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第15章 とある御家騒動の話
第528話 追っ手を振り切ったところで、思わぬ再会が
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とりあえず無事にホーニリオの街に入る事が出来たので、次は宿を探さねばならないが、目立つところに入ると追っ手と出くわす可能性もあるし、ここはどこか小さな宿を探すしかないだろう。
そんなわけで周囲を見回していると、魔法で強化したオレの知覚力にはあまり喜ばしくない存在が幾つも感じられた。
残念ながら周囲が騒がしい街中では何を話しているのかまでは分からない。
しかしこちらをチラチラ見る視線はハッキリと感じ取れる。
恐らくは追っ手だろう。
いくらミリンサが美人でもいきなり注目を浴びるはずがないだろうから、追っ手の中に彼女を見知っている相手がいた可能性が高いな。
いきなり攻撃してこないのは、町中だから遠慮しているのか、それとも髪を染めているのでにわかにはミリンサだと判断出来ないのか、他に理由があるのかは分からないがここはしばらく様子を見るべきか。
それとも連中が仲間を集めてくる前に、こちらから仕掛けるか。
いまこちらを注視しているのはせいぜい数人だから、ひとりひとり威力を強化した『平静』をかけて動けなくした上で、急いでこの場を離れるべきかもしれないな。
そう決断して魔法をかけた瞬間、ミリンサがオレの腕をつかんだ。
「まずい! 急いで逃げよう!」
なんだって? どういうことだ?
困惑した瞬間、ミリンサはオレの腕を引っ張って駆け出す。
その表情はかなり切羽詰まった様子が感じられる。どうやらミリンサも追っ手に気付いたらしい――つまりその追っ手は彼女と面識があると言う事だ。
しかしいきなりこの展開は予想外だった。
オレ達がいきなり駆け出す事になったのは、当然ながらこちらを監視していた連中も気付いたのは間違い無い。
困った事に今のオレは腕をつかまれて引っ張られているので、魔法をかける事も出来ない状態だ。
ミリンサは思っていたより感覚が鋭かったようだし、腕力も女性にしてはかなり強いほうだと思うけど、今はかえって迷惑だ。
そして振り向くと先ほどこちらを注視していた連中もいろいろと動き出している。
叫んでいるものもいれば、駆け出すものもいる。
これはこれでかなりマズい状況だが、ここで足を止めたらところで追っ手が集まってくるのは確実だから逃げ切るしかない!
そうするとオレがやるべきなのは一つだけだ。
「すみません! 手を離してくれますか?」
「ああ……すまない」
一緒に駆けながら、ミリンサが手を離したところでオレは追っ手と思しき相手に『平静』をかけ続ける。
ひょっとしたら無関係な人がいたかもしれない。
加えて往来でいきなり心ここにあらずと言わんばかり動きを止める人間が何人も出ているので、ちょっとした騒ぎになっているようだが、こちらは下手をすれば命がけなので勘弁してもらいたい。
こっちでは元の世界のように、道路で足を止めたら自動車にはねられて命を落としかねないワケでも無いし『平静』は身に危険があれば正気に戻る。
今はせいぜい数分、動けなくなってこちらを見失ってくれれば十分だ。
そしてしばらくするとこちらを追っている相手はいなくなったようだ。
「どうやら振り切ったようだな」
ミリンサは荒い息の中で、周りを見回している。
周囲の様子を見る限り建物は結構立派なもので、どうやら裕福な商業区に来てしまったらしいな。
そんなわけで取りあえず今はミリンサに問うことがある。
「すみませんが先ほどはどうして相手が追っ手だと分かったのですか?」
「それは……アルならば気付いているとは思うが、そいつが私の知り合いだったからだ……」
まあここまでは当然だろうな。
「その相手はドズ・カムでの知り合いですか? それとも今まであなたがいたところでの知り合いですか?」
オレの問いかけに対して、ミリンサは困った様子で顔を背ける。
「ドズ・カムでの知り合いだ……申し訳ないがそれ以上は言えない」
う~ん。確かにミリンサは困っているらしいのだが、命がかかっている程、切羽詰まっているようにも見えないな。
ひょっとするとそいつはミリンサにとっては『捕まったらマズい』かもしれないが、命を狙ってくるとかそんなところまでは考えられない相手なのかもしれない――オレにとってはミツリーンあたりが近いか。
もっともミリンサを追っている勢力が一つだけとは限らない。
少しは情報が増えたけど、面倒には変わりないな。
そんな事を考えているとオレ達の周囲がまた少しばかり騒がしくなる。
「おい! お前達は何者だ! かっぱらいか!」
どうやらここの警備員らしい男がひとり、こちらに対して警戒心をむき出して迫ってきたのだ。
そりゃまあ裕福な商業区で二人組が血相変えて走り回っていたら、あからさまに怪しいからな。
追っ手を振り切る事を優先させたために、また余計な面倒を抱え込んでしまったか。
「すみません。すぐに立ち去りますので勘弁して下さい」
オレは頭を下げるが、次の瞬間、警備員は手を伸ばしてオレのフードに手をかける。
「とにかく顔をちゃんと見せろ!」
しまったと思った時には遅かった、引っ張られたフードが外れてオレの容姿がさらされる。
「な……お前は……」
「すみません!」
警備員は絶句したが、オレは慌ててフードを被り直す。
だがこの時、思わぬ声が耳に飛び込んできたのだ。
「ま…まさか! あなたは!」
どこかで何度も聞いた覚えのある小さな叫び響き、オレが反射的に振り向くとそこには驚愕を貼り付けてこちらを呆然と見つめる少女の顔があった。
その顔は忘れもしないオレがマニリア帝国の後宮にいたときの友達、デレンダだったのだ。
そんなわけで周囲を見回していると、魔法で強化したオレの知覚力にはあまり喜ばしくない存在が幾つも感じられた。
残念ながら周囲が騒がしい街中では何を話しているのかまでは分からない。
しかしこちらをチラチラ見る視線はハッキリと感じ取れる。
恐らくは追っ手だろう。
いくらミリンサが美人でもいきなり注目を浴びるはずがないだろうから、追っ手の中に彼女を見知っている相手がいた可能性が高いな。
いきなり攻撃してこないのは、町中だから遠慮しているのか、それとも髪を染めているのでにわかにはミリンサだと判断出来ないのか、他に理由があるのかは分からないがここはしばらく様子を見るべきか。
それとも連中が仲間を集めてくる前に、こちらから仕掛けるか。
いまこちらを注視しているのはせいぜい数人だから、ひとりひとり威力を強化した『平静』をかけて動けなくした上で、急いでこの場を離れるべきかもしれないな。
そう決断して魔法をかけた瞬間、ミリンサがオレの腕をつかんだ。
「まずい! 急いで逃げよう!」
なんだって? どういうことだ?
