学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

文字の大きさ
14 / 80
第3章 日和

14 以心伝心

しおりを挟む

「さて、それではご飯を作りましょうか」 

 家に帰ると日和ひよりさんがキッチンに立って夕食の支度を始める。

 買い物をしてきた荷物は運んだので、わたしはこれでお役御免だろうか。

「どうされました、花野はなのさん」

「あ、いえ、もうやることもなさそうなので部屋に戻ろうかなぁ……なんて」

 華凛かりんさんいわく家事に関しては、日和さんの能力が高すぎて手伝う隙がないらしい。

 つまり、ここからわたしの出番はないだろう。

 もっと頼られるべきタイミングでお役に立とうと思う次第です。

「お料理の手助けは、お願い出来ませんか?」

「……なんとっ!」

 そう思いきや、さっそく日和さんからお願いされてしまった。

 効果てきめんの結果で嬉しい限りではあるのですが……。

「実はわたし、料理は全然ダメでして」

 包丁とか、まともに使った経験がないのです。

 レンチンで済ませてしまう女子力のない女なのです。

「あら、そうでしたか」

「申し訳ないです」

 お手伝い出来ないのは残念だけど、こうして頼って貰えるようになったのは前進だ。

 うんうん。計画通り。

「でしたら、そこに立っていらしてください」

「……はい?」

 あれ、日和さんがちょっと意味のわからない事を言い始めたよ。

「立って、どうするんですか?」

「何もしなくて結構ですよ」

 ……??

 やっぱり意味がわからないままだ。

 どうするべきか、思考はグチャグチャになっていく。

「そのままわたしの料理を応援していて下さいな」

「どうしてそんなことを?」

 新しいプレイか何かだろうか?
 
「料理は一人で黙々とやるものですから単調な時間もありまして。ですから話し相手がいればな、と」

「わたしが日和さんの話し相手、ですか?」

「ダメでしたか?」

 そんなわけないじゃないですか……!

 何の必要性もない場面で話し相手になって欲しいなんて、それこそ距離が縮まらなければ出来ない。

 喜んで引き受けましょう。

「是非、お話ししましょうっ!」

「良かったです」

 にっこりと笑顔を浮かべる日和さん。

 こちら方が満面の笑みを送りたい気分ですよ。

「そう言えば、花野さんは本当に嫌いな食べ物はないんですか?」

「はい、ありません。何でも好きです。出された物は何でも食べますから安心して下さい」

「ですが、油物を摂りすぎたくないとか、そういうこだわりはありませんか?」

「ないですないです。そんなハイレベルなこだわり」

 食べられたら何でもいいんです。

 むしろ月森三姉妹つきもりさんしまいの方がそういうこだわりがありそうな気が……。

「お飲み物は?」

「いえ、特に」

「ではスキンケアの方を気を遣っていらっしゃるのでしょうか?」

 あれ、急に何の話ですか?

 ご飯からどうして肌?

「あー……いえ、そういうのも特にしてませんね」

 お母さんがパックとか化粧水とか使ってるのは見るけど。

 自分では何もしないから分からないなぁ。

 化粧もしないから肌も荒れないでしょ、とかタカをくくっている。

「それですのに、そんなに綺麗な肌をしているんですねぇ」

 日和さんは関心したように、まじまじとわたしの方を見つめる。

「え、わたしの事ですか?」

「はい、艶のある肌をされていますから。てっきり何か特別なことをされているのかと」

 まさか……日和さんからそんなお褒めの言葉を頂くとは。

 恐れ多すぎて怖い。

「いやいや、わたしの肌なんて無法地帯ですから。普通ですよ」

「いいえ、なんだかモチモチしていそうですし。赤ちゃんのような肌をしていますよ?」

「あ、赤ちゃん……!?」

 なんですか、その評価。

 それは褒められているのでしょうか?

