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第10章 神造者とカミツクリ
第241話 『酷い取引』の意味とは
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テセルがこの都市の過去についてはさほど詳しく無い事は分かったが、現状についてもまた聞きたい事はいくらでもある。
「それでもう一つ質問ですけど、なんでこの街の名前がバッド・ディールなんですか?」
「理由は簡単だ。この街の廃墟の探索を我が神造者支部が行っていて、志願者を募っているのだ。さっきの連中もその口だろう」
それじゃああいつらは本当に『冒険者』だったの?
まあゲームや漫画のように楽しくスリルあふれる職業でない事は分かっているけど、それでもちょっとあこがれてしまうな。
しかし廃墟の探索をあんな連中に任せるという事は、当然ながら相応の危険があるということだよな。
「ひょっとしてここの廃墟には『廃神』が出るのですか?」
「もちろんだとも」
「その相手は神造者がするのですよね」
「ああ。しかしそれを探るのは、志願者の仕事だ」
神造者は直接戦闘能力が無い ―― 少なくともそんな魔法は有していないし訓練も受けていない ―― ので先ほど出会ったような荒くれ連中を利用しているというわけか。
ファンタジー世界の冒険者なら、当たり前の仕事なんだろうけど、神造者のための捨て駒感が漂って正直いい気はしないな。
「もちろん廃神以外にもいろいろな怪物、たとえばアンデッドなどもいれば、当然ながらごろつき共も大勢潜んでいる。そいつらのなかでは廃墟にしかいない強盗の神が崇拝されているようだ」
かなり広い廃墟と言っても、その強盗集団がそんなにたくさんいる筈がない。
そんな連中でも崇拝を捧げていると、小さいながら神様が生まれると言うことか。
それともこの都市で崇拝されていた何らかの精霊が、都市が廃墟となり信徒達が荒んでいった結果、いつの間にか強盗の神に変わってしまったのかもしれないな。
しかし僅かな崇拝であっても、そして『強盗の神』などという一般人には忌み嫌われる存在でも、まだ神としていられるだけでも『廃神』に比べればずっとマシとも言えるわけだ。
「そして探索の過程で見つけたものは、そのあがりについて我が神造者支部に報告し、こちらが必要とみなしたものは買い上げる事になっている」
「え? それではまさかバッド・ディールというのは――」
「ああそうだ。こっちが頑張って高く買い上げるので神造者支部にとってバッド・ディールというわけなんだ」
「はあ。なるほど……」
実際に命がけで廃墟を探索している連中にとっては正反対 ―― つまり命がけで廃墟をあさって来ても、そこで得たものを神造者支部が安く買いたたくのでバッド・ディール ―― の意味で使われているのだろうなあ。
それでも少なからぬ志願者がいるように見えるのは、たとえ安値でもそこらで傭兵をやるよりは実入りがいいのだろう。
以前に訪れたファーゼストは多神教徒と一神教徒が互いに『最果ての街でその先は蛮族の土地』と双方を見下しあった名前だったけど、この『酷い取引』も似たような構図になっているらしい。
だがオレの気のない返答を聞いてテセルはこちらをねめつけてくる。
「何度も言っているが、僕たち神造者はあくまでも神や精霊、神話や伝説を操作するのが仕事だ。この廃墟をあさらせるのも富が目的では無く、滅びたかつての都市における信仰の実態を探るための行為だ。だから金など幾らでも気前よくくれてやっているはずだ」
当たり前だがオレが思った事ぐらいなら、テセルにも見当はついていたらしい。
「はいはい。そういうことにしておきましょう。ところでその探索で今までどれぐらいの成果があがっているのですか?」
「残念だがこれ以上の詳しい事は僕も知らない。とにかく支部に行かないとな」
そしてテセルはツカツカと迷いのない足取りで歩き出し、オレも後に続いた。
「帝国の街は原則として、カミツクリ理論に基づき信仰の精力や周囲の精霊を効率よく利用できるよう、計算の上で建物や街区、道路、水路などが配置されるんだ。古い伝統ある街では大規模な区画の変更はそうそう出来ないが、ここなら元が廃墟だから正しい配置になっているだろう」
半ば廃墟だったから元からの住民に気兼ねなく好き勝手に町並みをいじり回した、と言っているように聞こえるな。
本来は新しく建設された街に適用される話なんだろうけど、神造者は支配地域の信仰について『公式神話』という形で規格化を進めているけど、信仰だけでなく町並みまで規格化しようとしているということか。
そしてテセルがここまで送ってくれた農夫に対して『神造者支部の場所は分かる』と答えたのも、規格に従って考えれば支部の場所は決まっているからなのだろう。
「つまりこの先に神造者支部があるのですね」
「そういうことだ。それでは僕についてこい」
テセルの後についていくと、石畳で覆われた円形のかなり大きな中央広場とおぼしき場所に出る。
どうやらここがこのバッド・ディールの中心部らしい。
中央広場の周囲には、それ以外とは明らかに一線を画した立派な建物が林立し、ここが他の地域とは別格の場所である事は一見して明らかだった。
「さあ。あれがこの僕の神造者支部だ」
テセルは誇らしげにその一角を占める大きな建物を指し示した。
「それでもう一つ質問ですけど、なんでこの街の名前がバッド・ディールなんですか?」
「理由は簡単だ。この街の廃墟の探索を我が神造者支部が行っていて、志願者を募っているのだ。さっきの連中もその口だろう」
それじゃああいつらは本当に『冒険者』だったの?
