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※ 私に見せる彼の顔

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 同意する間もなく、唇に唇を押し当てられた。
 熱い吐息があたり、頭の奥がじんじんする。ここまで胸が高鳴ったことは今まで無いかもしれない。ときめきすぎて胸が押しつぶされそうだ。

「んっ、……ん」

 はじめてのキスなのに、アセルは私の咥内を蹂躙した。舌がのびるところすべてを丁寧に舐めあげられ、私が上顎を刺激されるのに弱いのに気がつくと、彼はそこばかり攻めた。

「……フラウは丸くて大きな飴玉が好きだったもんな。こう、上顎に当てていつも舐めていた」
「もう、いやらしい! いつもそんな目で見てたの?」
「仕方ないだろ、好きな子の癖は覚えちゃうんだよ」

 ──本当に私よりも十三も上なのかしら?

 ファートナ家の次期領主としての彼の評判は上々だと聞くが、私に見せる顔はどうも少し子どもっぽい。
 本当にうちの長兄と同い年だろうかと疑いたくなる。

「嬉しいなあ、ずっとフラウといやらしいことがしたかった」

 そう言って、アセルは私の首やその周りに形の良い唇を当てていく。艶やかな金髪や吐息が肌に当たってくすぐったい。
 あんまり嬉しそうにしないで欲しい。私はまだ、怒っているのだ。いきなり裸にされたことも変な薬を飲まされたことも。

「……ねえ、アセル。媚薬はどうやって飲ませたの? 私は眠ってたじゃない」
「それは……こう、口移しで。媚薬はお互いの唾液を含ませないと効果があまり無いらしいよ。それに一石二鳥だろ? 口移しのほうが二人で飲めてさ」

 はじめてのキスは記憶がないまま勝手にされていた。……もう、本当に腹が立つ。
 まだ咥内には蜂蜜のような後味が残っている。一体どんなキスだったんだろうと思うだけで身体が熱くなった。

「もうやだ……。興奮して苦しいし、早くなんとかしてよアセル!」
「なるほどなるほど。フラウは性的欲求が高まると怒りっぽくなるんだな~。責任もって発散させるから待っててな」
「あっ、あん、ひゃあっ⁉︎」

 いきなり、こりこりに固くなった胸の先端に吸いつかれ、腰が大きく浮いた。熱い咥内で飴玉のように転がされて、あまりの気持ちよさに変な声が止まらなくなる。幼な子のようにじゅっと音を立てて吸われたと思ったら、舌先でつるりと煽るように舐められる。もう片方の胸の先も、整えられた指先で弄られていた。

 媚薬なぞ要らなかったと思う。アセルは充分床上手だった。

「フラウのおっぱい、美味しいよ」
「別に何も出ないわよ……」
「全身舐めたいな」

 さきほどシャワーを浴びたアセルはともかく、私は朝の支度の時に軽くお湯に浸かっただけだ。媚薬のせいで、全身汗をかいた私は汚いのではないか──
 汗臭かったらどうしよう。
 そもそも、さっきから秘部から体液が流れっぱなしなのだ。匂いが気になった。

「嫌だわ、そんなところ。汚いじゃない」
「フラウに汚いところなんかないよ」

 私の目の前に陣取ったアセルは、私の薄いお腹に顔を埋めている。背中や腰にも腕を回され、びくびくと感じるたびにそれがダイレクトに彼に伝わるのかと思うと、抵抗感が凄かった。

「わ、私、こういうことは初めてなんだからね……! 変な薬のせいでこうなってるだけで、淫乱なんかじゃないんだから!」
「分かってるよフラウ。反応してくれてありがとう」
「うううっ」

 次第にアセルの顔は下へと移っていく。改めて黒い下生えを見られるのは恥ずかしい。私はこの国では珍しい黒髪の持ち主だ。下の毛ももちろん黒い。

「紅い陰核を覆う黒い毛か、……卑猥でいいね」
「……そこを舐めたら殴るわよ」
「なぜ? 舐められたら、すごく気持ちいいと思うよ?」
「これ以上乱れたくないの! 結婚前なのに!」
「しょうがない、触るだけにするよ」
「えっ、ひゃっ、ああっ……!」

 くにくにと、ぷくりと膨らんだ紅い陰核を指の腹で弄られる。
 私は王宮で働く予定だった。閨のことも多少は知らねば仕事に差し支えると思い、俗本を読んで自分の身体を触ったこともあるが、ここまで気持ち良くはなれなかった。
 今はアセルに触れられているところ、すべてが気持ちいい。媚薬の効果なのか、いちいち腰が浮いて変な声が出るのが、我ながらうざったいけど。

「……アセル、媚薬の効果はいつ切れるの?」
「フラウが満足したら切れるんじゃないか?」
「満足って……?」
「ここがぐちょぐちょになっているから、俺のでたくさん突いたら満足するんじゃない?」
「ひっ」

