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第13章 広大な平原の中で起きていた事
第407話 遊牧民の街のとてつもないこと
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眼前に見える都市は、この平原においては明らかに異質な光を放っている。
「あれがパップスなんですか?」
「そうだ。我らにとって神聖なる場所だ」
ひとまずの目的地としていたパップスは城壁に覆われた都市とだけ言ったのならば、この世界ではよくあるものだ。
規模はさほど大きくはなく、多めに見ても定住者は三千人ぐらいだろうか。それでもこの地域では大都市なのは間違いないが。
荒野を貫く道を交易に来た商人が通っているのもごく普通の光景だ。
運河が街の中に引き込まれていて、船が上下しているのもそれほど驚くという程でもない。
しかしこの街は絶対に普通ではあり得ない、遠目でも奇妙としか言えない特色が幾つもあったのだ。
まず何よりも目立つの街の中から大きな岩が突き出ている事だ。
不可解な事に、その岩は大雑把に人と獣が入り混じったような形をしており、それが両の腕で地面を押さえつけているかのように見えた。
あれが人型ならサイズは少なくとも数十メートルはあるだろう。以前に出会った成体のドラゴンを怪獣サイズとするなら、こちらはウルト○マンサイズだ。
高層建築がひしめく元の世界の都市部と比較すれば、目を見張るほど大きいとまでは言えないが、こちらの基準ではもの凄い巨体だろう。
オレは魔法で知覚力を強化しているので、遠目でもだいたいの事は分かる。
ひょっとすると何かの神像だろうか?
だが岩山を削って、そのような姿を描いたのだとしたら、どれほどの労力か。
元の世界でも超大国が著名な大統領を岩山に彫り込んでいたけが、たぶんそれを上回る事になるのは間違い無い。
この世界では魔法や精霊が使えるから、全てを人間の手で行ったわけではないかもしれないが、それでもものすごい代物なのは確かだ。
元の世界に存在したら、世界遺産に認定してもいいぐらいではないだろうか。
そしてオレ達のいる場所から街を越して正反対の場所には、かなり広大な沼地が広がっているらしい。
運河で引き込まれた水がそこで広がって沼地になったのだろうか。
不毛の荒野のただ中から一変して、かなり異様な光景が広がっているのだ。
「どうした? かなり驚いているようだな」
「ええ。今まで見たことが無いのは確かです」
オレの脳内に収納している知識は、あくまでもこれまで書籍で読んだものだけだから、それに書いていなければどうしようもない。
ここはターダにいろいろ尋ねるしかないな。
「あの街の中にそびえている大きな像はいったい何なのですか?」
「あれこそが先ほど言った『かつて激しく猛りし者』の姿だ。太古の昔、この地に攻め込んできた『悪鬼』を打ち倒したときそのままなのだ」
「それは……その姿を再現した像ということですよね?」
信者達が長年、頑張って岩山を削りあのような像を造ったというなら、それは凄いけどまだ『感心』する域だ。
しかしこの世界ではもっととんでもない事がありうる。
そしてターダはオレの質問に対し、不可思議そうにクビをかしげる。
「外の世界ではそんな事をするのか? それに何の意味があるのだ?」
「それではやっぱり――」
「前に言っただろう。かの神は今では動く事も出来ぬとな。あれが今の『かつて激しく猛りし者』そのものだ。神代の昔に悪鬼を押さえ込んだままの姿で、今もそこにおわすのだぞ」
そういうことか。その神話の真相がどういうものかは分からないが、少なくともターダ達はあれは神が太古の昔に仇敵を封じた時、そのままの姿だと信じているのだな。
だけどこの世界ではそういう事も実際にありうるから恐ろしい。
「それでは『かつて激しく猛りし者』は永遠にあのままなのですね」
幾ら強大な仇敵を封じるためとは言えど、自分の身を岩に変じてずっとそのままというのは、信仰していなくとも気の毒に思えてしまう。
しかしターダは特に気にした様子も示さない。
「だからこそ『定めし者』は父を救うために『恩恵の運河』をここまでつくったのだ」
「それは一体、どういうことですか?」
岩になった神様が水を必要としているとは思えないのだけど。
「あの神体の下には『悪鬼』が封じられているが、言い換えるとかの邪悪なる者の力はまだあそこに留まっている事になる。だから運河で水を引き込んでそれを洗い流そうとしているのだ」
「え? それではこの運河は人間が生活するための水をパップスに送りこむためのものではないのですか?」
「それは本来の目的ではない」
ここでターダは街の反対側に広がる湿地帯を指差す。
「あの湿地は『悪鬼の湿地』と呼ばれていてな。悪鬼の邪な力を少しずつでも洗い流した結果として生まれたものなのだ」
言われてよくよく見ると湿地の中ではいろいろなものが蠢いている。
ひょっとしてモンスターのたぐいか?
まさかこのパップスの城壁は、略奪者ではなくあのモンスターから街を守るためのものだったのか。
そういえばオレの有する知識ではパップスは『街の周囲にはおぞましきものがうろついている』とあったけど、これはそのまんまの意味だったのかよ。
しかしこの話が本当なら、遊牧民の神は川の流れを無理矢理変えて、仇敵の力を洗い流すなんて真似をした事になるな。
ちょっと前にターダは川の民が『川を汚した』と怒っていると表現していたのを、オレは『川の流れを無理矢理変えた』という意味に受け取ったけど、字句通りだったということか!
