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第21章 神の試練と預言者
第913話 『新たなる預言者』とは
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サロールはオレの申し出を聞いて、少しばかり考え込む。
「お前が俺の助けになるだと……」
たぶんサロールは『よそ者の助けを得る』ことを今までに考えもしていなかったはずだ。
オレが役に立つ事も示したし、今のところ味方がいないから手助けも欲しいはず。
しかし『脆弱で劣った存在』と見下している相手と手を組む事は躊躇せざるを得ないのだろうな。
それならそれでいいさ。
「とりあえず今、サロールさんの状況を教えてくれますか?」
「いいだろう……」
抵抗の少ないところから話をして、後のことはそこから考えよう。
「先ほど偉大なるイル=フェロは堕落した我らに対し怒り、この地をこのように変えてしまったが、それでも見捨てることなく預言者を使わして試練を与えていると言ったな」
思った通りその『預言者』を巡る対立が起きているらしい。
「最近になって『新たな預言者』という触れ込みで姿を見せたのが、シャンサという輩だ」
この言い方からすると明らかにサロールは、そのシャンサを預言者と仰ぐ勢力と敵対しているらしい。
「教えを変えたのは、そのシャンサなのですか?」
「そうだ。奴は我らに対し今までに無い色々な魔法を示し、戦いを挑んだ族長達を屈服させ、それによって指導者の座についた」
ふうむ。この世界だと、そのシャンサが本当に預言者で、神の意思を受けている事だってもちろんあり得る。
だけど彼らの知らない魔法を持ち込んだとなると、そいつはどこか別のところ送り込まれてきて預言者を騙っている可能性があるな。
しかし正直に言って、偽の預言者をでっち上げてまで、火山活動が活発でこんな荒れ果てた土地を手に入れて喜ぶ勢力があるとは思えない。
それとも元々、この地の住民だったけど一度、この地を離れてそこで何かを手に入れて戻ってきたのか。
いろいろと想像は出来るけど、根拠があるわけではない。
ハッキリしているのはその『新たな預言者』を巡って、対立が発生しているという事だ。
「シャンサは神より与えられた『新たな試練』として全部族を統合した上で、周囲に住まう堕落した者どもを攻めるように唱えたのだ」
「それはあなた方が普段行う戦いとは違って、一対一でどちらが強いか競うために戦うのではないのですね?」
外の世界の住民相手に『一対一で正面から戦え』などと言ったところで、付き合ってくれるのはいたとしても例外だろう。
そうするとシャンサは『外の世界と戦わせるために、逢えてこの地の住民の宗教をゆがめている』のかもしれない。
「その通りだ。先ほど言ったように、シャンサは『霊的に劣った者どもを相手にするからにはそのような配慮は無用』だと説いた」
ここでサロールは憤りと共にその身を震わせる。
「もちろん弱者を滅ぼす事は神命だ。だがそのために我ら自身が堕落してどうする?」
サロールにとって『堕落』とは弱者を救済する事であり、また神に定められたルールに基づき一対一で戦って強者を決める事をないがしろにする事なのだな。
「あなたのように考えている人は他にもいるのですか?」
「もちろんだとも。むしろシャンサそのものが偉大なるイル=フェロが『新たな試練』として送り込んだものではないかと思っているぐらいだ」
「それはどういう意味ですか」
オレの問いかけに対し、サロールは『そんなことも分からんのか』と言わんばかりに吐き捨てる。
「だからシャンサこそが我らを誤った方向に導き、堕落させようとする偽りの預言者として偉大なるイル=フェロが我らに差し向けた存在だと言うことだ」
「つまりサロールさんはその『偽りの預言者』に騙される事無く、正しい神命を貫けるかイル=フェロ神は試している、と思っているわけですか」
「そうかもしれんな……」
サロールは苦悩の表情を浮かべる。推測するにその預言者を巡って、同族が分裂し、親しい人間とも決裂してしまったのだろう。
そうするとそのシャンサは何者だろうか。
普通に考えると、この地域のイル=フェロ信徒を騙して駆り立て、何らかの策略に利用としようとしている事になる。
しかしそう簡単に行くだろうか?
