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電車の中で ①
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「はあ、はあ。あっ……う、ああ」
終電。大きな駅も過ぎれば車内はがら空きだ。乗っている人は三~四人。スーツ姿でお疲れの方が多く、鞄を脇に置いてうつらうつらと舟を漕いでいる。そう。けして人がいないわけじゃないという空間で俺は、
「んんっ……はあ、キモチ、イイ……ああ、ああっ」
「気持ちいいんだ? こういうの、好きだったりする?」
すぐ隣に立つ男が耳元でにやつく。一見、触れられていないように見えるが俺のズボンの中から、かすかに低い音が響いている。
両手でつり革に掴まる俺は、腕を縛られているわけでもなんでもない。ただつり革を握りしめて耐える。
「あっ、う、うう、んあっ……もっと、強くして……」
「自分からねだるなんて、はしたない。お望み通りにしてあげよう」
お兄さんは手にしたリモコンを操作する。するとナカに埋め込まれたローターの振動が激しくなった。
「ん! んうう! あっあっ。きもち、いい! ああ、はあ、ん、はあ」
びくびくと腰を揺らしているとお兄さんはそっと顎を撫でてきた。
「ホント可愛いね。持って帰りたいくらいだよ。……ねえ? 君って明日もこの電車に乗ってるの?」
「はあ、はあ……ん、どう、だろうな。教えない、あああ」
カチカチとリモコンのスイッチを押し上げる音がする。
「あああっ。やん、ああああ! は、激し……んん、んく。だ、め、声……押さえられな……ひううっ」
「教えてくれたら、弱めてあげるよ?」
「あっあっ、べ、別に……弱めなく、てもっ、い……いいよ。んんっ!」
「……へえ?」
つり革に掴まっていられなくなった俺を座席に預け、お兄さんも隣に座る。
「じゃあ、駅まで楽しませてもらうよ? いいの?」
「う、うあっ。いい、よ? あっ! お……お兄さん。かっこいいし……んんうう」
狐のように目の細いお兄さんはにっこり笑うと、俺の顎を掴み口づけた。
「んんっ……あ」
「お持ち帰りは駄目なの?」
「はあ、はあ……ん、駄目。明日……ンッ、学校……あんっ、ああっ」
「学生だったんだ。悪い子だね」
結構大きな声を出していたと思うが、どこからも苦情は出なかった。そろそろ駅に着く。
「ちょ……ローター抜いてよ。うぅ、あっ、も、もう降りるから」
「あげるよそれ。また会えたら使ってあげる。はい、お小遣い」
ズボンのポッケにお札を入れてくる。
「……ん。もらって、いいの? んっ」
「いいよ。楽しかったから。マタネ」
ちゅっと最後にもう一度キスをされると同時に、電車のドアが開く。お兄さんにさよならを言ってホームに降りた。
去って行く電車を見送り、改札へ。その前にトイレに駆け込みローターを出した。
「……ふぅ。普通そうな兄ちゃんだったのに、まさかこんなもん持ってるとはな」
えぐいものではない。可愛らしいピンクのやつだ。トイレットペーパーで体液を拭いて、鞄に仕舞う。せっかくだしもらっとこう。また会えるかもしれないし。
「へっへーん。金までもらっちった。羽振りのイイ兄ちゃんだったなー」
たまにこういうことがあるからやめられない。
ポッケに手を突っ込む。感触だけで三千あることは確実だ。
鼻歌を歌いながら駅のすぐ隣へ向かう。ど深夜の田舎。人なんていないだろうと油断していた俺はびくっと肩を跳ねることとなった。
人がいたのだ。それも見知った顔。
「やめなよ。こんなこと」
「……よお。ほたるん。おどかすなよ心臓いてぇ」
駐輪場。街灯の下。眠そうな顔で立っていたのはクラスメイトの蛍川だった。
数ヵ月前。
新しいゲームを探しに電車に乗り込んだ、大雨の日。
(雨の日は人多いんだよな……)
昼間なのに薄暗く、電車内は明かりがついている。いつもはエコで地球優先しているのに。
肩に付いた水滴を払う。自分も含め、全員が傘を持っている。
持ち込まれた傘も濡れている。栄田(えいだ)はお気に入りのジーパンが濡れてしまうのを嫌がり、出入り口から遠ざかった。
目的の店は二つ隣の駅。だいたい十分。スマホゲームで時間を潰せばすぐだ。尻歩ポケットに手を突っ込む。あれ。無い。あ、鞄の方に入れたんだった。
(そろそろ真剣にレベル上げるか。装備でごり押しするのきつくなってきた)
目当ての薄い板を発掘した時だった。
「――……」
ぞくりと背筋が寒くなった。
片手をつり革、もう片手でスマホを持ったままそろそろと振り返る。……灰色のスーツ姿のおじさんと目が合った。笑顔だ。なんでこんな。背中にぴったり張り付くように立ってるんだ?
