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#006
宮之阪のメモ帳2
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コーヒーを飲み終え妹(偽)の分のコップも洗ってやった後、俺は自分の部屋で今一度JDさんに電話をかけていた。無論、宮之阪のメモ帳の事についてだ。
俺の考えが正しければ河内森キョウコはユウキを吊った後、あいつから宮之阪のメモ帳を持ち去った。んでもってその河内森キョウコをJDさんの組織がやっつけたってわけだから、順当に事が進んでいればメモ帳はJDさんの組織の人たちのところが持っているはずだ。
数回コールが鳴った後、
『……もしもし、天野ヶ原くん?どうかした?』
先ほどとは違い、仕事モードと言うべきかいつも通りの落ち着いた感じに戻ったJDさんが出た。『何かあったの?』と真剣な声色で尋ねてくる。
「何度もすいません。いえ、そういうわけではなくて。……ひとつお聞きしたい事があって」
『ん?どうしたの?』
俺は妹の事は言わずに宮之阪のメモ帳の事について尋ねた。俺にとっては違っても、JDさんたちにとっては俺の妹もまた世界侵略を謀るK、JDさんたちの言うところのインポスターのうちの一人だからな。俺がどう弁明しようとも殺されてしまうかもしれない。中身が違うとはいえ、二度も妹を亡くすのは流石に嫌だぜ。
電話越しにJDさんが誰かと会話する声が聞こえた後、少しして、
『……お待たせしちゃってごめんね。宮之阪さんのメモ帳よね。今、捜査班の人たちに確認してもらったんだけど、河内森キョウコの遺体からは携帯電話とかハンカチとかリップクリームみたいなごくごく普通の女の子が持っているようなものばかりが出て、特にそういったメモ帳のようなものは見つからなかったみたい』
……どういう事だ?河内森キョウコが宮之阪のメモ帳を持っていないだと?
『ん?どうかした?』
「……ちなみに、河内森キョウコの自宅とかは」
『一応一通り調べあげたわ。今、手元にリストがあって、河内森キョウコの身の回りにどんなものがあったのかが分かるんだけど。……うん、彼女自身の日記帳やメモ帳はあっても宮之阪さんのメモ帳はないわね』
「……そうですか。ありがとうございました」
『……もしかして何か大切なものだった?』
「……いえ。いや、まぁ少し気になっただけで」
『……そっか。ならよかった』少しの沈黙の後、『……ほんとは一般人には言っちゃあいけないんだけどね』
「はい?」
JDさんは『内緒にしててね』と前置いた後、良く通る声を抑えて、
『……私たちの上層部も宮之阪さんのメモ帳を探しているみたい。どうしてなのかは私たち下っ端には伝えられていないんだけどね。結構必死になってるわ。何か重要な事が書いてあるのかしら』
それから『また何かあったらいつでもかけてね』と言ったJDさんに改めて礼を言って通話を終了した。
宮之阪のメモ帳を持っていたはずの河内森キョウコは実際は持っていなかった。ということはやはりユウキを殺したのは河内森キョウコじゃないのか?だとすれば真相は一気に闇の中へって感じになるんだが。
しかも、どういうわけか宮之阪のメモ帳をその凄さを知っている俺だけじゃなく、俺の妹と、加えてJDさんたちの組織も探しているらしい。確かに俺はあのメモ帳は以前借りた事のあるあいつのノート以上にあらゆる情報やあいつの思考回路がたくさん書いてあるということは知っている。宮之阪も自慢げに見せてきたしな。
だが、たかだか一般市民女子高生のメモ帳だぜ?同じ「学校の悪魔」として活動してきた俺以外に欲しがるようなもんでもないはずだろう。
しかし、JDさんの話を聞く限りそうでもないらしい。
何度見してくれって言ってもあいつは「絶対に誰にも見せない」と言っていたからあのメモ帳の内容がどんなものなのかを知っている人間は宮之阪本人くらいのはずだが、その内容がどういうものなのかがどこからか漏れていて、そして一つの大きな組織を動かすくらいの何か大きなカギになっているようだった。
妹に理由を聞いても「あなたに教える必要はありません」て言われたので俺には分からんが、きっと偽者と人間と両方に関する重要な事が書いてあるのだろう。
だが、いかんせんその在りかが分からん。
宮之阪のメモ帳は一体どこに行っちまったんだろうな。いや、あいつのメモ帳なんだからAIとかが仕込まれていて主人のピンチに独りでに歩きだしたり……。
「……なわけはないな」
ならどこに行っちまったんだ。今は誰が持ってる。
俺の思う宮之阪のメモ帳の持ち主は順番に、宮之阪、ユウキ、そして河内森キョウコだった。だが、河内森キョウコは持っていなかった。
つまりは、ユウキを殺したのは河内森キョウコじゃあなかった。
そもそも、河内森キョウコはメモ帳の価値を知らないはずだしな。ひいては宮之阪を殺したのもやはりユウキじゃなかったのだろう。妹もあそこで吊られていた宮之阪が本物だと言っていたからな。あいつがくだらない嘘をつくようなやつじゃあないから、であれば、宮之阪とユウキ、ベクトルの違うその二人の天才を殺したやつが河内森キョウコの他にいて、そして現在宮之阪のメモ帳を持っているということになる……。
それが河内森キョウコと組んでいたやつかとも一瞬思ったが、非力な河内森キョウコに従うくらいだから違うだろう。というか普通の人間が学校の女神であるところの宮之阪と一見すれば人畜無害な地味系女子高生であるユウキをピンポイントで殺す動悸がない。
