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第11章 文明の波と消えゆくもの達と
第317話 現れた『目』の主は
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ごろつき連中の中央にいた男は、その全身に多数の『目』を描き、何より顔全体を覆うマスクの中央にはもっとも大きな『一つ目』があった。
元の世界のフィクションだと怪しい世界の住民によくあるファッションであり、本当にいたら中二病患者だと思ったかもしれない。
だがこっちの世界だと崇拝する精霊を象徴する格好をした、知っている者にとっては恐ろしい有様なんだろう。
しかしこれは困ったな。
今の状況なら魔法の【調和】で戦いを避ける事は出来るかもしれないけど、効果範囲の外に連中の仲間がいて攻撃を仕掛けてきたらすぐ効果は破れてしまう。
とっとと逃げ出すのが一番早いのだけど、相手が精霊を使役しているとしたら走って逃げるのはまず無理だ。
オレがそんなことを考えていると、相手の方から声が飛んで来た。
「お前たちは何者だ。我が『数多の目』を退けるとは只者ではないな」
先ほどの『目』コスプレをした人物が叫んでいるようだ。
実に定番の問いかけだな。
ここは『ただの通りすがりです』と答えたら、黙って通してくれるだろうか。
いや。たぶん信じないだろうな。
この薄明かりでオレは小柄で華奢な少年ぐらいに見えるだろうけど、半人半獣のテルモーはどうみても尋常な相手ではない。
これで『ただの通りすがり』などと言ったら、相手からは馬鹿にしていると思われかねないだろう。
まあこの男がシャーマンだとしたら、テルモーを見ても『大いなる狼』の信徒だと見抜いて結構アッサリと分かってくれるかもしれないけどな。
「ひぃぃ! 助けて下さい」
さっきオレが縛った男は見苦しく助けを求めて走り出す。
本人は無理矢理に『数多の目』の精霊を崇拝させられていたと言っていたが、まあ普通に考えて半獣半人の相手に比べれば、まだカルトな仲間の方がマシでしょう。
そしてごろつき連中はかなりの警戒を抱いているようだな。
まあ精霊を撃退し、半人半獣の仲間がいる相手ならば脅威だと考えるのが当たり前だ。
あと連中はオレ達が総勢でこれだけだとは知らないはずだから、新手がやってくる事も恐れているのだろう。
そうするとここを無事に乗り切るには、少しばかりハッタリも必要か。
「我々はこの先にある精霊の聖地に巡礼するために向かっているところですよ、あなた方と関わる気はありません。だけど襲ってくると言うならこちらにも考えがありますよ」
そりゃまあ崇拝の儀式で人間の目を抉るようなロクでもない連中には吐き気がするけど、本来そういう輩は官憲がどうにかするべきでしょう。
目の前で人が襲われているなら、どうにかしようとするかもしれないけど『これから悪事を働くかもしれない』というだけで、命がけで事を構える気はありません。
申し訳ないんですけど、こっちは『正義の味方』ではないんです。
オレに守れるのは同行しているテルモーとミキューの二人がせいぜいです。
だからここでアンタ達が引き上げてくれればそれでいい。
しかしいつものように思い通りにはいかなかった。
「なんだと! やはりお前達はそんな連中だったか!」
全身が『目』の文様で覆われている、ボスらしき男は一気にいきり立つ。
ええ? ひょっとして怒ってるの?
そしてそれを見て周囲のごろつき連中もいきり立つ。
いや。連中にはまだこっちを恐れ、警戒する雰囲気はあるけど、それよりもボスの方がよっぽど恐ろしいらしい。
「ちょっと待って下さい。なぜあなたは怒っているんですか?」
「いいだろう。見るがいい」
そう言うと男は例の『目』が描かれたマスクを引き上げる。
「う……」
その下にあったのは、目を両方抉られた無残な顔だった。
ただその傷跡は明らかに古いもので、おそらくは何年も前のものだろう。
「数年前、ワシは咎を受けて目を抉られ放逐されたのだ。それから数日、盲目となったワシが受けた苦難と苦痛は誰にも分かるまい……」
どういう罪でそんな咎を受けたのかは知らないけど、間違いなくロクでもない行為に手を染めたのだろうな。
「だがワシはそこで出会ったのだ……偉大なる『数多の目』の精霊にな……」
なるほど。本来ならばのたれ死ぬはずだったのが、そこで精霊に出会って力を得たというわけなのか。
「だからワシはお前達のように他の精霊を崇める者どもを、みな我が『数多の目』の精霊に捧げてやる。だから死ね。そして目を捧げよ」
うがあ。逆恨みにも程がある。
もう憎しみのあまり文字通り『盲目』になってしまっているのだろう。たぶん『数多の目』以外の精霊を崇める相手は、自分の目を抉った連中と同じに思っているのかもしれない。
当然、話し合いの余地など欠片もないわけで、ここはもうどうにか逃げるだけだ。
しかしオレがそう思ったところで、オレ達の周囲には一斉に無数の『目』がわき出る。
まさに周囲全てを埋め尽くすだけのものであり、先ほど、オレが魔法で追放したのとは比較にならない数だ。
その『目』は色も形も様々で、たぶん老若男女、あらゆる種類が含まれているだろう。
ひょっとすると『数多の目』の精霊に、この男がこれまで捧げた犠牲者の目が全て、ここに現れているのではないのかと思えるほどだ。