目線を下げる。
おじさんの手は俺の尻を触っていた。
「……? ……。……は?」
頭が真っ白になる。乗り慣れた電車。見慣れた車内広告。車窓にはいつもの風景が左へ流れていく。
硬直していると、強く尻を掴んでいる指がもみもみと動く。
「――っひ」
小さな悲鳴を上げる。自分の声とは思えない高い声が出た。慌てて周囲を見るが誰もこちらを見ていなかった。電車内って意外とうるさいからね。
(……って、なんで俺が周囲を気にしてんだ)
揉まれている。お、落ち着け! たった二駅。たった二駅だ。
「んっ、……ぅ」
いつまで触ってんだ野郎の尻を。何が楽しい。
我慢しようと思ったが腹が立ってきた。ガツンと言ってやろうと思い、もう一度振り向こうとするが、
「うあっ」
脇の下から伸びてきた手に乳首を摘まれた。服の上から指で転がすように遊ばれる。
「ちょ、やだ」
俺の身体は気持ち悪いことに敏感だ。胸でも感じてしまうほど。これのせいで中学の頃は散々だった。
身を捻るもおじさんは後ろから俺をがっちり抱きしめている。なんか動きにくいなと思ったら両手が塞がっているのだ。だが、パニックになっていた俺はスマホを持ったままおたおたするだけになっている。
「なんで? なんっ」
尻を揉んでいた右手が太ももの内側を撫でる。気持ち悪い。血管の浮いた手がジーパンを引っ掻く。
「ぉ、おい」
少しだけ大きな声を出したつもりだったのに、実際の声は驚くほど弱々しかった。おじさんは耳に唇を近づける。
「どうしたんだい? 随分、顔色が良くないね。おじさんが支えていてあげるよ」
結構だ。走行中だが今すぐ電車から降りろ。
「い、いやだ。ぅん、触るなって……」
「君、たまに見かけるけど、可愛いなって思ってたんだ。反応もいいね」
可愛いわけないだろ眼球腐ってんのか!
怒鳴りたいのに俺の口からは甘い声が出るだけだった。嫌でも中学の時に同級生複数にされたことを思い出す。
胸と股間を同時に摩られる。
「……んっ」
「声出してもいいよ? 乗車してる人に見てもらおっか? 興奮するかもよ?」
五指がバラバラに動き胸の突起を刺激する。波紋のように広がる不快感と快楽に身を縮こませる。
「う、ん。やだ、そこ。やめ、やめ……う、あ」
「ん? ここが良いの? 胸で感じるなんていやらしいね」
「はぁ……う、耳元でっ喋るな……んっ」
熱い吐息を繰り返しながらちらっと周囲を確認する。こんなご時世だ。誰もが下を向いてスマホに夢中になっている。近くにいる人もイヤホンで曲を聞いていた。
「やだ……やだよ」
「んふふ。ビクビクしちゃって可愛いね。もっと乱れてみようか」
おじさんの手がズボンのチャックを下ろす。こんなところで……! と俺の頭は熱くなった。払いのけたいが、俺はつり革につかまってようやく立てている状態だ。
「湿ってるねぇ」
「……んんっ」
ズボンに入り込んだ手。下着の上から先端を指で突かれる。太もも同士を擦り合わせるも手の動きは止まらない。思わず腰を引くと尻に固いものが当たった。逃げられない。手はもっと深く潜り込んでくる。
「ここはどうかな?」
「は……やだ、あ、ンッ、そこ触っ……ああん、あ、あっ、胸、も、引っ掻かない、でぇ」
「胸が良いの?」
ズボンから手を出すと、両手が胸に添えられる。
「やだ……はあ……はあ……っ」
両方なんて耐えられない! そう思った時、電車が一つ目の駅に着いた。ぷしゅーとドアが開くなり、降りる駅ではなかったが飛び出した。
(こわい。こわいこわい!)
