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第9章 『思想の神』と『英雄』編
第221話 「話し合い」が終わった後は
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ひとまずは納得してくれたらしいウルハンガの身から立ち上っていた『光の巨人』は姿を消し、そしてウルハンガの身も次第にその存在が薄くなっていくようだ。
どうやら本当に消える ―― というよりはこの世界からまた『神の世界』へと戻っていくらしい。
そして半透明となったウルハンガはここでオレの頭に向けてその手を伸ばす。
「それでは僕は引くけど、その前に君にも一つ――」
「え? ちょっと待って下さいよ」
普通のファンタジーだったら『神様の加護』を期待するところだけど、この世界ではそんなものがまるで当てにならない事は何度思い知らされたか分からない。
オレは思わずのびた手から逃れるように距離を取るが、そうするとウルハンガは不機嫌そうな表情になる。
「逃げなくてもいいじゃないか。僕が君に危害を加えるはずが無い事ぐらいは分かっていると思っていたけどね」
「いえ。それは分かっていますけど、こっちも今までいろいろとあったものですからね」
「う~ん。子供の時は結構、簡単に君の身体にも触れたと思ったけど、この姿だからダメなのかな?」
あんたも孤児院のガキ共同様に、子供の姿だったら女の子の身体を触り放題とか思っていたのかよ。
「まあそれは冗談だけど、君には是非とも――」
ウルハンガがそこまで口にしたところで、いきなり周囲で鬨の声が上がった。
「おお! われらがウルハンガよ。御身の加護を!」
「させるな! あの邪神を何としても滅ぼすのだ!」
「あの神様から力をもらったら、俺たちの時代が来るんだよ」
耳をつんざく色とりどりの叫びと、戦いの音が鳴り響く。
これは?! まさか!
立ちすくむオレを庇うようにウルハンガが前に立つ。
「どうやら戦いが始まってしまったようだね」
なんてこったい。ウルハンガの『光の巨人』に目を奪われて、動きを止めていた周囲の連中だったけど、また戦いを始めてしまったようだ。
まあ考えてみればあくまでウルハンガは先ほどの『光の巨人』の幻影で人々の目を幻惑させていただけだ。
オレがウルハンガを説得していたのはせいぜい数分だったはずだから、それぐらいならどうにか押しとどめる事が出来たのだろうけど、例の『光の巨人』も消えて連中が正気を取り戻したところで、また戦いを再開してしまったのだ。
ああ。『正気になった結果として殺し合い』だなんて、やっぱり頭を抱えざるをえない過酷過ぎる現実を突きつけられた気分だ。
そしてオレが暗澹たる気分になったところで、ウルハンガは落ち着いた言葉をこっちにかけてくる。
「まあ仕方ないね。どちらにしろこうなる運命だったんだ。それでは君ともお別れだな」
「ええ? ちょっと待って下さい! いまあなたがいなくなったら――」
オレが思わず血相変えてウルハンガに取りすがる。
ウルハンガを引き下がらせる事で、どうにか犠牲を出さずに終わらせたかったのだが、ここでいなくなったらどっちにしても戦いで多くの犠牲が出るのは避けられない。
だがウルハンガはここで今までと何も変わらぬ、柔らかく親しみやすい、安心させる笑みをこちらに注いでいる。
「大丈夫だよ。君が心配する事は無いから」
「そうですか。それならいいんですけど……」
オレは落ち着いたウルハンガの態度にひとまず安堵した。
しかしそれはいつものごとくあまりにも早すぎるものだった。
「君ひとりぐらいどうにでもなるから」
「そういうことを言っているのではありませんよ!」
「どうしてだい?」
本当にオレの言っている事の意味が分からない様子でウルハンガは首をひねっている。
「この世界ではどうせ戦いは無くならないし、君もそれは分かっているはずだよ。まさか全ての戦いを止めろというのではないだろうね」
「そんなつもりはありませんし、出来るとも思っていません。それでもこの場での争いはどうにかしたいんですよ」