 アセルの腰布を容赦なく押し上げる存在に目眩がする。あんな乳幼児の腕ほどもありそうな物が、こんな狭いところに果たして入るのだろうか。
 まずは指で慣らしてあげると言われたが、槍や剣を扱う人である彼の指は長く太ましい。くちゅりと水音を立てられながら指を挿れられて、すごく恥ずかしかった。

「あっ、すごい。狭いけど温かくて、上の方がざらざらしてる……」
「へ、変なとこ擦らないで! 勝手に腰が浮くからぁ」

 はじめて異物を受け入れているというのに、そこはもうグズグズに蕩けているからか、あっさりアセルの指をのみ込んでいく。すぐに指を二本に増やされたが、何か今ひとつ刺激が足らない。
 もっと奥まで来て欲しい。
 私はみずから腰を動かした。もっと奥まで彼の指が欲しかったから。しかし、いくら腰をくねらせたところで、指では届く長さに限界があった。

「もうイヤ、指じゃ足らない……! もっと奥まで来て……!」
「うーん……。一回イッたほうがいいかもね。ごめんね、フラウ。ぷくっとしたココを舐めるね?」
「えっ、あっ……あっあぁぁ────‼︎」

 隘路を二本の指でならされながら、陰核に口づけられる。嫌だと言ったのにと思う間もなく、アセルの指の形がはっきり分かるほど勝手に収縮する下腹。背中は大きく反り、私は自分でも驚くほど絶叫した。
 目の前にぱぱっと黒点が散る。自分で自分の身体に一体何が起こったのか、すぐに分からなかった。

「すごい、俺の手首までびっちょりだ。気持ち良かった?」
「なんか……凄すぎてよく分からなくて……」

 大きく息をはく。
 今のがどうやら絶頂というものらしい。はじめてではなかなか経験出来ないことだそうだ。
 私がぼんやり天井を見上げていると、アセルは私の目の前に陣取り、力が抜けた脚を大きく広げだした。彼の腰布を持ち上げるそれは、さっきよりも角度が急になっているような気がする。

「……もうそろそろ俺も気持ちよくなりたいな」
「私が舐めるの?」
「えっ?」
「閨本で読んだ情報だけど……。男の人は舐めて貰わないと固さが充分にならないとか」
「うっ、確かに、二十歳そこそこの男の固さには敵わないかもしれないけど……三十男だって頑張るよ!」

 口淫すると言ったら全力で断られた。私もお返しに前戯したくなっただけなのだが、アセルはどうも別の意味で捉えたらしい。
 
 アセルが若い男じゃなくて逆に良かったかもしれない。彼がもう十歳若かったら、媚薬の効果でもっとがっついていたかもしれないし。

「フラウは何も心配しないで。力を抜いて、俺に身体を預けて……」
「んっ……」

 アセルの腰布が外される。彼のものを直視したら、絶対に怖気づくと思ったから視線を外した。
 向かい合った体勢のまま、結合した。
 指とは比較にならない太ましいものが、脚の間の、狭い隙間に侵入してくる。濡れそぼった入り口が押し広げられ、感じたことのない圧迫感に思わず眉間に皺が寄る。

「──痛い? ここを触ったらどうかな?」
「あっ、ちょっ!……ぁっ、ああっ!」

 すぐに陰核を弄るのはやめて欲しかった。自分の意思とは関係なく声が出るのはやっぱり恥ずかしい。
 が、嬌声をあげたことで緊張感が緩んだのも事実。少しずつ腰を奥へと進められ、私は特に痛みを感じることもなく彼を受け入れることが出来た。途中、皮膚が引き攣れるような感覚が走ったが、それが破瓜かもしれない。

「全部はいったよ。痛くない?」
「大丈夫……早く動いて。私もう限界……っ」

 陰核の裏あたりがじんじんする。彼のもので隙間なくみっちり埋められた隘路。圧迫感で苦しいはずなのに、腰回りから足先へとぞわぞわしたものが走り、とにかく落ち着かない。
 アセルがまだ動いていないのに、腰を動かしたくて仕方がなかった。
 彼は私の両側に逞しい腕をつく。
 すぐに緩やかな律動が始まった。

「ごめん、フラウ。すぐに楽にするから」
「……っ、あっ、……んんっ、はぁっ、ああっ」

 やっと、やっと欲しかった刺激が与えられ、私は歓喜に喘いだ。
 源泉のように次々に愛液が湧く媚肉を擦られ、もっと隅々まで──奥まで貫いて欲しくて限界まで脚を開いた。気持ちいい。私はこれが欲しかった。ぐずぐずに蕩けたここで、愛液を掻き出すように力強く動いてくれるものが欲しかったのだ。
 ふと、上を見上げると、アセルの口角が上がっていた。彼も気持ちよくなっているのだろうか。吐き出される息は荒く、それが肩口や胸に当たるたび、びくりと身体が跳ねた。
 見たことのない表情だと思った。
 色気が凄すぎて、息が出来なくなるぐらい胸が痛くなった。

