断罪するのは天才悪女である私です〜継母に全てを奪われたので、二度目の人生は悪逆令嬢として自由に生きます

紅城えりす☆VTuber

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神威に背く者には天罰を

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「では、これより聖火の儀を初めます」

 神官長が高らかに宣言すると、純白の松明を持った子供たちが一列に並んで登場した。
 子供たちを率いる青髪の少女が、女神像の前に立ち口を開く。

「全ての神官を代表して、アンジーが女神様に火を捧げます」

 アンジーという名を聞いた途端、神官長の表情が凍りつく。みるみる頬は青ざめて、唇は紫に変わっていった。

「神官長の様子がおかしいですね」

 すぐさま異変に気づいたのはウィリアムであった。

「そうですね。まるでようなご様子です」

 ウィリアムは怪訝な表情を浮かべていたが、メアリーは笑みを崩さなかった。

 なぜならば、この状況は完全にメアリーの計画通りであるからだ。

 アンジーが全ての祈祷文を読み終わり、神像前の台に炎を灯す。

「空の龍神、月の女神、太陽の神。全ての神々に祈りを捧げます」

 使い終わった松明も神像前に起き、手ぶらになったアンジーは人々の前に立った。

「そして……敬愛なる貴族の方々と、祭典に来て下さった全ての皆様にお伝えしたいことがございます」

 今までお祭りムードであった、民衆の様子が一変。静まり返る。

「モルガナ教会の神官長は慈悲深い方であり、私たち孤児を引き取って下さりました」

 初め神官長は何が起こったのか理解していない様子であったか、段々と彼の表情に焦りが見え始める。
 他の上位神官も同様だ。

「引き取られた私たちは教会で神官として働き、読み書きや礼儀作法を教わり一定の年齢に達すると里親に引き取られます」

「待て、勝手な真似をするな!」

 椅子に座っていた神官長が立ち上がり、叫ぶ。これにより今まで眠りかけていた一部の貴族は飛び起き、民衆は不安げな表情を浮かべた。

 メアリーもすぐさま立ち上がる。

「神官長、彼女は貴方への感謝を述べたいだけみたいよ。このまま話させてあげるべきではないかしら?」

「いや、しかし……」

「それとも、なにか公言されるとまずいことでも……?」

「くぅっ」

 神官長は奥歯を噛み締めてから、アンジーを睨みつけた。さすがに貴族を睨むわけにはいかないと考えたようだ。

「アンジーちゃん、話を続けていいわよ」

 メアリーの支持を聞いたアンジーは笑顔で頷く。

「この場に集まって下さった皆様。まずは、こちらの取引書をご覧下さい」

 アンジーが話し終わるとアルを中心とした子供神官が民衆に向けビラをばら撒き始める。
 彼らの小さな手から離れたビラは、風に乗って人々の手へ届いた。

「この紙は、私が引き取られた時に書かれた”取引書”です」

 隣に座っているウィリアムも紙を拾い、忌々しそうな目つきで睨み着けた。

「モルガナ教会は我が帝国の中でも屈指の大きな教会であり、観光資源にも一役買っています。ここまで教会が大きくなった理由は、私たち孤児を里親に引き取らせた際に頂いた多額の”寄付金”があったからです」

 民衆もアンジーを初めとした子供たちが、伝えたいことを段々と理解し始めた。

「ふざけるな。それって要するに人身売買で金を稼いでいたってことじゃないか!」

「神官という身でありながら、なんという卑劣な行為!」

「全ての神に対する冒涜だ!」

 怒り狂った民衆の罵声を浴びた神官たちは、アンジーを掴み無理やり黙らせようとした。

「さっきから戯言ばかりぬかしやがって!」

「第一お前は数日前に里親の元へ向かったはずだ。どうしてここに居る?」

「それについては私が説明するわ」

 メアリーは日傘をさしてから、神官長の元へ向かう。笑顔は崩さず、堂々と。

「理由は簡単。がアンジーちゃんに頼んで、豊穣祭に潜入してもらったの」

 神官を含め、この場に居る全ての者が凍りついた。

「でも誤解しないでね。彼女を引き取った目的は調査のためよ。それに引き取った後は、一時的に使用人として雇い、ちゃんと衣食住は確保してあげているわ。彼女が望めば信頼できる者の家庭に預けるつもりよ」

「では、どうしてお前は引き取った娘を豊穣祭に潜入させた?」

 怒りに囚われた神官たちは、メアリーが貴族であることもすっかり忘れてしまったらしい。神官長が叫んだ際に唾が飛び、メアリーは不快そうに顔を歪めた。

「見ての通りよ。貴方たちの罪を民衆の前で告発させるために潜入させたの」

「初めから全て計画していたのか?」

「えぇ、これで残念ながら貴方たちは神官という地位を捨てることになるでしょうね」

 口元に手を当て、意地悪な笑みを浮かべるメアリーを見た神官長は我慢の限界が訪れたらしく、儀式用の剣を取った。

「人を小馬鹿にしやがって!」

 鋭い刃が体を貫こうとする。刹那――。

「いい加減にしろ!」

 キィンっと、金属同士が触れ合う音が響いた。ウィリアムが携帯していた剣で応戦してくれたのだ。

「下らない言い逃れをした挙句、暴力に頼るとは、我々はこのような卑劣な悪魔に祭司を任せていたのか」

 皇族が現れたことでやっと正気に戻ったらしい神官は、その場で膝をつき――倒れ込んだ。

「全ての神官を拘束しろ。尋問は私が行う」

 ウィリアムの支持と共に王宮騎士が一斉に動き始める。

 神官長は「嫌だ。天の使いたる神官から卑しい平民に落とされるだなんて」と小さな声で愚痴を漏らしていた。
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