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男装令嬢とドレス ③
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舞踏会では、主役の私達が一番最初に踊る。
みんなの前で、しかも女性として踊る事に緊張した。
けれど、前と同じように私に向かって微笑むカラムを見ていたら安心した。
「アデル……君が男装で良かったと思う」
「どうして?」
カラムのリードでクルリと回れば、ドレスの裾もクルリと広がる。
「他の男の君を見る目が、みんな惜しい事をしたのだと物語っている」
「そんなわけないだろ……」
「他のやつらに見つけられる前に、見つけられて良かった」
そう言って笑うカラムは、いたずらっ子みたいにクスクスと笑っていた。
曲が終わる頃に、床に片膝を着いたカラムは、私の手をとって手の甲に口付けた。
「アデル……君を一生愛する事を誓う」
プロポーズみたいだった……。
「私……も……」
真っ赤になった私にカラムは満足そうに微笑んだ。
◆◇◆
全てのゲストを見送ってから、カラムと共に私の部屋に戻ってきた。
部屋に入った瞬間にはぁと安堵のため息が出た。
無事?とは言えないかもしれないが、終わって良かった。
「アデル、疲れたか?」
「カラムの方が疲れただろう?」
イザドアの王子として私よりも沢山の人と話していた。
カラムは少し考えてから私の手を取ると、ベッドに腰掛けて私を見上げて微笑む。
カラムを見下ろすのは滅多にない事で新鮮だ。
「そうだな。疲れたからアデルが癒してくれ」
「どうすればいいんだ?」
「そのままでいてくれ……」
そう言いながら腰に腕を回された。
腰にしがみついて甘えるような仕草に、カラムの事が可愛く見えてその髪を撫でた。
「ふふっ。嬉しいぞ……」
「そ、そうか……」
しばらくそのままでいれば、カラムはそっと背中を撫でる。
「カ、カラム。忘れたのか? 私の部屋に泊まる条件は、何もしない事……だ……」
父達とそう約束して、この部屋に戻って来たのだ。結婚するまでは触れ合う事は禁止だそうだ。
「わかっている。それならば、もう少しだけアデルの美しい姿を目に焼き付よう」
「私も……カラムのその姿を……目に焼き付ける……」
カラムは顔をあげると微笑んで私にキスをねだる。
恥ずかしく思いながらも、誓いのキスを交わし合った。
◆◇◆
イザドアにやってきた私達家族は、あまり変わらない日々を過ごしていた。
無事に結婚式も済ませて、カラムと共にレカテリサルの花を守るという仕事を誇りにしていた。
もちろん父や兄達もだ。
ずっと胸焼けがして、体調が悪かった。
仕事を途中で抜けて、医者に診てもらった。その結果を聞いて、驚いていた。
それから少しして、仕事から帰ってきたカラムは、出迎えた私を心配そうに覗き込む。
「アデル! 体調を崩したと聞いたんだ! 起きていて大丈夫なのか!?」
コクリと頷けば、ホッとしたらしい。
そのカラムに大事な事を言わねばならない。
「カラム、私は懐妊しているらしい」
カラムの手を取って騎士服の上から腹を触らせた。
「誠か……!?」
「ああ」
力強く頷けば、カラムの手が私の腹を撫でた。
次の瞬間に破顔して私を強く抱きしめた。
「──良くやったなっ!」
とても喜んでくれて嬉しい。
「カラムは立派な父親になるんだろうな」
カラムの子供はとても豪快で活発な子になるだろう。
「アデルは最強の母親だな! 私達には、また守るものができたんだな!」
嬉しいという気持ちをあふれるほど見せてくれて心が震えた。
カラムは騎士服の母親を認めてくれる。
カラムと共に歩む未来が私を幸せにする。自分らしく生きる事をとても誇りに思った。
みんなの前で、しかも女性として踊る事に緊張した。
けれど、前と同じように私に向かって微笑むカラムを見ていたら安心した。
「アデル……君が男装で良かったと思う」
「どうして?」
カラムのリードでクルリと回れば、ドレスの裾もクルリと広がる。
「他の男の君を見る目が、みんな惜しい事をしたのだと物語っている」
「そんなわけないだろ……」
「他のやつらに見つけられる前に、見つけられて良かった」
そう言って笑うカラムは、いたずらっ子みたいにクスクスと笑っていた。
曲が終わる頃に、床に片膝を着いたカラムは、私の手をとって手の甲に口付けた。
「アデル……君を一生愛する事を誓う」
プロポーズみたいだった……。
「私……も……」
真っ赤になった私にカラムは満足そうに微笑んだ。
◆◇◆
全てのゲストを見送ってから、カラムと共に私の部屋に戻ってきた。
部屋に入った瞬間にはぁと安堵のため息が出た。
無事?とは言えないかもしれないが、終わって良かった。
「アデル、疲れたか?」
「カラムの方が疲れただろう?」
イザドアの王子として私よりも沢山の人と話していた。
カラムは少し考えてから私の手を取ると、ベッドに腰掛けて私を見上げて微笑む。
カラムを見下ろすのは滅多にない事で新鮮だ。
「そうだな。疲れたからアデルが癒してくれ」
「どうすればいいんだ?」
「そのままでいてくれ……」
そう言いながら腰に腕を回された。
腰にしがみついて甘えるような仕草に、カラムの事が可愛く見えてその髪を撫でた。
「ふふっ。嬉しいぞ……」
「そ、そうか……」
しばらくそのままでいれば、カラムはそっと背中を撫でる。
「カ、カラム。忘れたのか? 私の部屋に泊まる条件は、何もしない事……だ……」
父達とそう約束して、この部屋に戻って来たのだ。結婚するまでは触れ合う事は禁止だそうだ。
「わかっている。それならば、もう少しだけアデルの美しい姿を目に焼き付よう」
「私も……カラムのその姿を……目に焼き付ける……」
カラムは顔をあげると微笑んで私にキスをねだる。
恥ずかしく思いながらも、誓いのキスを交わし合った。
◆◇◆
イザドアにやってきた私達家族は、あまり変わらない日々を過ごしていた。
無事に結婚式も済ませて、カラムと共にレカテリサルの花を守るという仕事を誇りにしていた。
もちろん父や兄達もだ。
ずっと胸焼けがして、体調が悪かった。
仕事を途中で抜けて、医者に診てもらった。その結果を聞いて、驚いていた。
それから少しして、仕事から帰ってきたカラムは、出迎えた私を心配そうに覗き込む。
「アデル! 体調を崩したと聞いたんだ! 起きていて大丈夫なのか!?」
コクリと頷けば、ホッとしたらしい。
そのカラムに大事な事を言わねばならない。
「カラム、私は懐妊しているらしい」
カラムの手を取って騎士服の上から腹を触らせた。
「誠か……!?」
「ああ」
力強く頷けば、カラムの手が私の腹を撫でた。
次の瞬間に破顔して私を強く抱きしめた。
「──良くやったなっ!」
とても喜んでくれて嬉しい。
「カラムは立派な父親になるんだろうな」
カラムの子供はとても豪快で活発な子になるだろう。
「アデルは最強の母親だな! 私達には、また守るものができたんだな!」
嬉しいという気持ちをあふれるほど見せてくれて心が震えた。
カラムは騎士服の母親を認めてくれる。
カラムと共に歩む未来が私を幸せにする。自分らしく生きる事をとても誇りに思った。
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