異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第21章 神の試練と預言者

第918話 廃墟の奥に秘められたものは

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 廃墟を漁っている連中がただの捜索隊なら、それを確認したところでさっさと立ち去るところだったが『偽りの預言者シャンサ』が関わっているとなると、もう少し調べてみたいところだ。
 見たところ彼らは埋もれた街を掘り返して、見つかったものを集めているらしい。
 考古学的な興味があるなら、火山噴火で埋もれてしまった都市の廃墟にはその時代の貴重な遺物が残っていて、言わば『タイムカプセル』のような存在だ。
 しかしイル=フェロ神の信仰に関わる聖遺物ならともかく、それ以外のものをわざわざ手間をかけて発掘しようとするのは、これまでのイル=フェロ信徒の行動を考えると不可解だ。
 実際に捜索活動を行っている連中は、自分たちがなぜこのような事をしているのか理解出来ていない様子で、やる気が感じられず、そのためにリーダーがいらついているらしい。
 最も考えられるのは、やはりシャンサが外の地域と何らかの関わりがあり、イル=フェロ信徒に命じて、廃墟を捜索させていると言うことだ。
 もしもこの想像が当たっていれば、シャンサが捜索を命じているのは当然、この廃墟だけでなくこの地域全体に及んでいるはず。
 もっとも無関係な何者かが、シャンサの名を騙ってイル=フェロ信徒を騙しているかもしれないし、逆に本当にイル=フェロ神の貴重な聖遺物がこの廃墟に眠っている事を、預言者として察知した可能性も否定出来ない。
 これまでにもしょっちゅう予想を外してきたので、残念ながらオレは自分の直感はとても信じられなくなってしまった。
 ただいずれにしても、ここにいる連中も自分たちが何を探しているのか明確に分かっていないように感じられる。
 さすがに直接尋ねるのは危険過ぎるし、ここは諦めて引き上げるべきかな。
 あまり時間をかけていたら、置いてきたサロールが心配だ。
 だがそんなことを考えていると、周囲に奇妙な変化が起きる。
 突然、硫黄のような匂いが漂い始めたのだ。

 むう。近くの山々の火山活動が活発になって、いきなりガスが流れ込んで来たのか?
 いや。そうではない。
 オレの『霊視』ソウルサイトでは確かに希薄であるが、それでも周囲には霊体が漂っているのが見える。
 強い力があるわけではないが、辺り一面を覆うように存在しているのだ。

「むう……来たか……」

 リーダーらしき男はどうやらこれについて事前に知っていたらしいな。

「おい! 引き上げるぞ!」

 連中は探し出したガラクタを慌てて集め、そのまま去って行く。
 当たり前だがこの霊体について彼らはよく知っていて、可能な限り近づきたくないようだ。
 まあいくら敵とは正面から戦う事を美徳とするイル=フェロ信徒でも、こんな気体のごとき相手とは魔法以外では戦いようが無い。
 本職のシャーマンでもいれば、どうにかなるかもしれないけど、彼らにはいないようだ。
 イル=フェロ信徒は『弱肉強食』を信奉していて、外の世界から見れば人命も非常に軽く扱われているが、それでも全く無駄だと分かっていて立ち向かうほど愚かではないだろう。
 そんなわけですぐに連中は引き下がっていく。
 硫黄の匂いが急速に高まる中で、オレは掘り返された場所を探ることにする。
 連中の行動の動機になるものがあるかもしれないからな。

 だがそんな事を考えていると、周囲の視界がすぐに悪くなり、次第に呼吸も苦しくなってくる。
 思った通り、この硫黄の臭気は霊体によって操られているらしい。
 確かにこんな臭気に取り込まれたら、普通の人間であればすぐに命が危うくなるだろう。
 そんなわけでオレは取りあえず『毒の中和』ニュートラライズ・ポイズンを自分にかけておく。これで有毒なガスの中でも行動は問題無い。
 よくよく見ると僅かに黄ばんだ空気には、苦悶する人間の顔が一瞬浮かび上がり、次にはまた別の顔が生まれては消える。
 なるほど。遥か昔、火山性のガスがこの都市を覆ったとき、苦悶の中で命を落とした人間の魂がこのような形を取っているに違いない。
 オレの場合、似たような相手に今まで何度も出会ってきたお陰で、まるで動じる事が無くなったけど、冷静に考えれば、こいつらが現れる気配を察した時点でさっさと引き上げたイル=フェロ信徒達の行動の方がずっと『まとも』なのだな。
 そして霊体達はオレにすがりつくように集まってくる。
 恐らくは悪意があるわけではないのだろう。
 自分たちが命を落としたとき、誰かに助けを求めた意識がこのガスに取り憑き、人を見かけるとすがりつこうとしていると感じだな。
 だがそれでも人間にとって有害なのは間違いない。
 オレにとっては今のところは大丈夫だが、それでもいい気分がしないのは確かだ。
 そんなわけでオレは先ほど立ち去った連中が、あさっていた場所を探る。
 正直に言えばあまり期待していたワケでは無く、万に一つ手がかりが見つかればいい。その程度の意識だった。
 だがこの時、瓦礫の中でほのかに輝くものが目に入る。
 いや。実際に光っているのではない。
 どういうわけかオレが自分にかけている『霊視』と『魔法眼』に引っかかる存在があったのだ。
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