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第二部五章 海底の闇
砕けた偶像
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「母上、あの像の女の人は誰なんですか?」
幼い頃、そう母に尋ねたことがある。
母は小声で
「犠牲の天人よ」
そう応えた。
「犠牲の天人」と…
海底の国アクアミューズ。私達もかつては地上(ユートピア)に住んでいた。
海岸線に沿って居を構え
海と陸を自由に行き来できた。
それが今では光も届かぬ海の底で海面を見つめながら暮らしている。
かつて憎しみの対象でしかなかった人を羨み、地上へと想いを馳せる。
足を手に入れ地上に出ても海底で暮らしていた皮膚は太陽の光に耐えることが出来ない。
数年、地上で暮らすと皮膚がめくれ死にいたる病にかかる。
それを恐れ日中は光から身を隠し、夜に活動するようになる。
そして気がつくのだろう。
足を手にいれても決して人にはなれないと…
そして懐かしく思うのだろう。
アクアミューズの夜光虫の淡く優しい光を…
「救いの天人」
それは魚人なら誰もが知っている童話だ。
むかし、むかし心優しい魚人のオロールが溺れている少女を助けました。
少女は自分の名前もどこから来たのかも覚えていませんでした。
オロールは彼女にアーシャと名づけ献身的に彼女の面倒を見ました。
オロールの優しさに惹かれいつしかアーシャはオロールに恋心を抱くようになり、オロールもアーシャに強く惹かれました。
でもオロールはアーシャに秘密にしていたことがありました。
オロールはアクアミューズの王子で、すでに婚約者がいることを…
海底国アクアミューズも一日中、闇につつまれているわけではない。
地上が晴天の場合、一時間~二時間程度だが光が差す。
しかし、その光すら差し込まなくなった。
オロールは対策に追われ
アーシャに会う時間がとれなくなる。
そんな時、アーシャはオロールの本当の身分と婚約者がいることを知る。
日が差し込まなくなって半年が経とうとした時、一筋の光が海底から海上へと走った。
それは全身が聖なる光に包まれたアーシャだった。
アーシャの体は海面にぶつかると粉々に砕けて光の粒になって海中に降り積もる。
今、アクアミューズは暗闇に閉ざされることはない。
夜光虫が闇を照らしてくれるから。
全てを知ったオロールは
アーシャの後を追って命を断ってしまう。
救いの天人は自らの光を放ち命を散らしたのだ。
美徳として語られる「救いの天人」の話を母は好きではなかった。
一度だけ母がこぼしたことがある。
「これは救いの天人の話ではなくて犠牲の天人の話よ。人は自分も幸せにならなくてはいけないのよ。
アーシャはオロールに命を救ってもらったけど、結局はオロールのために命を散らしたのよ。
誰かの犠牲によってもたらした安寧は続かないのよ。いい?貴方は誰かを犠牲にするような指導者にはならないでね。」
武具を片手に自らの光を放つクリスティーナが救いの天人に見えた。
と、同時に母の言葉がリフレインする。
犠牲の天人……
クリスティーナの肩に火の鳥がとまる。
そして頭上に白い鳩が…
光を放つクリスティーナ達を私はただ見つめていた。
幼い頃、そう母に尋ねたことがある。
母は小声で
「犠牲の天人よ」
そう応えた。
「犠牲の天人」と…
海底の国アクアミューズ。私達もかつては地上(ユートピア)に住んでいた。
海岸線に沿って居を構え
海と陸を自由に行き来できた。
それが今では光も届かぬ海の底で海面を見つめながら暮らしている。
かつて憎しみの対象でしかなかった人を羨み、地上へと想いを馳せる。
足を手に入れ地上に出ても海底で暮らしていた皮膚は太陽の光に耐えることが出来ない。
数年、地上で暮らすと皮膚がめくれ死にいたる病にかかる。
それを恐れ日中は光から身を隠し、夜に活動するようになる。
そして気がつくのだろう。
足を手にいれても決して人にはなれないと…
そして懐かしく思うのだろう。
アクアミューズの夜光虫の淡く優しい光を…
「救いの天人」
それは魚人なら誰もが知っている童話だ。
むかし、むかし心優しい魚人のオロールが溺れている少女を助けました。
少女は自分の名前もどこから来たのかも覚えていませんでした。
オロールは彼女にアーシャと名づけ献身的に彼女の面倒を見ました。
オロールの優しさに惹かれいつしかアーシャはオロールに恋心を抱くようになり、オロールもアーシャに強く惹かれました。
でもオロールはアーシャに秘密にしていたことがありました。
オロールはアクアミューズの王子で、すでに婚約者がいることを…
海底国アクアミューズも一日中、闇につつまれているわけではない。
地上が晴天の場合、一時間~二時間程度だが光が差す。
しかし、その光すら差し込まなくなった。
オロールは対策に追われ
アーシャに会う時間がとれなくなる。
そんな時、アーシャはオロールの本当の身分と婚約者がいることを知る。
日が差し込まなくなって半年が経とうとした時、一筋の光が海底から海上へと走った。
それは全身が聖なる光に包まれたアーシャだった。
アーシャの体は海面にぶつかると粉々に砕けて光の粒になって海中に降り積もる。
今、アクアミューズは暗闇に閉ざされることはない。
夜光虫が闇を照らしてくれるから。
全てを知ったオロールは
アーシャの後を追って命を断ってしまう。
救いの天人は自らの光を放ち命を散らしたのだ。
美徳として語られる「救いの天人」の話を母は好きではなかった。
一度だけ母がこぼしたことがある。
「これは救いの天人の話ではなくて犠牲の天人の話よ。人は自分も幸せにならなくてはいけないのよ。
アーシャはオロールに命を救ってもらったけど、結局はオロールのために命を散らしたのよ。
誰かの犠牲によってもたらした安寧は続かないのよ。いい?貴方は誰かを犠牲にするような指導者にはならないでね。」
武具を片手に自らの光を放つクリスティーナが救いの天人に見えた。
と、同時に母の言葉がリフレインする。
犠牲の天人……
クリスティーナの肩に火の鳥がとまる。
そして頭上に白い鳩が…
光を放つクリスティーナ達を私はただ見つめていた。
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