離宮の愛人

眠りん

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三章

二十五話

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フリードは語り出した。
 
「クレイルは孤児も多くて、国が運営しているスパイ育成機関で孤児達は、あらゆるプログラムを受けてスパイになる。
 殆どはプログラムの過程で命を落とすが、俺は運良く死なずにスパイになった。
 クレイル大公は、少しだが俺を気に入っていたと思う」

 ウェルディスは窓際の椅子に座って、何も言わずに聞いている。
 フリードはどこまで話していいものか悩みながら、それでも確実に話すと決めた事を話した。

「その時に大公が少し漏らしていた事がある。
 ヘイリア皇帝を討ち、クレイル帝国を築き上げると。
 そして、ヘイリアの皇族は処刑、国民は全員奴隷にするのだと……。
 過去の戦争のやり直しをするんだそうだ」

「過去の?」

「百年前にあった、クレイル王国とヘイリア王国の戦争の事だよ。
 ウェルも知ってるだろ?元々ヘイリアの半分は、クレイルのものだったって。

 先の戦争でヘイリアが勝った為に、クレイルはヘイリアの属国となった。
 豊かな土地はヘイリアが奪い、クレイルは作物も育たない枯れた土地ばかりが残った。

 クレイル大公は、ヘイリア全てを憎んでいるんだよ。先代や先々代から、その憎しみを受け継いでいる。
 次にクレイルが勝った時、ヘイリアの全てを奪い、新帝国を作ろうとしている。
 ルーベリアよりも大きな帝国を……」

 フリードは全てを話すと俯いた。ウェルディスの顔がまともに見れなかった。
 そんな敵国のスパイを、ウェルディスに守らせているのだ。

 今までそれを伝えず、大事になってから話した事を悔やんでいる。
 サマエルに入った事も、任務とはいえ前ルブロスティン公爵に近付いた事も。
 こうなると予想出来なかった自分に怒りが湧いた。

 それでもフリードは知っている。ウェルディスがこの事でフリードを嫌う事はないと。

「ウェル、ごめん。もっと早く言っておけば良かった。
 俺が無能なばかりに、ウェルに聞かれなければ話さないようにしていたから。
 他にも聞きたい事があればなんでも聞いてくれ。俺の命はウェルのものなんだから」

 フリードがそう言った瞬間、ウェルディスは強くフリードを抱き締めてきた。
 その温もりに目を瞑る。ウェルディスと離れないよう、背中にしっかりと両腕を回した。

「本当、愛しいなぁ。フリード。全く可愛い子だ。
 本当は、皇后の生まれ育った場所に送りたくない。
 こんなに僕思いで、僕を愛してくれるフリードと一秒たりとも離れたくないんだよ」

「俺も……」

「心配いらないよ。フリードの事は口実に過ぎないだろうし。いずれクレイル大公は攻めてきただろう。
 それがちょっと早まっただけだよ。それにサマエルのメンバーが動いてくれている。
 フリードは何も心配せず、守られていればいい」

 背中をさすられると、安心感からフリードの目が細くなった。
 この手に触れられるだけで気持ち良くなってしまうのだ。フリードは目を瞑ってウェルディスの温もりを感じた。

「教えてくれてありがとう。フリードが自発的に僕の為に行動してくれるのは嬉しいよ。
 でも自殺しようとするのはダメだよ。フリード、棄教してるから自殺出来るって言ったそうだね?」

「イリーナから聞いたのか?」

「ああ。僕はフリードに命令なんかしたくないんだけど、もう一つだけ命令する。
 自分の命を粗末にしないで。もっと自分を大事にして欲しい。
 これは勅命だ。絶対に遵守する事。いいかい?」

 フリードは黙って頷いた。一つ目の命令は「僕以外に抱かれるな」だった。
 ウェルディスにベッドまで連れて行かれ、押し倒された。
 フリードは何も言わずにその身体を任せる。

 シャツのボタンを外し、服を脱がされて、露わになった身体。
 ウェルディスのキスを何度も受け、胸周りや腕に赤い内出血の跡がついていく。

「僕の跡をつけておくよ。帰ってきた時には消えてしまうだろうから、気休めみたいなものだけど。
 くれぐれもアグリル卿に不必要に近寄るんじゃないよ」

 急に思わぬ人物の名前が、ウェルディスの口から出てきて驚く。フリードはドキリとした。

「えっ?アグリル卿……?」

「だって彼、君の事好きなんだろ?」

「知ってて護衛を認めたのかよ」

「知らなかったよ! アグリル卿が君の護衛になってから、僕が離宮に行った時に彼の反応で気付いたんだよ!
 なんで言わなかったの?これは裏切りと言っても過言ではないよ?」

