あだ花姫は18禁ジャンルからジャンル替えしたいみたいです。

チョコパイ

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第四章 帝国にて~殿下視点~

涙の海へと

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薄暗い牢の中、母は虚ろな瞳で私を見つめる。

「あなたなんかに話す事はないわ…」

抑揚のない母の声から私に何の感情もないことが伝わる。

「クリスティーナが言ったんです。

『時間がもったいないですよ。
実らなかった恋や奪われた幸せを後生大事に抱え込んでいるなんて…』って

私もそう思います。

貴女はもっと父を知ろうとするべきだった。
そうしたら気がついたはずです。

父がどれ程、貴女を愛していたか…

貴女は罪を償って下さい。

私は貴女を……」

こみ上げてくる涙をのみこむ。

顔色一つ変えない母を見つめる。

「私は貴女を赦すことはないでしょう。

それでもこの言葉だけは貴女に伝えたくて…

母上、私に生命をあたえてくれてありがとうございました。

貴女が私を愛していなくても、私は……
私は……母上の事を愛しています。

もう二度と会うことはないでしょう。

どうかご自分の犯した罪と向き合ってください。」

頭を深々と下げるとそのまま背を向け部屋を後にする。

神鳥に変化しティナとよくおしゃべりした木の枝へと止まる。

私は母のようにはならない。
なりたくない。

だから…


息子が背を向け去っていく。

泣きそうになるのをぐっとこらえる。

種族が違ったからか、なかなか子を授かることが出来なかった。

そんな時、夫の元婚約者が側妃として宮中へやって来た。

一夫一妻制度の天界と違って、ここでは政の為に婚姻関係を結ばなくてはいけないことを知っていた。

だから側妃が来ても自分は平気だと信じていた。

私は夫など愛していないのだから……
あくまでもこの関係は私が地上で生きていくための隠れ蓑なのだから…

でも…側妃に子供ができたと聞いた時、初めて夫に怒りを感じた。

私を抱きながら

「愛している。
貴女だけを誰よりも愛している……」

何度も何度も囁きながら、他の女とも身体を繋げ子まで作ったのだから……

ポロポロと涙がこぼれ落ちる。  

息子…私の息子……

手のかからない本当に優しい子。

でも愛せなかった。
セラフィム様を愛したように… 

息子も夫も愛せなかった。

『時間がもったいないですよ。
実らなかった恋や奪われた幸せを後生大事に抱え込んでいるなんて…』

ミカエルが言った言葉が胸に刺さる。

時間がもったいない…か……

振り替えれば三十年以上、セラフィム様に囚われていた。

言葉の重みが今なら理解できる。

実らなかった恋……

花さえ咲かなかった恋だった。

何故ならウリエルがあらわれたから…

違う……
本当はとっくに気がついていた。

私がセラフィム様に想いを告げられなかったから……

ずっとセラフィム様に告げられなかった言葉が涙に変わっていく。

薄暗い部屋に夕焼けの絞ったばかり茜色がさし込む。

私は…私は……
声を張り上げ泣き続ける。

セラフィム様への想いが私を涙の海へと沈めていった。
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