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誤魔化しきれない心 ※
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今夜も、砦内にある老舗レストランのような雰囲気の食堂で、エリヴェルトと二人きりで夕食を摂った。
今夜のメニューは、肉厚の茸がふんだんに使われたブラウンシチューに、食べやすいように一口サイズに四角く切られたパン、葉物のサラダだ。
ティンシアの砦では、領主家の人間であっても兵士と同じものを食べるというルールがある。
その方がありがたいとメリアローズは思った。
大皿にちょこんと食材がのった料理ばかりが運ばれてくるコース料理は好きじゃない。
ワインでよく煮込まれた肉と茸をスプーンで掬い、口へ運ぶ。濃厚な旨みが口の中に広がる。思わず笑ってしまいそうになるほどの美味しさだ。
ふと、向かいに座るエリヴェルトと目が合った。
彼はこちらを見て、切れ長の目を細めている。
「今日はどうだった?」
そう問いかけてくる彼の声は優しい。
「……医局長のモールさんに、備品庫までご案内いただきましたわ」
「驚いたろう? 医薬品の少なさに」
「……ええ。医薬品の少なさもそうですけど、正しい使い方を熟知した医療従事者も足らないとモールさんは嘆いていました」
軽傷だと、ろくに手当てもしない兵士達を思う。モールもそんな兵士達を見て心を痛めていた。
「兵士一人一人が怪我の対処ができるよう、演習に手当ての訓練を取り入れたことがあるが、ああいうものは継続的に行っていかないと意味がない。だが、医局は多忙でな……」
まずは医局の人数を増やさないと話にならない。
医法院の院長は医薬品と共に人を送ると言ってくれたが、いつになるか分からない。
「……まずは、私ができるかぎりのことをしますわ」
人を動かすには、まず自分が動いてみせなければ。
明日から本腰を入れて兵士達を癒そうと、メリアローズは決意を新たにした。
◆
食堂から自室へ戻る道すがら。エリヴェルトは急に足を止めた。
「あ、しまった……」
「どうかしました?」
「……睡眠薬が切れていたのをすっかり忘れていた」
エリヴェルトの言葉にどきりとする。眠っている彼を二回も襲ってしまったメリアローズは、早鐘を打つ胸をおさえながら何とか平静を装う。
「自室に戻る前に、医局に寄ってもいいだろうか?」
「……ええ」
医局は、医法士など医療従事者が使う執務室のことを指す。
一万人の兵士を支える砦内の医療区間はかなり広い。兵士の簡易的な応急処置を行う救護室と、重症者が運びこまれる診療室、入院設備が整った病棟などがある。
兵士ならば、薬をもらう時は救護室に行くのだが、エリヴェルトは領主家の人間だ。怪我人を刺激しないために、直接医局へ行って薬をもらっているのだろう。
「眠れないのですか?」
「……ああ。いつ敵が攻めてくるか分からない状況だからか、気が昂ってしまってな。本当はよくないと分かっているが、睡眠薬と入眠魔法を併用しているんだ」
医局の人間に声をかけ、備品庫の鍵を開ける。エリヴェルトは慣れた様子で、戸棚の中から睡眠薬の瓶を取り出した。台帳に持ち出したものをさらさらと記載すると、彼は顔を上げた。
「……付き合わせて悪かった。部屋に戻ろうか」
「はい」
メリアローズは頷きながら、エリヴェルトが持った瓶のラベルに視線を走らせる。
(エルリア草を主成分とした睡眠薬……)
幼い頃から医療に関心があり、治癒魔法の鍛錬だけではなく薬についても学んできた。エルリア草の効能ももちろん知っている。
エルリア草は入眠効果は高いが、中途半端に覚醒してしまった人間がおかしな言動をしていたとの報告を医法院で見たことがある。
婚礼の式の前日の晩、エリヴェルトの発言がいつもと大きく違っていたのもエルリア草の影響だろう。
「……エリヴェルト、よかったら今夜から一緒に眠りませんか? 人の体温は心を安らげて睡眠を心地よいものにすると言いますよ」
