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金曜日の退勤後は、同じ部署の彼女と夕食を食べて帰るのが常だった。通い慣れた店と、彼女が発掘してくる新しい店。どちらに行くのも楽しかった。
食事を終えて店を出ると外はもう真っ暗で、一人で彼女を帰すのは心配だったから、家まで送ることにした。土日は何をしようか?そんな話をしながら彼女と歩く帰り道。お互いにスーツ姿だけど、仕事を忘れて他愛ないことを話せるこの時間が好きだった。

「ねぇ、明日は植物園に行ってみない?この時期しか見られない花がたくさん咲いてるんだって!」
「へえ、そうなんだ。いいよ、行こうか」

本当は植物なんて別に興味ない。一人だったら絶対行かない。でも、彼女と出かけるのは楽しみだ。彼女は花が好きだから、きっと明日も一日中ニコニコしているんだろうな。
まだ付き合って半年ほどだけど、彼女といるとリラックスできる。彼女とだったら結婚してもうまくやっていける気がするんだ。少し気が早いかもしれないけれど、そんなことを思うほど俺は彼女とのことを真剣に考えていた。

「なぁ、来週はさ……」

来週の休み、俺の実家に行ってみないか?そう言おうとした次の瞬間、頭に強い衝撃を感じてその場に倒れ込んだ。
何が起きたんだ?
目がチカチカするが、不思議と痛みはない。ショック状態で神経が麻痺しているんだろう。震える手でなんとか頭に触れてみると、ぬるりとした感触がして、見るまでもなく出血しているんだと分かった。
通り魔か?彼女は無事に逃げただろうか?近くで彼女の悲鳴が聞こえた気がしたけど、それもすぐに途切れた。
急いで立ち上がらなければならないのに、何故か意識がぼんやりし始める。俺自身や彼女の身に何があったのか確認することもできず、次に気がついたときはたった一人、病院のベッドの上だった。
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