もちろんそんな事はウルハンガに言われるまでも無く、オレだって重々承知しているよ。
仮にこの場で戦いが起きなかったとしても、そしてウルハンガがこの世界からいなくなってしまったとしても、彼らはめいめい勝手で相容れない事を唱えて戦うだろう。
しかしそんな事を承知の上で、単なるその場凌ぎで、自己満足に過ぎなくとも、止められるのならばオレはどうにかしたいのだよ。
「申し訳ないけど、この僕にはもう先ほどのように彼らを幻惑する力もないよ。既にこの世界から消えゆかんとする存在だからね。まあ前にも言ったけど、僕は『影』のようなものだからどっちにしても、同じだったろうけど」
「だけど――」
「君ひとりならこの場から逃げるのは造作も無いだろう? どうせ戦っている連中は君とは関係ないはずだ」
言われて見ればその通りだからさっさと逃げよう ―― なんて事は無い。
先ほど別れたエウスブスは下手をすればここでの戦いで、自分の身が『真っ白な灰になるまで戦う』という《贄》を使ってしまうかもしれないのだ。
正直に言えば、エウスブスの事が無かったら、オレも今のウルハンガの言葉に乗って、とっとと尻に帆かけて逃げ出したかもしれない。
何とも因果な事だけど、オレとしてはこのまま逃げ出すワケにはいかないんだよ。 そしてそんなオレを見て、既にかなり存在が薄まっていたウルハンガは、諦めたようにため息をつく。
「仕方ないな。それでは君の望むとおり、この場を僕に出来る範囲でどうにかしよう」
「え? そうですか! ありがとうございます!」
オレが喜んで感謝の意を述べると、いきなり半透明のウルハンガはこちらの身に覆い被さってきた。
「な? 何を?」
「いや。僕はもう現し身を維持出来ないから、君の身体を貸してもらうよ」
「ええ?!」
またしてもオレが驚愕する中で、こちらの視界はまばゆい輝きに覆われる。
ウルハンガに抱きすくめられたオレは、一瞬だが意識を失っていたのだろう。
そして気がつくと周囲の光景は一変しているように見えたが、それは違っていた。
オレの身体から光が放たれて、辺り一面を照らしていたのだ。
ただ見たところ、それは以前にオレが【陽光】で光を放った時とはかなり異なっているのは間違いない。
オレ自身はまばゆく輝いてはいるが、それにも関わらずこちらの視界はハッキリしていて、またその光を見ていても目がくらんだりするわけではないようだ。
しかしそれとは別に、つい先ほどまで必死で戦っていたらしい連中が、まるで魂を抜かれたかのように、こちらを呆然と見つめている事は分かった。
推測だけど今のオレは単純に光を放っているのではなく、宗教画でよくあるように『後光がさしている』というヤツなのだろう。
あとどうやら周囲が変わって見えたのは、オレ自身の視点がつい先ほどより随分高くなっているからだ。
たぶん《遡上》の失敗で幼女になっていた身体が『元』に戻ったんだ ―― ただし胸が大きくなって、股間が相変わらずだから、あくまでも『元のアルタシャ』に戻っただけようだがな。
どうやらあの幼女の身体から普通に成長したらしい。
ウルハンガは男でも女でも自由自在らしいので、ちょっとだけ『男に戻る』期待はしていたけどやっぱり無理なものは無理か。
まあいい。いまは目の前の出来事をどうにかするのが先決だ。
よくよく見るとウルハンガの姿は視界内のどこにもいない。だけど消えたわけではなく、オレ自身の全身にヒシヒシとその存在を感じるよ。
このような場合、オレの身に何が起きているのかは簡単に見当がつく。
「ウルハンガ……あなたはわたしと一体化したのですか?」
オレが小さく問いかけると、胸の内に静かな言葉が響く。
『まあそんなところだね。ただ並の人間だったら、幾ら僅かなものとは言えど、僕の力には耐えられず瞬時に身体も魂も粉々になっていたよ。君だからこそ受け止められたんだ』
「どういたしまして」
もしもこっちが粉々になっていたらどうするつもりだ ―― と聞いたところでたぶん『その場合、自分はさっさと神の領域に戻った』と答えられるだけだろう。