二〇世紀初め頃の古い映画だったら『何も知らず文明を持たない原住民をライフルのような文明の利器で従える』とか、場合によっては集団に囲まれたところで都合よく日食が起きて原住民が恐怖し『神の使いだ』とひれ伏すとかそんな展開もよくあった。
列強が世界中に植民地を獲得して『野蛮人に文明を伝えているのだ』と正当化していた時代のお話だ。
もちろん元の世界でもそんな映画のような話が現実にあったわけではないし、何よりこの世界の住民は、文明には浴していないのも大勢いるが、彼らには文明人にない独特の力を有しているのだ。
少々の力を示した程度で簡単にひれ伏す筈も無い。
オレに大勢の偽者がいるように、過去にも預言者を騙る奴が出ただろうし、当然この地域の住民もそれを真っ先に考えたはず。
そんなに簡単に騙されるとはどうしても思えない。
本当に預言者なのか、それとも『神の試練として送り込まれた偽の預言者』なのかどうかは別として、少なくともその相手が『ただの詐欺師』でない事だけは間違いないな。
「お前が俺の助けになるだと……」
たぶんサロールは『よそ者の助けを得る』ことを今までに考えもしていなかったはずだ。
オレが役に立つ事も示したし、今のところ味方がいないから手助けも欲しいはず。
しかし『脆弱で劣った存在』と見下している相手と手を組む事は躊躇せざるを得ないのだろうな。
それならそれでいいさ。
「とりあえず今、サロールさんの状況を教えてくれますか?」
「いいだろう……」
抵抗の少ないところから話をして、後のことはそこから考えよう。
「先ほど偉大なるイル=フェロは堕落した我らに対し怒り、この地をこのように変えてしまったが、それでも見捨てることなく預言者を使わして試練を与えていると言ったな」
思った通りその『預言者』を巡る対立が起きているらしい。
「最近になって『新たな預言者』という触れ込みで姿を見せたのが、シャンサという輩だ」
この言い方からすると明らかにサロールは、そのシャンサを預言者と仰ぐ勢力と敵対しているらしい。
「教えを変えたのは、そのシャンサなのですか?」
「そうだ。奴は我らに対し今までに無い色々な魔法を示し、戦いを挑んだ族長達を屈服させ、それによって指導者の座についた」
ふうむ。この世界だと、そのシャンサが本当に預言者で、神の意思を受けている事だってもちろんあり得る。
だけど彼らの知らない魔法を持ち込んだとなると、そいつはどこか別のところ送り込まれてきて預言者を騙っている可能性があるな。
しかし正直に言って、偽の預言者をでっち上げてまで、火山活動が活発でこんな荒れ果てた土地を手に入れて喜ぶ勢力があるとは思えない。
それとも元々、この地の住民だったけど一度、この地を離れてそこで何かを手に入れて戻ってきたのか。
いろいろと想像は出来るけど、根拠があるわけではない。
ハッキリしているのはその『新たな預言者』を巡って、対立が発生しているという事だ。
「シャンサは神より与えられた『新たな試練』として全部族を統合した上で、周囲に住まう堕落した者どもを攻めるように唱えたのだ」
「それはあなた方が普段行う戦いとは違って、一対一でどちらが強いか競うために戦うのではないのですね?」
外の世界の住民相手に『一対一で正面から戦え』などと言ったところで、付き合ってくれるのはいたとしても例外だろう。
そうするとシャンサは『外の世界と戦わせるために、逢えてこの地の住民の宗教をゆがめている』のかもしれない。
「その通りだ。先ほど言ったように、シャンサは『霊的に劣った者どもを相手にするからにはそのような配慮は無用』だと説いた」
ここでサロールは憤りと共にその身を震わせる。
「もちろん弱者を滅ぼす事は神命だ。だがそのために我ら自身が堕落してどうする?」
サロールにとって『堕落』とは弱者を救済する事であり、また神に定められたルールに基づき一対一で戦って強者を決める事をないがしろにする事なのだな。
「あなたのように考えている人は他にもいるのですか?」
「もちろんだとも。むしろシャンサそのものが偉大なるイル=フェロが『新たな試練』として送り込んだものではないかと思っているぐらいだ」
「それはどういう意味ですか」
オレの問いかけに対し、サロールは『そんなことも分からんのか』と言わんばかりに吐き捨てる。
「だからシャンサこそが我らを誤った方向に導き、堕落させようとする偽りの預言者として偉大なるイル=フェロが我らに差し向けた存在だと言うことだ」
「つまりサロールさんはその『偽りの預言者』に騙される事無く、正しい神命を貫けるかイル=フェロ神は試している、と思っているわけですか」
「そうかもしれんな……」
サロールは苦悩の表情を浮かべる。推測するにその預言者を巡って、同族が分裂し、親しい人間とも決裂してしまったのだろう。
そうするとそのシャンサは何者だろうか。
普通に考えると、この地域のイル=フェロ信徒を騙して駆り立て、何らかの策略に利用としようとしている事になる。
しかしそう簡単に行くだろうか?
二〇世紀初め頃の古い映画だったら『何も知らず文明を持たない原住民をライフルのような文明の利器で従える』とか、場合によっては集団に囲まれたところで都合よく日食が起きて原住民が恐怖し『神の使いだ』とひれ伏すとかそんな展開もよくあった。
列強が世界中に植民地を獲得して『野蛮人に文明を伝えているのだ』と正当化していた時代のお話だ。
もちろん元の世界でもそんな映画のような話が現実にあったわけではないし、何よりこの世界の住民は、文明には浴していないのも大勢いるが、彼らには文明人にない独特の力を有しているのだ。
少々の力を示した程度で簡単にひれ伏す筈も無い。
オレに大勢の偽者がいるように、過去にも預言者を騙る奴が出ただろうし、当然この地域の住民もそれを真っ先に考えたはず。
そんなに簡単に騙されるとはどうしても思えない。
本当に預言者なのか、それとも『神の試練として送り込まれた偽の預言者』なのかどうかは別として、少なくともその相手が『ただの詐欺師』でない事だけは間違いないな。
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