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第14章 拳の王
第467話 『一騎打ち』のルールとは
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とにかくこんなところで争いを引き起こされるのは、オレにとってもたまらない。
ひとまずミーリアにどんな事情があったのか聞くしかないな。
「ところであなたのお父さんがビネースさんと争ったのですか?」
「ああそうだ……」
ミーリアは思い出すだけで苦痛だと言わんばかりに唇を噛む。
「あのう……ひょっとしてお父さんは殺されてしまったのでしょうか」
「そんな事はあり得ませんよ」
ここでビネースが口を挟んでくる。
「私は決闘を挑まれましたが、我らが行う決闘は『最初の血が流れた側が負け』というものです。この時もそれで私が勝ったので、彼女の父が死ぬ事などありません」
「ああそうだ……父は死ななかった……そのときにはな……」
肩をふるわせて言葉を絞り出すミーリアの姿は尋常では無かった。
そうするとそのときの傷が元で命を落としたのだろうか。
「いったい何があったのですか?」
「この男は父にとって、いや、我が一族にとって命よりも大切なもの……我が一族が代々受け継いできた、我が神により祝福された神剣を奪ったのだ!」
そういうことか。
確かに『剣神』の信徒にとっては『命よりも大切』になるだろう。
「それでその剣はどうなったんです」
「もちろんその場で粉々に打ち砕きましたとも。あらゆる武器を破壊するのが、我が神命ですからね」
ビネースは誇らしげに言っているが、そりゃ確実に恨まれるだろうよ。あとオレも剣など欲しいとは思わないけど、話を聞く限り相当な値打ちものだろう。
それを打ち砕くとは、正直勿体ないと思うけどガイザーの信徒にとっては、むしろそんな価値ある武器だからこそ破壊せねばならないという事になるんだろうなあ。
ミーリアの言葉によれば、あちらは『剣に生き、剣に死す』という教団だから、お互いに妥協の余地がなさ過ぎる。
しかしそれなら集団で仕返しにこないのも不可解だな。
「我らの流儀では決闘に勝利すれば、相手の最も良い武器を取り上げる、その代わりもしも負けたら一季節の間、相手に仕え、ガイザーの戒律を破る以外のあらゆる命令に従うという条件で戦う事になっているのですよ。これはそちらの守護神たる剣神ザスターニックの教団とも話がついているはずです」
なるほど。一応はルールがあるのか。
たぶん昔からトラブル続きで、多くの犠牲が出たから、それでどうにかお互いに落としどころを探った結果なんだろう。
「そんな事は分かっている! しかしその結果、父は面目を失ったのだ。我らにとって名誉は命よりも重い! それを失った事は死ぬよりも過酷な事なのだ」
一族の宝という『神の祝福を受けた神剣』を持っていたというなら、間違い無く当主もしくはそれに近い有力者なのだろう。
それが一騎打ちで敗れた上に、神剣を破壊されてしまったとなれば、地位を退くだけではすまないのは確かだ。
死刑とまではいかなくとも、事実上の追放に等しい扱いになるだろうな。
「それだったらそもそも決闘などしなければ良いのではありませんか?」
「公然と侮辱されて退けると思うか。そんな不名誉な真似をすれば、それこそ笑いものだ。何より我が神の戒律には一対一の決闘を挑まれ、引いてはならぬという決まりがある」
なるほど。彼女の崇拝する剣神ザスターニックが誇りを重んじる戦士の守護神であれば、そんな戒律があってもおかしくはないな。
そうするとルールが一応は定められているからこそ、ガイザーの信徒とは決闘を巡ってお互いに敵愾心をかき立てる事になってもおかしくはない。
「そういうならば一騎打ちの結果には従うべきでしょう。あなたが文句を言う筋合いではありませんね」
ビネースの方はまた素っ気なく言い切る。
それも一つの正論かもしれないが、いくら何でも父親を倒されて家宝を破壊された相手の前で言う台詞じゃないぞ。
どう考えてもビネースの方は穏便に済ませる気が全くない。
分かってはいたけど、平和主義と言いながらあまりにも過激だ。
「ええい! もう話は終わりだ! 今ここで一騎打ちをしろ!」
最初から戦いを避けるのは無理だったろうけど、お互いに引き下がらないものだから結局はこうなるのね。
もっともミーリアが一人だけで来たのは、ビネースの言葉通り彼女の周囲は『一騎打ちで決まった事だからあくまでも本人の問題』としてくれたのだろう。
そう考えると問答無用で数を頼りに攻め込まれないだけマシと考えるしかあるまい。
しかし相手が名誉を重んじる戦士の守護神だから、それで済んでいるのだろうけど、敵だったら虐殺でも認めるような情け無用の残虐な戦神だったらどうなるのだろうか。
いや。たぶんその場合はそもそも『一騎打ち』なんてやらないか。
そういう神の信徒に対しては、また別のルールがあるに違いない。
「いいでしょう。それでは決まり通り、戦いは初めの血が流れた側が負けとして、あなたが勝てば私が一季節の間、下僕となり、私が勝てばその剣をいただきますよ」
「こちらが勝てば、お前は私と共に来るのだ。そして一族の前で父上に土下座して詫びてもらうからな」
とにかく本当の殺し合いにならないだけマシと考えるべきだろうか。
もしもの時も即死で無い限り、オレが回復魔法をかければどうにかなるはず。
だけどこれで決着がついたところで、少年バトル漫画のようにお互いの健闘をたたえ合って仲良くなるなんて事はあり得ないだろう。
