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決定的な瞬間というのは、もっと劇的な何かとともに訪れると思っていた。
会社の飲み会は苦手だ。気を遣わなきゃいけなくて居心地が良くない割に、出てくる料理だって大して美味しくない。でも同じ部署に好きな女性がいる僕は、いつも我慢して出席していた。
その日も我慢の甲斐あって彼女と話すことができた。同じテーブルでお酒を飲みながら会話ができる。それだけでも、僕は胸が躍っていたんだ。
彼女の方もいつも優しく僕に笑いかけてくれる。他愛無い話にも、丁寧に相槌を打ってくれる。きっと、彼女も僕のことを好いてくれてるんだと思っていた。
お開きの時間になって、二次会の話をしながら店を出る。僕はもう帰りたかったけれど、彼女が行くなら僕も行こうかな……。そういえば、彼女はどこだろう?
キョロキョロと辺りを見渡してみると、すぐに彼女の姿が見つかった。何故かみんなと少し離れた場所にいる。しかも、隣には男が。
二人を見ていると、男は彼女の肩を抱くような仕草をして、それに対して彼女は嫌がる素振りもなく、笑って男の手を軽くつねっていた。
「ちょっと、こんなところでやめてよ」
「いいじゃんちょっとくらい!もう帰る?」
「どうしよっかな……」
「俺もう眠い……お前んちで寝させてよ」
「はいはい」
ただの同僚にしてはあり得ないやりとり。血の気が引いていくのが分かる。
彼女は、あいつと付き合っていたの?
僕のこと、好きじゃなかったの?
いつも僕は君を見ていて、君の笑顔や困った顔、色んな些細な仕草に振り回されていたのに、君は僕を何とも思っていなかったの?
僕を、弄んでいたの?
呼吸が不自然に深くなるのを感じて、そそくさとその場を離れた。冷静にならないと。ここは同僚も上司もいる。みっともない姿を見せるわけにはいかない。
駅へ向かいながら、さっき見たことを思い出す。
やっぱり何度考えても、彼女は僕が好きに違いない。それなのに、なんであんな男と親しくしていたんだ?
どうして
いやだ
好き
消えろ
騙された
考えは纏まらず、ぐるぐるとループしては僕を苦しめる。さっき飲んだ酒のせいか、吐きそうだ。
胸を抑えてのろのろと駅へ向かいながらも、脳内ではさっきの光景が思い出され、そうかと思えば彼女やあの男への感情が渦のように沈んでは浮かび上がる。
家に着くと、そのまま着替えもせずベッドに倒れ込んで気を失った。
*
目が覚めると朝の六時だった。普段なら慌てるけれど、今日は休みだ。ゆっくりシャワーを浴びると、少しスッキリした。
珈琲を飲みながら、ぼんやりと窓の外を見る。雀がベランダで鳴いていた。
昨日のことを思い返すと、意外にも僕はすごく冷静に振り返ることができた。
やっぱり、昨日の光景は事実なんだろう。理由は分からないけれど彼女は同僚の男に触られていて、家に行きたいみたいなことを言われていた。そして、それを見た僕は不愉快な思いをして、彼女はきっと怖い思いをしていたに違いない。
解決策は一つしか思いつかなかった。
「待ってて、僕が守ってあげる……」
会社の飲み会は苦手だ。気を遣わなきゃいけなくて居心地が良くない割に、出てくる料理だって大して美味しくない。でも同じ部署に好きな女性がいる僕は、いつも我慢して出席していた。
その日も我慢の甲斐あって彼女と話すことができた。同じテーブルでお酒を飲みながら会話ができる。それだけでも、僕は胸が躍っていたんだ。
彼女の方もいつも優しく僕に笑いかけてくれる。他愛無い話にも、丁寧に相槌を打ってくれる。きっと、彼女も僕のことを好いてくれてるんだと思っていた。
お開きの時間になって、二次会の話をしながら店を出る。僕はもう帰りたかったけれど、彼女が行くなら僕も行こうかな……。そういえば、彼女はどこだろう?
キョロキョロと辺りを見渡してみると、すぐに彼女の姿が見つかった。何故かみんなと少し離れた場所にいる。しかも、隣には男が。
二人を見ていると、男は彼女の肩を抱くような仕草をして、それに対して彼女は嫌がる素振りもなく、笑って男の手を軽くつねっていた。
「ちょっと、こんなところでやめてよ」
「いいじゃんちょっとくらい!もう帰る?」
「どうしよっかな……」
「俺もう眠い……お前んちで寝させてよ」
「はいはい」
ただの同僚にしてはあり得ないやりとり。血の気が引いていくのが分かる。
彼女は、あいつと付き合っていたの?
僕のこと、好きじゃなかったの?
いつも僕は君を見ていて、君の笑顔や困った顔、色んな些細な仕草に振り回されていたのに、君は僕を何とも思っていなかったの?
僕を、弄んでいたの?
呼吸が不自然に深くなるのを感じて、そそくさとその場を離れた。冷静にならないと。ここは同僚も上司もいる。みっともない姿を見せるわけにはいかない。
駅へ向かいながら、さっき見たことを思い出す。
やっぱり何度考えても、彼女は僕が好きに違いない。それなのに、なんであんな男と親しくしていたんだ?
どうして
いやだ
好き
消えろ
騙された
考えは纏まらず、ぐるぐるとループしては僕を苦しめる。さっき飲んだ酒のせいか、吐きそうだ。
胸を抑えてのろのろと駅へ向かいながらも、脳内ではさっきの光景が思い出され、そうかと思えば彼女やあの男への感情が渦のように沈んでは浮かび上がる。
家に着くと、そのまま着替えもせずベッドに倒れ込んで気を失った。
*
目が覚めると朝の六時だった。普段なら慌てるけれど、今日は休みだ。ゆっくりシャワーを浴びると、少しスッキリした。
珈琲を飲みながら、ぼんやりと窓の外を見る。雀がベランダで鳴いていた。
昨日のことを思い返すと、意外にも僕はすごく冷静に振り返ることができた。
やっぱり、昨日の光景は事実なんだろう。理由は分からないけれど彼女は同僚の男に触られていて、家に行きたいみたいなことを言われていた。そして、それを見た僕は不愉快な思いをして、彼女はきっと怖い思いをしていたに違いない。
解決策は一つしか思いつかなかった。
「待ってて、僕が守ってあげる……」
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