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第24章 全てはアルタシャのために?
第1191話 廃神が望んだものは
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オレが全力で癒やしの力を放つと、周囲の朽ち果て赤茶けた死の空間が少しずつでも生命が戻ってくる事が感じられる。
そしてそれと共に空間の亀裂が塞がっていく。
同時に周囲の廃神達もまたその醜悪な姿が、人間に近づいていくように感じられるが、もちろん全体から見れば一部に過ぎない。
『おおお! もっともっと力を寄こせ!』
『我らを癒やせ!』
しかしそれでも彼らにとっては貴重な存在らしく、必死ですがりつこうとしてくる。
「残念ですけど、あなた方を癒やす事は――いや。皆さんの望み通り神の座に戻す事は出来ません」
ここでオレが彼らに力を与えたところで、あくまでも一時の事に過ぎない。
それが本心から好きこのんでのものであれ、恐怖からいやいやであれ、自ら望んで信仰を捧げる相手がいない限り神としての存在は維持できないのだ。
だからこそ廃神連中はオレを手に入れようとしたわけだが、もちろんこっちからは願い下げだ。
「あなた方もこのままでは仮に一時的に力を得たとしても、しばらくすればまた廃神に逆戻りになる事は分かっているでしょう」
『仮にそうだとしても、今のままよりは遥かにマシだ!』
「あなた方は本来の行くべきところに向かうべきなのです」
要するに『死者』として悪あがきせずあの世に行ってくれという事だ。
『それはもう我らは用済みだから消えろと言っているだけなのだろうが!』
「ならば言いますが、あなた方が神になったときに今のように、失った神位を取り戻す事を望み、また見捨てた信徒を憎みその恨みを晴らすような姿を考えていたのですか?」
オレの問いかけに返答は無かった。
「あなた方だって自分を崇拝する信徒に恵みを与え、尊崇されて神の座にある事を望んでいたのではないのですか?」
『そうだとも! だが奴らはその我らを裏切ったのだ! 神の座から引きずりおろし、このような惨めな存在へとおとしめた!』
『いまそうやって大勢の人間から力を得ているお前にその気持ちが分かるはずがない!』
言われた通り、確かに彼らの気持ちはオレには分からないだろう。
そもそもオレの場合、神の座を望んだ事も無いし、崇拝を得たいと思っていたわけでもない。
望みもしないのに『女神』として大陸中にその存在が知られるようになってしまったオレとあちらの廃神の皆さんとでは境遇が違い過ぎる。
だがそれでも彼らには分かってもらわねばならない。誰のためでも無い。
他ならぬ彼ら廃神達のためでもある。
「見捨てられた腹いせに人々を殺戮するのは神ですら無い、ただの化け物です。このままあなた方が人々の前に出ても、ただ単に人々を襲って殺害するおぞましい化け物でしか無いのですよ! あなた方はそれを望んでいるのではないでしょう!」
『確かに我らの望みは再び崇拝されることだ』
「それならば人々を恨んで、報復するのは正反対ではないのですか? そんな事を望んで神々になったわけではないですよね!」
オレの必死の呼びかけを受けて、廃神達は動きを止める。
元の世界でも悪魔とされている存在が、遠い昔には神として崇拝されていた事は別に珍しいワケでは無い。
ある勢力にとっての偉大な神が、敵対する勢力にとってはおぞましい邪神である事はむしろ当たり前の事であり、言ってみれば『勝った側が正義』という人間社会と同じ構造があったのも間違い無い。
そして神造者はそれを認識した上で組織的に神々を定義する事で強大な力を手にしたが、それは神々を必要とすれば作り出し、不要だと判断すればゴミのように廃棄するという『神や信仰を単なる道具として扱う』代物でもあった。
悲しいかなそれ自体は過去にもずっと繰り返されて来た事だった。時代の流れによって信仰されなくなり、消えていく神が生まれるのは必然なのだ。
だが神造者のやり方はそれを人為的に推し進める事だったので、あまりにも急ぎすぎ取り残される神々の不満が高まったのは間違い無い。
更に長年に渡る活動の結果、神造者の中からも神として崇拝される者が大勢出てきたのが事情を更に面倒な事とした。
神造者内部の争いで、神となっては引きずり下ろす行為を繰り返した結果、どんどん廃神が増え、しかも彼らは人間の時の経験から神造者のやり方をよく知っていたが故に、その穴をついて現実世界へと湧き出そうとしているのだ。
『それは我らに再び、あの荒廃した神界をさまよえというのか?』
「今はあなた方はひいて下さい。そして本来行くべきところに向かうべきです!」
彼らが神の座を失っても、その地位に執着し続けた結果として、現実世界の無残な現し身であった荒廃した神界に留まり続けるようになったのだ。
皮肉にもそれ故にこそ彼らの現実世界への憎悪は更に増し、廃神の数は増え続け、神界の後輩は更に進むという悪循環に突入したのだろう。
ハッキリ言えばこの廃神達は死後もその意志だけが残った亡霊に近い存在だ。
彼らが自らの意志でこの世界を離れる事を決めてくれなければ、苦痛だけが続く羽目になるのは明白だった。
問題なのは彼らにそれを受け入れさせる事だ。
彼らだって元々は神の列に加えられる程の英傑だったとすれば、その理性をいったん取り戻させるためにも、彼らを癒やす必要があるのか。
今のオレにだったらそれが可能か?