困惑した瞬間、ミリンサはオレの腕を引っ張って駆け出す。
その表情はかなり切羽詰まった様子が感じられる。どうやらミリンサも追っ手に気付いたらしい――つまりその追っ手は彼女と面識があると言う事だ。
しかしいきなりこの展開は予想外だった。
オレ達がいきなり駆け出す事になったのは、当然ながらこちらを監視していた連中も気付いたのは間違い無い。
困った事に今のオレは腕をつかまれて引っ張られているので、魔法をかける事も出来ない状態だ。
ミリンサは思っていたより感覚が鋭かったようだし、腕力も女性にしてはかなり強いほうだと思うけど、今はかえって迷惑だ。
そして振り向くと先ほどこちらを注視していた連中もいろいろと動き出している。
叫んでいるものもいれば、駆け出すものもいる。
これはこれでかなりマズい状況だが、ここで足を止めたらところで追っ手が集まってくるのは確実だから逃げ切るしかない!
そうするとオレがやるべきなのは一つだけだ。
「すみません! 手を離してくれますか?」
「ああ……すまない」
一緒に駆けながら、ミリンサが手を離したところでオレは追っ手と思しき相手に『平静』をかけ続ける。
ひょっとしたら無関係な人がいたかもしれない。
加えて往来でいきなり心ここにあらずと言わんばかり動きを止める人間が何人も出ているので、ちょっとした騒ぎになっているようだが、こちらは下手をすれば命がけなので勘弁してもらいたい。
こっちでは元の世界のように、道路で足を止めたら自動車にはねられて命を落としかねないワケでも無いし『平静』は身に危険があれば正気に戻る。
今はせいぜい数分、動けなくなってこちらを見失ってくれれば十分だ。
そしてしばらくするとこちらを追っている相手はいなくなったようだ。
「どうやら振り切ったようだな」
ミリンサは荒い息の中で、周りを見回している。
周囲の様子を見る限り建物は結構立派なもので、どうやら裕福な商業区に来てしまったらしいな。
そんなわけで取りあえず今はミリンサに問うことがある。
「すみませんが先ほどはどうして相手が追っ手だと分かったのですか?」
「それは……アルならば気付いているとは思うが、そいつが私の知り合いだったからだ……」
まあここまでは当然だろうな。
「その相手はドズ・カムでの知り合いですか? それとも今まであなたがいたところでの知り合いですか?」
オレの問いかけに対して、ミリンサは困った様子で顔を背ける。
「ドズ・カムでの知り合いだ……申し訳ないがそれ以上は言えない」
う~ん。確かにミリンサは困っているらしいのだが、命がかかっている程、切羽詰まっているようにも見えないな。
ひょっとするとそいつはミリンサにとっては『捕まったらマズい』かもしれないが、命を狙ってくるとかそんなところまでは考えられない相手なのかもしれない――オレにとってはミツリーンあたりが近いか。
もっともミリンサを追っている勢力が一つだけとは限らない。
少しは情報が増えたけど、面倒には変わりないな。
そんな事を考えているとオレ達の周囲がまた少しばかり騒がしくなる。
「おい! お前達は何者だ! かっぱらいか!」
どうやらここの警備員らしい男がひとり、こちらに対して警戒心をむき出して迫ってきたのだ。
そりゃまあ裕福な商業区で二人組が血相変えて走り回っていたら、あからさまに怪しいからな。
追っ手を振り切る事を優先させたために、また余計な面倒を抱え込んでしまったか。
「すみません。すぐに立ち去りますので勘弁して下さい」
オレは頭を下げるが、次の瞬間、警備員は手を伸ばしてオレのフードに手をかける。
「とにかく顔をちゃんと見せろ!」
しまったと思った時には遅かった、引っ張られたフードが外れてオレの容姿がさらされる。
「な……お前は……」
「すみません!」
警備員は絶句したが、オレは慌ててフードを被り直す。
だがこの時、思わぬ声が耳に飛び込んできたのだ。
「ま…まさか! あなたは!」
どこかで何度も聞いた覚えのある小さな叫び響き、オレが反射的に振り向くとそこには驚愕を貼り付けてこちらを呆然と見つめる少女の顔があった。
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