乱交パーティー出禁の男

眠りん

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三章

二十六話 鞭責め

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「あっ……甘い責めなんてしてな……」

 伊吹はハァハァと息を荒らげながら瑞希に抵抗しようとしている。
 翠は痒みに耐える事に必死で、二人のやり取りを細目で、途切れ途切れに見ていた。

 確かに瑞希の言う通り、前に予行練習をした時よりも伊吹の責めは甘かった、かもしれない。
 元々の予定は山芋を全身に塗り、乳首責めをする筈だった。
 全身の痒みと、伊吹の乳首責め、瑞希のくすぐり責めで、翠が発狂する様子を見せるのが開始直後のジャブ程度の責めだったのだ。

 だが、伊吹は乳首への責めを疎かにした。というより翠から見てだが、伊吹は眠気で判断が鈍ったように見えた。
 瑞希もそんな伊吹にいち早く気づいたのだろう。

「嘘だね。わざと甘めにしたんだよ、伊吹は。さっき僕が、甘い責めをしたら二人まとめて調教するって言ったからね。
 期待しちゃったわけだ? ドMの伊吹はさぁ」

 瑞希は蹲っている伊吹の頭にヒールのブーツを履いた足を乗せると、そのまま伊吹の頭を床に踏みつけた。
 勢いよく前に倒れ込む伊吹に、会場はざわつく。

「SMショーでSの仕事すら出来ないんだよね? やる気ないなら出て行きなよ」

 瑞希は軽蔑の眼差しで伊吹を見下した。足は伊吹の頭をグリグリと床に押し付けている。
 翠は知っている。瑞希も伊吹も、楽しんでいると。

「はぁ……ご、ご主人様……俺は、Sをやる資格ないくらいの、ドMの奴隷です。もっといたぶってくだひゃい……」

「じゃあ出ていかなくてもいいです。その代わり、服を脱いで下着だけになりなさい。
 翠君は今からちゃんと虐めてあげますから。期待してて下さいね」

 伊吹に辛辣な目で指示を出すと、次は翠に顔を向けた。
 予定変更で急にこのSMショーの主人となった瑞希は、獲物を狙うライオンのような目を翠に向けてきた。
 会場は歓喜に包まれる。特に瑞希ファンのドM達だ。ご主人様の降臨に喜びが隠せない。

「ご主人様ー!!」

「私も責められたいぃっ!!」

「って事は二人同時!?」

 一方、伊吹のファンは伊吹に罵声を浴びせていた。勿論、伊吹が喜ぶと分かっているからだ。

「ふざけんなよ、このドビッチが!」

「今はお前がSなんじゃねぇのかよ、このゴミ野郎!」

「もうSになるなよ、このクソドM!」

 翠のファンも少数だが確かに存在しており、今後の予想の出来ない展開に困惑している。どちらかというと大人しいタイプが多く、翠が頑張る様子を見守っている人が多いのである。


 伊吹がジャージを脱ぐと、野次が飛んだ。特に伊吹ファン達からの愛ある誹謗中傷だ。
 何故なら、裸になった伊吹は黒いボクサーパンツの上から、その身に麻縄を施していたのだ。胴体だけ亀甲縛りをしており、伊吹は顔を赤くして俯いた。

 これには翠も驚いた。瑞希も少し驚いた顔をしていたので、予定を無視した独断だと分かる。

「ははぁ、もしかしてこうなる事を分かってた?」

 瑞希は嘲笑しながらも嬉しそうな目を伊吹に向けた。

「いいえっ! ご主人様が俺を虐めてくれたらいいなと思い、自分で……」

 また観客席から怒鳴り声があがる。

「自分で縛ったのかよ、この淫売野郎!」

「人間やめろ!」

「土下座して謝れ!」

 全ての怒声は伊吹の快楽に変換されるだけだろう。翠からすれば、そんな事よりもこっちをなんとかして欲しかった。
 山芋を塗られた場所が痒みでどうにかなりそうだ。荒い息をしてなんとか持ちこたえている。
 愛する伊吹といえど、文句を言いたくなる。

「み、瑞希さん……先にこっち、終わらせて下さい」

 観客に聞こえないよう、小声で瑞希に訴えた。

「うん、僕もちょっとビックリしちゃって。ごめんね」

 瑞希は鞭を手に取り、バシンッと大きな音が響くように床を叩いた。

「伊吹、とりあえずお前はそこに立って皆様に視姦されていなさい。いいと言うまで動かないで下さい。
 動いたら……伊吹の大っ嫌いなプレイを、ショーの後にしますから、そのつもりで」

「はいっ」

 伊吹は少し困惑したような表情を浮かべている。翠は想像する事しか出来ないが、おそらく伊吹にとってこの流れは想定外なのだろう。
 瑞希が伊吹に山芋をかけてから、全てがアドリブだ。瑞希は慣れているらしく、迷いのない顔で加虐心溢れる目を翠に向けてきた。