 多分そうなのだろうけど、この歳で赤ちゃんは複雑な気分だっ。

「可愛らしくていいと思いますよ?」

 どう受け取っていいのやら……。

 でも日和さんとこういう会話が出来るのは嬉しいなっ。


        ◇◇◇

 
 夕食の時間。

 今日の献立は天ぷらです。

「……なかなか珍しい物を作るのね、日和?」

 すると、千夜ちやさんが不思議そうに首を傾げる。

 そうか、月森家では天ぷらは珍しい料理なのかっ。

「あら?わたしは千夜ちゃんと華凛ちゃんが天ぷらにして欲しいと伺ったので用意したのですが……?」

「――!?」

 し、しまった!

 華凛かりんさんのアイディアをそのまま頂戴したのはいいものの、当然千夜さんはそのことを知らない。

 このままでは企てがバレて、日和さんと千夜さんに不信感を持たれてしまうのでは……!?

「こ、こら日和。人前でちゃん付けは止めなさいと、いつも言っているでしょう」

 だがしかし、千夜さんの反応するポイントはそこではなかった。

 珍しく慌てた様子で日和さんに物申していた。

「何を仰るのですか、ここには家族しかいませんよ?」

 それに対してあっけらかんと答える日和さん。

 その柔軟性、さすがです。

「まだそういうわけには……」

 千夜さんがちらりとわたしの方を見る。

 どうやら姉妹以外にちゃん付けをされるのを見たくないらしい。

「あら、そんな言い方をしたら可哀想じゃないですか。もう義妹かぞくですのに、ね?」

 すると今度は日和さんがわたしの方を見る。

 わたしのことまでフォローしてくれるなんて、優しい。

「何にせよ、ちゃん付けはよしなさい」

「あらあら……」

 困ったように肩をすくめる日和さん。

 千夜さんに意見を押し付けるわけにもいかず、これが日和さんの精一杯のフォローだったのでしょう。

 ですが日和さん、何の問題もありませんよ。

 わたしからすれば、ちゃん付けに慌てる千夜さんが見れて興奮ものですからね……!

 それに日和さんの優しさも感じられて一石二鳥だ。

「それに日和、貴女いつの間にその子とそこまで親し気になったの?」

 しかし、千夜さんはむしろそのわたしに対するフォローが気になったのか日和さんを訝しがる。

 確かに、今のはどちらかと言うとわたしの方に肩入れをしてくれていた。

 バランスを重んじる日和さんにしては珍しい反応だったと思う。

「ええ、だってあかちゃんは可愛いですから」

「ぶほっ!!」

 日和さんのぶっ飛び発言で思わず吹き出してしまう。

 さっきの話から、そのままわたしを赤ちゃん認定しないで下さいよっ!

「……あかちゃん?」

 首を傾げる千夜さん。

 そりゃそうですよねっ!

 自分の妹が義妹を赤ちゃん扱いしてたら奇妙ですもんねっ!!

「ひ、日和さんっ。いくら何でも赤ちゃん扱いは……」

 二人きりならいざ知らず……。

「あらあら、わたしは親愛を込めて言っただけですよ?」

「日和さんの親愛って赤子扱いすることなんですか!?」

 いくら何でもお母さんが過ぎませんかっ!?

「……赤子?」

「え?」

 なぜか今度は日和さんが首を傾げる。

 どゆこと。

「あー、違います違います。“明莉あかり”だから“あかちゃん”って呼んだのですよ?」

「……あー……そういう……」

 なるほど。

 前後の出来事で勝手に妄想しすぎました。

「貴女……一体、何を考えているの」

 そして千夜さんに睨まれる。

 そうか千夜さんは“あかちゃん”という愛称に距離の縮まりを感じただけなのか。

 あー、わたしだけヤバイ奴じゃん。

「……すいません。恥を晒してしまって」

 穴があるならそこに入りたい。

 こんな公開恥さらしがありましょうか。

「あら、それでしたらわたしの胸をお貸ししましょうか?よしよし、してあげますよ?」

「……!?」

 やっぱり日和さん、赤ちゃん扱いしてませんかねぇ!?

