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「何故こんな事に…」
この考えが浮かぶのは何回目だろうか…ずっとループしている気がする。それとも私の頭が悪いからなのか?
最初からおかしかったのだ。今朝離宮に『王宮に来るように』と急に王命が来た。調査の追加への質問か?とも私は思ったが、それにしても急すぎる。そして『1人で来い』とも書いてあった。王宮へ侍従を連れて行かない貴族はいない。その時点でオリバーはきな臭さを感じたらしく、
『アルフレッド様、体調不良とお断りしましょうか?それともこっそり私もついていきましょうか?』
と囁いた。しかし先延ばししても良いことはないと私は判断して1人で出発したが、オリバーの予想が当たった。それも思ってもいないくらいの悪い方面で。
王宮につくとそこは物々しい雰囲気だった。陛下やその侍従だけでなくいつもはいない高位の貴族や第1王子や第2王子、そして警備の兵がたくさんいた。不審に思いつつも
「陛下、お呼びでしょうか?」
と私はお辞儀をした。その途端、四方八方から兵に囲まれて剣を取り上げられ取り押さえられた。
「どういうことですか陛下!」
押さえつけられながも私は叫ぶ様に言った。
「黙れ!アルフレッド!お前が隣国のスパイだと言う事はわかっている。大人しくしていろ」
陛下ではなく第1王子のジェレミーが答えた。陛下の様子をうかがうと冷たい目をして私を見下している。
「私はスパイではありません!きちんとお調べ下さればわかるはずです!」
しかし私の願いは届かなかった。
「黙れと言ったろう!茨の森が隣国への抜け道として使われている可能性が高い事がわかった。そしてその森にお前が良く出入りしている事も調べ済みだ。そこから導き出される結論は『お前は隣国のスパイ』と言う事!陛下も他の貴族もその結論に納得し、お前の処刑と茨の森の処分が決まった!それまで地下牢で待ってろ!連れて行け!」
獅子の咆哮をだす余裕もなかった。
…そして今私は地下牢にいる。不快な湿り気がある薄暗く狭い場所だった。その場所で兄のジェレミーの言った事を頭の中で反芻する。どうやら私と言う存在は大多数の貴族たちにとって目障りなモノだったのだろう、だからこそ証拠もないのに処刑が簡単に決まったのだ。
『脳筋王子』と馬鹿にされながらも、そんな場所に何とか馴染もうと頑張った自分の愚かしさが笑える。
そういえば離宮はどうなってしまうのだろう…オリバーやデボラたち使用人は私に連座させられてしまうのか?知る術がない。そこまで手が伸びない事を願うばかりだ。
『最期にエリーゼに一目会いたい』
その時ジェレミーの言葉を思い出した…『茨の森の処分』って言ってたな?茨の森が!エリーゼが!
何とかこの危機を塔の仲間たちに伝えたいが、窓すらないこの地下牢では難しい。私の処刑などはもはやどうでもいい、それよりもねずみの…ボブだったかな?あたりが通らないだろうかと探しても全く生き物の気配がない。
無念だ。しかし彼らなら逃げられるはず。少なくとも獣化すれば兵の目はごまかせるし。あとはエリーゼか…茨は隣国に接しているのは調査で確かなのでそちらまで逃げられればなんとかなる。多分大丈夫…と思いたい。
やっと落ち着いた。あと私にできるのは彼らが無事に逃げられるよう神に祈るくらいしかない。牢獄の隅に置かれたぼろぼろの椅子に腰掛けると今までの思い出が走馬灯のように蘇った。大変な一生だったけど、皆に会えてよかった。でも
『最期にエリーゼに一目会いたい』
「ぐわっ!」
そんなしんみりした気持ちを吹き飛ばすような悲鳴のような呻き声があがった。なんだ?と檻の外を見ると看守が倒れている。どうやら彼が出した呻き声のようだ。
「大丈夫か?おーい、誰か!看守の具合がおかしいぞ!助けてやってくれ!」
私は大声で人を呼んだ。するとコツコツと階段を降りてくる音がした。誰か来た!
「おーいそこの人!看守が倒れてるんだ!助けてやってくれ!」
すると呆れ切った声が返ってきた。
「…殿下、自分が投獄されてるのに人の心配してる場合じゃないでしょうが。お人好しもほどほどにしないと身を滅ぼしますよ」
ん?どこかで聞いたことのある声だ。階段から降りて来たのはなんとブライアンだったのだ。
「ブライアン!無事だったのか!よかった…エリーゼは?皆は?茨の森は?」
「皆無事ですよ。1番無事じゃないのは殿下、あなたでしょ?」
いつもの皮肉っぽい口調で話しながら、倒れている看守の身体を探って牢獄の鍵を見つけ出し、牢の鍵を開けた。
「こんな所から早くでましょう」
私は頭を振って
「…いや、私は罪に問われている身、勝手に外へ出るなんて…」
それを聞いてブライアンは深い深いため息をついて
「罪に問われてると言っても濡れ衣でしょう?あなたに隣国のスパイなんてそんな難しい役目できるわけないのは塔の仲間皆知ってますよ。善良なのがとりえなんですから…ま、それはさておき姫様が上でお待ちですよ。殿下がいらっしゃらないと事が収まりませんので、さっさと一緒に来てください」
ん?エリーゼが王宮に来ていると?彼女は塔から出ないのでは?そして事が収まらないとは?