「あれがパップスなんですか?」
「そうだ。我らにとって神聖なる場所だ」
ひとまずの目的地としていたパップスは城壁に覆われた都市とだけ言ったのならば、この世界ではよくあるものだ。
規模はさほど大きくはなく、多めに見ても定住者は三千人ぐらいだろうか。それでもこの地域では大都市なのは間違いないが。
荒野を貫く道を交易に来た商人が通っているのもごく普通の光景だ。
運河が街の中に引き込まれていて、船が上下しているのもそれほど驚くという程でもない。
しかしこの街は絶対に普通ではあり得ない、遠目でも奇妙としか言えない特色が幾つもあったのだ。
まず何よりも目立つの街の中から大きな岩が突き出ている事だ。
不可解な事に、その岩は大雑把に人と獣が入り混じったような形をしており、それが両の腕で地面を押さえつけているかのように見えた。
あれが人型ならサイズは少なくとも数十メートルはあるだろう。以前に出会った成体のドラゴンを怪獣サイズとするなら、こちらはウルト○マンサイズだ。
高層建築がひしめく元の世界の都市部と比較すれば、目を見張るほど大きいとまでは言えないが、こちらの基準ではもの凄い巨体だろう。
オレは魔法で知覚力を強化しているので、遠目でもだいたいの事は分かる。
ひょっとすると何かの神像だろうか?
だが岩山を削って、そのような姿を描いたのだとしたら、どれほどの労力か。
元の世界でも超大国が著名な大統領を岩山に彫り込んでいたけが、たぶんそれを上回る事になるのは間違い無い。
この世界では魔法や精霊が使えるから、全てを人間の手で行ったわけではないかもしれないが、それでもものすごい代物なのは確かだ。
元の世界に存在したら、世界遺産に認定してもいいぐらいではないだろうか。
そしてオレ達のいる場所から街を越して正反対の場所には、かなり広大な沼地が広がっているらしい。
運河で引き込まれた水がそこで広がって沼地になったのだろうか。
不毛の荒野のただ中から一変して、かなり異様な光景が広がっているのだ。
「どうした? かなり驚いているようだな」
「ええ。今まで見たことが無いのは確かです」
オレの脳内に収納している知識は、あくまでもこれまで書籍で読んだものだけだから、それに書いていなければどうしようもない。
ここはターダにいろいろ尋ねるしかないな。
「あの街の中にそびえている大きな像はいったい何なのですか?」
「あれこそが先ほど言った『かつて激しく猛りし者』の姿だ。太古の昔、この地に攻め込んできた『悪鬼』を打ち倒したときそのままなのだ」
「それは……その姿を再現した像ということですよね?」
信者達が長年、頑張って岩山を削りあのような像を造ったというなら、それは凄いけどまだ『感心』する域だ。
しかしこの世界ではもっととんでもない事がありうる。
そしてターダはオレの質問に対し、不可思議そうにクビをかしげる。
「外の世界ではそんな事をするのか? それに何の意味があるのだ?」
「それではやっぱり――」
「前に言っただろう。かの神は今では動く事も出来ぬとな。あれが今の『かつて激しく猛りし者』そのものだ。神代の昔に悪鬼を押さえ込んだままの姿で、今もそこにおわすのだぞ」
そういうことか。その神話の真相がどういうものかは分からないが、少なくともターダ達はあれは神が太古の昔に仇敵を封じた時、そのままの姿だと信じているのだな。
だけどこの世界ではそういう事も実際にありうるから恐ろしい。
「それでは『かつて激しく猛りし者』は永遠にあのままなのですね」
幾ら強大な仇敵を封じるためとは言えど、自分の身を岩に変じてずっとそのままというのは、信仰していなくとも気の毒に思えてしまう。
しかしターダは特に気にした様子も示さない。
「だからこそ『定めし者』は父を救うために『恩恵の運河』をここまでつくったのだ」
「それは一体、どういうことですか?」
岩になった神様が水を必要としているとは思えないのだけど。
「あの神体の下には『悪鬼』が封じられているが、言い換えるとかの邪悪なる者の力はまだあそこに留まっている事になる。だから運河で水を引き込んでそれを洗い流そうとしているのだ」
「え? それではこの運河は人間が生活するための水をパップスに送りこむためのものではないのですか?」
「それは本来の目的ではない」
ここでターダは街の反対側に広がる湿地帯を指差す。
「あの湿地は『悪鬼の湿地』と呼ばれていてな。悪鬼の邪な力を少しずつでも洗い流した結果として生まれたものなのだ」
言われてよくよく見ると湿地の中ではいろいろなものが蠢いている。
ひょっとしてモンスターのたぐいか?
まさかこのパップスの城壁は、略奪者ではなくあのモンスターから街を守るためのものだったのか。
そういえばオレの有する知識ではパップスは『街の周囲にはおぞましきものがうろついている』とあったけど、これはそのまんまの意味だったのかよ。
しかしこの話が本当なら、遊牧民の神は川の流れを無理矢理変えて、仇敵の力を洗い流すなんて真似をした事になるな。
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