 ぶーっと頬を膨らまし、口を尖らせるウェルディス。

「ごめん。そんなつもりじゃなくて。アグリル卿には本当に世話になったし、子供の頃から護衛騎士になるのが夢とか聞かされたら、無下にも出来なかったし。
 それに強いのは確かだろ。決してウェルを裏切ったわけじゃないんだよ」

 フリードが慌てて弁解すると、

「そうなんだろうけど~。悪いフリードにはこうしてあげよう」

 ウェルディスはそう言って、フリードのズボンを脱がせて、足を大きく広げた。

「ちょ、ちょっと……何するんだ?」

「こっちにもたーくさん跡をつけてあげるからね」

 ウェルディスはニコニコと無邪気な笑顔を浮かべ、内腿に赤い跡をつけていった。
 フリードは恥ずかしさから、顔を真っ赤にして首を左右に振った。

「ウェルごめん、ごめんって!」

「許さないよ~」

 そうしていると、コンコンというノックと共に扉が開かれた。
 ウェルディスの部屋の前で護衛をしていた近衛騎士が、

「わ、ちょっと、勝手に困ります!」

 と言っており、フリードとウェルディスが扉に視線を向けると、そこにはボスが立っていた。

「おー、お盛んな事で」

 ボスはニヤニヤした顔でフリードを見ており、その背後では近衛騎士が、

「あ、あれっ!? フリード様!? どうやって部屋に入られたんですか!?」

 と騒いでいた。フリードは恥ずかしい現場を見られた事で意気消沈し、天井を眺めて放心状態になった。

(また見られたまた見られたまた見られたまた見られた)

「ハーラート! 勝手に入らないでくれよ。フリードがショックを受けちゃったじゃないか!」

 ウェルディスがボスに叱責すると、ボスは呆れ顔で、

「やれやれ、怒る理由がそれかよ」

 と呟いた。
 近衛騎士達はというと、フリードが潜入出来る道がまだあると分かると、警備を補強せねば!と躍起になっていた。

 ウェルディスはフリードをベッドに寝かせて、布団を掛けた。
 フリードは顔だけ出してウェルディスとボスの話を聞いた。

 内容はアジトで話していた内容と殆ど同じだ。
ウェルディスに報告に来たらしい。

(どうしてわざわざウェルの部屋にまで。ボスは何者なんだろう?
 執務室や寝室に勝手に入ってきて、誰も口を出せない程の立場。
 ウェルとの会話からして、かなり親密な事は分かるが……)

「そんな内容なら応接室で待っていてくれれば良かったものを。部屋までやってきて、僕とフリードの邪魔をするなんて、けしからんよ?」

 ウェルがボスを睨むと、ボスは相変わらず人を小馬鹿にしたような笑みを浮かべ、

「ほー?確か、今は執務中だったと思うんですが、どうして寝室におられるんでしょうか?
しかもうちのフリードと一緒に?」

 と言って、フリードとウェルディスを見比べた。

「少し休憩に来ただけだ。
言っておくが、フリードは僕のであって、サマエルにフリードの権限を全て委ねたわけではない」

「お言葉ですが、そのサマエルがフリードを守っている事はお忘れですかね?
まぁ陛下は我らの力など借りなくとも、フリードを守れるのでしょうけど」

「そんな事はない。フリードの身の安全はハーラートに任せる。
 けど、フリードは僕の愛人である事を忘れるなよ」

「はいはい、分かってますよ陛下」

 ボスは笑った後に、フリードにギラりとした視線を向け、

「じゃあ、俺は邪魔みたいなんで帰ります。フリードも程々にな」

 と言って部屋を出ていった。

(この事を盾に何か脅されるんじゃないか?)

 フリードは一人、気持ちが沈んだ。ウェルディスが戻ってきて、

「続きをしよう」

 と布団を剥がし、再びフリードの内腿にキスマークを付けていった。
 そしてフリードの腰を上げて、足を大きく広げると、ウェルディスを誘ってひくついている穴を舐めて解した。

「ウェル、恥ずかしいよ……」

「我慢して僕に身を委ねて。明日からこうして触れ合えなくなるんだから。
 フリードの味を覚えておきたい」

 必要以上に舐められ、フリードは気持ち良さげに喘ぐ。
 我慢が出来ないのか、肉棒の先端を穴に押し付けてきた。

「ウェル、早く欲しい。入れて……」

 フリードが切なげにウェルディスを求めると、ウェルディスはゆっくりと肉棒を奥へと埋めていった。

 少しずつ奥へ入る度に、フリードは甘い声を漏らして身悶えた。
 ウェルディスはそんなフリードの口を、口で塞ぎ、腰を動かしながらもキスを止めない。

 フリードはもっととねだる。この時間が終わってしまうのを惜しむように…。


──────────────────


三章終わりです。
次回から四章ルーベリア編?開始です。
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