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やっぱり一緒じゃないと
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紀子の実家は、代々続く家系だった。そんな厳格な家で、紀子は近嗣の父親との結婚を反対されて、駆け落ち同然で家を出た。
それでも、紀子を心配する両親が、紀子の弟である和希を通して紀子の様子を聞いていた。
紀子もまた、家族の様子を和希に聞いていた。
その為に紀子と和希は定期的に会っていた。
その喫茶店で急に倒れた紀子の為に救急車を呼んだのは和希だった。
今回の事で、紀子の両親と紀子は和解ができた。
みんな近嗣の事を想っての事だそうだ。
美羽は、紀子にも会って挨拶した。
紀子は随分と回復していたようで明日には退院するらしい。
その後は、実家で今後の事を話しながら数日休むそうだ。
美羽と近嗣は、病院の椅子に座って話していた。
あまり人が来ない場所のようで人通りはない。
「俺にじぃちゃんとか叔父さんがいるなんて思ってなかった……。母さんは、家を飛び出した手前、離婚しても俺を一人で面倒見ようと意地になってたみたいだ……」
「なるほどな」
一通り話終わると、病院の販売機から買った飲み物で喉を潤す。
「みぃちゃん、会いに来てくれて……ありがとう」
「……他に言う事は?」
「卒業おめでとう。直接言えて良かった」
優しく笑う近嗣から美羽は視線を逸らす。
本当は、卒業も祝ってくれないのかと拗ねていた。
「僕は……こんなにも振り回されるなんて思わなかった……」
「ごめん。みぃちゃんに連絡できなくて……」
「もしかしたらチカは……僕と別れたいんじゃないかとか、僕が何かしたんじゃないかとか……色々考えてしまった」
「俺がみぃちゃんに黙っていなくなるなんてあり得ない……」
それはそうだと思うのは、こうやって会って顔を見たからかもしれない。
もしも美羽がいくら探しても会えなかったなら、どうしていたのか美羽自身にもわからなかった。
それでも一つだけわかった事がある。
「僕は……チカがいないと……生きて……けな……ぃ……」
美羽の声が段々と小さくなった。けれど、近嗣にはしっかりと届いていて、近嗣を喜ばすには充分だった。
「みぃちゃん……めちゃくちゃ可愛い……」
近嗣は、真っ赤になった美羽の顔を覗き込んでくる。美羽は、その近嗣の顔を手で押した。
「見るな……恥ずかし過ぎる……」
「もっと見せて……」
「ふざけるな……チカは良くこんな恥ずかしい事を言えたな……」
付き合う時に言われた言葉を美羽はちゃんと覚えていた。
同じように言ってはみたが、美羽は恥ずかしくて仕方がない。
「本当の事だよ……。俺もみぃちゃんがいないと生きてけない……」
美羽の顔が熱くなった。
言っても言われても恥ずかしいのだと知る。
グイグイと押していたら、近嗣に両腕を掴まれて動けなくなってしまった。
年下なのに身長も力も近嗣の方が上だ。
それを悔しいと思うけれど、受け入れつつある。
近嗣の嬉しそうに綻んだ顔を見て、美羽は抵抗をやめた。いつだって近嗣に夢中なのは美羽の方だった。
近嗣の顔が近付く。
「おい……ここは病院だぞ……」
「誰もいない……」
「誰か来るかも……」
「誰も来ない……」
「チカ……──んっ」
触れ合った唇が熱かった。
近嗣はすぐに離れてしまった。
それが淋しいと思ったのは、久しぶりに触れ合ったからかもしれない。
近嗣もそうだったのか、物欲しそうな顔をする。それ見て美羽の胸が疼く。
「みぃちゃんは、今日帰る……?」
「帰る……」
がっかりした近嗣が、捨てられた子犬のように見えた。わしゃわしゃと撫でくりまわして抱きしめてやりたい衝動をなんとか抑え込んだ。
「みぃちゃん……」
(なんて可愛い声で僕を呼ぶんだ……)
美羽の理性が色々と限界だ。腕を掴まれてなかったら衝動に負けて抱きしめていた。
「俺……早く帰るから……俺の家……泊まり来て……」
「あ……ああ! チカの家に行けばいいんだな?」