メリアローズは貞淑な妻の顔をして、エリヴェルトに提案する。しかし、彼は眉を下げる。
「……ありがたい申し出だが、私は寝言がうるさい人間なんだ。宿営でも寝ながらぶつぶつ言っていたようで、兵長から注意を受けたことがある」
どうも以前も、中途半端に覚醒してしまってやからしたことがあったらしい。
「大丈夫です。私は一度寝たら起きませんし、寝言をつぶやかれても気がつきませんわ」
◆
こっそり忍びこまなくても、堂々とエリヴェルトの寝台に入ることができた。嬉しくて今夜は眠れないかもしれない。
今、メリアローズはエリヴェルトと隣りあって寝そべっている。
「おやすみ、メリアローズ」
「おやすみなさいませ、エリヴェルト」
布団の中は暖かく、エリヴェルトからは石鹸のような清潔な匂いがする。胸はずっと高鳴っていた。
(私は、エリヴェルトのことが好きになってしまったのかしら……)
結婚する前は、エリヴェルトを愛さないように努力していた。彼が気を持たせるような言葉を口にしても反応しないようにしたり、彼は自分にとってあくまで救う対象で、恋愛の相手ではないと心に言い聞かせたり。
だが、身体を重ねて、『愛してる』と言い合うようになって……自分の中で確実に変化があった。
(……でも、この気持ちは今まで通り誤魔化したほうがいいかもしれないわね)
エリヴェルトが自分を本気で好きになることはあり得ないのだ。好きになる要素など何一つないのだから。
彼の、こちらのことが好きだとしか思えないような行動や発言の数々は、元王女の妻とうまくやっていくためのものだろう。本心ではないはずだ。
悶々と考えごとをしていると、あっという間に時間が過ぎた。明日からはきっと忙しくなる。早く寝なければと思った、その時だった。
隣りで眠っていたはずのエリヴェルトが、もぞもぞと動いている。
「……ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
エリヴェルトの広い背に声をかける。すると、彼はむくりと起き上がった。どうしたのだろうかと思う間もなく、彼はこちらを振り向き、そして、覆い被さってきた。
「んうっ……!」
唇を唇で塞がれる。すぐに厚い舌が口の中に入ってきて自分の舌を絡めとられた。
長くて深い口づけの後、寝衣を無理やり脱がされ、生まれたままの姿にされた。
脚を割られその間に陣取られると、膝を掴まれる。
そして、猛った剛直で女陰を貫かれた。
「いっ、……あぁっ!」
悲鳴をあげながら、首を横に振る。ずるずると硬い陰茎が奥まで入ってくる。口づけを受けている間にも膣は濡れていたのか痛みはない。だが、性急な行為に混乱した。いつもの慎重なエリヴェルトらしくない。
今夜の彼も、中途半端に覚醒してしまったのだろうか。
腰を掴まれて激しく中を穿たれる。陰茎の先が快いところを掠めると、がくがくと腰が揺れた。
行為に慣れてしまったのか、乱暴にされているというのに脳が痺れそうなほど気持ちがいい。
「ふうっ、ううっっ……!」
悲鳴じみた大きな声が抑えられず、慌てて口を手で覆った。
すると、エリヴェルトは腰を打ちつけるのをやめ、メリアローズの口に当てられた手を取った。
「……声を聴かせてくれ」
掠れた声、魔狼を思わせる琥珀色の瞳が、メリアローズの胸を射抜く。
はっきりとしたエリヴェルトの発言に彼は起きているのではないかと思ったが、それならばいきなり行為に及ぶのはおかしい。彼は心を通わせてから床を共にしたいと言っていた。
エリヴェルトはゆったりとしたシャツの一番上のボタンだけ開けていたが、すべてのボタンを外すと後ろ手にシャツを脱いだ。
彼の鍛えあげられた身体が露わになると、また、抽送が再開された。だが、先程のような激しいものではない。ゆっくりとした抽送に、膣壁を撫でられているような気持ち良さを感じる。
メリアローズはエリヴェルトに腕をのばす。すぐに彼は前屈みになった。彼の首に腕を回す。
(……今のエリヴェルトに『愛している』と言ったらどうなるのかしら?)