まあゲームや漫画のように楽しくスリルあふれる職業でない事は分かっているけど、それでもちょっとあこがれてしまうな。
しかし廃墟の探索をあんな連中に任せるという事は、当然ながら相応の危険があるということだよな。
「ひょっとしてここの廃墟には『廃神』が出るのですか?」
「もちろんだとも」
「その相手は神造者がするのですよね」
「ああ。しかしそれを探るのは、志願者の仕事だ」
神造者は直接戦闘能力が無い ―― 少なくともそんな魔法は有していないし訓練も受けていない ―― ので先ほど出会ったような荒くれ連中を利用しているというわけか。
ファンタジー世界の冒険者なら、当たり前の仕事なんだろうけど、神造者のための捨て駒感が漂って正直いい気はしないな。
「もちろん廃神以外にもいろいろな怪物、たとえばアンデッドなどもいれば、当然ながらごろつき共も大勢潜んでいる。そいつらのなかでは廃墟にしかいない強盗の神が崇拝されているようだ」
かなり広い廃墟と言っても、その強盗集団がそんなにたくさんいる筈がない。
そんな連中でも崇拝を捧げていると、小さいながら神様が生まれると言うことか。
それともこの都市で崇拝されていた何らかの精霊が、都市が廃墟となり信徒達が荒んでいった結果、いつの間にか強盗の神に変わってしまったのかもしれないな。
しかし僅かな崇拝であっても、そして『強盗の神』などという一般人には忌み嫌われる存在でも、まだ神としていられるだけでも『廃神』に比べればずっとマシとも言えるわけだ。
「そして探索の過程で見つけたものは、そのあがりについて我が神造者支部に報告し、こちらが必要とみなしたものは買い上げる事になっている」
「え? それではまさかバッド・ディールというのは――」
「ああそうだ。こっちが頑張って高く買い上げるので神造者支部にとってバッド・ディールというわけなんだ」
「はあ。なるほど……」
実際に命がけで廃墟を探索している連中にとっては正反対 ―― つまり命がけで廃墟をあさって来ても、そこで得たものを神造者支部が安く買いたたくのでバッド・ディール ―― の意味で使われているのだろうなあ。
それでも少なからぬ志願者がいるように見えるのは、たとえ安値でもそこらで傭兵をやるよりは実入りがいいのだろう。
以前に訪れたファーゼストは多神教徒と一神教徒が互いに『最果ての街でその先は蛮族の土地』と双方を見下しあった名前だったけど、この『酷い取引』も似たような構図になっているらしい。
だがオレの気のない返答を聞いてテセルはこちらをねめつけてくる。
「何度も言っているが、僕たち神造者はあくまでも神や精霊、神話や伝説を操作するのが仕事だ。この廃墟をあさらせるのも富が目的では無く、滅びたかつての都市における信仰の実態を探るための行為だ。だから金など幾らでも気前よくくれてやっているはずだ」
当たり前だがオレが思った事ぐらいなら、テセルにも見当はついていたらしい。
「はいはい。そういうことにしておきましょう。ところでその探索で今までどれぐらいの成果があがっているのですか?」
「残念だがこれ以上の詳しい事は僕も知らない。とにかく支部に行かないとな」
そしてテセルはツカツカと迷いのない足取りで歩き出し、オレも後に続いた。
「帝国の街は原則として、カミツクリ理論に基づき信仰の精力や周囲の精霊を効率よく利用できるよう、計算の上で建物や街区、道路、水路などが配置されるんだ。古い伝統ある街では大規模な区画の変更はそうそう出来ないが、ここなら元が廃墟だから正しい配置になっているだろう」
半ば廃墟だったから元からの住民に気兼ねなく好き勝手に町並みをいじり回した、と言っているように聞こえるな。
本来は新しく建設された街に適用される話なんだろうけど、神造者は支配地域の信仰について『公式神話』という形で規格化を進めているけど、信仰だけでなく町並みまで規格化しようとしているということか。
そしてテセルがここまで送ってくれた農夫に対して『神造者支部の場所は分かる』と答えたのも、規格に従って考えれば支部の場所は決まっているからなのだろう。
「つまりこの先に神造者支部があるのですね」
「そういうことだ。それでは僕についてこい」
テセルの後についていくと、石畳で覆われた円形のかなり大きな中央広場とおぼしき場所に出る。
どうやらここがこのバッド・ディールの中心部らしい。
中央広場の周囲には、それ以外とは明らかに一線を画した立派な建物が林立し、ここが他の地域とは別格の場所である事は一見して明らかだった。
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