異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第19章 神気の山脈にて

第818話 フォラジの説得は『首』に届くのか?

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 フォラジの了承に対し『首』は明らかに不審そうな視線を向ける。
 もう神様なんかとっくに慣れっこのオレだから特に気にはしていなかったけど、常人だったらこれだけでもビビってひれ伏すほど恐ろしいはずだ。
 それに対して堂々と対峙しているフォラジは、今までオレが思っていたよりも大したヤツなのかもしれない。
 いや――前々から場の空気を読まず、相手の事など考えない男だったから、この場でもそれが発揮されているだけなのかもしれないけどな。

『確かに先ほどお前は我が胴体についての情報があると言っていたが、それも確証があるわけでもあるまい? あるなら即座にそれを口にしている筈だからな』

 さすがにこの『首』も馬鹿じゃ無いよな。
 それに今までにも、胴体を探すと安請け合いする相手もいれば、ウソをついて騙そうとした相手もいるだろうから、疑い深くなっているのが当然と言うものだ。

「そうでしょうか? 何でも最初から全部教えるような真似をするほど私は愚かではありませんよ」
『ならばお前の首をちぎって、その知識を見るだけだ』

 本当にそんな事が可能なのか? それとも脅しなのか?
 だがフォラジはそんな事は予想通りと言わんばかりだった。

「それも無駄ですね。なぜなら幾ら私でも見たものを全て記憶しているワケではありませんから、改めて調査しないと本当の場所は分かりませんよ」
『何だと……』
「その程度の事でよいのならば、私の首をちぎって知識を垣間見たらよろしいでしょう。我が神マークホール神とは異なり、私の知識など所詮は取るに足らない僅かなものでしかありませんけどね」
『……』

 開き直ったフォラジの言葉に対し『首』は動きを止める。

「分かっていただけましたか? それではもうしばらくお待ち下さい。きっとあなたの胴体の場所を探してここに舞い戻ってきましょう」

 そのしばらくが何年になるかは分からないが、これで『首』が納得してくれるだろうか?

『仮に可能だとして、お前の寿命が尽きる前に出来ることなのか。お前がウソをついていないとしても、実現出来なければ何の意味も無い』

 これまでにも幾度も同じような事があって、期待を裏切られてきたのかもしれないな。
 実際に相手が裏切ったのか、途中で力尽き朽ち果てたのか分かるはずも無いが、この『首』にとって結果は一緒か。

「もちろんあなたの心配は当然です。しかし出来なければ、代を次いで完成しますとも」
『お前が力及ばなければ、子供や孫が成し遂げるというのか?』
「いいえ。それは少し違いますね」

 フォラジはどこか得意げな様子をみせる。

「子供や僅かな弟子にのみ、教えを口伝で受け継がせるなどという非効率的な事を我らはしていません」
『どういうことだ? 赤の他人がお前の探索に協力するとでも言うのか?』

 どうやらこの『首』もこの地域のシャーマンのように、教えはあくまでもごく少数にあくまでも口伝で受け継がせる事しか知らないらしい。
 もちろん別に愚かだからでは無く、そういう手法しか知らないという事なのだが。

「それが学問というものなのです。私の力、いや寿命が及ばなくとも、それを受け継ぎ研究を続け、最終的には誰かが完成させるのですよ」
『むう……』

 正直に言ってそれも結構都合のいい物言いだとは思うが、ここで敢えてツッコミを入れる程オレも無謀では無い。

「この私も恥ずかしながら、遥か以前に神の御許に去った先人達の教えを受け継ぎ、その真相を探るためにこの地に来たのです。我らに必要なのは、己の成果を後世に残す記録のみ。血の繋がりも言葉の教えも必要ありません」
『本当なのだろうな』
「もちろんですとも。これは失礼ながらあなたのためだけではありません。探究すべき事があるのなら、事実を求めて人生を捧げ、その知識を持ち帰り現在、そして未来の信徒達に伝え広める、それが我らの誇りであり使命なのです」

 ここで『万人に広める』と言わないのは仕方ないのだろうなあ。
 残念ながらこの世界、高度な学問を修められる人間などごく一握りの例外だし、殆どの地域では読み書きが出来るだけでも少数派だ。
 フォラジは明らかに『学識を持たない=殆どの人間』を見下しているけど、少なくとも彼の価値観にとっては全くもって正当な行為なのだ。

『それではお前は報酬を望まぬと言うのか』
「余人の触れる事の出来ぬ真理を垣間見るだけで、我らにとっては立派な報酬です。それ以上を望む必要などありませんよ」

 フォラジの言葉を聞いていると、相手がクトゥ○フかニャル○トテップあたりでも知識のためなら喜んで自分の人生を捧げそうに聞こえてくるな。

『分かった……よかろう。ここはお前の言葉を信じようでは無いか』
「おお! ありがとうございます!」

 フォラジが礼を述べたところで『首』は改めてオレの方を見る。

『今回はそなたを我がもの出来なかったのは残念だが、胴体が見つかった暁にはまた吾の元に来るが良い』
「その時が来てからと言う事にして下さい……」

 だいたいアンタだって首がちゃんと胴体にくっつくかどうか分からないから、オレの首をちぎるのは諦めたんだろう――普通に文章にすると何が何だか分からんな。
 とりあえずまとまってくれたのならここは適当にあわせるしかないか。
 オレにとっては毎度の事ではあるのだが。
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