ。」

「1階の冒険者ショップにある。これはこの街の地図、ここが門でここが冒険者ギルド、宿はこの赤い点だよ。」

「お、助かったぜ。」

 1階には受付と酒場と冒険者ショップってのがあるみてえだな。ここが冒険者ショップか、解体用品のコーナーは……お、あったぜ。

「へー、ナイフだけでもピンキリだな。この黒曜石のナイフってのカッコいいじゃん。」

 値札を見たら金貨1枚もしてやがる。無造作に何本か置かれている元の場所に戻すタイミングでアイテムボックスに収納した。ナイフゲットーってか。

 とりあえず今日はこんなとこにしておいて、適当に宿をとって明日から冒険者の依頼をこなしてあのおっさんみてえに強くならねえとな。

 大きく背伸びをし、宿へ向かうのだった。
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