異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します

高崎三吉

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第24章 全てはアルタシャのために?

第1292話 世界に戻ると思ったところ

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 神界であんまり簡単に話が出来るようになったのでそのままにしていたけど、とりあえずは一度人間の世界に戻るとしようか。
 イオ達の顔ももう一度見てみたいところだしな。今後の事についても話し合う必要があるだろうよ。
 テセルのように、これまでとあんまり変わらずに接してくれたらいいのだが、変に大げさに扱われたくはないものだ。
 だがここでハタと気付く。
 あれ? そういえばそんな事が出来るのかな?
 この世界では神様本人が姿を顕すのは、基本的には街の神が自分の街に顔出しすると言った「自分の縄張りでの活動」か、さもなくば神の力の一部を注ぎ込んだ「化身」を送り込む程度だ。
 しかも世俗の出来事――例えば戦争など――には直接関わることが出来ず、信徒に魔力や魔術を提供する程度しか出来ないはずだった。
 それでもオレはやってみれば多分「人間の世界に戻れる」気がするんだな。

「どうした? 何を考えている?」

 テセルが問いかけてきた。神造者はこういうときには役に立つ。
 都合のいいときだけは利用させてもらおう。

「一つ質問していいでしょうか」
「この世界を司る女神からの質問に否と答えられるものがどこにいるんだ? 神罰を受けて滅ぼされてしまう」
「わたしにそんなことが出来るのなら、テセル以外にも滅ぼしたい相手は大勢いますよ」
「ふふん。それは嘘だな。そもそもアルタシャが本気で滅ぼそうという相手なんていないはず。たとえ自分を殺しかけたアンデッドでも、本当に滅ぼすのはやむを得ない場合であって本来なら救う事を優先するだろう」

 分かっていて皮肉を言うのも相変わらずだな。

「それでわたしが人間の世界に戻れるのですか?」
「アルタシャ自身が? 化身を作るのではなく?」
「そうですよ」

 テセルも意外そうだな。あまりにも多くの神々に接してきたので、それは想定外だと言わんばかりだ。

「普通なら人間の世界に神がその身を顕すのは神界のルールに反する事だが……多分アルタシャなら大丈夫だろう」
「どうしてですか?」
「簡単だ。アルタシャこそがこの世界を司る女神だからだよ。だからこの世界のどこにでも望めば姿を顕す事ができるだろう」

 なるほど。言われてみればその通り、というかそれはかなり凄い事なんでは?
 神の力を持って、どこにでも行けるなんてメチャクチャなチートキャラになってない?

「もちろんアルタシャは世界のどこにでも行って、どこで何が起きているのかを知り、そこに出向く事が出来るはずだ」
「そこで力を発揮出来るのですか?」
「もちろんだとも。アルタシャならあらゆる悪を駆逐できるだろう」

 いや。そんなに都合良くいくはずないよね。
 だいたいそこを司る神だっているはずだから、いろいろとトラブルの元になるだろ。
 そもそも元の世界のヒーローだって「世界の危機」に活動はしても、普通の犯罪者や国同士の争いには手出ししないのが暗黙のルールだった。
 残念ながら「正義の味方」が悪を滅ぼし、朝日が昇ってハッピーエンドになるほど世の中は甘くないのである。

「申し訳無いですけど、わたしはそんな事をする気はありません」
「悪を見逃すのか?」
「いいえ。そんな事をすれば自分が悪になってしまうからですよ。悪を取り締まるのはあくまでもその地の人間がやるべき事です」

 この返答にテセルは意外そうに答えてくる。

「アルタシャは熱心に悪と戦っていたように思っていたけどな」
「違います。戦うのはあくまでも最後の手段です。出来る限り話し合いで解決して、犠牲が少なくなるようにしたかっただけです」
「それなら、戦争しようというところに押しかけて、話し合いで解決を求めるのか?」
「あくまでも話し合いを求めるだけです。それ以上は深入りしませんよ。わたしにはそんな力はありませんからね」

 今までだって、手助けはしても可能な限り最終的な結論はその当事者に出してもらっていたのだからな。
 強大な力で無理押しして決定するのは、異世界転移チートものの定番ではあるのだが、オレのやり方ではないのだ。
 それがきっと長い目で見た場合、もっとも犠牲が少なくなる方策だと思っている。
 誰かスゴイ力を持つヒーローが現れて、問題をすぱっと解決するのは、実に簡単で爽快で分かりやすい。
 元の世界でもそういうことを望む人間は決して少なくはなかった。だけどそんな相手にすがった結果は大抵ろくなもんではない。
 そしていまはオレ自身がそんな事になりそうな雰囲気だ。
 だからこそキモに命じねばならないのだ。オレは「世界の象徴」にはなれるかもしれないし、それによって人々をよりよい方向に導きたい。
 だけど決して権力を握るような事になってはならないのだ。
 元の世界のファンタジーでも邪神はしょっちゅう顔出ししては、ロクでもない力を振るうのが定番だけど、善の神は選んだ勇者に力を貸すだけだ。
 オレの場合は更に進んで「あらゆる神が人を導く事はあっても、現実に力を持つことはない」ようにしたいのだから、何よりオレが手本を示さねばならないのである。
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