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ロリは彼と共に戦う事にした

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 その日の夕食前。
 ドルーガはライネベルテを連れてダンデ王の部屋を訪れていた。

「何じゃい、二人揃って。何の用だ?」
「父上!オラは…大切なものを見つけたんだ。だから…」

 彼はライネベルテの手を握っていた。彼女もドルーガを見て微笑んでいる。
 ダンデはそれを見て全てを理解し「フッ」と笑った。

「そうか…!良かったじゃないか。魔獣が攻めてくる前に見つけられて。
 だから戦いが始まる前に国へ帰らせて、終わるころにまた連絡を取り合うとエエ…」
「だから…オラはロリと一緒に魔獣と戦う!!!」
「何でそうなるんじゃバカタレーー!!!」

 ダンデは持っていたハンマーで、息子をどついた。

 しばらくして。

「…本当に、マルロワへ帰らずにここに残るのかい?!ロリちゃんや」
「ええ。もう、決めましたの」

 キッパリ言うライネベルテに、ダンデはまだ困惑している。

「ま、まあ百歩譲ってそれはいいとしよう。
 しかしだなロリちゃん。ドルーガと共に戦場に出るなんて…父親のレイドラントが聞いたら、泡を吹いて倒れるぞい」
「大丈夫だ父上。オラ達は前線には出ない。
 オラももう良い大人だからな、ちゃんと指揮も取らなきゃいけない事は理解している。
 昔のように一人で前に突っ走れなくなるのは残念だが…今回は後方支援で我慢する。ロリの為にもな」
「ドルーガ…!お前、大人になったな…」

 ダンデは驚き、そして感心した。

「じゃあ父上、また夕食時に」
「それでは失礼致しますわ」

 ライネベルテとドルーガは、仲良く退室した。しかし、閉まった扉の向こうからは、

「…よし!上手く父上を騙せたな!
 明日からは魔獣を倒すために、二人で猛特訓だ!!」
「はい!ドラ様!
 ロリはもっと分厚い障壁を作る訓練をしますわ!障壁ごと魔獣に体当たりしてやりますわよ!!」
「おっ!頼もしいなロリ!!一体でも多く倒そうな!!」
「ええ!」

 …と、元気な声が聞こえてきた。

「………全部筒抜けだぞい………」

 ダンデは呆れた。




・・・・・・・




 ライネベルテとドルーガは、ダンデの他にもう一人説得した。ナッジだ。

「ロリ様と共に戦場へ出向こうなんて馬鹿なんですね」と、もはやいつもの大声ツッコミではなく真顔で淡々と言われた。
 これはこれで中々怖い。

 しかし、ドルーガは真剣な表情で言った。
「これは彼女が本気で望んでいる事であり、オラも同じだ。ずっと二人でいたい。父と母のようにお互いを思い合える存在に出会えたんだ」と。
 これにはナッジも思う所があった。
 真面目な顔をして、静かに「…絶対、ロリ様に傷一つつけてはいけませんからね」と念押ししたのだった。

 それから数日の間、ライネベルテとドルーガは特訓した。
 特にライネベルテは成長が著しく、ついに一瞬だけだが、ドルーガの大槍でも貫けないほどの頑丈な障壁を作ることに成功した。

 その間、魔獣は周囲に全く現れなかった。本当に不気味で、まるで嵐の前の静けさだった。

 ライネベルテは特訓前にマルロワへ手紙を書いていた。マルロワへは帰らないという事を。
 返事が来て驚いた。てっきりレイドラントが猛反対するかと思ったら、そうでもなかったのだ。ただただ身体に気をつけて欲しいとあるのみだった。筆跡は確かに本人だったのに。

 …何か怪しい。ライネベルテはそう直感した。もしかしたら、マルロワで不測の事態が起きているのかもしれないと。
 しかし、自分一人が帰った所でどうしようもないだろう。ここは父や兄達を信じて、魔獣との戦いに専念しよう…そう思った。

 特訓を始めて一週間になろうとしたその日の朝。

 ついに、北から魔獣達が攻めてきたと報告があった。
 ヤツらは三方向に向かって進んでいた。一つは東のマルロワへ、もう一つは南のアイシスへ、残りは…この城だった。

 特にアイシスへは向かう魔獣の数が多いと聞いた。そのためダンデ王自ら指揮を取り戦う事となり、タナノフとアイシスの国境へと兵を連れて向かった。





・・・・・・・





 ダンデは、出撃前にとある場所でとある人物と会っていた。

「…行ってしまうのね」
「ああ。城の事はドルーガとニッチに任せておる。お前も気をつけろよ」
「心配しないで。何年も鞭を振り続けてきたのよ。そんじょそこらの魔獣が襲ってきても、負けないわ」
「カカッ!頼もしいな。
 …なぁ、ドルーガが将来の伴侶を見つけたようなんだ。彼女はまだ未成年だが、成人してヤツと結ばれた際には、ワイは王位を譲って隠居しようと思っている。そうしたら…」
「…それ以上は言わないで。まずは魔獣との戦いに専念して頂戴。
 どうか、無茶だけはしないでね。もしここへ帰ってこなかったら、黄泉の国まで追いかけてシバくんだから!」
「おお、怖い怖い。…じゃあな、デボネ」

 彼はそう言って立ち去った。
 彼女も自分の持ち場へと戻り、仕事を再開した。

「お前達!!何をちんたらやってるんだい?!早くこの木材を運ばないと魔獣が来るよ!!
 魔獣にやられるのと、アタイの鞭でシバかれるのとどっちがお好みだい?!!!」
「ヒイイイイイ!!!すみませんドミナ様ーーー!!!」

 今日も、彼女は絶好調である。

 残されたドルーガ達は、城から少し離れた場所に陣を取った。
 魔獣は何故か各国の王族を狙ってやってくると聞いていたため、標的であるドルーガとライネベルテが一緒にいるのはかなり危険であった。しかし、二人は決して離れようとはしなかった。

 そして、いよいよ魔獣との戦いが始まるのである。
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