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しおりを挟む「っ……っ、くそ……!」
学習棟の奥、生徒会室から少し歩いた、誰も使わない廊下の一番端にあるトイレ。 扉を閉めると同時に、朝陽は震える手でベルトに指をかけた。
(……間に合え、間に合え……!)
しかし、手は震え、焦れば焦るほどバックルは外れない。
――そして、
「……っ、ああ……っ」
限界は、容赦なく訪れた。
制服のスラックスに染み込んでいく熱。 濡れた音、足元を伝う水音、そして何より、自分の声。
(……また、やった……最低だ、俺……)
羞恥と興奮と、混じり合う奇妙な感覚。 なのに、その混沌の中に、どこかで「気持ちいい」とすら思っている自分がいる。
(……誰にも……こんな姿……)
「……副会長」
その声がしたとき、朝陽は心臓が止まりそうになった。
(……まさか……)
個室の外。 扉の向こうに立っていたのは──やはり、風紀委員長の依澄だった。
「……どうして……」
かすれた声で問う朝陽に、依澄は静かに言った。
「見ていました。……顔色も、足の動きも。……ずっと我慢していたんですよね」
「っ、違……、ちがう……!」
とっさに否定しかけて、でも、言い訳なんて何も浮かばない。
依澄の声は相変わらず冷静で、けれど、どこか熱を含んでいた。
「俺だけに……教えてくれませんか。その感情。……隠し続けて、苦しくないですか」
「……っ……!」
(何言って……。そんなの、知られたら終わりだ。終わるはずだったんだ)
なのに、心の奥で、たしかに反応している。
誰かに、知られたかった。
「俺は……副会長として……こんな……恥をかいた所を見せたくない」
「……じゃあ、“中川朝陽“個人としてなら?」
その問いに、朝陽は何も答えられなかった。
扉の外。 静かに紙袋の音がして、依澄の声がした。
「昨日、あれから夜も濡らしてたでしょう。乾燥までかけてもらってありがとうございます。……着替えて下さい」
扉の下から差し入れられたのは、朝陽が借りた依澄のジャージ。気恥ずかしくて押し付けるように紙袋に入れて渡していた。
「……昨日の夜もって……?」
「はい。……どれだけ丁寧にたたまれていても、俺には匂いでわかります」
その言葉に、朝陽は顔を赤くして、ジャージを引き寄せた。
(……こいつは……なんでこんなに……)
「……実は俺も、好きなんです。我慢するの」
その告白は、爆弾のように朝陽の胸を打ち抜いた。
「……白崎、お前……」
「我慢する副会長も、綺麗で……とても、興奮します」
「っ……!」
その瞬間、身体が熱くなった。
服の中は冷たいのに、心の奥が燃えていた。
この人は、自分を見ている。 すべてを見て、受け入れて、そして……共犯者になろうとしている。
「……最低だな、俺たち」
そう言った朝陽の声は、どこか震えていた。
「はい。でも、俺は結構……副会長のこと、好きですよ」
扉越しに、真宮の告白が届いた。
静かな個室の中で、しぶきの音は止んでいた。
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