ゲームを買う気なんて消え去り、男子トイレに閉じこもって一時間ほど震えていた。
「……」
「それ以来、電車で触られるのにハマっちまってな」
「回想と感想が一致してないんだけど?」
ドリンクバーでカルピスとメロンソーダを混ぜたミックスジュースを飲んでいる蛍川が微妙な顔をしている。
「震えてたんじゃないの?」
「あ? ああ。怖かったよ。でもそれから一人でヤっても『なんか違うんだよなぁ』ってなってな」
コーラとウーロン茶を混ぜたジュースを一口。
「すげー。ゲボ不味い」
手の甲でグラスを遠ざける。
「……だからコーラとカルピスにしなって言ったのに」
「カレーみたいにうまい具合に包み込んでくれると思ったんだよ。コーラが」
「カレー注文する?」
渡されたメニュー票をメニュースタンドに戻す。
「で、一人でオナってても物足りないから他人に触ってもらえる、且つ、他人に見られないかとハラハラできる場所! で探したら電車しかないって結論になったんだ。俺天才じゃね?」
「ファミレスでこんな話聞きたくない……」
眉を八の字にしてストローを吸っている。
「痴漢被害に合って嫌な思いをしてる人もいるって言うのに、君ってやつは。金まで受け取ってるし」
「まあまあ、こう考えろよ。俺が痴漢を引き受けてやってんだよ。これで痴漢被害に悩む男女が減るって話だ。悪くないだろ? それにほら。ここは俺がおごってやるし」
俺が熱く語っているのに蛍川は頭痛そうな表情のままだった。
終電。大きな駅も過ぎれば車内はがら空きだ。乗っている人は三~四人。スーツ姿でお疲れの方が多く、鞄を脇に置いてうつらうつらと舟を漕いでいる。そう。けして人がいないわけじゃないという空間で俺は、
「んんっ……はあ、キモチ、イイ……ああ、ああっ」
「気持ちいいんだ? こういうの、好きだったりする?」
すぐ隣に立つ男が耳元でにやつく。一見、触れられていないように見えるが俺のズボンの中から、かすかに低い音が響いている。
両手でつり革に掴まる俺は、腕を縛られているわけでもなんでもない。ただつり革を握りしめて耐える。
「あっ、う、うう、んあっ……もっと、強くして……」
「自分からねだるなんて、はしたない。お望み通りにしてあげよう」
お兄さんは手にしたリモコンを操作する。するとナカに埋め込まれたローターの振動が激しくなった。
「ん! んうう! あっあっ。きもち、いい! ああ、はあ、ん、はあ」
びくびくと腰を揺らしているとお兄さんはそっと顎を撫でてきた。
「ホント可愛いね。持って帰りたいくらいだよ。……ねえ? 君って明日もこの電車に乗ってるの?」
「はあ、はあ……ん、どう、だろうな。教えない、あああ」
カチカチとリモコンのスイッチを押し上げる音がする。
「あああっ。やん、ああああ! は、激し……んん、んく。だ、め、声……押さえられな……ひううっ」
「教えてくれたら、弱めてあげるよ?」
「あっあっ、べ、別に……弱めなく、てもっ、い……いいよ。んんっ!」
「……へえ?」
つり革に掴まっていられなくなった俺を座席に預け、お兄さんも隣に座る。
「じゃあ、駅まで楽しませてもらうよ? いいの?」
「う、うあっ。いい、よ? あっ! お……お兄さん。かっこいいし……んんうう」
狐のように目の細いお兄さんはにっこり笑うと、俺の顎を掴み口づけた。
「んんっ……あ」
「お持ち帰りは駄目なの?」
「はあ、はあ……ん、駄目。明日……ンッ、学校……あんっ、ああっ」
「学生だったんだ。悪い子だね」
結構大きな声を出していたと思うが、どこからも苦情は出なかった。そろそろ駅に着く。
「ちょ……ローター抜いてよ。うぅ、あっ、も、もう降りるから」
「あげるよそれ。また会えたら使ってあげる。はい、お小遣い」
ズボンのポッケにお札を入れてくる。
「……ん。もらって、いいの? んっ」
