二人だけの秘密の時間

tomoe97

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翌朝。


副会長席に座る朝陽の表情は、普段通りの完璧な無表情だった。
──のはずだった。


「……副会長。今日、顔色悪いですね。熱でも?」

生徒会会計、阿南が心配そうに声をかける。

「別に。寝不足なだけだ」

即答しながら、朝陽は視線を上げることなく、ペンを走らせた。

(……白崎が……俺を見てた)

昨日の放課後、個室の中での出来事。
あの時、なぜか否応なく身体が熱くなった。
自分の醜態を見ていたはずの男が、あんなにも優しい目を向けていたことが、忘れられない。

(……綺麗でした、って……何だったんだよ)



生徒会室の扉が開く。
書類の確認をしにきた風紀委員長・白崎 依澄は、今日もきっちりと制服を着込み、背筋を伸ばし、整った眉の奥から冷たい視線を投げかけてくる。


いや──違う。



(……また、見てる)

その目線は、冷たさよりも熱を帯びている。
じっと。こちらの腹部のあたりを見つめるような。

(……やめろ……)

昨日まで平気だった“我慢”が、今日はやけに意識に上る。
冷たい水筒の中身を喉に流し込んでも、すぐに下腹部に意識が戻る。

(──また、やりたくなってる……っ)

おかしい。気持ち悪い。
けれど、思い出すと熱がこみ上げる。
あの目。
ズボン越しの温もり。
個室の中に満ちた、濡れた匂いと、隠しきれなかった呼吸。

「副会長。資料、こちらです」

低く静かな声が頭上から降ってくる。
見上げると、依澄がすっとファイルを差し出していた。
その表情は相変わらず硬く、感情の読めないもので──


「……ありがとう」

と、朝陽が受け取ろうとした瞬間、彼の手がわずかにこちらの手に触れた。

(……触れた……?)

一瞬だけの感触。けれど、ぞわりと背筋に走る電流のような感覚。

「……副会長、俺は……」

まただ。
あの日と同じ言いかけた台詞を、依澄は口にしかける。
今度こそ、それを聞くべきなのか。
けれどその瞬間──

「……っ」

不意に、下腹部に鋭い痛みが走った。

(まずい……)

朝陽は慌てて席を立った。

「すまない、少し外す……!」

誰にも目を合わせず、生徒会室を飛び出す。
このままじゃ、また“間に合わない”。
──でも、心のどこかで。
(また……見てて欲しい)

そう思う自分がいた。
彼がどんな目で自分を見ているのか。
追ってくるなら、それを受け入れてしまいそうな自分が、怖かった。
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