ここに来て情報ゼロ。フリダシだ。
さて、どうしたものか。
俺の考えが正しければ河内森キョウコはユウキを吊った後、あいつから宮之阪のメモ帳を持ち去った。んでもってその河内森キョウコをJDさんの組織がやっつけたってわけだから、順当に事が進んでいればメモ帳はJDさんの組織の人たちのところが持っているはずだ。
数回コールが鳴った後、
『……もしもし、天野ヶ原くん?どうかした?』
先ほどとは違い、仕事モードと言うべきかいつも通りの落ち着いた感じに戻ったJDさんが出た。『何かあったの?』と真剣な声色で尋ねてくる。
「何度もすいません。いえ、そういうわけではなくて。……ひとつお聞きしたい事があって」
『ん?どうしたの?』
俺は妹の事は言わずに宮之阪のメモ帳の事について尋ねた。俺にとっては違っても、JDさんたちにとっては俺の妹もまた世界侵略を謀るK、JDさんたちの言うところのインポスターのうちの一人だからな。俺がどう弁明しようとも殺されてしまうかもしれない。中身が違うとはいえ、二度も妹を亡くすのは流石に嫌だぜ。
電話越しにJDさんが誰かと会話する声が聞こえた後、少しして、
『……お待たせしちゃってごめんね。宮之阪さんのメモ帳よね。今、捜査班の人たちに確認してもらったんだけど、河内森キョウコの遺体からは携帯電話とかハンカチとかリップクリームみたいなごくごく普通の女の子が持っているようなものばかりが出て、特にそういったメモ帳のようなものは見つからなかったみたい』
……どういう事だ?河内森キョウコが宮之阪のメモ帳を持っていないだと?
『ん?どうかした?』
「……ちなみに、河内森キョウコの自宅とかは」
『一応一通り調べあげたわ。今、手元にリストがあって、河内森キョウコの身の回りにどんなものがあったのかが分かるんだけど。……うん、彼女自身の日記帳やメモ帳はあっても宮之阪さんのメモ帳はないわね』
「……そうですか。ありがとうございました」
『……もしかして何か大切なものだった?』
「……いえ。いや、まぁ少し気になっただけで」
『……そっか。ならよかった』少しの沈黙の後、『……ほんとは一般人には言っちゃあいけないんだけどね』
「はい?」
JDさんは『内緒にしててね』と前置いた後、良く通る声を抑えて、
『……私たちの上層部も宮之阪さんのメモ帳を探しているみたい。どうしてなのかは私たち下っ端には伝えられていないんだけどね。結構必死になってるわ。何か重要な事が書いてあるのかしら』
それから『また何かあったらいつでもかけてね』と言ったJDさんに改めて礼を言って通話を終了した。
宮之阪のメモ帳を持っていたはずの河内森キョウコは実際は持っていなかった。ということはやはりユウキを殺したのは河内森キョウコじゃないのか?だとすれば真相は一気に闇の中へって感じになるんだが。
しかも、どういうわけか宮之阪のメモ帳をその凄さを知っている俺だけじゃなく、俺の妹と、加えてJDさんたちの組織も探しているらしい。確かに俺はあのメモ帳は以前借りた事のあるあいつのノート以上にあらゆる情報やあいつの思考回路がたくさん書いてあるということは知っている。宮之阪も自慢げに見せてきたしな。
だが、たかだか一般市民女子高生のメモ帳だぜ?同じ「学校の悪魔」として活動してきた俺以外に欲しがるようなもんでもないはずだろう。
しかし、JDさんの話を聞く限りそうでもないらしい。
何度見してくれって言ってもあいつは「絶対に誰にも見せない」と言っていたからあのメモ帳の内容がどんなものなのかを知っている人間は宮之阪本人くらいのはずだが、その内容がどういうものなのかがどこからか漏れていて、そして一つの大きな組織を動かすくらいの何か大きなカギになっているようだった。
妹に理由を聞いても「あなたに教える必要はありません」て言われたので俺には分からんが、きっと偽者と人間と両方に関する重要な事が書いてあるのだろう。
だが、いかんせんその在りかが分からん。
宮之阪のメモ帳は一体どこに行っちまったんだろうな。いや、あいつのメモ帳なんだからAIとかが仕込まれていて主人のピンチに独りでに歩きだしたり……。
「……なわけはないな」
ならどこに行っちまったんだ。今は誰が持ってる。
俺の思う宮之阪のメモ帳の持ち主は順番に、宮之阪、ユウキ、そして河内森キョウコだった。だが、河内森キョウコは持っていなかった。
つまりは、ユウキを殺したのは河内森キョウコじゃあなかった。
そもそも、河内森キョウコはメモ帳の価値を知らないはずだしな。ひいては宮之阪を殺したのもやはりユウキじゃなかったのだろう。妹もあそこで吊られていた宮之阪が本物だと言っていたからな。あいつがくだらない嘘をつくようなやつじゃあないから、であれば、宮之阪とユウキ、ベクトルの違うその二人の天才を殺したやつが河内森キョウコの他にいて、そして現在宮之阪のメモ帳を持っているということになる……。
それが河内森キョウコと組んでいたやつかとも一瞬思ったが、非力な河内森キョウコに従うくらいだから違うだろう。というか普通の人間が学校の女神であるところの宮之阪と一見すれば人畜無害な地味系女子高生であるユウキをピンポイントで殺す動悸がない。
ここに来て情報ゼロ。フリダシだ。
さて、どうしたものか。
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