そんなに妹がお好きなら結婚したらどうですか? ほか短編・中編ファンタジー系まとめてみたよ短編集

天田れおぽん

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【中編 二万四千文字くらい】馬鹿な夫に死んだ私がざまぁする話

第六話 私の死

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 それは突然だった。

「寒い……」

 死は時として、いともたやすく訪れるものである。 

「まだ冬も初めだというのに。なぜ、こんなに寒いのかしら?」

 自分の体の事なのに、自分で全く分からない。

 そんな不吉な気持ちになるような寒気が、私を襲った。

 どうにかこうにか身支度をしたものの、その日は商会の方まで行けそうになかった。

「今日は、屋敷で仕事をするわ」

 迎えに来た商会の使用人にはそう伝えたが、その日を境に私が屋敷から生きて出る事はなかった。

「体調が悪くて……」

 だからといって、全く仕事をしないわけにもいかない。

 私が何もしなかったら、商会の仕事は回らないからだ。

 車椅子で生活をするようになった舅が、全盛期のように仕事をこなすことはできない。

 自然と、私のやるべき仕事は増えた。

 とはいえ、体調が悪い状態で進められる仕事は限られる。

「早く治したいから、仕事は少し控えるわ」

 そう伝えれば、商会の使用人たちは手際よく必要な書類を届けてくれた。

 そこからは、商会と屋敷の間を書類だけが往復する日々。

 必要最低限の仕事は、どうにかこうにか済ませることができた。

 しかし、体調が回復する事はない。

(どうしましょう。咳も出るし、熱も上がってきている気がする)

 粗末な食事すら完食できない私の体は徐々に弱っていく。

 咳も止まらず。

 熱も下がらず。

 やがて私はベッドに寝たきりとなった。

「奥さま!? 何をなさっているのです!?」

 フラフラしながらも身の回りのことを自分でしている私を見て、書類を届けに来た商会の使用人が驚く。

「自分の事は自分でしないと……」

「無理ですよっ! それでは治るものも治りません」

 商会の使用人が慌てて下働きの女中を看病にあてがった。

 だが、時すでに遅く。

 そこから幾日も待たずに、ある日の朝、私の息は止まった。

 私は死んだのだ。

 知らせを受けた実家の家族たちは泣き崩れた。

 私の亡骸と最後の別れを、と、訴えた。

 だが。

 私の家族は屋敷への訪問を許されることはなかった。

 対面が果たされたのは、私が棺に納められてから。

 葬儀当日の事だった。

 平民だから。

 利用はするが何も返さない。

 それが貴族のやり口。

 私の死後も、ミストラル男爵家は変わらない。

 棺を前に、実家の家族たちは泣き崩れる。

 親不孝をしたな、と、思う。

 と、同時に、私に出来る事は全てした、とも、思う。

 葬儀は最低限、簡素に行われて。

 私の体は墓の中へと収められた。

 いずれにせよ、終わったのだ。

 そう、終わった。

 もう私は、考えなくて良いのだ。

 耐えなくてよいのだ。

 それはある意味、私にとってのハッピーエンド。

 ……もちろん、話はココでは終わらない。
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