「さあ。こやつらの目もお前達の仲間に加えるがいい!」
男の叫びと共に、周囲の『目』が一斉にオレ達に襲いかかって来た。
元の世界のフィクションだと怪しい世界の住民によくあるファッションであり、本当にいたら中二病患者だと思ったかもしれない。
だがこっちの世界だと崇拝する精霊を象徴する格好をした、知っている者にとっては恐ろしい有様なんだろう。
しかしこれは困ったな。
今の状況なら魔法の【調和】で戦いを避ける事は出来るかもしれないけど、効果範囲の外に連中の仲間がいて攻撃を仕掛けてきたらすぐ効果は破れてしまう。
とっとと逃げ出すのが一番早いのだけど、相手が精霊を使役しているとしたら走って逃げるのはまず無理だ。
オレがそんなことを考えていると、相手の方から声が飛んで来た。
「お前たちは何者だ。我が『数多の目』を退けるとは只者ではないな」
先ほどの『目』コスプレをした人物が叫んでいるようだ。
実に定番の問いかけだな。
ここは『ただの通りすがりです』と答えたら、黙って通してくれるだろうか。
いや。たぶん信じないだろうな。
この薄明かりでオレは小柄で華奢な少年ぐらいに見えるだろうけど、半人半獣のテルモーはどうみても尋常な相手ではない。
これで『ただの通りすがり』などと言ったら、相手からは馬鹿にしていると思われかねないだろう。
まあこの男がシャーマンだとしたら、テルモーを見ても『大いなる狼』の信徒だと見抜いて結構アッサリと分かってくれるかもしれないけどな。
「ひぃぃ! 助けて下さい」
さっきオレが縛った男は見苦しく助けを求めて走り出す。
本人は無理矢理に『数多の目』の精霊を崇拝させられていたと言っていたが、まあ普通に考えて半獣半人の相手に比べれば、まだカルトな仲間の方がマシでしょう。
そしてごろつき連中はかなりの警戒を抱いているようだな。
まあ精霊を撃退し、半人半獣の仲間がいる相手ならば脅威だと考えるのが当たり前だ。
あと連中はオレ達が総勢でこれだけだとは知らないはずだから、新手がやってくる事も恐れているのだろう。
そうするとここを無事に乗り切るには、少しばかりハッタリも必要か。
「我々はこの先にある精霊の聖地に巡礼するために向かっているところですよ、あなた方と関わる気はありません。だけど襲ってくると言うならこちらにも考えがありますよ」
そりゃまあ崇拝の儀式で人間の目を抉るようなロクでもない連中には吐き気がするけど、本来そういう輩は官憲がどうにかするべきでしょう。
目の前で人が襲われているなら、どうにかしようとするかもしれないけど『これから悪事を働くかもしれない』というだけで、命がけで事を構える気はありません。
申し訳ないんですけど、こっちは『正義の味方』ではないんです。
オレに守れるのは同行しているテルモーとミキューの二人がせいぜいです。
だからここでアンタ達が引き上げてくれればそれでいい。
しかしいつものように思い通りにはいかなかった。
「なんだと! やはりお前達はそんな連中だったか!」
全身が『目』の文様で覆われている、ボスらしき男は一気にいきり立つ。
ええ? ひょっとして怒ってるの?
そしてそれを見て周囲のごろつき連中もいきり立つ。
いや。連中にはまだこっちを恐れ、警戒する雰囲気はあるけど、それよりもボスの方がよっぽど恐ろしいらしい。
「ちょっと待って下さい。なぜあなたは怒っているんですか?」
「いいだろう。見るがいい」
そう言うと男は例の『目』が描かれたマスクを引き上げる。
「う……」
その下にあったのは、目を両方抉られた無残な顔だった。
ただその傷跡は明らかに古いもので、おそらくは何年も前のものだろう。
「数年前、ワシは咎を受けて目を抉られ放逐されたのだ。それから数日、盲目となったワシが受けた苦難と苦痛は誰にも分かるまい……」
どういう罪でそんな咎を受けたのかは知らないけど、間違いなくロクでもない行為に手を染めたのだろうな。
「だがワシはそこで出会ったのだ……偉大なる『数多の目』の精霊にな……」
なるほど。本来ならばのたれ死ぬはずだったのが、そこで精霊に出会って力を得たというわけなのか。
「だからワシはお前達のように他の精霊を崇める者どもを、みな我が『数多の目』の精霊に捧げてやる。だから死ね。そして目を捧げよ」
うがあ。逆恨みにも程がある。
もう憎しみのあまり文字通り『盲目』になってしまっているのだろう。たぶん『数多の目』以外の精霊を崇める相手は、自分の目を抉った連中と同じに思っているのかもしれない。
当然、話し合いの余地など欠片もないわけで、ここはもうどうにか逃げるだけだ。
しかしオレがそう思ったところで、オレ達の周囲には一斉に無数の『目』がわき出る。
まさに周囲全てを埋め尽くすだけのものであり、先ほど、オレが魔法で追放したのとは比較にならない数だ。
その『目』は色も形も様々で、たぶん老若男女、あらゆる種類が含まれているだろう。
ひょっとすると『数多の目』の精霊に、この男がこれまで捧げた犠牲者の目が全て、ここに現れているのではないのかと思えるほどだ。
「さあ。こやつらの目もお前達の仲間に加えるがいい!」
男の叫びと共に、周囲の『目』が一斉にオレ達に襲いかかって来た。
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