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砂城の愛
第四十六話 幸せの意味
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「君は一体……?」
僕は目の前の女性に動揺を隠せなかった。こうして、会話ができるということはヴァルキュリアかエインヘリャルということだ。
「ええ、申し遅れましたね、私はエインヘリャルよ。ヴァルキュリア以外と話すのは何年ぶりかしら、話ができるって素敵ね」
僕は身構えた、うかつにも今は武器を持っていない、戦いになれば一巻の終わりだ。なら隙を見て逃げないと。
「待って、待って。違うの、戦いは好きじゃないの。私は平和主義なのよ」
おいおい、本気で言っているのだろうか、信じられない。これは戦争だ、なのに平和主義……? そんなの戦いの前では単なる幻想だ。僕の経験談がそう語っていた。
「もちろん貴方が戦うつもりなら受けて立つわ、でもそのつもりがないのなら、お話ししましょう。だって、会話ができないって苦痛で仕方ないもの」
真剣なまなざしでこちらを見つめている。どうやら本気みたいだ、──突如黒い髪の男の子がこちらに寄ってきた、そうして、目の前の金髪のエインヘリャルに、きっと手であろうで摘んだ花束を渡した。
「ありがとう。うれしいわ」
黒い髪の男の子が金髪のエインヘリャルに抱きつきいっしょにそばで寝転ぶ、僕はその様子を見て自然に表情が緩む。……甘いのかな僕は。
「言葉が通じなくても心は通じ合うの、十年間この街で過ごしてわかったことよ」
「十年? そんな昔からこの世界にいたのかい?」
そっと僕は近くに座り、彼女と話し続けた。
「そう言えば私の名前を言ってなかったわね。私の名前はミリア、貴方の名前は?」
「いけ……佑月と言うんだ。見ての通りしがないおっさんだよ」
「あら、若々しく見えたけど落ち着いているのね。ユヅキね……発音しづらいからユヅって呼んでいい?」
「お好きにどうぞ」
僕の言葉にミリアは嬉しそうに微笑んでいた。
「ねえどんな異世界から来たの? すごく興味があるわ」
うーん、どんな世界って説明すると難しいな。ちょっと頭で考え、そしてまとめて話した。
「日本っていって街はビルというコンクリートでできていて10メートルぐらいの建物が並んでいる。人は電車という箱に乗って移動するかなあ。学校という勉強をするところを卒業するとずっと仕事ばかり、本当退屈な世界だよ」
「コンクリート? メートル? どういう意味?」
そこから話さないとダメか。
「あの孤児院の建物みたいな壁で作られていて四倍ぐらいの高さで、そこに部屋がいっぱいあって住みかとするんだ。都会に行くとそれより三倍ぐらい高い。人がびっしり集まって歩いていて、結構窮屈だなあ。国の人口は一億三千万ぐらい。
わかるかなあ、人がたくさんで、この町にびっしり埋め尽くしても入らない」
僕の言葉にミリアの顔がどんどん青ざめていくようだ。
「そんなに高い建物だったら倒れてこない? それよりもそんなに人がいたら他人の名前が覚えられないじゃない! どうやって覚えてるの?」
びっくりした声で真剣にミリアは言った。彼女の言葉に何かこそばゆい感じで、僕は少し鼻をかいた。続けて僕は語る。
「地震があったら倒れてくるかなあ、地震てわかる? 地面が揺れるの。人の名前は仕事場と家族以外覚える必要はないかな」
ミリアは目を見開き真っ青な顔で震えている。
「何それ怖い! 知らない人と歩いたら危ないじゃない。犯罪とか起こりまくりよ、厳しい環境で育ったのね。ユヅが苦労した顔をしている理由がわかるわ。コワイ……」
ははっ、本気で考え込んでいる、価値観の違いというやつだろうか。平和な国何だけどなあ。労働環境がクソなだけで。スマホとかネットとか説明したら卒倒しそうだ、機会があったら教えてみよう。
「ミリアはどういう世界から来たんだい?」
「私は砂の地面がずっと続いていて一日中寒いの。ここに比べたら夜は短い。季節によって食べ物が実るところが違うから季節の変わりに居場所を移動するのよ。メラシリって言ってもわからないよね、とにかく動物に乗って移動するの。
人は大体家族が10人ほど集まって移動するのよ、毎日が退屈。移動しているだけだし、落ち着いてもやることは楽器で演奏するだけでなんにもない、この世界は娯楽でいっぱいで楽しんでいるわ」