「フラウのなか、すごく良くて……ははっ、すぐに出そうだ」
「だ、出して、なかに全部……っ、既成事実を作るんでしょう?」

 自分は母になるのはまだ早いと思うが、アセルの年齢を考えるとすぐにでも子作りしたほうが良いだろうなどと、現実的なことをすぐに考えてしまう。
 領主は激務だ。出来れば五十前には成人した息子がいるのが好ましい。


「うっ、ううっ、あぁ……!」
「フラウ、フラウ、好きだ。君とぜったいに結婚するんだ」

 腰をがっしり両手で掴まれ、激しく貫かれる。太ももを固定されて私は身動き出来ない。
 アセルはいつも私に優しい。何かと気を使ってくれる彼が、私にこんな無体を強いるのは初めてだった。
 でも、嫌じゃない。自分の身体を使って欲望を吐き出そうとされているのに、不思議と嫌悪感は抱かなかった。

 下腹の奥ではじめて感じる熱い飛沫。
 現実感がまるでないまま、私はアセルのものになった。こんな日が来るなど、今朝までは思いもしなかった。
 ずるりと、べとべとになった肉楔が引き抜かれる。お互いが出した体液まみれのアセルのものを見て、改めて自分たちは一線を超えてしまったんだなと思った。

「痛くない? ……敷布が桃色だ」
「大丈夫……」

 本当に痛みは無い。媚薬を盛ってもらえて良かったかもしれない。が、そんなことは言いたくない。端的に言わなくてもこんなの犯罪だ。和姦になったが、そんなのは結果論だ。

「……アセル、これは高くつくわよ」
「うっ、結婚指輪もドレスも、俺たちの寝室も君の要望通りにするよ」
「寝室は話し合いで決めたいけど……」

 出すものを出して憑き物が落ちたように大人しくなったアセルは、いつものちょっと頼りない優しげな彼の顔に戻っていた。
 やはり彼も私に媚薬を飲ませてまで強行突破したのは、やり過ぎたと感じているのかもしれない。まあ、反省してもらわないと困るけど。

「ところでここはどこなの?」

 窓から見える風景はあのレストランのものに似ていたが、レストランに宿など併設していただろうかと首をかしげる。
 
「レストランの隠し宿だよ」
「隠し宿?」
「親や家族に交際を認められていない、男女がこっそり使っているらしい。連れ込み宿だと、目撃されたら困るだろう?」

 うちの屋敷の側にそんな如何わしい施設があったとは。確かにこのレストランは食事どころがあるだけの建物にしては、やけに大きいなと思っていたが。

「何でアセルはここに隠し宿があるだなんて知ってるのよ?」
「前にフラウとここに来た時、お会計してる時に耳打ちされたんだよ……ウェイターに。飲食代の三倍の金を払えば、隠し部屋に案内するってね。俺たちがカップルに見えたんだろうな」

  一介の飲食店の従業員が、いくら領主の娘とはいえ、末娘の私の顔など知らなくても無理はないだろう。
 カップルに間違えられたと聞き、口が緩んでしまいそうになった。いけないいけない。

「フラウは大人っぽいし、俺は若く見られるからなあ」
「私が貴方に生意気な口をきいているからかもしれないわね」
「そのツンツンした物言いが良いんじゃないか! いつもゾクゾクしてるよ」

 ──……変態め。

 十三も歳下の女に、タメ口きかせて喜んでいるだなんて。ジョシュアの妹なら、フラウも親友だと言って、無理やりタメ口を使わせたのは嘘だったのか。

「……アセルのばか」
「ごめんな、フラウが可愛いからいつもからかいたくなるんだ……」

 そう言って、アセルはまた私の肩を抱いた。

「……何?」
「まだ時間はあるから、もう一回いいか?」

 ──もう、ぜんぜん反省してないんだから!

「結婚式が終わるまでは、しないわ」

 アセルの腕を振り払い、胸に掛かった黒髪をばさりとかき上げ、素っ裸のまま私はシャワールームへ向かった。
 いくら好きな相手とはいえ、ずるずるなんでも許すわけにはいかない。
 今回は媚薬と睡眠薬を盛られるだけで済んだが、これ以上何かされたら困るからだ。

 ──でも……

 シャワーの水栓をひねり、お湯を出しながら自分の脚の間を見る。半透明の精液が滴り落ちていた。
 はじめての行為がどうしようもなく気持ち良かったのは確かだ。
 また誘われたら応じてしまうかもしれない。下腹が疼きそうになり、慌てて頭を振った。
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