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翌朝。
副会長席に座る朝陽の表情は、普段通りの完璧な無表情だった。
──のはずだった。
「……副会長。今日、顔色悪いですね。熱でも?」
生徒会会計、阿南が心配そうに声をかける。
「別に。寝不足なだけだ」
即答しながら、朝陽は視線を上げることなく、ペンを走らせた。
(……白崎が……俺を見てた)
昨日の放課後、個室の中での出来事。 あの時、なぜか否応なく身体が熱くなった。 自分の醜態を見ていたはずの男が、あんなにも優しい目を向けていたことが、忘れられない。
(……綺麗でした、って……何だったんだよ)
生徒会室の扉が開く。 書類の確認をしにきた風紀委員長・白崎 依澄は、今日もきっちりと制服を着込み、背筋を伸ばし、整った眉の奥から冷たい視線を投げかけてくる。
いや──違う。
(……また、見てる)
その目線は、冷たさよりも熱を帯びている。 じっと。こちらの腹部のあたりを見つめるような。
(……やめろ……)
昨日まで平気だった“我慢”が、今日はやけに意識に上る。 冷たい水筒の中身を喉に流し込んでも、すぐに下腹部に意識が戻る。
(──また、やりたくなってる……っ)
おかしい。気持ち悪い。 けれど、思い出すと熱がこみ上げる。
あの目。 ズボン越しの温もり。 個室の中に満ちた、濡れた匂いと、隠しきれなかった呼吸。
「副会長。資料、こちらです」
低く静かな声が頭上から降ってくる。
見上げると、依澄がすっとファイルを差し出していた。 その表情は相変わらず硬く、感情の読めないもので──
「……ありがとう」
と、朝陽が受け取ろうとした瞬間、彼の手がわずかにこちらの手に触れた。
(……触れた……?)
一瞬だけの感触。けれど、ぞわりと背筋に走る電流のような感覚。
「……副会長、俺は……」
まただ。 あの日と同じ言いかけた台詞を、依澄は口にしかける。
今度こそ、それを聞くべきなのか。
けれどその瞬間──
「……っ」
不意に、下腹部に鋭い痛みが走った。
(まずい……)
朝陽は慌てて席を立った。
「すまない、少し外す……!」
誰にも目を合わせず、生徒会室を飛び出す。 このままじゃ、また“間に合わない”。
──でも、心のどこかで。
(また……見てて欲しい)
そう思う自分がいた。
彼がどんな目で自分を見ているのか。 追ってくるなら、それを受け入れてしまいそうな自分が、怖かった。
副会長席に座る朝陽の表情は、普段通りの完璧な無表情だった。
──のはずだった。
「……副会長。今日、顔色悪いですね。熱でも?」
生徒会会計、阿南が心配そうに声をかける。
「別に。寝不足なだけだ」
即答しながら、朝陽は視線を上げることなく、ペンを走らせた。
(……白崎が……俺を見てた)
昨日の放課後、個室の中での出来事。 あの時、なぜか否応なく身体が熱くなった。 自分の醜態を見ていたはずの男が、あんなにも優しい目を向けていたことが、忘れられない。
(……綺麗でした、って……何だったんだよ)
生徒会室の扉が開く。 書類の確認をしにきた風紀委員長・白崎 依澄は、今日もきっちりと制服を着込み、背筋を伸ばし、整った眉の奥から冷たい視線を投げかけてくる。
いや──違う。
(……また、見てる)
その目線は、冷たさよりも熱を帯びている。 じっと。こちらの腹部のあたりを見つめるような。
(……やめろ……)
昨日まで平気だった“我慢”が、今日はやけに意識に上る。 冷たい水筒の中身を喉に流し込んでも、すぐに下腹部に意識が戻る。
(──また、やりたくなってる……っ)
おかしい。気持ち悪い。 けれど、思い出すと熱がこみ上げる。
あの目。 ズボン越しの温もり。 個室の中に満ちた、濡れた匂いと、隠しきれなかった呼吸。
「副会長。資料、こちらです」
低く静かな声が頭上から降ってくる。
見上げると、依澄がすっとファイルを差し出していた。 その表情は相変わらず硬く、感情の読めないもので──
「……ありがとう」
と、朝陽が受け取ろうとした瞬間、彼の手がわずかにこちらの手に触れた。
(……触れた……?)
一瞬だけの感触。けれど、ぞわりと背筋に走る電流のような感覚。
「……副会長、俺は……」
まただ。 あの日と同じ言いかけた台詞を、依澄は口にしかける。
今度こそ、それを聞くべきなのか。
けれどその瞬間──
「……っ」
不意に、下腹部に鋭い痛みが走った。
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「すまない、少し外す……!」
誰にも目を合わせず、生徒会室を飛び出す。 このままじゃ、また“間に合わない”。
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