ええい。考えている場合じゃ無い。
オレにはいま大陸中から力が集まっているが、それはオレのためではなく、この世界と彼ら廃神達を癒やすために全て使わねばならないのだから。
そしてそれと共に空間の亀裂が塞がっていく。
同時に周囲の廃神達もまたその醜悪な姿が、人間に近づいていくように感じられるが、もちろん全体から見れば一部に過ぎない。
『おおお! もっともっと力を寄こせ!』
『我らを癒やせ!』
しかしそれでも彼らにとっては貴重な存在らしく、必死ですがりつこうとしてくる。
「残念ですけど、あなた方を癒やす事は――いや。皆さんの望み通り神の座に戻す事は出来ません」
ここでオレが彼らに力を与えたところで、あくまでも一時の事に過ぎない。
それが本心から好きこのんでのものであれ、恐怖からいやいやであれ、自ら望んで信仰を捧げる相手がいない限り神としての存在は維持できないのだ。
だからこそ廃神連中はオレを手に入れようとしたわけだが、もちろんこっちからは願い下げだ。
「あなた方もこのままでは仮に一時的に力を得たとしても、しばらくすればまた廃神に逆戻りになる事は分かっているでしょう」
『仮にそうだとしても、今のままよりは遥かにマシだ!』
「あなた方は本来の行くべきところに向かうべきなのです」
要するに『死者』として悪あがきせずあの世に行ってくれという事だ。
『それはもう我らは用済みだから消えろと言っているだけなのだろうが!』
「ならば言いますが、あなた方が神になったときに今のように、失った神位を取り戻す事を望み、また見捨てた信徒を憎みその恨みを晴らすような姿を考えていたのですか?」
オレの問いかけに返答は無かった。
「あなた方だって自分を崇拝する信徒に恵みを与え、尊崇されて神の座にある事を望んでいたのではないのですか?」
『そうだとも! だが奴らはその我らを裏切ったのだ! 神の座から引きずりおろし、このような惨めな存在へとおとしめた!』
『いまそうやって大勢の人間から力を得ているお前にその気持ちが分かるはずがない!』
言われた通り、確かに彼らの気持ちはオレには分からないだろう。
そもそもオレの場合、神の座を望んだ事も無いし、崇拝を得たいと思っていたわけでもない。
望みもしないのに『女神』として大陸中にその存在が知られるようになってしまったオレとあちらの廃神の皆さんとでは境遇が違い過ぎる。
だがそれでも彼らには分かってもらわねばならない。誰のためでも無い。
他ならぬ彼ら廃神達のためでもある。
「見捨てられた腹いせに人々を殺戮するのは神ですら無い、ただの化け物です。このままあなた方が人々の前に出ても、ただ単に人々を襲って殺害するおぞましい化け物でしか無いのですよ! あなた方はそれを望んでいるのではないでしょう!」
『確かに我らの望みは再び崇拝されることだ』
「それならば人々を恨んで、報復するのは正反対ではないのですか? そんな事を望んで神々になったわけではないですよね!」
オレの必死の呼びかけを受けて、廃神達は動きを止める。
元の世界でも悪魔とされている存在が、遠い昔には神として崇拝されていた事は別に珍しいワケでは無い。
ある勢力にとっての偉大な神が、敵対する勢力にとってはおぞましい邪神である事はむしろ当たり前の事であり、言ってみれば『勝った側が正義』という人間社会と同じ構造があったのも間違い無い。
そして神造者はそれを認識した上で組織的に神々を定義する事で強大な力を手にしたが、それは神々を必要とすれば作り出し、不要だと判断すればゴミのように廃棄するという『神や信仰を単なる道具として扱う』代物でもあった。
悲しいかなそれ自体は過去にもずっと繰り返されて来た事だった。時代の流れによって信仰されなくなり、消えていく神が生まれるのは必然なのだ。
だが神造者のやり方はそれを人為的に推し進める事だったので、あまりにも急ぎすぎ取り残される神々の不満が高まったのは間違い無い。
更に長年に渡る活動の結果、神造者の中からも神として崇拝される者が大勢出てきたのが事情を更に面倒な事とした。
神造者内部の争いで、神となっては引きずり下ろす行為を繰り返した結果、どんどん廃神が増え、しかも彼らは人間の時の経験から神造者のやり方をよく知っていたが故に、その穴をついて現実世界へと湧き出そうとしているのだ。
『それは我らに再び、あの荒廃した神界をさまよえというのか?』
「今はあなた方はひいて下さい。そして本来行くべきところに向かうべきです!」
彼らが神の座を失っても、その地位に執着し続けた結果として、現実世界の無残な現し身であった荒廃した神界に留まり続けるようになったのだ。
皮肉にもそれ故にこそ彼らの現実世界への憎悪は更に増し、廃神の数は増え続け、神界の後輩は更に進むという悪循環に突入したのだろう。
ハッキリ言えばこの廃神達は死後もその意志だけが残った亡霊に近い存在だ。
彼らが自らの意志でこの世界を離れる事を決めてくれなければ、苦痛だけが続く羽目になるのは明白だった。
問題なのは彼らにそれを受け入れさせる事だ。
彼らだって元々は神の列に加えられる程の英傑だったとすれば、その理性をいったん取り戻させるためにも、彼らを癒やす必要があるのか。
今のオレにだったらそれが可能か?
ええい。考えている場合じゃ無い。
オレにはいま大陸中から力が集まっているが、それはオレのためではなく、この世界と彼ら廃神達を癒やすために全て使わねばならないのだから。
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