 少し恐怖する。ただ、ここで本来の流れに戻ったので内心ホッとした。この後の伊吹の扱いがどうなるかは瑞希次第だが、翠はそこまで考える必要はない。

「翠君、耐えて下さいね」

 山芋を塗られたところを広範囲にあたって一本鞭で叩かれる。いつもの練習のような甘い叩き方ではない。
 鞭に慣れたMが喜ぶような強めの打ちだ。翠の身体にはうっすらと赤い線が何本も入り、その度に翠は身体をくねらせた。

「ひっ、ああっ! いっ……痛……っ、あっ!」

「どうですか? 翠君。いつもと違って痛みが強いでしょう? 痒みもなくなったんじゃないですか?」

「いだいですっ! いだいっ! 痒みもあって、づらいですぅ!」

 セーフワードを言いそうになる。これ以上強くされたら耐えられない。きっと迷わずセーフワードを言う。
 だが、瑞希には分かっているようだ。翠が我慢出来るギリギリが。

「最後に耐えてください!」

 ピシィッ! と、全くもって性的反応をしない翠の男性器を下着越しに打たれた。

「ああぁっ…………っ!!」

 余りの痛さに、身体は反ったまま耐える力を下半身に向けられない。両手が上に上げられていなければ、身を丸くして蹲っただろう。

「翠君、よく頑張りました。ご褒美です」

 瑞希は店長が後ろで用意したぬるま湯にタオルを浸し、絞ると山芋が付いているところを念入りに優しく擦りながら拭った。
 鞭の後が沁みてて痛むが、痒みが多少治まったのは嬉しい限りだ。
 痛みだけなら我慢出来る。

 ホッとしていると、瑞希がジッと見つめてきた。見返すと、一瞬チラっと伊吹の方に視線を向ける。次は伊吹の方に行くと言いたいらしい。
 少し頷いてみせると、瑞希は伊吹の方へと向かった。

「さて、次は伊吹……って……どうして勃ってるんですか!!」

 ビシッ!! と、瑞希は翠に使っていた鞭で伊吹の胸を打った。最初から本気だ。

「はぁっ……んっ」

 まだ翠には手加減していたのだと分かった。伊吹の薄茶色の肌には血が滲んでいたのだ。鞭が擦れて、皮膚を裂く程の威力だ。
 伊吹は身震いして瑞希に嬉しそうな目を向けた。その目には涙を溜めている。

「だって……首と胸が痒いのに、掻くお許しも得ないまま、こんなはしたない姿で視姦されたら……勃たない方が無理ですぅ」

「そうでしたね。伊吹は生粋の底辺ドM。本職は性奴隷で、人間以下のオナホですもんね?」

 瑞希の言葉責めは伊吹にとってリップサービスだ。嬉しさから、表情をだらしなく緩めている。

「はい! そうです!」

「そこは否定してください。あなたの本職は学生兼経営者でしょう!」

 鞭をビシバシと翠相手とは比べ物にならない速さで打ち込む。伊吹には抵抗を許されない。
 観客に視姦されていろという命令を遂行し続けている。

「学生とか……経営者で、いるよりっ……はぁっ、こうやって……鞭、打たれて、いたい、ですっ」

 もう目がハートだ。伊吹に劣情を向ける人、伊吹の責めを受けたい人で、会場は二人を静かに見守っている。

「じゃあ、鞭百回責めですね。ちょっと待っててください」

「はいぃっ」

 伊吹は膝をついてしまった。肩でゼーハー息をして、今にも自慰行為をしたいのを我慢しているようだ。
 瑞希が戻ってきた。このまま放置されるのかと思っていたので少し驚く。

「翠君、これを飲んで下さい」

 瑞希はコップに水を注いで持ってくると、錠剤を翠の口の中に入れ、コップから口に水を注ぎ込んだ。
 いきなり入ってくる水に必死で嚥下した。錠剤は最初に驚いて飲み込んでしまっていた。

「ゴホッ。こ、これは……?」

「伊吹のバカが予定を狂わせたせいでこんな事になってごめんね? 後で伊吹には土下座させるね」

「土下座なんて、やりすぎですよ」

「大丈夫。喜んでやる筈だよ。ちょっと伊吹に罰を与えてくるから待っててね。数分したら何を飲まされたか分かってくるから。
 頑張って耐えてね?」

 何かを耐えなければならないものを飲まされたらしい。瑞希が危険な薬物を飲ませる事は百パーセント有り得ないと分かっているので、それ以外で想像つくものは……。

 効果が出たのは二十分程だった。



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 遅くなりました。あけましておめでとうございます。
 こっちより先に短編を出してしまうという失態を犯してしまってすみませんでした。

 今年中にこの作品の最終話をお届け出来たら、と思いますがこのペースだといつになるか分かりません。
 とりあえず表紙を描いていただいた右京さんに挿入イラスト等描いていただいているので、今年中にお披露目出来たらなぁと思っております。

 今まで二日に一話投稿していましたが、こんなにも不定期になってしまって本当に申し訳ないです。
 二ヶ月ほど前の話になりますが、プライベートでちょっと許せない事件が起こりまして、このままの自分ではいけないと思いまして、私の人生をかけて取り組んでいる事があります。
 それが落ち着くまでは不定期投稿ですね。
 投稿に関しては、ゆっくり待って下さると嬉しいです。
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