僕の世界の遊牧民みたいなものか、人と出会うことも少ないだろうし、さっきの反応もわかるな。
「恋愛とかしないのかい? 好きな人とどうやって出会うの?」
僕は彼女の顔を興味深く見つめながら尋ねた。
「結婚は親が決める物よただそれに従うだけ、愛なんて物はない、女に生まれるんじゃなかったとずっと後悔していたの。ところが病気で死んじゃってこの世界に来たの、毎日が新鮮でとても楽しいなあ……」
何だろうかミリアはそう言った後、少しため息をついた。
「私、何で戦う必要があるのかわからない、だって人生楽しんだもの勝ちじゃない? だから、私この街でずっと暮らしているの。そういう穏やかな日々が続けばいいのになあ」
でも、その先どうするんだろうか、敵が来たら撃退するだけだろうけど、1万人から12人しか生きられないのに、戦闘技術を磨かなければ殺されると思うけど。
「敵が来て殺されそうになったらどうするんだい?」
その言葉にミリアは笑いながら、
「その時はその時、普通の人生と一緒。死ぬときは死ぬ。あまり考える必要がないのよ」
と言った。環境に委ねる、それが彼女なりの思想だろう。僕たち日本人は人生設計を考える、若いうちにああしようとか中年になって他人と比べてああだとか、歳を老いるとどうだとか、知らないうちに考えるようになっていた。……これは日本人の国民性だろうか?
「確かに別に他人と比べてなんてどうでもいいんだけどね。その時を楽しめるかどうかとかあまり考えないな」
僕がそういうと、突然ミリアは立ち上がって、
「私結婚するの……」
と、彼女はにこやかにいう、その姿は見るからに幸せに満ちあふれており、人生の絶頂を感じているようだった。
──時がたった、彼女と日が落ちかけ夕暮れまで話し込んでいると、メリッサのことを思い出して教会に戻った。もちろん彼女に宿も決めてないのにこんな時間まで何をしていたんだと怒られてしまった。
結婚か、白いウェディングドレス身を包んだメリッサを想像するだけで心が熱くなってくる。僕も結婚したいな、幸せをかみしめたい。僕なんかでも、そんな夢見たっていいじゃないか、ここは異世界なんだからさ──。
僕は目の前の女性に動揺を隠せなかった。こうして、会話ができるということはヴァルキュリアかエインヘリャルということだ。
「ええ、申し遅れましたね、私はエインヘリャルよ。ヴァルキュリア以外と話すのは何年ぶりかしら、話ができるって素敵ね」
僕は身構えた、うかつにも今は武器を持っていない、戦いになれば一巻の終わりだ。なら隙を見て逃げないと。
「待って、待って。違うの、戦いは好きじゃないの。私は平和主義なのよ」
おいおい、本気で言っているのだろうか、信じられない。これは戦争だ、なのに平和主義……? そんなの戦いの前では単なる幻想だ。僕の経験談がそう語っていた。
「もちろん貴方が戦うつもりなら受けて立つわ、でもそのつもりがないのなら、お話ししましょう。だって、会話ができないって苦痛で仕方ないもの」
真剣なまなざしでこちらを見つめている。どうやら本気みたいだ、──突如黒い髪の男の子がこちらに寄ってきた、そうして、目の前の金髪のエインヘリャルに、きっと手であろうで摘んだ花束を渡した。
「ありがとう。うれしいわ」
黒い髪の男の子が金髪のエインヘリャルに抱きつきいっしょにそばで寝転ぶ、僕はその様子を見て自然に表情が緩む。……甘いのかな僕は。
「言葉が通じなくても心は通じ合うの、十年間この街で過ごしてわかったことよ」
「十年? そんな昔からこの世界にいたのかい?」
そっと僕は近くに座り、彼女と話し続けた。
「そう言えば私の名前を言ってなかったわね。私の名前はミリア、貴方の名前は?」
「いけ……佑月と言うんだ。見ての通りしがないおっさんだよ」
「あら、若々しく見えたけど落ち着いているのね。ユヅキね……発音しづらいからユヅって呼んでいい?」
「お好きにどうぞ」
僕の言葉にミリアは嬉しそうに微笑んでいた。
「ねえどんな異世界から来たの? すごく興味があるわ」
うーん、どんな世界って説明すると難しいな。ちょっと頭で考え、そしてまとめて話した。
