異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

文字の大きさ
317 / 1,316
第11章 文明の波と消えゆくもの達と

第317話 現れた『目』の主は

しおりを挟む
 ごろつき連中の中央にいた男は、その全身に多数の『目』を描き、何より顔全体を覆うマスクの中央にはもっとも大きな『一つ目』があった。
 元の世界のフィクションだと怪しい世界の住民によくあるファッションであり、本当にいたら中二病患者だと思ったかもしれない。
 だがこっちの世界だと崇拝する精霊を象徴する格好をした、知っている者にとっては恐ろしい有様なんだろう。
 しかしこれは困ったな。
 今の状況なら魔法の【調和】で戦いを避ける事は出来るかもしれないけど、効果範囲の外に連中の仲間がいて攻撃を仕掛けてきたらすぐ効果は破れてしまう。
 とっとと逃げ出すのが一番早いのだけど、相手が精霊を使役しているとしたら走って逃げるのはまず無理だ。
 オレがそんなことを考えていると、相手の方から声が飛んで来た。

「お前たちは何者だ。我が『数多の目』を退けるとは只者ではないな」

 先ほどの『目』コスプレをした人物が叫んでいるようだ。
 実に定番の問いかけだな。
 ここは『ただの通りすがりです』と答えたら、黙って通してくれるだろうか。
 いや。たぶん信じないだろうな。
 この薄明かりでオレは小柄で華奢な少年ぐらいに見えるだろうけど、半人半獣のテルモーはどうみても尋常な相手ではない。
 これで『ただの通りすがり』などと言ったら、相手からは馬鹿にしていると思われかねないだろう。
まあこの男がシャーマンだとしたら、テルモーを見ても『大いなる狼』の信徒だと見抜いて結構アッサリと分かってくれるかもしれないけどな。

「ひぃぃ! 助けて下さい」

 さっきオレが縛った男は見苦しく助けを求めて走り出す。
 本人は無理矢理に『数多の目』の精霊を崇拝させられていたと言っていたが、まあ普通に考えて半獣半人の相手に比べれば、まだカルトな仲間の方がマシでしょう。
 そしてごろつき連中はかなりの警戒を抱いているようだな。
 まあ精霊を撃退し、半人半獣の仲間がいる相手ならば脅威だと考えるのが当たり前だ。
 あと連中はオレ達が総勢でこれだけだとは知らないはずだから、新手がやってくる事も恐れているのだろう。
 そうするとここを無事に乗り切るには、少しばかりハッタリも必要か。

「我々はこの先にある精霊の聖地に巡礼するために向かっているところですよ、あなた方と関わる気はありません。だけど襲ってくると言うならこちらにも考えがありますよ」

 そりゃまあ崇拝の儀式で人間の目を抉るようなロクでもない連中には吐き気がするけど、本来そういう輩は官憲がどうにかするべきでしょう。
 目の前で人が襲われているなら、どうにかしようとするかもしれないけど『これから悪事を働くかもしれない』というだけで、命がけで事を構える気はありません。
 申し訳ないんですけど、こっちは『正義の味方』ではないんです。
 オレに守れるのは同行しているテルモーとミキューの二人がせいぜいです。
 だからここでアンタ達が引き上げてくれればそれでいい。
 しかしいつものように思い通りにはいかなかった。

「なんだと! やはりお前達はそんな連中だったか!」

 全身が『目』の文様で覆われている、ボスらしき男は一気にいきり立つ。
 ええ? ひょっとして怒ってるの?
 そしてそれを見て周囲のごろつき連中もいきり立つ。
 いや。連中にはまだこっちを恐れ、警戒する雰囲気はあるけど、それよりもボスの方がよっぽど恐ろしいらしい。

「ちょっと待って下さい。なぜあなたは怒っているんですか?」
「いいだろう。見るがいい」

 そう言うと男は例の『目』が描かれたマスクを引き上げる。

「う……」

 その下にあったのは、目を両方抉られた無残な顔だった。
 ただその傷跡は明らかに古いもので、おそらくは何年も前のものだろう。

「数年前、ワシは咎を受けて目を抉られ放逐されたのだ。それから数日、盲目となったワシが受けた苦難と苦痛は誰にも分かるまい……」

 どういう罪でそんな咎を受けたのかは知らないけど、間違いなくロクでもない行為に手を染めたのだろうな。

「だがワシはそこで出会ったのだ……偉大なる『数多の目』の精霊にな……」

 なるほど。本来ならばのたれ死ぬはずだったのが、そこで精霊に出会って力を得たというわけなのか。

「だからワシはお前達のように他の精霊を崇める者どもを、みな我が『数多の目』の精霊に捧げてやる。だから死ね。そして目を捧げよ」

 うがあ。逆恨みにも程がある。
 もう憎しみのあまり文字通り『盲目』になってしまっているのだろう。たぶん『数多の目』以外の精霊を崇める相手は、自分の目を抉った連中と同じに思っているのかもしれない。
 当然、話し合いの余地など欠片もないわけで、ここはもうどうにか逃げるだけだ。
 しかしオレがそう思ったところで、オレ達の周囲には一斉に無数の『目』がわき出る。
 まさに周囲全てを埋め尽くすだけのものであり、先ほど、オレが魔法で追放したのとは比較にならない数だ。
 その『目』は色も形も様々で、たぶん老若男女、あらゆる種類が含まれているだろう。
 ひょっとすると『数多の目』の精霊に、この男がこれまで捧げた犠牲者の目が全て、ここに現れているのではないのかと思えるほどだ。

「さあ。こやつらの目もお前達の仲間に加えるがいい!」

 男の叫びと共に、周囲の『目』が一斉にオレ達に襲いかかって来た。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします

雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました! (書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です) 壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。

他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】 魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。 ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。 グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、 「・・・知ったからには黙っていられないよな」 と何とかしようと行動を開始する。 そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。 他の投稿サイトでも掲載してます。 ※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

処理中です...