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帝国にて~殿下視点~
静かな祈り
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「陛下にお願いがあります。」
リオン公爵夫人が頭を深々と下げる。
「言ってみよ。」
リオン公爵と夫人は皇后の裁判が終わったら離縁することが決まっている。
私としては離縁せず、息子とクリスティーナの側で支えて欲しかったのだが、二人の意志は固く覆すことが出来なかった。
「ラファエ…皇后と話をさせて下さい。」
肩を震わせながら頭を下げる夫人。
「リオンから聞いているだろう…アレはかなり変わってしまった。
夫人の為にも会わぬ方が……」
「いえ……」
私の言葉を遮り夫人が話し始める。
「もう逃げないとクリスティーナと約束したんです。」
夫人が私の目をまっすぐ見つめる。
「本当はずっと前から知っていたんです。
ラファエルが私の事を憎んでいることも、何か良からぬ事をしていることも……
でも怖かったんです。
私にとってラファエルはたった一人の友人だったから…
だから…最後くらい逃げずにラファエルと向き合いたいんです。」
淀みのない眼差しが夫人の覚悟を物語る。
「わかった。護衛に話をつけておこう。
では、私からもお願いしてもいいかな?」
夫人はコクリと頷く。
「公爵との離縁する理由は何だ?
私からすると二人はまだお互いに想いあっているように思えるのだが…」
夫人はにこやかに微笑む。
「だからでしょうね。
想いがあるからこそ別れるしかないのです。
お互いが互いを見つめる度に己の犯した罪を否応なしに思い出すんです。
公爵は私が公爵邸で冷遇されていたことに気がつかなかった事を…
私は大切な娘を陥れる手助けをしていた事を…
何より…母として妻として家族に赦しを乞うためにも家族と離れて罪を償いたいんです。
自分自身を見つめ直すためにも、私の力を必要としてくれる人達の力になりたいのです。」
リオンから夫人は各地に散らばった闇を祓う旅に出ると聞いていた。
今の夫人ならもしかしたら…皇后の闇を祓えるかもしれない。
彼女が私を愛してくれていなかったとしても私は間違いなく彼女を愛していた。
「陛下は大丈夫なんですか?」
夫人の声で我にかえる。
「あぁ…問題ない。
こちらで皇后に会えるよう手配しておく。
下がっていいぞ。」
あの湖で皇后を見た時、全てを棄ててでも欲しいと願った。
婚約者が居たにもかかわらず…彼女が欲しくて仕方なかった。
あの出会いのときめきも薬で作られたものなのだろうか…
皇后を拘束して四日目、美しかった皇后はまるで老婆のようになってしまった。
輝いていた白い肌は自らの爪で引き裂いたのか赤い傷が身体中いたるところにある。
光を放つ美しい瞳は虚ろで何の景色も映すことはない。
何より翼が根本から腐り落ちてしまったのだ。
私は従者にリオン夫人を皇后の牢へと案内するよう命じる。
夫人が皇后の心を少しでも救ってくれることを祈って……
リオン公爵夫人が頭を深々と下げる。
「言ってみよ。」
リオン公爵と夫人は皇后の裁判が終わったら離縁することが決まっている。
私としては離縁せず、息子とクリスティーナの側で支えて欲しかったのだが、二人の意志は固く覆すことが出来なかった。
「ラファエ…皇后と話をさせて下さい。」
肩を震わせながら頭を下げる夫人。
「リオンから聞いているだろう…アレはかなり変わってしまった。
夫人の為にも会わぬ方が……」
「いえ……」
私の言葉を遮り夫人が話し始める。
「もう逃げないとクリスティーナと約束したんです。」
夫人が私の目をまっすぐ見つめる。
「本当はずっと前から知っていたんです。
ラファエルが私の事を憎んでいることも、何か良からぬ事をしていることも……
でも怖かったんです。
私にとってラファエルはたった一人の友人だったから…
だから…最後くらい逃げずにラファエルと向き合いたいんです。」
淀みのない眼差しが夫人の覚悟を物語る。
「わかった。護衛に話をつけておこう。
では、私からもお願いしてもいいかな?」
夫人はコクリと頷く。
「公爵との離縁する理由は何だ?
私からすると二人はまだお互いに想いあっているように思えるのだが…」
夫人はにこやかに微笑む。
「だからでしょうね。
想いがあるからこそ別れるしかないのです。
お互いが互いを見つめる度に己の犯した罪を否応なしに思い出すんです。
公爵は私が公爵邸で冷遇されていたことに気がつかなかった事を…
私は大切な娘を陥れる手助けをしていた事を…
何より…母として妻として家族に赦しを乞うためにも家族と離れて罪を償いたいんです。
自分自身を見つめ直すためにも、私の力を必要としてくれる人達の力になりたいのです。」
リオンから夫人は各地に散らばった闇を祓う旅に出ると聞いていた。
今の夫人ならもしかしたら…皇后の闇を祓えるかもしれない。
彼女が私を愛してくれていなかったとしても私は間違いなく彼女を愛していた。
「陛下は大丈夫なんですか?」
夫人の声で我にかえる。
「あぁ…問題ない。
こちらで皇后に会えるよう手配しておく。
下がっていいぞ。」
あの湖で皇后を見た時、全てを棄ててでも欲しいと願った。
婚約者が居たにもかかわらず…彼女が欲しくて仕方なかった。
あの出会いのときめきも薬で作られたものなのだろうか…
皇后を拘束して四日目、美しかった皇后はまるで老婆のようになってしまった。
輝いていた白い肌は自らの爪で引き裂いたのか赤い傷が身体中いたるところにある。
光を放つ美しい瞳は虚ろで何の景色も映すことはない。
何より翼が根本から腐り落ちてしまったのだ。
私は従者にリオン夫人を皇后の牢へと案内するよう命じる。
夫人が皇后の心を少しでも救ってくれることを祈って……
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