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現在
後日談
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あの人が自分を作ってくれたと言っても、過言ではない。
思春期の、一番影響力がある時に出会って、そのまま追いかけて現在までメディアにうつる全てを吸収した。
特に出会った直後は、特に心地いい熱に冒されていて、他のことが目に入らなかったくらい。
あの人が出ている作品は、全て探して観たし、何を考えているのか知りたくてインタビューが載っている記事を全部保存して、ファイルにした。
自分はストーカー気質があるのかな、と思うくらいだったが、ある時、パチンと何かが弾けるように我に返った。
追いかけてるんじゃなくて、あの人になりたい。
その願いは叶えられることはなかったけど。
だが、思いがけなく遠い宇宙の彼方からストレートに、あの人の方から、全てを破壊するように撃ち込んできてくれた。
「告白してくれてるの?」
聞いたことのない宇宙の言葉のように、理解が出来なくて動揺した。
告白って、あの告白?
俺の気持ちは愛じゃなくて崇拝に近いものだったから、手に入れるなど考えたことがなかった。
だが、その言葉で気づいてしまった。
美しい人を自分のものに出来ると言うことは、あの人の未来が、全て自分のものになるということで。
そんな、幸福なことはない。
一度、強く思ってしまったら、自分に何にもない分、その間を埋めるように俺はそこから離れられない。
だから、自分の揺れ動く気持ちを徐々に固めて、タイミングを見計らって。
灯台のライトが光る夜の海で、告白をすることにした。
「蒼依さん。愛しています。自分のものになって下さい」
「いいよ」
「分かってます。断られるって。でも、蒼衣さんの居ない人生は考えられない。これからは、追いかけるだけじゃなくて、引っ張っていくって決めた。きっと、役に立つ……って、え?」
「気づくの遅いよ」
「……何て言いました?」
「いいよ。付き合おう」
……あっさり、オーケーを貰ってしまった。
と言うことは、俺はこれからどうしたら良いんだ? 今まで、聞けなかった事も聞いてもよいのだろうか。
まずは、これだろう。ずっと、気になっていた。
「あの。蒼衣さん、お付き合いされてる方はいますか?」
「いるよ」
「…………え?」
「何言ってるの。今、付き合い始めたでしょう?」
そうだった。何言ってるんだ。
緊張して、手が汗でびっしょりになる。
冷たい水がさわりたくて、今いる砂浜から海へ走り、しゃがんで手をひたして下を向いて深呼吸をした。
振り返ると、暗闇に見える蒼衣はいつもと変わらずキラキラと光るように笑っているので、ここは現実世界だと知る
待たせてはいけないと、月灯りだけの暗い砂浜をダッシュで走って戻る。
走って息が整わないのか、それとも胸の高鳴りで呼吸が整わないのか分からない。
丁寧に、言葉を紡ぐ。
「じゃ、俺の事は、少しでも好きですか?」
「好きじゃなきゃ、普通、付き合わないでしょう? 疑われたの、悲しいな」
「で、ですよね」
「風灯、好きだよ」
聞いておいて、足が震える。いつから? こんな俺のどこが? 気になってしょうがない。
そんな情報、雑誌にもネットにも書いてない。なんて言おうか迷っていると、蒼衣がチョイチョイと手をひらひらしている。
「ちょっと、かがんで」
「はい」
蒼衣の言うことには無条件に従ってしまうので、きれいな瞳に吸い込まれながら膝を折る。
するとそのまま吸い込まれ続けて、キスをされた。
「撮影で何度もしちゃったから、ファーストキスじゃないけど。プライベートでは初めてだから。風灯はしたことある?」
「……ないです。俺も初めてです」
ぼんやりと、こたえる。
「そっか。じゃ、初めて同士だね」
そして、俺の首に、スラリとした白い腕がまわる。
「次は、風灯から引っ張って」
思春期の、一番影響力がある時に出会って、そのまま追いかけて現在までメディアにうつる全てを吸収した。
特に出会った直後は、特に心地いい熱に冒されていて、他のことが目に入らなかったくらい。
あの人が出ている作品は、全て探して観たし、何を考えているのか知りたくてインタビューが載っている記事を全部保存して、ファイルにした。
自分はストーカー気質があるのかな、と思うくらいだったが、ある時、パチンと何かが弾けるように我に返った。
追いかけてるんじゃなくて、あの人になりたい。
その願いは叶えられることはなかったけど。
だが、思いがけなく遠い宇宙の彼方からストレートに、あの人の方から、全てを破壊するように撃ち込んできてくれた。
「告白してくれてるの?」
聞いたことのない宇宙の言葉のように、理解が出来なくて動揺した。
告白って、あの告白?
俺の気持ちは愛じゃなくて崇拝に近いものだったから、手に入れるなど考えたことがなかった。
だが、その言葉で気づいてしまった。
美しい人を自分のものに出来ると言うことは、あの人の未来が、全て自分のものになるということで。
そんな、幸福なことはない。
一度、強く思ってしまったら、自分に何にもない分、その間を埋めるように俺はそこから離れられない。
だから、自分の揺れ動く気持ちを徐々に固めて、タイミングを見計らって。
灯台のライトが光る夜の海で、告白をすることにした。
「蒼依さん。愛しています。自分のものになって下さい」
「いいよ」
「分かってます。断られるって。でも、蒼衣さんの居ない人生は考えられない。これからは、追いかけるだけじゃなくて、引っ張っていくって決めた。きっと、役に立つ……って、え?」
「気づくの遅いよ」
「……何て言いました?」
「いいよ。付き合おう」
……あっさり、オーケーを貰ってしまった。
と言うことは、俺はこれからどうしたら良いんだ? 今まで、聞けなかった事も聞いてもよいのだろうか。
まずは、これだろう。ずっと、気になっていた。
「あの。蒼衣さん、お付き合いされてる方はいますか?」
「いるよ」
「…………え?」
「何言ってるの。今、付き合い始めたでしょう?」
そうだった。何言ってるんだ。
緊張して、手が汗でびっしょりになる。
冷たい水がさわりたくて、今いる砂浜から海へ走り、しゃがんで手をひたして下を向いて深呼吸をした。
振り返ると、暗闇に見える蒼衣はいつもと変わらずキラキラと光るように笑っているので、ここは現実世界だと知る
待たせてはいけないと、月灯りだけの暗い砂浜をダッシュで走って戻る。
走って息が整わないのか、それとも胸の高鳴りで呼吸が整わないのか分からない。
丁寧に、言葉を紡ぐ。
「じゃ、俺の事は、少しでも好きですか?」
「好きじゃなきゃ、普通、付き合わないでしょう? 疑われたの、悲しいな」
「で、ですよね」
「風灯、好きだよ」
聞いておいて、足が震える。いつから? こんな俺のどこが? 気になってしょうがない。
そんな情報、雑誌にもネットにも書いてない。なんて言おうか迷っていると、蒼衣がチョイチョイと手をひらひらしている。
「ちょっと、かがんで」
「はい」
蒼衣の言うことには無条件に従ってしまうので、きれいな瞳に吸い込まれながら膝を折る。
するとそのまま吸い込まれ続けて、キスをされた。
「撮影で何度もしちゃったから、ファーストキスじゃないけど。プライベートでは初めてだから。風灯はしたことある?」
「……ないです。俺も初めてです」
ぼんやりと、こたえる。
「そっか。じゃ、初めて同士だね」
そして、俺の首に、スラリとした白い腕がまわる。
「次は、風灯から引っ張って」
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