20 / 40
華麗に変身
しおりを挟む
「出掛ける前から疲れたわ」
夜会の準備でダウトン子爵家を訪れたトレーシーは、ようやくダウトン子爵夫人から解放され、夜会へと向かう馬車の中で溜息を吐いた。
それを見たセイデスは噴き出した。
「アハハ。母上に思い切り飾り立てられたね」
「ホントよ。おばさまの張り切りようときたらないわ。力が入り過ぎでしょう?」
「ハハハ。しょうがないよ。我が家は男しかいないし。ダウジャン家と同じで質実剛健を旨とする家風だろ? 母上は退屈で仕方ないのさ。それに、久しぶりだからさ。そりゃ張り切るよ」
「確かに久しぶりね。子供の頃は、おばさまの着せ替え人形にされていたような記憶があるわ」
「曾祖母さまが生きていた頃は、よく遊びに来ていたからね。仏頂面しながらも、髪を結って貰ったりしてたよね」
「そうそう。そうだったわね」
「せっかくの女の子と疎遠にさせられていたから。母上も、あの人たちが大嫌いなのさ。キミの実の父親まで含まれちゃうから悪いけど」
「いいの、いいの。お父さまも自業自得よ。立場もわきまえないで好き勝手なことをするから」
「そうだね。今頃はどうしている事やら」
「興味ないわ。それよりも、今日はエスコートしてくれてありがとう」
「どういたしまして。オレもダウジャン伯爵になった事をアピールしなきゃならないからね。丁度良かったよ」
言葉の通り、セイデスは青地に金の刺繍が入った遠目でもよく目立つ貴族服を華やかにまとっていた。
細身のシルエットがスラリとした彼の体によく似合っている。
フリルたっぷりの白いクラバットは金の刺繍も施されている艶やかなものだ。
「おじさまたちは来なかったわね?」
「ああ。子爵くらいじゃ、そうそう夜会に出る必要もないし。商売の方は上手くいってるから、ダウトン子爵家として出席するまでもないのさ」
「そうなのね。貴族社会は複雑で、よく分からないわ」
「今夜は、オレがキミの後見人である事もアピールしてこないとね」
「なぜ?」
「キミを見て結婚したくなった男たちに、申し込み先を教える為さ」
「まぁ。ふふふ」
「……冗談じゃないぞ? ホントにオレは、そう思っているからね?」
「分かったわよ、セイデス。アナタは私の後見人で。私は、まだ貴族の令嬢なのね?」
「ああ、そうだよ」
「でも結婚の申し込みなんて、あるわけないと思うけど?」
「そんな事ないさ。キミは年頃のお嬢さんで、今夜は一段と綺麗だもの」
「まぁ、お上手だこと。ふふふ。……ねぇ? コレ、本当に似合っているかしら? やりすぎじゃない?」
「大丈夫だよ、トレーシー。とても似合っているよ」
「そうかしら? 派手じゃない?」
「思い切ってやっちゃった方が、トレーシーには似合うみたいだ。中途半端は似合わないよ。性格に合わせるのが一番」
「なによ、それ」
トレーシーは不満げに顔をしかめた。
いつもはしない化粧をしているせいか、表情を変えたくらいでも不快感が増す。
彼女は更に表情を歪めた。
「そんな顔をすると、せっかくのお化粧が崩れるよ」
「んー。でも、色々と塗りたくられて気分が悪いわ」
「せっかく綺麗にして貰ったんだから。会場について誰に見て貰うまでは、崩さないようにしたら?」
「そうね。頑張ってみるわ」
今日のトレーシーは、オレンジ色とゴールドを組み合わせたドレスを着ていた。
光沢のあるオレンジ色の生地をたっぷり使ったベルラインのドレスは華やかだ。
フリル使いも大胆で、白地にゴールドの刺繍が入ったレースもたっぷり使われている。
「おばさまは『若いのだから、このくらい派手でも平気よ』って言ってたけど。目に刺さるようなドレスよね」
「いや、似合っているよ。肌の色とも合っているし」
「そう?」
「髪型もいいよね」
「ハーフアップは、いつもしてるでしょ?」
「んー。いつもと同じには見えないけどな。髪飾りのせいかな?」
トレーシーの赤茶の髪の上では、ゴールドの台座にイエローとレッドの宝石を組み合わせた髪飾りが輝いていた。
大胆に開いた胸元には、お揃いのネックレスが輝く。
「そうかもね。それに、おばさまの侍女が丁寧に髪を梳いてくれたから、少しは違うのかも」
「みんなの力作なんだ。会場で見せびらかしてやれよ」
「もう、セイデスったら」
二人は顔を見合わせて笑った。
夜会の準備でダウトン子爵家を訪れたトレーシーは、ようやくダウトン子爵夫人から解放され、夜会へと向かう馬車の中で溜息を吐いた。
それを見たセイデスは噴き出した。
「アハハ。母上に思い切り飾り立てられたね」
「ホントよ。おばさまの張り切りようときたらないわ。力が入り過ぎでしょう?」
「ハハハ。しょうがないよ。我が家は男しかいないし。ダウジャン家と同じで質実剛健を旨とする家風だろ? 母上は退屈で仕方ないのさ。それに、久しぶりだからさ。そりゃ張り切るよ」
「確かに久しぶりね。子供の頃は、おばさまの着せ替え人形にされていたような記憶があるわ」
