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帝国にて~殿下視点~
聖人君子
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「これは……」
眼下で繰り広げられている肉欲の海に吐き気がおそう。
そもそもこういう行為は愛があってのことだろう…。
これじゃあ…獣だ。
セラフィム様が帝国に来てから闇は減ったと思っていたのに…
まさかこんなにも大勢の貴族達が欲望のまま色事に興じているとは…
「やはりセラフィム様も主と同じなのだな…」
護衛として一緒に行動してくれているメフィストフェレスがため息をつく。
「それはどういう意味でしょうか?」
メフィストフェレスが言葉を選びながら話し始める。
「主やセラフィム様は裁く側に身を置かれる立場だ。
人を裁くとは自分の感情や世論に惑わされない絶対的基準があって、それで善か悪かを判断する事が絶対条件だ。
ルシファーの両親の事件も犯人は自らの意思で殺人を犯したわけではなく、あくまでも病がそうさせたと主は判断して犯人は無罪になった。
でも…それはルシファーからしたら、病だろうが何だろうが両親を殺されたのは紛れもない事実で、殺したことすら罪にならない悪があるならば、殺したことを罪にする正義があってもいいと主に異議を申し出たんだ。」
ズキンと心臓が悲鳴をあげる。
「闇は悪意だ、でも正義と悪は表裏一体だ。
主もセラフィム様もそうなると判断を見誤る。
今回のこの事態も、セラフィム様にとって肉欲は本能であり、薬で操られている時点で悪ではないと判断したのかもしれない……」
ぐうっと心臓が縮まる錯覚に陥る。
「メフィストフェレス様もセラフィム様と同じ考えですか?」
メフィストフェレスは首を横にふる。
「まさか…そこまで悟れたらルシファーの手助けなんかはしなかったよ。
正直、今も私はルシファーの気持ちの方がわかるんだ。
大切な人を目の前で奪われて、二度と会えないのに…
それなのに奪った本人は罪が赦され普通に暮らしている…
奪われた者は嘆き悲しみ泣き暮らすのに…
奪った者は赦されたからといって笑って幸せに暮らすなんて…
どう考えてもおかしいだろう。
今回だって薬物の影響力だとしてもこの状況は……」
眼下には喘ぎながら腰を振る男女が醜悪な姿をさらしている。
「まぁ…ミカエルが一緒だからセラフィム様は大丈夫だろう。」
メフィストフェレスが笑う。
「確かにティナなら…」
あの時、ティナは
『思いっきり悪態をつけばいいんです。
聖人君子になるふりなんてしなくて良かったんです。
赦したくなければ赦さなければ良かったんです。』
何も聖人君子にならなくていいんだ。
怒りの矛先さえ間違わなければ…
「ティナならセラフィム様を平気で振り回せそうですものね。」
私の言葉にメフィストフェレスが笑う。
「さて、そろそろ行きましょうか?」
月明かりが夜の闇に舞う白い鳩と白鳥を美しく輝かせる。
二羽の神鳥が地上へ降り立つと色事に興じる人々を目映い光で包み込む。
「一人も逃すな!!」
待機していた騎士達が一斉に人々を捕縛していく。
母とルシファーを断罪するためにここにいる証人を一人たりとも逃してはいけない。
私は聖人君子ではない。
だから……
ティナの言う通り思いっきり母にルシファーに怒りをぶつけよう。
私の怒りを悲しみを癒せるのは私自身なのだから…
眼下で繰り広げられている肉欲の海に吐き気がおそう。
そもそもこういう行為は愛があってのことだろう…。
これじゃあ…獣だ。
セラフィム様が帝国に来てから闇は減ったと思っていたのに…
まさかこんなにも大勢の貴族達が欲望のまま色事に興じているとは…
「やはりセラフィム様も主と同じなのだな…」
護衛として一緒に行動してくれているメフィストフェレスがため息をつく。
「それはどういう意味でしょうか?」
メフィストフェレスが言葉を選びながら話し始める。
「主やセラフィム様は裁く側に身を置かれる立場だ。
人を裁くとは自分の感情や世論に惑わされない絶対的基準があって、それで善か悪かを判断する事が絶対条件だ。
ルシファーの両親の事件も犯人は自らの意思で殺人を犯したわけではなく、あくまでも病がそうさせたと主は判断して犯人は無罪になった。
でも…それはルシファーからしたら、病だろうが何だろうが両親を殺されたのは紛れもない事実で、殺したことすら罪にならない悪があるならば、殺したことを罪にする正義があってもいいと主に異議を申し出たんだ。」
ズキンと心臓が悲鳴をあげる。
「闇は悪意だ、でも正義と悪は表裏一体だ。
主もセラフィム様もそうなると判断を見誤る。
今回のこの事態も、セラフィム様にとって肉欲は本能であり、薬で操られている時点で悪ではないと判断したのかもしれない……」
ぐうっと心臓が縮まる錯覚に陥る。
「メフィストフェレス様もセラフィム様と同じ考えですか?」
メフィストフェレスは首を横にふる。
「まさか…そこまで悟れたらルシファーの手助けなんかはしなかったよ。
正直、今も私はルシファーの気持ちの方がわかるんだ。
大切な人を目の前で奪われて、二度と会えないのに…
それなのに奪った本人は罪が赦され普通に暮らしている…
奪われた者は嘆き悲しみ泣き暮らすのに…
奪った者は赦されたからといって笑って幸せに暮らすなんて…
どう考えてもおかしいだろう。
今回だって薬物の影響力だとしてもこの状況は……」
眼下には喘ぎながら腰を振る男女が醜悪な姿をさらしている。
「まぁ…ミカエルが一緒だからセラフィム様は大丈夫だろう。」
メフィストフェレスが笑う。
「確かにティナなら…」
あの時、ティナは
『思いっきり悪態をつけばいいんです。
聖人君子になるふりなんてしなくて良かったんです。
赦したくなければ赦さなければ良かったんです。』
何も聖人君子にならなくていいんだ。
怒りの矛先さえ間違わなければ…
「ティナならセラフィム様を平気で振り回せそうですものね。」
私の言葉にメフィストフェレスが笑う。
「さて、そろそろ行きましょうか?」
月明かりが夜の闇に舞う白い鳩と白鳥を美しく輝かせる。
二羽の神鳥が地上へ降り立つと色事に興じる人々を目映い光で包み込む。
「一人も逃すな!!」
待機していた騎士達が一斉に人々を捕縛していく。
母とルシファーを断罪するためにここにいる証人を一人たりとも逃してはいけない。
私は聖人君子ではない。
だから……
ティナの言う通り思いっきり母にルシファーに怒りをぶつけよう。
私の怒りを悲しみを癒せるのは私自身なのだから…
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