「いいよ。楽しかったから。マタネ」
ちゅっと最後にもう一度キスをされると同時に、電車のドアが開く。お兄さんにさよならを言ってホームに降りた。
去って行く電車を見送り、改札へ。その前にトイレに駆け込みローターを出した。
「……ふぅ。普通そうな兄ちゃんだったのに、まさかこんなもん持ってるとはな」
えぐいものではない。可愛らしいピンクのやつだ。トイレットペーパーで体液を拭いて、鞄に仕舞う。せっかくだしもらっとこう。また会えるかもしれないし。
「へっへーん。金までもらっちった。羽振りのイイ兄ちゃんだったなー」
たまにこういうことがあるからやめられない。
ポッケに手を突っ込む。感触だけで三千あることは確実だ。
鼻歌を歌いながら駅のすぐ隣へ向かう。ど深夜の田舎。人なんていないだろうと油断していた俺はびくっと肩を跳ねることとなった。
人がいたのだ。それも見知った顔。
「やめなよ。こんなこと」
「……よお。ほたるん。おどかすなよ心臓いてぇ」
駐輪場。街灯の下。眠そうな顔で立っていたのはクラスメイトの蛍川だった。
数ヵ月前。
新しいゲームを探しに電車に乗り込んだ、大雨の日。
(雨の日は人多いんだよな……)
昼間なのに薄暗く、電車内は明かりがついている。いつもはエコで地球優先しているのに。
肩に付いた水滴を払う。自分も含め、全員が傘を持っている。
持ち込まれた傘も濡れている。栄田(えいだ)はお気に入りのジーパンが濡れてしまうのを嫌がり、出入り口から遠ざかった。
目的の店は二つ隣の駅。だいたい十分。スマホゲームで時間を潰せばすぐだ。尻歩ポケットに手を突っ込む。あれ。無い。あ、鞄の方に入れたんだった。
(そろそろ真剣にレベル上げるか。装備でごり押しするのきつくなってきた)
目当ての薄い板を発掘した時だった。
「――……」
ぞくりと背筋が寒くなった。
片手をつり革、もう片手でスマホを持ったままそろそろと振り返る。……灰色のスーツ姿のおじさんと目が合った。笑顔だ。なんでこんな。背中にぴったり張り付くように立ってるんだ?
目線を下げる。
おじさんの手は俺の尻を触っていた。
「……? ……。……は?」
頭が真っ白になる。乗り慣れた電車。見慣れた車内広告。車窓にはいつもの風景が左へ流れていく。
硬直していると、強く尻を掴んでいる指がもみもみと動く。
「――っひ」
小さな悲鳴を上げる。自分の声とは思えない高い声が出た。慌てて周囲を見るが誰もこちらを見ていなかった。電車内って意外とうるさいからね。
(……って、なんで俺が周囲を気にしてんだ)
揉まれている。お、落ち着け! たった二駅。たった二駅だ。
「んっ、……ぅ」
いつまで触ってんだ野郎の尻を。何が楽しい。
我慢しようと思ったが腹が立ってきた。ガツンと言ってやろうと思い、もう一度振り向こうとするが、
「うあっ」
脇の下から伸びてきた手に乳首を摘まれた。服の上から指で転がすように遊ばれる。
「ちょ、やだ」
俺の身体は気持ち悪いことに敏感だ。胸でも感じてしまうほど。これのせいで中学の頃は散々だった。
身を捻るもおじさんは後ろから俺をがっちり抱きしめている。なんか動きにくいなと思ったら両手が塞がっているのだ。だが、パニックになっていた俺はスマホを持ったままおたおたするだけになっている。
「なんで? なんっ」
尻を揉んでいた右手が太ももの内側を撫でる。気持ち悪い。血管の浮いた手がジーパンを引っ掻く。
「ぉ、おい」
少しだけ大きな声を出したつもりだったのに、実際の声は驚くほど弱々しかった。おじさんは耳に唇を近づける。
「どうしたんだい? 随分、顔色が良くないね。おじさんが支えていてあげるよ」
結構だ。走行中だが今すぐ電車から降りろ。
「い、いやだ。ぅん、触るなって……」
「君、たまに見かけるけど、可愛いなって思ってたんだ。反応もいいね」
可愛いわけないだろ眼球腐ってんのか!
