学園の美人三姉妹に告白して断られたけど、わたしが義妹になったら溺愛してくるようになった

白藍まこと

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第4章 千夜

20 思いと行動は一致する

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「それで、ほんっとうに千夜姉ちやねえとは何もなかったのね?」

 ぐいっと顔を近づけて迫力満点にわたしに圧をかけてくるのは華凛かりんさんです。

 誤解を解こうと追いかけて、事細かに事情を説明して今に至ります。

「本当です、信じて下さい。そもそもわたしが力づくで千夜さんをどうこう出来るわけないじゃないですか」

 それは肉体的にも精神的にも、どちらの意味を含めても。

「そっ、そっか……うん、そうだよね。なんだ、早とちりしちゃったじゃん……」

「本当に申し訳ありません」

 ですが、これで誤解が解けて一安心です。

「ん~……仮にエッチな事があったとしても『ありました』なんて普通は言いませんけどねぇ?」

 なのに、日和ひよりさんが簡単に許してくれません!

「やっぱりそうだよねっ!?」

 そして感化される華凛さん!

 せっかくまとまりそうだったのに!

「日和さんも実際に見たから分かってるじゃないですかっ!何もなかったですよね!?」

「ええ、ですからわたしがお邪魔してしまったから、お止めになったのかもしれませんよね?」

明莉あかりいぃぃぃぃっ!!」

 嗚呼っ、華凛さんが憤怒の表情にっ。

 なんで日和さんは涼しい顔で焚きつけて来るんでしょうかっ。

「大事なのはあかちゃんが何をしようとしたか、です。その心が千夜ちゃんを求めていたのでしたら、それはエッチな行為になるんですよ?」

「実際にしていなくてもですか!?」

「はい、思うことが罪です」

 ギルティ!

 重たすぎるっ!

 日和さん、優しい顔をしているのに言っていることが怖いです。
 
 ……も、もしかして怒ってます?

 いやいや、日和さんに限ってさすがにそれはないですよね……。

「でも思ってることなんて証明できないじゃないですか」

「出来ませんね」

「じゃあわたしの身の潔白はどう証明したら……」

「罪を全て証明できるのなら、冤罪なんてこの世の中からとっくに消えていると思いませんか?」

 やっぱり怖いよぉ!

 千夜さんも怖いですけど、千夜さんはもっとストレートに言ってくれます。

 ですが日和さんは優しい雰囲気で、すごい角度から迫ってくるので恐ろしいですっ。

「そうよ!そもそも一日で二回も千夜ねえと一緒なのがおかしいのよ!有罪よっ!」

 華凛さんは完全に日和さん側に……。

 結局、わたしの話は全く聞き入れられてもらえません。

「まあまあ……二人とも冷静になってくださいよ。そもそもわたしを相手に千夜さんが応じるわけないじゃないですか」

「なんでそう言い切れるのよ」

 むしろ、なんでそこに引っかかるんですかねぇ……。

「だって、わたしですよ?わたし相手にそんな気持ちなりますか?なるわけないですよね、お二人とも自分の立場になって考えてみてくださいよ」

「「……」」

 え、なんで黙るんですか。

「そ、そんな変なこと言わないでよっ!なんか反応に困るじゃんっ!」

「え……」

 反応に困りますか……?

 “確かに、明莉あかりとかないわー”とか“そもそも女の子同士だしね”とかで済む話だと思ったんですけど……。

「いけない子ですね。無自覚に人の気持ちをたぶらかして」

「ええ……?」

 あ、あれかな。

 そもそもわたしみたいな子とする想像なんかさせないでよ、ってことかな。

 そうか、それなら納得。

 わたしなんかそもそも相手にすることはないっていうのは大前提での話しだったのか。

 なんて恥ずかしい思い違いをしていたのだろう。

「とにかく、千夜ねえに変なことしたらダメだからね!」

「あ、はい……」

 もちろん、そんなつもりはありませんが。

「あら、そしたらわたしにはどうしますあかちゃん?」

「え」

「日和ねえもダメに決まってるでしょうが!」

 わたしが答える前に火を噴く華凛さん。

「あらあら……じゃあ華凛ちゃんにしますか?」

「え」

 そんなの絶対に華凛さんに怒られますよ。

「あ、あたしは……その……」

 モジモジし始める華凛さん。

 態度が急変しすぎてついて行けません。

「うふふ……自分が明ちゃんにされるのはいいんですねぇ?」

 な、なんですって……?

「ちっ、ちがうからっ!これは姉を庇う妹心だからっ!我が身を犠牲にしてるだけだからっ!」

「あ、わたしは犠牲扱いなんですね……」

 分かってはいることなんですけど、面と向かって言われると傷つきますね。

「あ、ちがっ……」

「華凛ちゃんは本当は望んでいるんですよね?」

「ああ、もうっ、それもちがうのっ!!」

 は、話しがグチャグチャだぁ……。

 その日の夜は大変賑やかに更けていくのでした。


        ◇◇◇


 翌朝、朝食の時間になってテーブルに着く。

「あれ……千夜さんは?」

 無人の席を見て、思わず尋ねます。

「まだ来てませんね。お部屋かと」

「珍しいですね」

 いつも早めに起きている千夜さんが一番最後だなんて、わたしが来てからは初めてのことでした。

「あー、この時期だからねぇ」

 ですが華凛さんは、さして珍しいことではないような口ぶりです。

「この時期?」

「昨日、千夜ねえが言ってたじゃん。中間考査が近いって」

「はい、言ってました。それで勉強を教えてもらったんですし」

「だから、この時期になると千夜ねえは勉強に追い込み掛けるの」

「えっ……じゃあ、あの後も千夜さんは自分の勉強をしてたってことですか?」

「だと思うよ」

 うはぁ……千夜さんはストイックだなぁ……。

「でも、それなら何だか申し訳ないですね」

 わたしに時間を使ってもらったのは嬉しいですけど、それで睡眠不足になってしまうのは申し訳ない。

 そうと知っていたらもっと早く終えてもらうようにも言えたのですが……。

「余計なお世話よ」

「へっ!?」

 いつの間にか千夜さんはリビングに下りてきていました。

 その表情には寝不足の気だるさなど微塵も垣間見せず、凛とした佇まいで席に着きます。

「貴女に心配されるようなギリギリの成績じゃないんだから、心配するなら自分のことを心配なさい」

 ごもっともとしか言えませんが……。

「それでも睡眠不足はやはり良くないですし……」

「なら私が教えなくてもいいように勉学に励むことね」

 うぅ……それはその通りですねぇ。

「うふふ……」

 そのやり取りを見て、微笑むのは日和さんです。

「何よ、日和」

「いいえ。ただ、千夜ちゃんがあんなに手取り足取り教えてあげるのは今まで華凛ちゃんくらいだったのに、明ちゃんにもしっかり教えていたなと思いまして」

「……日和も、あの子に勉強を教えるよう言って来たじゃない」

「でも、それを良しとしたのは千夜ちゃんですよ?色々言いつつ、気にかけているのでしょう?」

「……」

 無言になった千夜さんは、じっとわたしのことを見つめてきます。

「勘違いはしないことね」

 そのままぷいっと顔を逸らすのでした。

 うおお……こ、これはどっちなんでしょう……。

 反応に困ります……。

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