 怪しい、実に怪しいんですけどっ!

 ――ツンツン

「?」

 すると横腹に違和感が。

「……ねえ、こら明莉」

 その違和感の正体は、隣に座る華凛さんに肘でつつかれていたせいでした。

 何やら小声で話しかけてきます。

「どういうことよ、これ」

「……と、言いますと?」

「日和ねえはなるべく人に優劣つけたくないから家族以外には“ちゃん付け”しないようにしてるはずなの」

 ……たしかに、わたしにもずっと“さん”付けでしたものね。

 でもだとすると、朗報じゃないですか。

「つまり、わたしも家族と認めてくれたということですね?」

「いや、でもちょっとおかしいのよ」

「……なにがですか?」

「日和ねえはあたしたちのこと何て呼んでる?」

「……千夜ちゃん、華凛ちゃん」

「やだ、いきなり華凛ちゃんなんて……」

「え?」

 なんでそこをモジモジしながら反芻はんすうするんですか?

「な、なんでもないっ。ほら、あたしたちには“名前”に“ちゃん”付けじゃない」

「そうですね?」

「でも明莉にだけ“あか”に“ちゃん”なのよっ」

「たっ、たしかに……!?」

 姉妹には【名前+ちゃん】なのに。

 わたしには【略称+ちゃん】なのだ。

「この差は、つまり……」

「そうよ、ここまで言えば明莉でもさすがに気付くでしょ……!」

 さすがにトンチンカンなわたしでもそこまでヒントを頂ければ分かりますよ!

「つまり日和ねえはあんたのことを――」

「日和さんはやっぱりわたしを“赤ちゃん”扱いしているということですね!?」

「……」

 それ以外、考えられない。

 日和さんはしたたかな人だから、家族への愛称と見せかけてやはりわたしを赤ちゃん扱いしているということ……。

 つまり、“わたしを認めるにはまだまだ未熟”だということを暗示しているわけですねっ。

「そういうことですね、華凛さん!?」

「……」

「華凛さん?」

「いつになったら、伝わるのかなぁ!!」

「ええ!?」

 完全に伝わったと思ったんですけどね!?

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件

沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」 高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。 そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。 見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。 意外な共通点から意気投合する二人。 だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは―― > 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」 一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。 ……翌日、学校で再会するまでは。 実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!? オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。

義姉妹百合恋愛

沢谷 暖日
青春
姫川瑞樹はある日、母親を交通事故でなくした。 「再婚するから」 そう言った父親が1ヶ月後連れてきたのは、新しい母親と、美人で可愛らしい義理の妹、楓だった。 次の日から、唐突に楓が急に積極的になる。 それもそのはず、楓にとっての瑞樹は幼稚園の頃の初恋相手だったのだ。 ※他サイトにも掲載しております

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

百合ゲーの悪女に転生したので破滅エンドを回避していたら、なぜかヒロインとのラブコメになっている。

白藍まこと
恋愛
 百合ゲー【Fleur de lis】  舞台は令嬢の集うヴェリテ女学院、そこは正しく男子禁制 乙女の花園。  まだ何者でもない主人公が、葛藤を抱く可憐なヒロイン達に寄り添っていく物語。  少女はかくあるべし、あたしの理想の世界がそこにはあった。  ただの一人を除いて。  ――楪柚稀(ゆずりは ゆずき)  彼女は、主人公とヒロインの間を切り裂くために登場する“悪女”だった。  あまりに登場回数が頻回で、セリフは辛辣そのもの。  最終的にはどのルートでも学院を追放されてしまうのだが、どうしても彼女だけは好きになれなかった。  そんなあたしが目を覚ますと、楪柚稀に転生していたのである。  うん、学院追放だけはマジで無理。  これは破滅エンドを回避しつつ、百合を見守るあたしの奮闘の物語……のはず。  ※他サイトでも掲載中です。

処理中です...