怒鳴りたいのに俺の口からは甘い声が出るだけだった。嫌でも中学の時に同級生複数にされたことを思い出す。
胸と股間を同時に摩られる。
「……んっ」
「声出してもいいよ? 乗車してる人に見てもらおっか? 興奮するかもよ?」
五指がバラバラに動き胸の突起を刺激する。波紋のように広がる不快感と快楽に身を縮こませる。
「う、ん。やだ、そこ。やめ、やめ……う、あ」
「ん? ここが良いの? 胸で感じるなんていやらしいね」
「はぁ……う、耳元でっ喋るな……んっ」
熱い吐息を繰り返しながらちらっと周囲を確認する。こんなご時世だ。誰もが下を向いてスマホに夢中になっている。近くにいる人もイヤホンで曲を聞いていた。
「やだ……やだよ」
「んふふ。ビクビクしちゃって可愛いね。もっと乱れてみようか」
おじさんの手がズボンのチャックを下ろす。こんなところで……! と俺の頭は熱くなった。払いのけたいが、俺はつり革につかまってようやく立てている状態だ。
「湿ってるねぇ」
「……んんっ」
ズボンに入り込んだ手。下着の上から先端を指で突かれる。太もも同士を擦り合わせるも手の動きは止まらない。思わず腰を引くと尻に固いものが当たった。逃げられない。手はもっと深く潜り込んでくる。
「ここはどうかな?」
「は……やだ、あ、ンッ、そこ触っ……ああん、あ、あっ、胸、も、引っ掻かない、でぇ」
「胸が良いの?」
ズボンから手を出すと、両手が胸に添えられる。
「やだ……はあ……はあ……っ」
両方なんて耐えられない! そう思った時、電車が一つ目の駅に着いた。ぷしゅーとドアが開くなり、降りる駅ではなかったが飛び出した。
(こわい。こわいこわい!)
ゲームを買う気なんて消え去り、男子トイレに閉じこもって一時間ほど震えていた。
「……」
「それ以来、電車で触られるのにハマっちまってな」
「回想と感想が一致してないんだけど?」
ドリンクバーでカルピスとメロンソーダを混ぜたミックスジュースを飲んでいる蛍川が微妙な顔をしている。
「震えてたんじゃないの?」
「あ? ああ。怖かったよ。でもそれから一人でヤっても『なんか違うんだよなぁ』ってなってな」
コーラとウーロン茶を混ぜたジュースを一口。
「すげー。ゲボ不味い」
手の甲でグラスを遠ざける。
「……だからコーラとカルピスにしなって言ったのに」
「カレーみたいにうまい具合に包み込んでくれると思ったんだよ。コーラが」
「カレー注文する?」
渡されたメニュー票をメニュースタンドに戻す。
「で、一人でオナってても物足りないから他人に触ってもらえる、且つ、他人に見られないかとハラハラできる場所! で探したら電車しかないって結論になったんだ。俺天才じゃね?」
「ファミレスでこんな話聞きたくない……」
眉を八の字にしてストローを吸っている。
「痴漢被害に合って嫌な思いをしてる人もいるって言うのに、君ってやつは。金まで受け取ってるし」
「まあまあ、こう考えろよ。俺が痴漢を引き受けてやってんだよ。これで痴漢被害に悩む男女が減るって話だ。悪くないだろ? それにほら。ここは俺がおごってやるし」
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