オレに出来るのは死亡者が出るという『最悪の事態』を避ける事だけだ。
そんなわけで不毛な一騎打ちにオレも付き合う事となった。
ひとまずミーリアにどんな事情があったのか聞くしかないな。
「ところであなたのお父さんがビネースさんと争ったのですか?」
「ああそうだ……」
ミーリアは思い出すだけで苦痛だと言わんばかりに唇を噛む。
「あのう……ひょっとしてお父さんは殺されてしまったのでしょうか」
「そんな事はあり得ませんよ」
ここでビネースが口を挟んでくる。
「私は決闘を挑まれましたが、我らが行う決闘は『最初の血が流れた側が負け』というものです。この時もそれで私が勝ったので、彼女の父が死ぬ事などありません」
「ああそうだ……父は死ななかった……そのときにはな……」
肩をふるわせて言葉を絞り出すミーリアの姿は尋常では無かった。
そうするとそのときの傷が元で命を落としたのだろうか。
「いったい何があったのですか?」
「この男は父にとって、いや、我が一族にとって命よりも大切なもの……我が一族が代々受け継いできた、我が神により祝福された神剣を奪ったのだ!」
そういうことか。
確かに『剣神』の信徒にとっては『命よりも大切』になるだろう。
「それでその剣はどうなったんです」
「もちろんその場で粉々に打ち砕きましたとも。あらゆる武器を破壊するのが、我が神命ですからね」
ビネースは誇らしげに言っているが、そりゃ確実に恨まれるだろうよ。あとオレも剣など欲しいとは思わないけど、話を聞く限り相当な値打ちものだろう。
それを打ち砕くとは、正直勿体ないと思うけどガイザーの信徒にとっては、むしろそんな価値ある武器だからこそ破壊せねばならないという事になるんだろうなあ。
ミーリアの言葉によれば、あちらは『剣に生き、剣に死す』という教団だから、お互いに妥協の余地がなさ過ぎる。
しかしそれなら集団で仕返しにこないのも不可解だな。
「我らの流儀では決闘に勝利すれば、相手の最も良い武器を取り上げる、その代わりもしも負けたら一季節の間、相手に仕え、ガイザーの戒律を破る以外のあらゆる命令に従うという条件で戦う事になっているのですよ。これはそちらの守護神たる剣神ザスターニックの教団とも話がついているはずです」
なるほど。一応はルールがあるのか。
たぶん昔からトラブル続きで、多くの犠牲が出たから、それでどうにかお互いに落としどころを探った結果なんだろう。
「そんな事は分かっている! しかしその結果、父は面目を失ったのだ。我らにとって名誉は命よりも重い! それを失った事は死ぬよりも過酷な事なのだ」
一族の宝という『神の祝福を受けた神剣』を持っていたというなら、間違い無く当主もしくはそれに近い有力者なのだろう。
それが一騎打ちで敗れた上に、神剣を破壊されてしまったとなれば、地位を退くだけではすまないのは確かだ。
死刑とまではいかなくとも、事実上の追放に等しい扱いになるだろうな。
「それだったらそもそも決闘などしなければ良いのではありませんか?」
「公然と侮辱されて退けると思うか。そんな不名誉な真似をすれば、それこそ笑いものだ。何より我が神の戒律には一対一の決闘を挑まれ、引いてはならぬという決まりがある」
なるほど。彼女の崇拝する剣神ザスターニックが誇りを重んじる戦士の守護神であれば、そんな戒律があってもおかしくはないな。
そうするとルールが一応は定められているからこそ、ガイザーの信徒とは決闘を巡ってお互いに敵愾心をかき立てる事になってもおかしくはない。
「そういうならば一騎打ちの結果には従うべきでしょう。あなたが文句を言う筋合いではありませんね」
ビネースの方はまた素っ気なく言い切る。
それも一つの正論かもしれないが、いくら何でも父親を倒されて家宝を破壊された相手の前で言う台詞じゃないぞ。
どう考えてもビネースの方は穏便に済ませる気が全くない。
分かってはいたけど、平和主義と言いながらあまりにも過激だ。
「ええい! もう話は終わりだ! 今ここで一騎打ちをしろ!」
最初から戦いを避けるのは無理だったろうけど、お互いに引き下がらないものだから結局はこうなるのね。
もっともミーリアが一人だけで来たのは、ビネースの言葉通り彼女の周囲は『一騎打ちで決まった事だからあくまでも本人の問題』としてくれたのだろう。
そう考えると問答無用で数を頼りに攻め込まれないだけマシと考えるしかあるまい。
しかし相手が名誉を重んじる戦士の守護神だから、それで済んでいるのだろうけど、敵だったら虐殺でも認めるような情け無用の残虐な戦神だったらどうなるのだろうか。
いや。たぶんその場合はそもそも『一騎打ち』なんてやらないか。
そういう神の信徒に対しては、また別のルールがあるに違いない。
「いいでしょう。それでは決まり通り、戦いは初めの血が流れた側が負けとして、あなたが勝てば私が一季節の間、下僕となり、私が勝てばその剣をいただきますよ」
「こちらが勝てば、お前は私と共に来るのだ。そして一族の前で父上に土下座して詫びてもらうからな」
とにかく本当の殺し合いにならないだけマシと考えるべきだろうか。
もしもの時も即死で無い限り、オレが回復魔法をかければどうにかなるはず。
だけどこれで決着がついたところで、少年バトル漫画のようにお互いの健闘をたたえ合って仲良くなるなんて事はあり得ないだろう。
オレに出来るのは死亡者が出るという『最悪の事態』を避ける事だけだ。
そんなわけで不毛な一騎打ちにオレも付き合う事となった。
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