私の頭は疑問ではちきれそうになった。
この考えが浮かぶのは何回目だろうか…ずっとループしている気がする。それとも私の頭が悪いからなのか?
最初からおかしかったのだ。今朝離宮に『王宮に来るように』と急に王命が来た。調査の追加への質問か?とも私は思ったが、それにしても急すぎる。そして『1人で来い』とも書いてあった。王宮へ侍従を連れて行かない貴族はいない。その時点でオリバーはきな臭さを感じたらしく、
『アルフレッド様、体調不良とお断りしましょうか?それともこっそり私もついていきましょうか?』
と囁いた。しかし先延ばししても良いことはないと私は判断して1人で出発したが、オリバーの予想が当たった。それも思ってもいないくらいの悪い方面で。
王宮につくとそこは物々しい雰囲気だった。陛下やその侍従だけでなくいつもはいない高位の貴族や第1王子や第2王子、そして警備の兵がたくさんいた。不審に思いつつも
「陛下、お呼びでしょうか?」
と私はお辞儀をした。その途端、四方八方から兵に囲まれて剣を取り上げられ取り押さえられた。
「どういうことですか陛下!」
押さえつけられながも私は叫ぶ様に言った。
「黙れ!アルフレッド!お前が隣国のスパイだと言う事はわかっている。大人しくしていろ」
陛下ではなく第1王子のジェレミーが答えた。陛下の様子をうかがうと冷たい目をして私を見下している。
「私はスパイではありません!きちんとお調べ下さればわかるはずです!」
しかし私の願いは届かなかった。
「黙れと言ったろう!茨の森が隣国への抜け道として使われている可能性が高い事がわかった。そしてその森にお前が良く出入りしている事も調べ済みだ。そこから導き出される結論は『お前は隣国のスパイ』と言う事!陛下も他の貴族もその結論に納得し、お前の処刑と茨の森の処分が決まった!それまで地下牢で待ってろ!連れて行け!」
獅子の咆哮をだす余裕もなかった。
…そして今私は地下牢にいる。不快な湿り気がある薄暗く狭い場所だった。その場所で兄のジェレミーの言った事を頭の中で反芻する。どうやら私と言う存在は大多数の貴族たちにとって目障りなモノだったのだろう、だからこそ証拠もないのに処刑が簡単に決まったのだ。
『脳筋王子』と馬鹿にされながらも、そんな場所に何とか馴染もうと頑張った自分の愚かしさが笑える。
そういえば離宮はどうなってしまうのだろう…オリバーやデボラたち使用人は私に連座させられてしまうのか?知る術がない。そこまで手が伸びない事を願うばかりだ。
『最期にエリーゼに一目会いたい』
その時ジェレミーの言葉を思い出した…『茨の森の処分』って言ってたな?茨の森が!エリーゼが!
何とかこの危機を塔の仲間たちに伝えたいが、窓すらないこの地下牢では難しい。私の処刑などはもはやどうでもいい、それよりもねずみの…ボブだったかな?あたりが通らないだろうかと探しても全く生き物の気配がない。
無念だ。しかし彼らなら逃げられるはず。少なくとも獣化すれば兵の目はごまかせるし。あとはエリーゼか…茨は隣国に接しているのは調査で確かなのでそちらまで逃げられればなんとかなる。多分大丈夫…と思いたい。
やっと落ち着いた。あと私にできるのは彼らが無事に逃げられるよう神に祈るくらいしかない。牢獄の隅に置かれたぼろぼろの椅子に腰掛けると今までの思い出が走馬灯のように蘇った。大変な一生だったけど、皆に会えてよかった。でも
『最期にエリーゼに一目会いたい』
「ぐわっ!」
そんなしんみりした気持ちを吹き飛ばすような悲鳴のような呻き声があがった。なんだ?と檻の外を見ると看守が倒れている。どうやら彼が出した呻き声のようだ。
「大丈夫か?おーい、誰か!看守の具合がおかしいぞ!助けてやってくれ!」
私は大声で人を呼んだ。するとコツコツと階段を降りてくる音がした。誰か来た!
「おーいそこの人!看守が倒れてるんだ!助けてやってくれ!」
すると呆れ切った声が返ってきた。
「…殿下、自分が投獄されてるのに人の心配してる場合じゃないでしょうが。お人好しもほどほどにしないと身を滅ぼしますよ」
ん?どこかで聞いたことのある声だ。階段から降りて来たのはなんとブライアンだったのだ。
「ブライアン!無事だったのか!よかった…エリーゼは?皆は?茨の森は?」
「皆無事ですよ。1番無事じゃないのは殿下、あなたでしょ?」
いつもの皮肉っぽい口調で話しながら、倒れている看守の身体を探って牢獄の鍵を見つけ出し、牢の鍵を開けた。
「こんな所から早くでましょう」
私は頭を振って
「…いや、私は罪に問われている身、勝手に外へ出るなんて…」
それを聞いてブライアンは深い深いため息をついて
「罪に問われてると言っても濡れ衣でしょう?あなたに隣国のスパイなんてそんな難しい役目できるわけないのは塔の仲間皆知ってますよ。善良なのがとりえなんですから…ま、それはさておき姫様が上でお待ちですよ。殿下がいらっしゃらないと事が収まりませんので、さっさと一緒に来てください」
ん?エリーゼが王宮に来ていると?彼女は塔から出ないのでは?そして事が収まらないとは?
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