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※ 寂しかった
しおりを挟む結婚をなんとか許してもらったからといって、すぐにこういう事をするのはどうかとも思ったが、丸一月もエクトルと逢えてなかった私は色々限界だった。
「私が避けてたせいだけど……。寂しかった」
「俺もだよ」
そう熱っぽく囁かれると、何もかもを許してしまいたくなる。
ベッドの上に腰掛けると、すぐに唇で唇を塞がれた。
やわらかく湿った唇が触れ合うだけで、下腹が甘く疼く。
キスがこんなにも気持ちが良いものだということは、エクトルが教えてくれた。
ゆるゆると口を開けると、すぐにぬめる舌を差し入れられて、情欲を煽るように上顎を舐められた。
エクトルは閨の作法を、王都から派遣された閨房担当の教育係りから教わったと言っていた。座学なのか、それとも実地で教わったのかまでは聞いていないが、すごく性的に興奮させるのが上手いと思う。
いつも、すぐに私はその気になってしまっていた。
──私が、エクトルのことを好きなだけかもしれないけど……。
愛する人との交わりは格別なものらしい。
私はエクトル以外の人とこういうことは一切したことがないので、比べられないし、比べたくもないが。
「……あ、しまった」
エクトルとのキスにうっとりしていると、糸が切れるようなぶつりという音が聞こえた。どうも彼が私の服のボタンを焦ってひとつ引きちぎってしまったらしい。
「大丈夫よ。後で縫うから」
「ごめん、がっつき過ぎだよな」
しょんぼりしたエクトルと目が合い、思わず吹き出してしまう。
さっきまでのイライラしていた気分が嘘のようだ。これからはずっと彼と一緒にいられるのだなと思うと、安心感で胸の奥があたたかくなる。
前ボタン式のワンピースを脱ぎ、外れかけていた胸当てを外す。秘部を覆っている下着の腰紐もしゅるんと解かれた。
「……エクトルも脱いで、ぜんぶ」
「閣下がこのタイミングで帰ってきたら消し炭にされるかもなぁ」
「がんばってシールドを張るわ」
「頼りにしてるよ、ソフィア」
そんな冗談にもならないようなことを言い合いながら、エクトルはかっちりとした騎士服を脱いでいく。防魔の効果が施された黒い軍服。何か任務の帰りだったのだろうか。
「……今日は仕事だったの?」
「まあな、……あっ! 討伐終わりに詰所でシャワーは浴びてるから! 俺は汚くないぞ」
「そういう意味で聞いたんじゃないわ」
みるみるうちに鍛えあげられた鋼の肉体が露わになる。
さいわい、身体には傷ひとつない。
これから交わる相手の身体を見ているというのに、興奮するよりも負傷していないか確認してしまうのは魔導師のさがかもしれない。
魔導師は部隊の回復役も担っている。
「疲れているんじゃないの?」
「魔物はそこそこ強かったからな。ああいう相手を倒すとソフィアが猛烈に欲しくなるんだよな……もう挿れていい?」
「ちょっ、……あっ!」
起立した自分の雄を扱きながらエクトルはベッドに膝をつき、私に覆い被さると、ろくに秘部の状態を確認しないまま、肉杭をぐっと潤む隘路へ押し込んだ。
さいわい、彼の昂りはつるりと私のなかへ難なくのみ込まれていったが、久しぶりに粘膜に感じるに異物感に、私は挿れられただけで達してしまった。
下半身がぶるりと震え、目の前が真っ白になる。
「あっ、あっ……!」
勝手に収縮し、うねる下腹。背を思いっきりのけぞらせ、私は口をパクつかせた。
これはだいぶ恥ずかしい。
性的に飢えていたのは確かだが、挿入されただけで絶頂を迎えてしまうのはちょっとマズいような気がする。
「……ソフィア?」
「もうっ! エクトルがいきなり挿れるから!」
「ごめんごめん、痛かったか?」
エクトルの盛り上がった胸をぽかぽか叩く。軍服の上からだと細身に見えるのに、脱ぐと軍神の彫像のようだ。
彼は急に挿れたので、私が痛がっていると思ったらしい。よしよしと人の肩や腕を撫でながら、緩やかに腰を打ちつけている。
反省しているのか、していないのか。
むっとしたが、下腹から伝わる快感に、無体な行為をされた事がどうでもよくなる。
中で動かれるたびに、潤んだ媚肉に雁首の段差になったところが引っかかり、それがもどかしいのに堪らなく気持ち良く感じた。
──うっ、また、いっちゃう……!
胎の奥から、じわじわと愛液がわいてくるのを感じると、その度にぎゅうぎゅう彼の物を締め付けてしまう。
エクトルの肉杭は長いのか、私が少し膣圧をかけたぐらいではすっぽ抜けない。
全部は私の中に納まらないようなので、少しだけ申し訳ない。
「やだぁっ、きもちい……」
耳につく、結合部から漏れる水音。
逃しきれない快感に涙を浮かべながらシーツをぎゅっと掴むと、その手の上から、ところどころ皮膚が硬くなった大きな手を重ねられる。
「ソフィア、かわいいよ」
エクトルは容赦なく腰を進めながら、私の額や頰にちゅっちゅと触れるだけのキスを落とす。
いつもそうだった。
何気ないところで、彼はいつも私への愛を示してくれたのに。
私は気付こうともしなかった。
いままでは恋だとか愛だとか、そんな気恥ずかしいものを敢えて意識するのは怖かっただけかもしれない。
魔導師は美人なお嬢様が少なくないが、私はそうでもない。相手に与えられるものがほとんどない自分は、恋をする資格すらないと思い込んでいたのだ。
それでも。勝手に失恋した気になって逃げていた、ずるくて小心者な私をエクトルは選んでくれた。
「エクトルっ、すきっ、もっと頂戴……!」
もっと奥まで欲しくて、激しくして欲しくて。浅ましく彼の腰に脚を絡め、下になった状態で自らも腰を振った。
お互い、久しぶりの交合だった。
ちょっと、いや、だいぶ盛り上がり過ぎたのは否めない。
私たちは師匠が帰ってきたことに気がつかなかったのだ。
ベッドに顔をうつ伏せ、お尻を高くあげ、獣のような体勢と喘ぎ声を出している最中を師匠に見られてしまったのだ。……なんと。
「……お前ら、今すぐ別に部屋を借りなさい。どーせ、朝晩するんだろう?」
慌てて身体にシーツを巻きつけながらハッとした。結婚したら師匠とは同居解釈になる。何故そのことに今まで気がつかなかったのか。
「確かに朝晩する予定です。ソフィア、次の非番日に部屋を探しに行こうか」
「朝晩……⁉︎」
「なるべくワープで飛べる近居にしてくれよ? 子育てを手伝いやすいようにな」
──今朝まで、身を引こうと思っていたのに。
一転、瞬く間に結婚話が進んでいく。
正直心がついていかないし、理解も追いついていないが、私にも春がきたのはどうも間違いないらしい。
◆おわり◆
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