「曾祖母さまが生きていた頃は、よく遊びに来ていたからね。仏頂面しながらも、髪を結って貰ったりしてたよね」
「そうそう。そうだったわね」
「せっかくの女の子と疎遠にさせられていたから。母上も、あの人たちが大嫌いなのさ。キミの実の父親まで含まれちゃうから悪いけど」
「いいの、いいの。お父さまも自業自得よ。立場もわきまえないで好き勝手なことをするから」
「そうだね。今頃はどうしている事やら」
「興味ないわ。それよりも、今日はエスコートしてくれてありがとう」
「どういたしまして。オレもダウジャン伯爵になった事をアピールしなきゃならないからね。丁度良かったよ」
言葉の通り、セイデスは青地に金の刺繍が入った遠目でもよく目立つ貴族服を華やかにまとっていた。
細身のシルエットがスラリとした彼の体によく似合っている。
フリルたっぷりの白いクラバットは金の刺繍も施されている艶やかなものだ。
「おじさまたちは来なかったわね?」
「ああ。子爵くらいじゃ、そうそう夜会に出る必要もないし。商売の方は上手くいってるから、ダウトン子爵家として出席するまでもないのさ」
「そうなのね。貴族社会は複雑で、よく分からないわ」
「今夜は、オレがキミの後見人である事もアピールしてこないとね」
「なぜ?」
「キミを見て結婚したくなった男たちに、申し込み先を教える為さ」
「まぁ。ふふふ」
「……冗談じゃないぞ? ホントにオレは、そう思っているからね?」
「分かったわよ、セイデス。アナタは私の後見人で。私は、まだ貴族の令嬢なのね?」
「ああ、そうだよ」
「でも結婚の申し込みなんて、あるわけないと思うけど?」
「そんな事ないさ。キミは年頃のお嬢さんで、今夜は一段と綺麗だもの」
「まぁ、お上手だこと。ふふふ。……ねぇ? コレ、本当に似合っているかしら? やりすぎじゃない?」
「大丈夫だよ、トレーシー。とても似合っているよ」
「そうかしら? 派手じゃない?」
「思い切ってやっちゃった方が、トレーシーには似合うみたいだ。中途半端は似合わないよ。性格に合わせるのが一番」
「なによ、それ」
トレーシーは不満げに顔をしかめた。
いつもはしない化粧をしているせいか、表情を変えたくらいでも不快感が増す。
彼女は更に表情を歪めた。
「そんな顔をすると、せっかくのお化粧が崩れるよ」
「んー。でも、色々と塗りたくられて気分が悪いわ」
「せっかく綺麗にして貰ったんだから。会場について誰に見て貰うまでは、崩さないようにしたら?」
「そうね。頑張ってみるわ」
今日のトレーシーは、オレンジ色とゴールドを組み合わせたドレスを着ていた。
光沢のあるオレンジ色の生地をたっぷり使ったベルラインのドレスは華やかだ。
フリル使いも大胆で、白地にゴールドの刺繍が入ったレースもたっぷり使われている。
「おばさまは『若いのだから、このくらい派手でも平気よ』って言ってたけど。目に刺さるようなドレスよね」
「いや、似合っているよ。肌の色とも合っているし」
「そう?」
「髪型もいいよね」
「ハーフアップは、いつもしてるでしょ?」
「んー。いつもと同じには見えないけどな。髪飾りのせいかな?」
トレーシーの赤茶の髪の上では、ゴールドの台座にイエローとレッドの宝石を組み合わせた髪飾りが輝いていた。
大胆に開いた胸元には、お揃いのネックレスが輝く。
「そうかもね。それに、おばさまの侍女が丁寧に髪を梳いてくれたから、少しは違うのかも」
「みんなの力作なんだ。会場で見せびらかしてやれよ」
「もう、セイデスったら」
二人は顔を見合わせて笑った。
20
あなたにおすすめの小説
薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました
佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。
ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。
それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。
義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。
指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。
どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。
異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。
かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。
(※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
母は何処? 父はだぁれ?