しかしオレ自身もいろいろと揉まれ続けたお陰で、自分の事については随分と神経が太くなった気がするよ。
もちろん今後も死人が出る事に関しては、無神経になりたくないけどな。
「だけどどうすればいいんですか? 今戦いを中断している連中だって、さっきと同じように、こちらの光に少しばかり幻惑されているぐらいで、正気に戻ったらすぐに戦いを始めてしまいますよ」
今まで輝いていた『光の巨人』が姿を消し、そしてそれに変わっていきなり『光る乙女』が現れたらそりゃ驚くだろうけど、それで動きを止めているのは僅かな時間だろう。
『それをどうにかするのは僕ではなく君だよ』
「やっぱりそうなりますか……」
ウルハンガがオレと一体化したというのは、以前にイロールの化身となったのと近い気もするが、どこか違う。
個人的な感覚で言えば『イロールの化身』の時は自分の能力がずっと拡張された様子だったけど『ウルハンガと一体化』している今は、これまでは出来なかった事が出来るようになった気がしてくる。
もっともウルハンガ自身、神とは言っても本人の能力そのものはそんなに凄くないので、やっぱり高望み出来るわけじゃないけどな。
「それでいまのわたしたちには、いったい何が出来るのですか?」
『まずこの場にいる全員の事が君は察知出来るはずだ。もしも君が心配している相手がまだ生きているのなら、精神を集中すればすぐに気付くはず』
「本当ですか?」
オレは先ほどから心配していたエウスブスの事を思い浮かべると、すぐにこちらを見つめる無数の視線の中に、つい先ほど別れたばかりのエウスブスが含まれているのも感知出来るようになった。
良かった。今のところは無事だったんだ。
『そして君の声がここにいて君を注視している全員に届く筈さ。しかもそれぞれに別の意志を伝える事だって可能だよ』
え? それってまさか?
『君はここにいる者達が何を考えて、どうしようとしているのかだいたい把握しているのだろう。ならばそれでどうにかして説得したまえ。この僕を引き下がらせたようにね』
「それって要するに全員を欺け、ということなのでは……」
『仕方ないね。戦いをやめさせたいというのは君の望みなのだし、それが可能になる手段は与えただろう』
それは『可能』かもしれないけど、普通だったら至難の業ですよね。
『後の事は君が考えるんだ。僕に出来るのはここまでだからね』
うう。突き放されたか。
周囲の戦いを止めるのはこっちが一方的に要求していただけなのだから、ありがたいと思うしかないのだろう。
ええい。仕方がない。
神であるウルハンガを説得する事に比べれば、人間を動かすなど朝飯前、なんて甘い事は絶対に無いけど、とにかくオレが出来る事をやるしかないんだ。
どうやら本当に消える ―― というよりはこの世界からまた『神の世界』へと戻っていくらしい。
そして半透明となったウルハンガはここでオレの頭に向けてその手を伸ばす。
「それでは僕は引くけど、その前に君にも一つ――」
「え? ちょっと待って下さいよ」
普通のファンタジーだったら『神様の加護』を期待するところだけど、この世界ではそんなものがまるで当てにならない事は何度思い知らされたか分からない。
オレは思わずのびた手から逃れるように距離を取るが、そうするとウルハンガは不機嫌そうな表情になる。
「逃げなくてもいいじゃないか。僕が君に危害を加えるはずが無い事ぐらいは分かっていると思っていたけどね」
「いえ。それは分かっていますけど、こっちも今までいろいろとあったものですからね」
「う~ん。子供の時は結構、簡単に君の身体にも触れたと思ったけど、この姿だからダメなのかな?」
あんたも孤児院のガキ共同様に、子供の姿だったら女の子の身体を触り放題とか思っていたのかよ。
「まあそれは冗談だけど、君には是非とも――」
ウルハンガがそこまで口にしたところで、いきなり周囲で鬨の声が上がった。
「おお! われらがウルハンガよ。御身の加護を!」
「させるな! あの邪神を何としても滅ぼすのだ!」
「あの神様から力をもらったら、俺たちの時代が来るんだよ」
耳をつんざく色とりどりの叫びと、戦いの音が鳴り響く。
これは?! まさか!
