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はじめての夜
しおりを挟むアヴェラルドが取った宿は、いわゆる高級宿だった。黒を基調とした重厚感のある内装に、リビングの天井にはシャンデリアが輝く。寝室とリビングの二間続きになっていて、シャワールームも併設されている。
──どうしよう。
私は今、シャワールームの床に座り込んでいた。手にはローションと媚薬がある。ロラ先輩に貰ったものだ。
いつかは任務で男性と寝ることになる、そうロラ先輩は言っていた。
特務の人間の離縁回数がやたら多いのも、仕事で不貞を犯さないといけない場面がそれなりにあるから、らしい。
──これは仕事……これは任務。
私はふるえる指でローションの瓶の蓋を外し、恐る恐る中身を手のひらに取った。どろっとした液体を水栓から出した湯で溶かす。
ローションの使い方は、事前にロラ先輩から聞いていた。はじめてだとあそこが濡れにくいらしく、相手も自分も擦れて痛みを感じるらしい。だから、あらかじめ膣にローションを仕込んでおけと言われていたのだ。
べとべとになった指を、脚の間に入れる。穴の位置がよく分からず、びらびらがあるところをほぐした。
「っう、痛っ……ぅう、奥、ざらざらしてる」
身体はもう洗ってある。お湯に当たって温かくなっているからか、やっと探し出した穴のなかは熱くなっていた。入念にローションを擦り込む。
もう片方の濡れた指は、尿道の上に。
陰核に触れると、ぴりりと刺激が走り、指が入ったままの膣がぎゅっと窄まった。
──やだなぁ……。
陰核は触るとちょっと痛いし、膣に異物を入れるのも抵抗がある。出来ればこういうことはしたくない。使うところをべたべたにしなきゃいけないのも嫌だ。
でも、今夜は美味しいものをご馳走になったし、観劇にも連れて行ってもらえた。最後にアヴェラルドが私の身体で気持ちよくなりたいなら、応じないといけないだろう。
私たちは今、契約上でも恋人同士なのだから。
すでに安くはない金額の前金を貰っている。やらないわけにはいかなかった。
べとべとになった手をタオルで拭い、もう一本の瓶を手に取る。媚薬だ。
こんなもの飲みたくないけど、これは仕事。
きゅぽんと上蓋を引き抜き、ぐっと瓶を煽る。
喉を通る不自然に甘ったるい味に涙が出そうなったが、なんとか耐えた。
◆
「準備ができました~~!」
「め、メニエラ?」
「……何ですか?」
「酒でも呑んだのか? なんか様子が……顔も赤いぞ?」
「様子、おかしくないです!」
ロラ先輩に貰った媚薬はすごかった。
さっきまでの悲しい気分が一瞬で吹き飛んだ。
胸がどきどきして、身体が熱い。
何より、頭の中がふわふわぼーっとして気持ちが良かった。
まるで雲の上にいるみたい。
もう、どうにでもなーれ! って感じだ。
「はやくっ、えっちなことしましょう! アヴェラルドさん!」
アヴェラルドは先にシャワーを浴びていた。
ガウンの間から覗く厚い胸板にキュンとした。
礼服の上からだと細く見えるのに、案外逞しい身体をしているのかもしれない。
私も同じガウン姿で、ベッドの前に立っていた彼にがばりと抱きついた。
アヴェラルドは私よりも、頭ひとつ分背が高い。
大きな彼を、ベッドにそのまま押し倒した。彼の短く切られた金髪が、ふぁさりと白いシーツの上に広がる。
私は彼の身体の両側に、ドンと手をついた。
「アヴェラルドさん……ふひひ」
「め、メニエラ、これはちょっ……ま」
アヴェラルドの唇、きれいだなって思った。
薄めだけど形がよくて、唇の間から覗く歯も白く、綺麗に生え揃っている。
絵画に描かれたような上等な男が、私の下にいる。
すごい高揚感だ。
うっとりしながら、顔を近づける。
私は自分から、アヴェラルドの唇を奪った。
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