「帰ったら連絡する……」
二人は今度こそと心に誓う。
近嗣は、もう一度美羽にキスをして優しく微笑んだ。
それでも、紀子を心配する両親が、紀子の弟である和希を通して紀子の様子を聞いていた。
紀子もまた、家族の様子を和希に聞いていた。
その為に紀子と和希は定期的に会っていた。
その喫茶店で急に倒れた紀子の為に救急車を呼んだのは和希だった。
今回の事で、紀子の両親と紀子は和解ができた。
みんな近嗣の事を想っての事だそうだ。
美羽は、紀子にも会って挨拶した。
紀子は随分と回復していたようで明日には退院するらしい。
その後は、実家で今後の事を話しながら数日休むそうだ。
美羽と近嗣は、病院の椅子に座って話していた。
あまり人が来ない場所のようで人通りはない。
「俺にじぃちゃんとか叔父さんがいるなんて思ってなかった……。母さんは、家を飛び出した手前、離婚しても俺を一人で面倒見ようと意地になってたみたいだ……」
「なるほどな」
一通り話終わると、病院の販売機から買った飲み物で喉を潤す。
「みぃちゃん、会いに来てくれて……ありがとう」
「……他に言う事は?」
「卒業おめでとう。直接言えて良かった」
優しく笑う近嗣から美羽は視線を逸らす。
本当は、卒業も祝ってくれないのかと拗ねていた。
「僕は……こんなにも振り回されるなんて思わなかった……」
「ごめん。みぃちゃんに連絡できなくて……」
「もしかしたらチカは……僕と別れたいんじゃないかとか、僕が何かしたんじゃないかとか……色々考えてしまった」
「俺がみぃちゃんに黙っていなくなるなんてあり得ない……」
それはそうだと思うのは、こうやって会って顔を見たからかもしれない。
もしも美羽がいくら探しても会えなかったなら、どうしていたのか美羽自身にもわからなかった。
それでも一つだけわかった事がある。
「僕は……チカがいないと……生きて……けな……ぃ……」
美羽の声が段々と小さくなった。けれど、近嗣にはしっかりと届いていて、近嗣を喜ばすには充分だった。
「みぃちゃん……めちゃくちゃ可愛い……」
近嗣は、真っ赤になった美羽の顔を覗き込んでくる。美羽は、その近嗣の顔を手で押した。
「見るな……恥ずかし過ぎる……」
「もっと見せて……」
「ふざけるな……チカは良くこんな恥ずかしい事を言えたな……」
付き合う時に言われた言葉を美羽はちゃんと覚えていた。
同じように言ってはみたが、美羽は恥ずかしくて仕方がない。
「本当の事だよ……。俺もみぃちゃんがいないと生きてけない……」
美羽の顔が熱くなった。
言っても言われても恥ずかしいのだと知る。
グイグイと押していたら、近嗣に両腕を掴まれて動けなくなってしまった。
年下なのに身長も力も近嗣の方が上だ。
それを悔しいと思うけれど、受け入れつつある。
近嗣の嬉しそうに綻んだ顔を見て、美羽は抵抗をやめた。いつだって近嗣に夢中なのは美羽の方だった。
近嗣の顔が近付く。
「おい……ここは病院だぞ……」
「誰もいない……」
「誰か来るかも……」
「誰も来ない……」
「チカ……──んっ」
触れ合った唇が熱かった。
近嗣はすぐに離れてしまった。
それが淋しいと思ったのは、久しぶりに触れ合ったからかもしれない。
近嗣もそうだったのか、物欲しそうな顔をする。それ見て美羽の胸が疼く。
「みぃちゃんは、今日帰る……?」
「帰る……」
がっかりした近嗣が、捨てられた子犬のように見えた。わしゃわしゃと撫でくりまわして抱きしめてやりたい衝動をなんとか抑え込んだ。
「みぃちゃん……」
(なんて可愛い声で僕を呼ぶんだ……)
美羽の理性が色々と限界だ。腕を掴まれてなかったら衝動に負けて抱きしめていた。
「俺……早く帰るから……俺の家……泊まり来て……」
「あ……ああ! チカの家に行けばいいんだな?」
「帰ったら連絡する……」
二人は今度こそと心に誓う。
近嗣は、もう一度美羽にキスをして優しく微笑んだ。
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