立ちすくむオレを庇うようにウルハンガが前に立つ。
「どうやら戦いが始まってしまったようだね」
なんてこったい。ウルハンガの『光の巨人』に目を奪われて、動きを止めていた周囲の連中だったけど、また戦いを始めてしまったようだ。
まあ考えてみればあくまでウルハンガは先ほどの『光の巨人』の幻影で人々の目を幻惑させていただけだ。
オレがウルハンガを説得していたのはせいぜい数分だったはずだから、それぐらいならどうにか押しとどめる事が出来たのだろうけど、例の『光の巨人』も消えて連中が正気を取り戻したところで、また戦いを再開してしまったのだ。
ああ。『正気になった結果として殺し合い』だなんて、やっぱり頭を抱えざるをえない過酷過ぎる現実を突きつけられた気分だ。
そしてオレが暗澹たる気分になったところで、ウルハンガは落ち着いた言葉をこっちにかけてくる。
「まあ仕方ないね。どちらにしろこうなる運命だったんだ。それでは君ともお別れだな」
「ええ? ちょっと待って下さい! いまあなたがいなくなったら――」
オレが思わず血相変えてウルハンガに取りすがる。
ウルハンガを引き下がらせる事で、どうにか犠牲を出さずに終わらせたかったのだが、ここでいなくなったらどっちにしても戦いで多くの犠牲が出るのは避けられない。
だがウルハンガはここで今までと何も変わらぬ、柔らかく親しみやすい、安心させる笑みをこちらに注いでいる。
「大丈夫だよ。君が心配する事は無いから」
「そうですか。それならいいんですけど……」
オレは落ち着いたウルハンガの態度にひとまず安堵した。
しかしそれはいつものごとくあまりにも早すぎるものだった。
「君ひとりぐらいどうにでもなるから」
「そういうことを言っているのではありませんよ!」
「どうしてだい?」
本当にオレの言っている事の意味が分からない様子でウルハンガは首をひねっている。
「この世界ではどうせ戦いは無くならないし、君もそれは分かっているはずだよ。まさか全ての戦いを止めろというのではないだろうね」
「そんなつもりはありませんし、出来るとも思っていません。それでもこの場での争いはどうにかしたいんですよ」
もちろんそんな事はウルハンガに言われるまでも無く、オレだって重々承知しているよ。
仮にこの場で戦いが起きなかったとしても、そしてウルハンガがこの世界からいなくなってしまったとしても、彼らはめいめい勝手で相容れない事を唱えて戦うだろう。
しかしそんな事を承知の上で、単なるその場凌ぎで、自己満足に過ぎなくとも、止められるのならばオレはどうにかしたいのだよ。
「申し訳ないけど、この僕にはもう先ほどのように彼らを幻惑する力もないよ。既にこの世界から消えゆかんとする存在だからね。まあ前にも言ったけど、僕は『影』のようなものだからどっちにしても、同じだったろうけど」
「だけど――」
「君ひとりならこの場から逃げるのは造作も無いだろう? どうせ戦っている連中は君とは関係ないはずだ」
言われて見ればその通りだからさっさと逃げよう ―― なんて事は無い。
先ほど別れたエウスブスは下手をすればここでの戦いで、自分の身が『真っ白な灰になるまで戦う』という《贄》を使ってしまうかもしれないのだ。
正直に言えば、エウスブスの事が無かったら、オレも今のウルハンガの言葉に乗って、とっとと尻に帆かけて逃げ出したかもしれない。
何とも因果な事だけど、オレとしてはこのまま逃げ出すワケにはいかないんだよ。 そしてそんなオレを見て、既にかなり存在が薄まっていたウルハンガは、諦めたようにため息をつく。
「仕方ないな。それでは君の望むとおり、この場を僕に出来る範囲でどうにかしよう」
「え? そうですか! ありがとうございます!」
オレが喜んで感謝の意を述べると、いきなり半透明のウルハンガはこちらの身に覆い被さってきた。
「な? 何を?」
「いや。僕はもう現し身を維持出来ないから、君の身体を貸してもらうよ」
「ええ?!」
またしてもオレが驚愕する中で、こちらの視界はまばゆい輝きに覆われる。
ウルハンガに抱きすくめられたオレは、一瞬だが意識を失っていたのだろう。
そして気がつくと周囲の光景は一変しているように見えたが、それは違っていた。
オレの身体から光が放たれて、辺り一面を照らしていたのだ。
ただ見たところ、それは以前にオレが【陽光】で光を放った時とはかなり異なっているのは間違いない。
オレ自身はまばゆく輝いてはいるが、それにも関わらずこちらの視界はハッキリしていて、またその光を見ていても目がくらんだりするわけではないようだ。