メリアローズはふと考えた。
本心が聞けるのだろうか、それとも……。
ここまで考えたところで、やめておくことにした。今の彼はおそらく夢の中の住人で、適当な発言をする可能性が高い。
「メリアローズに、お願いがある……」
ふいに、耳元で囁かれる。
「……ここには魅力的な人間がたくさんいる。アルベルタやモール……父上も。でも、好きにならないでほしい」
絞り出すような声だった。夢の中でもこんなことを言うなんて。
メリアローズはぽんぽんと、エリヴェルトの頭の後ろを軽く叩く。
彼は顔をあげると、またこちらを見つめてこう言った。
「……俺だけを見てほしい」
それはあまりにも破壊力のありすぎる言葉だった。縋るような彼の目と声、繋がったところから感じる熱。触れ合う肌の心地よさ。
ときめかずには、いられなかった。
今夜のメニューは、肉厚の茸がふんだんに使われたブラウンシチューに、食べやすいように一口サイズに四角く切られたパン、葉物のサラダだ。
ティンシアの砦では、領主家の人間であっても兵士と同じものを食べるというルールがある。
その方がありがたいとメリアローズは思った。
大皿にちょこんと食材がのった料理ばかりが運ばれてくるコース料理は好きじゃない。
ワインでよく煮込まれた肉と茸をスプーンで掬い、口へ運ぶ。濃厚な旨みが口の中に広がる。思わず笑ってしまいそうになるほどの美味しさだ。
ふと、向かいに座るエリヴェルトと目が合った。
彼はこちらを見て、切れ長の目を細めている。
「今日はどうだった?」
そう問いかけてくる彼の声は優しい。
「……医局長のモールさんに、備品庫までご案内いただきましたわ」
「驚いたろう? 医薬品の少なさに」
「……ええ。医薬品の少なさもそうですけど、正しい使い方を熟知した医療従事者も足らないとモールさんは嘆いていました」
軽傷だと、ろくに手当てもしない兵士達を思う。モールもそんな兵士達を見て心を痛めていた。
「兵士一人一人が怪我の対処ができるよう、演習に手当ての訓練を取り入れたことがあるが、ああいうものは継続的に行っていかないと意味がない。だが、医局は多忙でな……」
まずは医局の人数を増やさないと話にならない。
医法院の院長は医薬品と共に人を送ると言ってくれたが、いつになるか分からない。
「……まずは、私ができるかぎりのことをしますわ」
人を動かすには、まず自分が動いてみせなければ。
明日から本腰を入れて兵士達を癒そうと、メリアローズは決意を新たにした。
◆
食堂から自室へ戻る道すがら。エリヴェルトは急に足を止めた。
「あ、しまった……」
「どうかしました?」
「……睡眠薬が切れていたのをすっかり忘れていた」
エリヴェルトの言葉にどきりとする。眠っている彼を二回も襲ってしまったメリアローズは、早鐘を打つ胸をおさえながら何とか平静を装う。
「自室に戻る前に、医局に寄ってもいいだろうか?」
「……ええ」
医局は、医法士など医療従事者が使う執務室のことを指す。
一万人の兵士を支える砦内の医療区間はかなり広い。兵士の簡易的な応急処置を行う救護室と、重症者が運びこまれる診療室、入院設備が整った病棟などがある。
兵士ならば、薬をもらう時は救護室に行くのだが、エリヴェルトは領主家の人間だ。怪我人を刺激しないために、直接医局へ行って薬をもらっているのだろう。
「眠れないのですか?」
「……ああ。いつ敵が攻めてくるか分からない状況だからか、気が昂ってしまってな。本当はよくないと分かっているが、睡眠薬と入眠魔法を併用しているんだ」
医局の人間に声をかけ、備品庫の鍵を開ける。エリヴェルトは慣れた様子で、戸棚の中から睡眠薬の瓶を取り出した。台帳に持ち出したものをさらさらと記載すると、彼は顔を上げた。
「……付き合わせて悪かった。部屋に戻ろうか」
「はい」
メリアローズは頷きながら、エリヴェルトが持った瓶のラベルに視線を走らせる。
(エルリア草を主成分とした睡眠薬……)
幼い頃から医療に関心があり、治癒魔法の鍛錬だけではなく薬についても学んできた。エルリア草の効能ももちろん知っている。
エルリア草は入眠効果は高いが、中途半端に覚醒してしまった人間がおかしな言動をしていたとの報告を医法院で見たことがある。
婚礼の式の前日の晩、エリヴェルトの発言がいつもと大きく違っていたのもエルリア草の影響だろう。
「……エリヴェルト、よかったら今夜から一緒に眠りませんか? 人の体温は心を安らげて睡眠を心地よいものにすると言いますよ」
メリアローズは貞淑な妻の顔をして、エリヴェルトに提案する。しかし、彼は眉を下げる。