穂村満月
ファンタジー
うちは、父3人母2人妹1人の7人家族だ。
産みの母は誰だかわかるが、実父は誰だかわからない。
妹も、実妹なのか不明だ。
そんなよくわからない家族の中で暮らしていたが、ある日突然、実母がいなくなってしまった。
父たちに聞いても、母のことを教えてはくれない。
母は、どこへ行ってしまったんだろう!
というところからスタートする、
さて、実父は誰でしょう? というクイズ小説です。
変な家族に揉まれて、主人公が成長する物語でもなく、
家族とのふれあいを描くヒューマンドラマでもありません。
意味のわからない展開から、誰の子なのか想像してもらえたらいいなぁ、と思っております。
前作「死んでないのに異世界転生? 三重苦だけど頑張ります」の完結記念ssの「誰の子産むの?」のアンサーストーリーになります。
もう伏線は回収しきっているので、変なことは起きても謎は何もありません。
単体でも楽しめるように書けたらいいな、と思っておりますが、前作の設定とキャラクターが意味不明すぎて、説明するのが難しすぎました。嫁の夫をお父さんお母さん呼びするのを諦めたり、いろんな変更を行っております。設定全ては持ってこれないことを先にお詫びします。
また、先にこちらを読むと、1話目から前作のネタバレが大量に飛び出すことも、お詫び致します。
「小説家になろう」で連載していたものです。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
善人ぶった姉に奪われ続けてきましたが、逃げた先で溺愛されて私のスキルで領地は豊作です
しろこねこ
ファンタジー
「あなたのためを思って」という一見優しい伯爵家の姉ジュリナに虐げられている妹セリナ。醜いセリナの言うことを家族は誰も聞いてくれない。そんな中、唯一差別しない家庭教師に貴族子女にははしたないとされる魔法を教わるが、親切ぶってセリナを孤立させる姉。植物魔法に目覚めたセリナはペット?のヴィリオをともに家を出て南の辺境を目指す。
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?
あくの
ファンタジー
15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。
加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。
また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。
長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。
リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!
腹黒薬師は復讐するために生きている
怜來
ファンタジー
シャルバリー王国に一人の少女がいた。
カナリヤ・ハルデリス
カナリヤは小さい頃から頭が冴えていた。好奇心旺盛でよく森に行き変な植物などを混ぜたりするのが好きだった。
そんなある日シャルバリー王国に謎の病が発生した。誰一人その病を治すことができなかった中カナリヤがなんと病を治した。
国王に気に入れられたカナリヤであったが異世界からやってきた女の子マリヤは魔法が使えどんな病気でも一瞬で治してしまった。
それからカナリヤはある事により国外追放されることに…
しかしカナリヤは計算済み。カナリヤがしようとしていることは何なのか…
壮絶な過去から始まったカナリヤの復讐劇
平和な国にも裏があることを皆知らない
☆誤字脱字多いです
☆内容はガバガバです
☆日本語がおかしくなっているところがあるかもしれません
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる