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※ やめないで
しおりを挟むキスの仕方はよく分からなかったけど、一応、歯を当てないようには気をつけた。
むにゅりと柔らかくて、温かいものが唇に触れる。アヴェラルドはちょっとだけ口の周りがざらざらしていた。見た感じ髭はないのに不思議だ。でも、嫌な感触ではない。
私が上からちゅっちゅと口付けていると、アヴェラルドに頭の後ろをぐっと掴まれた。もっとしろということかな?
「……んんっ」
私が小鳥が啄むような軽いキスを落としていると、頭の後ろと、耳の下あたりを手で押さえつけられた。顔を上げられなくて、そのままにしていると、ふいに口のなかに何かが入ってきた。
舌だ。
大人のキスである。
ロラ先輩から、大人はキスの時、舌を絡ませあうと聞いてちょっと嫌だなと思っていたけど、いざしてみるとけっこう平気だ。
私の口のなかで、アヴェラルドの舌がゆっくり這い回る。
むしろ、温かくて柔らかくて気持ちがいいとさえ思う。唾液の味は、不思議と甘く感じた。
苦しいと思ったところで、ぱっと手を離される。
私の下で、アヴェラルドは少し息を乱していた。
「メニエラ……」
──いやいや、これはヤバいでしょ……。
熱に浮かされたような、アヴェラルドの青い瞳。掠れたような低い声。なんかキスしただけなのに、妊娠しそうだ。薬で月の触りを止めてるから、ぜったい妊娠しないけど。
アヴェラルドはむくりと起き上がった。
その何気ない動作にさえ、どきりとする。
彼は自身のさらさらな金髪に指を差し入れて、目を細めながら私に言った。
「……他の男とも、こういうキスをしてきたのか?」
「したことないですよ?」
唇と唇とが触れ合う軽いキスでさえ、今までしたことは無かった。男の人とこんな色っぽい展開になったことは、二十一年間生きてきて今がはじめてだ。
キスをしたことがないと言ったら、なぜかアヴェラルドは眉間に皺を寄せた。傷ついたような表情に首をかしげる。
「……下手だっただろうか」
「……えっ?」
キスに上手いも下手もあるのだろうか。よく分からない。でも、意外と嫌じゃないなと思ったのは事実だ。
「キスに上手いも下手もないと思いますよ……? たぶん」
「俺はあまりこういう経験がなくて……」
「近衛ですもの。仕方ないですよ。娼館へ行きたくても人の目もあるでしょうし」
「これからすること、出来れば他の男と比べて欲しくない」
またアヴェラルドは『他の男』と言う。
比べようがない。私は何もかもがはじめてなのに。
「く、比べません!」
性交渉ははじめてだと言ってしまおうかと思ったけど、嘘つきだと思われたくない。それに、アヴェラルドは私がこういうことの経験があるからこそ、手を出そうと考えたのかもしれない。
顎を軽く掴まれる。今度はアヴェラルドからキスされた。ちゅっとリップ音がした。
「……ありがとう、メニエラ」
アヴェラルドの極上の笑み、そして彼からのキス。
媚薬が全身に回った私は、今までに感じたことのない感覚を背中に感じていた。
最高に、ぞくぞくした。
これが身体が疼くというヤツだろうか。
◆
「……ぅっ、うっ……」
──なんか変……。
今、押し倒されて乳首を舐められているのだけど、変なのだ、自分の反応が。
今まで自分で触ってもなんともなかったはずなのに、アヴェラルドから胸の先端を吸われたり、舌先でぐりぐりこねられると、背中がびくんと跳ねる。
何よりおかしいのは、乳首が固くなってるところだ。月の触りの前のように、芯をもち、敏感になっている。
「あぁっ! あっあっ」
また、じゅっと音を立ててこりこりに固く敏感になったところを吸われた。もどかしい刺激に、変な声が勝手に漏れる。
──うっ、う、私おかしい……。
触られてもいない、脚の間が何故かぬるぬるする。ローションとはあきらかに違うものが、膣の奥から出てきている。最高にムズムズした。
さっきまでは、こんな狭いところに異物を挿れるだなんてとんでもない! と思っていたはずなのに、今はどうだろう、何でもいいから挿れて、このぐずぐずに蕩けたナカを掻き混ぜてほしかった。
「アヴェラルドさん、私もう限界……」
「メニエラは感じやすいんだな……」
いや、媚薬の力です。
そう言いたかったけど、言えなかった。
特務の女が、媚薬の力を使わないと男と交われないなんておかしい。
事実、同年代の特務の女性たちは、みんな経験人数が三桁代だった。
皆、日常的にこんないやらしい事をしているのか。
信じられない。
アヴェラルドの手が、私の脚の間に向かう。
無骨な長い指が、ベトベトになったびらびらに触れた。濡れていることは明らかだろう。
「……もう使えると思います」
秘部に触れられたことで、媚薬の力で浮かされていた頭が冷静になる。
これは仕事だ。
お金を貰ったのだから、仕方のないことなのだ。
せめて、憧れのアヴェラルドには気持ちよくなって貰いたい。
ロラ先輩は言っていた。
一生掛けて、交換日記からはじめてくれる男を探せばいいと。
たとえ任務で純潔を失っても、理想の恋愛像まで捨てることはないと、ロラ先輩は言ってくれたのだ。
その言葉だけが、今の私の希望だ。
「……メニエラ、今夜はもうやめようか」
アヴェラルドの声に、パッと顔を上げる。彼は神妙な顔をして、私の身体から手を離した。
「ど、どうして……?」
「先ほどから、君はずっと無理をしているだろう? ……観劇や食事の時はあれほど嬉しそうにしていたのに。宿にきてからは表情が目に見えて沈んでいる」
──バレてた……。
さっと血の気がひく。
上手くやれていたと思っていたのに。
私は深く頭を下げた。
「ごめんなさい……」
「いや、いいんだ。君にだって、いくら任務でも、どうしても交わりたくない相手がいるよな……」
「ち、違います! アヴェラルドさんのことは、その、嫌とかじゃなくて!」
はじめてだからどうして良いか分からず、なんなら行為そのものに恐怖すら感じていた。
アヴェラルドのことが嫌だとか、そんなのはありえない。
むしろアヴェラルドが相手だから、オトナのキスも受け入れることが出来たのだ。
「お願いです。やめないでください……」
アヴェラルドのガウンの裾をぎゅっと両手で掴む。目に熱い涙が溜まる。
「メニエラ……」
「私は今、媚薬をのんでいて、身体が変なんです。あそこがムズムズして……。アヴェラルドさんが最後までしてくれなきゃ、たぶん、私、おかしくなっちゃう……」
「そんなことを言うな、止められなくなるだろう」
「やめないで」
媚薬の力だろうか、信じられないぐらい大胆になれた。普段の私ならこれ幸いにと、ここで見逃して貰った事だろう。
またベッドに押し倒された。
「……これから先は、何と言われてもやめられないからな」
私の上に覆い被さる、いつも高潔なアヴェラルドの顔がさかりのついた獣のように見えた。
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