二人だけの秘密の時間

tomoe97

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翌朝、依澄は自身の腰が怠く、いやに重いような感覚とともに目を覚ました。
まだ眠っている朝陽の背中に、自分の唇を軽く寄せる。浮かれている自分がいることに頬が熱くなった。

「……嘘だろ。俺、どんな顔して会議出ればいいんだよ……」

ぼそりと呟いた声に、隣の男がかすかに反応する。
けれど目を覚ますことはなく、穏やかな寝息を立てていた。

(……この顔、誰にも見せないで欲しい)

昨夜の“勝負”の余韻が残る身体で、依澄はそっとベッドから抜け出した。
足腰が覚束ないが、なんとか踏ん張りシャワーを浴びる。
頭を冷やさなければいけない――そう思っていた。


飲み物を買うために部屋を出ると、廊下の角で待っていたのは、あの転校生――伊藤大紀だった。

「……何してるんだ」
「あ、え、いや……その、見回りっていうか」

しどろもどろの大紀に、依澄は少し警戒を強める。
だが、大紀の目はどこか、依澄の背後――つまり、部屋の扉をじっと見つめていた。

「昨日、朝陽さん……あなたの部屋に入っていきましたよね」
「……見てたのか」
「はい」

悪びれる様子もない。
むしろ、大紀の声はどこか寂しげだった。

「朝陽さん、ずっと俺には素っ気ないのに、委員長とは仲良さそうで……」
「それは……」
「俺、あの人のこと、好きなんです」

はっきりと言い切られたその言葉に、依澄の心臓が跳ねた。

「でも、もう無理かなって思いました。昨日の夜、その……二人の声、聞こえたんで」

――息が止まりそうになった。
部屋の中で、あんなに抑えたはずだったのに。
大紀に聞かれていた?

「安心して下さい、誰にも言いません。俺、バカじゃないですし」

そう言って、笑って立ち去ろうとする大紀。
その背中を、依澄は呼び止めることができなかった。 

部屋に戻ると、朝陽が起きていた。
ベッドの縁に座り、ぼんやりと朝の光を眺めていた。

「副会長……」
「……キスしてくれたんだね、背中に」
「っ……!」

寝ぼけている筈の朝陽は、冗談めかした微笑を浮かべていた。
だがその瞳は、確かに依澄だけを見ていた。

「逃げるなよ。俺たち、もう戻れないから」

依澄は、それに返事をしないまま、朝陽に近づく。
そして、今度は確かに――唇を重ねた。
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