「日本っていって街はビルというコンクリートでできていて10メートルぐらいの建物が並んでいる。人は電車という箱に乗って移動するかなあ。学校という勉強をするところを卒業するとずっと仕事ばかり、本当退屈な世界だよ」
「コンクリート? メートル? どういう意味?」
そこから話さないとダメか。
「あの孤児院の建物みたいな壁で作られていて四倍ぐらいの高さで、そこに部屋がいっぱいあって住みかとするんだ。都会に行くとそれより三倍ぐらい高い。人がびっしり集まって歩いていて、結構窮屈だなあ。国の人口は一億三千万ぐらい。
わかるかなあ、人がたくさんで、この町にびっしり埋め尽くしても入らない」
僕の言葉にミリアの顔がどんどん青ざめていくようだ。
「そんなに高い建物だったら倒れてこない? それよりもそんなに人がいたら他人の名前が覚えられないじゃない! どうやって覚えてるの?」
びっくりした声で真剣にミリアは言った。彼女の言葉に何かこそばゆい感じで、僕は少し鼻をかいた。続けて僕は語る。
「地震があったら倒れてくるかなあ、地震てわかる? 地面が揺れるの。人の名前は仕事場と家族以外覚える必要はないかな」
ミリアは目を見開き真っ青な顔で震えている。
「何それ怖い! 知らない人と歩いたら危ないじゃない。犯罪とか起こりまくりよ、厳しい環境で育ったのね。ユヅが苦労した顔をしている理由がわかるわ。コワイ……」
ははっ、本気で考え込んでいる、価値観の違いというやつだろうか。平和な国何だけどなあ。労働環境がクソなだけで。スマホとかネットとか説明したら卒倒しそうだ、機会があったら教えてみよう。
「ミリアはどういう世界から来たんだい?」
「私は砂の地面がずっと続いていて一日中寒いの。ここに比べたら夜は短い。季節によって食べ物が実るところが違うから季節の変わりに居場所を移動するのよ。メラシリって言ってもわからないよね、とにかく動物に乗って移動するの。
人は大体家族が10人ほど集まって移動するのよ、毎日が退屈。移動しているだけだし、落ち着いてもやることは楽器で演奏するだけでなんにもない、この世界は娯楽でいっぱいで楽しんでいるわ」
僕の世界の遊牧民みたいなものか、人と出会うことも少ないだろうし、さっきの反応もわかるな。
「恋愛とかしないのかい? 好きな人とどうやって出会うの?」
僕は彼女の顔を興味深く見つめながら尋ねた。
「結婚は親が決める物よただそれに従うだけ、愛なんて物はない、女に生まれるんじゃなかったとずっと後悔していたの。ところが病気で死んじゃってこの世界に来たの、毎日が新鮮でとても楽しいなあ……」
何だろうかミリアはそう言った後、少しため息をついた。
「私、何で戦う必要があるのかわからない、だって人生楽しんだもの勝ちじゃない? だから、私この街でずっと暮らしているの。そういう穏やかな日々が続けばいいのになあ」
でも、その先どうするんだろうか、敵が来たら撃退するだけだろうけど、1万人から12人しか生きられないのに、戦闘技術を磨かなければ殺されると思うけど。
「敵が来て殺されそうになったらどうするんだい?」
その言葉にミリアは笑いながら、
「その時はその時、普通の人生と一緒。死ぬときは死ぬ。あまり考える必要がないのよ」
と言った。環境に委ねる、それが彼女なりの思想だろう。僕たち日本人は人生設計を考える、若いうちにああしようとか中年になって他人と比べてああだとか、歳を老いるとどうだとか、知らないうちに考えるようになっていた。……これは日本人の国民性だろうか?
「確かに別に他人と比べてなんてどうでもいいんだけどね。その時を楽しめるかどうかとかあまり考えないな」
僕がそういうと、突然ミリアは立ち上がって、
「私結婚するの……」
と、彼女はにこやかにいう、その姿は見るからに幸せに満ちあふれており、人生の絶頂を感じているようだった。
──時がたった、彼女と日が落ちかけ夕暮れまで話し込んでいると、メリッサのことを思い出して教会に戻った。もちろん彼女に宿も決めてないのにこんな時間まで何をしていたんだと怒られてしまった。
結婚か、白いウェディングドレス身を包んだメリッサを想像するだけで心が熱くなってくる。僕も結婚したいな、幸せをかみしめたい。僕なんかでも、そんな夢見たっていいじゃないか、ここは異世界なんだからさ──。
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