しかしそれとは別に、つい先ほどまで必死で戦っていたらしい連中が、まるで魂を抜かれたかのように、こちらを呆然と見つめている事は分かった。
推測だけど今のオレは単純に光を放っているのではなく、宗教画でよくあるように『後光がさしている』というヤツなのだろう。
あとどうやら周囲が変わって見えたのは、オレ自身の視点がつい先ほどより随分高くなっているからだ。
たぶん《遡上》の失敗で幼女になっていた身体が『元』に戻ったんだ ―― ただし胸が大きくなって、股間が相変わらずだから、あくまでも『元のアルタシャ』に戻っただけようだがな。
どうやらあの幼女の身体から普通に成長したらしい。
ウルハンガは男でも女でも自由自在らしいので、ちょっとだけ『男に戻る』期待はしていたけどやっぱり無理なものは無理か。
まあいい。いまは目の前の出来事をどうにかするのが先決だ。
よくよく見るとウルハンガの姿は視界内のどこにもいない。だけど消えたわけではなく、オレ自身の全身にヒシヒシとその存在を感じるよ。
このような場合、オレの身に何が起きているのかは簡単に見当がつく。
「ウルハンガ……あなたはわたしと一体化したのですか?」
オレが小さく問いかけると、胸の内に静かな言葉が響く。
『まあそんなところだね。ただ並の人間だったら、幾ら僅かなものとは言えど、僕の力には耐えられず瞬時に身体も魂も粉々になっていたよ。君だからこそ受け止められたんだ』
「どういたしまして」
もしもこっちが粉々になっていたらどうするつもりだ ―― と聞いたところでたぶん『その場合、自分はさっさと神の領域に戻った』と答えられるだけだろう。
しかしオレ自身もいろいろと揉まれ続けたお陰で、自分の事については随分と神経が太くなった気がするよ。
もちろん今後も死人が出る事に関しては、無神経になりたくないけどな。
「だけどどうすればいいんですか? 今戦いを中断している連中だって、さっきと同じように、こちらの光に少しばかり幻惑されているぐらいで、正気に戻ったらすぐに戦いを始めてしまいますよ」
今まで輝いていた『光の巨人』が姿を消し、そしてそれに変わっていきなり『光る乙女』が現れたらそりゃ驚くだろうけど、それで動きを止めているのは僅かな時間だろう。
『それをどうにかするのは僕ではなく君だよ』
「やっぱりそうなりますか……」
ウルハンガがオレと一体化したというのは、以前にイロールの化身となったのと近い気もするが、どこか違う。
個人的な感覚で言えば『イロールの化身』の時は自分の能力がずっと拡張された様子だったけど『ウルハンガと一体化』している今は、これまでは出来なかった事が出来るようになった気がしてくる。
もっともウルハンガ自身、神とは言っても本人の能力そのものはそんなに凄くないので、やっぱり高望み出来るわけじゃないけどな。
「それでいまのわたしたちには、いったい何が出来るのですか?」
『まずこの場にいる全員の事が君は察知出来るはずだ。もしも君が心配している相手がまだ生きているのなら、精神を集中すればすぐに気付くはず』
「本当ですか?」
オレは先ほどから心配していたエウスブスの事を思い浮かべると、すぐにこちらを見つめる無数の視線の中に、つい先ほど別れたばかりのエウスブスが含まれているのも感知出来るようになった。
良かった。今のところは無事だったんだ。
『そして君の声がここにいて君を注視している全員に届く筈さ。しかもそれぞれに別の意志を伝える事だって可能だよ』
え? それってまさか?
『君はここにいる者達が何を考えて、どうしようとしているのかだいたい把握しているのだろう。ならばそれでどうにかして説得したまえ。この僕を引き下がらせたようにね』
「それって要するに全員を欺け、ということなのでは……」
『仕方ないね。戦いをやめさせたいというのは君の望みなのだし、それが可能になる手段は与えただろう』
それは『可能』かもしれないけど、普通だったら至難の業ですよね。
『後の事は君が考えるんだ。僕に出来るのはここまでだからね』
うう。突き放されたか。
周囲の戦いを止めるのはこっちが一方的に要求していただけなのだから、ありがたいと思うしかないのだろう。
ええい。仕方がない。
神であるウルハンガを説得する事に比べれば、人間を動かすなど朝飯前、なんて甘い事は絶対に無いけど、とにかくオレが出来る事をやるしかないんだ。
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