「……ありがたい申し出だが、私は寝言がうるさい人間なんだ。宿営でも寝ながらぶつぶつ言っていたようで、兵長から注意を受けたことがある」
どうも以前も、中途半端に覚醒してしまってやからしたことがあったらしい。
「大丈夫です。私は一度寝たら起きませんし、寝言をつぶやかれても気がつきませんわ」
◆
こっそり忍びこまなくても、堂々とエリヴェルトの寝台に入ることができた。嬉しくて今夜は眠れないかもしれない。
今、メリアローズはエリヴェルトと隣りあって寝そべっている。
「おやすみ、メリアローズ」
「おやすみなさいませ、エリヴェルト」
布団の中は暖かく、エリヴェルトからは石鹸のような清潔な匂いがする。胸はずっと高鳴っていた。
(私は、エリヴェルトのことが好きになってしまったのかしら……)
結婚する前は、エリヴェルトを愛さないように努力していた。彼が気を持たせるような言葉を口にしても反応しないようにしたり、彼は自分にとってあくまで救う対象で、恋愛の相手ではないと心に言い聞かせたり。
だが、身体を重ねて、『愛してる』と言い合うようになって……自分の中で確実に変化があった。
(……でも、この気持ちは今まで通り誤魔化したほうがいいかもしれないわね)
エリヴェルトが自分を本気で好きになることはあり得ないのだ。好きになる要素など何一つないのだから。
彼の、こちらのことが好きだとしか思えないような行動や発言の数々は、元王女の妻とうまくやっていくためのものだろう。本心ではないはずだ。
悶々と考えごとをしていると、あっという間に時間が過ぎた。明日からはきっと忙しくなる。早く寝なければと思った、その時だった。
隣りで眠っていたはずのエリヴェルトが、もぞもぞと動いている。
「……ごめんなさい、起こしてしまったかしら?」
エリヴェルトの広い背に声をかける。すると、彼はむくりと起き上がった。どうしたのだろうかと思う間もなく、彼はこちらを振り向き、そして、覆い被さってきた。
「んうっ……!」
唇を唇で塞がれる。すぐに厚い舌が口の中に入ってきて自分の舌を絡めとられた。
長くて深い口づけの後、寝衣を無理やり脱がされ、生まれたままの姿にされた。
脚を割られその間に陣取られると、膝を掴まれる。
そして、猛った剛直で女陰を貫かれた。
「いっ、……あぁっ!」
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今夜の彼も、中途半端に覚醒してしまったのだろうか。
腰を掴まれて激しく中を穿たれる。陰茎の先が快いところを掠めると、がくがくと腰が揺れた。
行為に慣れてしまったのか、乱暴にされているというのに脳が痺れそうなほど気持ちがいい。
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悲鳴じみた大きな声が抑えられず、慌てて口を手で覆った。
すると、エリヴェルトは腰を打ちつけるのをやめ、メリアローズの口に当てられた手を取った。
「……声を聴かせてくれ」
掠れた声、魔狼を思わせる琥珀色の瞳が、メリアローズの胸を射抜く。
はっきりとしたエリヴェルトの発言に彼は起きているのではないかと思ったが、それならばいきなり行為に及ぶのはおかしい。彼は心を通わせてから床を共にしたいと言っていた。
エリヴェルトはゆったりとしたシャツの一番上のボタンだけ開けていたが、すべてのボタンを外すと後ろ手にシャツを脱いだ。
彼の鍛えあげられた身体が露わになると、また、抽送が再開された。だが、先程のような激しいものではない。ゆっくりとした抽送に、膣壁を撫でられているような気持ち良さを感じる。
メリアローズはエリヴェルトに腕をのばす。すぐに彼は前屈みになった。彼の首に腕を回す。
(……今のエリヴェルトに『愛している』と言ったらどうなるのかしら?)
メリアローズはふと考えた。
本心が聞けるのだろうか、それとも……。
ここまで考えたところで、やめておくことにした。今の彼はおそらく夢の中の住人で、適当な発言をする可能性が高い。
「メリアローズに、お願いがある……」
ふいに、耳元で囁かれる。
「……ここには魅力的な人間がたくさんいる。アルベルタやモール……父上も。でも、好きにならないでほしい」
絞り出すような声だった。夢の中でもこんなことを言うなんて。
メリアローズはぽんぽんと、エリヴェルトの頭の後ろを軽く叩く。
彼は顔をあげると、またこちらを見つめてこう言った。
「……俺だけを見てほしい」
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